漢方の基礎知識6「五臓とは」

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五臓とは

五行学説の中には、「五臓(ごぞう)」という考えがあり、「五臓」は肝・心・脾・肺・腎(かん・しん・ひ・はい・じん)の5つの臓腑のことを指します。ただし「五臓」は、西洋医学で考える臓器と同じ役割ではありません。例えば、肝は肝臓という意味ではなく、自律神経を調節したり、血を貯蔵したりする臓腑のことをあらわします。

漢方の言葉は少し難しいイメージがありますが、ひとつひとつの意味が少しずつ理解できると、体調を整えるには何が必要なのかを理解できるようになります。それでは、肝・心・脾・肺・腎の順番に「五臓」の役割を見て、理解をすすめていきましょう。

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肝について

肝は自律神経や情緒などをコントロールする臓腑です。

・疏泄(そせつ)をつかさどる
疏泄には、全身の気をめぐらせ、精神状態を安定させる働きがあります。全身の気の流れがよくなると、睡眠・食欲などが安定します。

・蔵血をつかさどる
蔵血とは、血液を貯蔵し、血液の流れを調節する働きです。血液を貯蔵することにより、目の疲れ・頭痛・めまいなどの症状を予防することができます。

・筋をつかさどる
血液を貯蔵することにより、筋(すじ)に栄養を与え、関節の動きをスムーズにします。

・華は爪にあらわれる
肝の状態は、爪にあらわれます。肝の血液が不足すると、爪にツヤがなくなり、割れやすくなります。*華…五臓の状態があらわれる場所のこと。

・目に開きょうする
肝の状態は目にもあらわれます。肝の血液が不足すると、目の乾燥・視力低下などが起こります。
*開きょうする…五臓の異常は体表の器官にあらわれる。

・液体は涙
肝が正常な状態のときは、涙は目を潤し保護してくれます。肝の血液が不足すると、目が乾燥したり、異物感を感じたり、夜に目が見えにくいなどの症状が起こります。

・情志(感情)は怒
肝の気の流れが悪くなると、イライラしたり怒りっぽくなったりします。

心について

心は五臓の中でももっとも重要な臓器です。心は、精神・意識をコントロールします。血液は全身に流れているため体の臓腑にも影響を与えます。

・血脈をつかさどる
心は、血を血管の中に通して、全身に運ぶ働きがあります。
心の働きがよくなると、血液がうまく循環するため、正常な心拍数・リズムなどが安定します。

・神志(しんし)(精神活動)をつかさどる
神(しん)は、生命活動・精神活動をさしています。顔色・視線・体の動き・精神などの状態をコントロールしています。

・華は顔にあらわれる
心の状態は、顔にあらわれます。心が正常に働くと顔色はよく、明るい表情になります。

・舌に開きょうする
心の状態は舌にもあらわれます。心の状態が悪くなると、味覚障害が起きたり、ろれつが回りにくいなどの症状が起こります。

・液体は汗
心の状態が悪くなると、汗がじっとしていても出たり、動くとさらに汗がひどくなることもあります。

・情志(感情)は喜
心は喜と関係があります。「喜」の感情はプラスの感情なので、プラスの感情を維持することで心の働きは安定します。

脾について

脾は、食事を消化吸収し、気血水を作り出す臓腑です。四肢や筋肉などにも影響を与えます。

・運化をつかさどる
運は運ぶことで、化は消化吸収のことを意味しています。口から摂取した食べ物を栄養分として吸収し、気血水を作り出します。

・統血をつかさどる
脾は血を作り出すだけでなく、血尿・血便・不正出血など、血が血管の外に漏れ出すことを防ぎます。

・四肢と筋肉をつかさどる
人の手足と筋肉は、脾の栄養状態が大きく影響を与えます。脾が正常に働くと、手足や筋肉は丈夫でスムーズに動きます。

・華は唇にあらわれる
脾の状態は唇にあらわれます。脾の状態が良くなると、唇の色がよくなりツヤが出ます。

・液体は涎(よだれ)
脾の状態が正常であると、口の中の唾液が食事や消化を助けてくれます。逆に悪くなると、よだれが出ます。

・口に開きょうする
脾の状態は口に現れ、脾が悪いと味覚などに影響が出ます。

・情志(感情)は思・憂
脾の状態が悪くなると、思い込み過ぎたり、食欲が無くなったりします。

肺について

肺は、全身の気と呼吸をコントロールし、体に潤いを与えます。

・気と呼吸をつかさどる
肺は、気を作り出し、全身に気を送ります。肺は、呼吸することにより、体内の病気の原因となる気を排出し、自然界の清らかな空気を吸入します。

・宣発と粛降をつかさどる
宣発とは、肺の気を上に上げたり、体の外に向けることで、気をめぐらせたり、発散させたりすることを意味しています。粛降は、肺の気を上から下へ下げたり、体の中にむけることにより、浄化したり、気をおぎなうことを意味しています。

・水道を通調する
肺は、水をめぐらせたり・分散させたりする働きがあります。体の臓腑に栄養と潤いを与えます。

・華は皮毛にあらわれる
肺は、皮膚や皮毛と関係が深く、外からの邪気から体の表面を守る働きがあります。肺の働きが悪くなると花粉症や皮膚の乾燥などが起こります。

・鼻に開きょうする
鼻と関係が深く肺が不調になると鼻水・鼻づまりなどがおこります。嗅覚や声に対する病気は肺につながっていると考えます。

・液体は鼻水
鼻の中を潤す作用があります。

・情志(感情)は悲・憂
肺は悲しい・憂うなどの感情を生み気を消耗しやすくなります。

腎について

腎は人の成長や発育に関わりのある臓腑です。腎が不調になると、老化現象が起こりやすくなります。

・蔵精をつかさどる
人が生きていくには「精」が必要です。精とは細胞・ホルモンなど人の生命活動に関わるものを指します。精には「先天の精」「後天の精」があります。先天の精は、両親から受け継ぐもので、後天の精は毎日の食事などから作り出されます。

・水をつかさどる
腎は水分の代謝をコントロールしており、尿を作り出したり、排出させたりすることで体の中の水分を調節しています。

・納気をつかさどる
腎は呼吸と関わりがあり、体の中にある病気の原因となる空気を排出することによって、腎の働きをコントロールしています。

・華は髪にあらわれる
腎の状態は、髪にあらわれます。腎が不足すると、抜け毛や白髪が出たり、髪の毛のツヤがなくなります。

・耳に開きょうする
耳との関係が深く、腎が衰えると、耳なり、聞こえにくくなるなどの症状が現れます

・液体は唾(つば)
腎の状態は、唾にあらわれます。腎の状態が正常であると、唾は口の中を潤し、食べ物を消化しやすくします。

・情志(感情)は恐・驚
恐れや驚きは、腎に影響を与えます。腎が衰えると耳が聞こえなくなったり、尿や便をもらしたりすることもあります。

「五臓(肝・心・脾・肺・腎)」の役割を知ることによって、自分の体に起きた不調は何が原因かを知ることができます。まずは、現在の状態について確認してみてはいかがでしょうか?
例えば目がかすんだり、耳が遠くなってきたら肝腎の不調が原因かもしれません。簡単なところから確認してみましょう。

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