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「夜、何度もトイレに行く」「外出してもトイレが気になって楽しめない」こんな悩みのある方は頻尿といわれる症状が起こっているのかもしれません。頻尿とは、一日の排尿回数が多い場合をいいます。例えば、トイレに1時間おきに行かないと落ち着かない、夜トイレに行きたくて何度も目が覚めてしまう夜間頻尿などです。漢方では、頻尿になる原因は、ひとつが原因ではなく様々なケースがあると考えています。具体的にどんな体質の人が頻尿になりやすいのか、年齢や、生活環境などの関係について確認してみましょう。
頻尿の原因は?
漢方の考え方には、気血水という概念があります。「気」はエネルギー、「血」はカラダの中の血液、「水」は尿やリンパ液など血液以外の水分を指しています。
頻尿は、気血水の中でも「水」との関係が深いと考えられています。頻尿が起きる原因には次のようなものがあります。
・老化
漢方では、成長・発育をつかさどる「腎」の機能が不足すると、老化現象で腎の機能が低下するので、頻尿が起こりやすくなると考えています。腎の機能が不足する原因には、加齢の他に、ストレス、カラダの冷えなどがあります。
・食べもの、飲みもののとりすぎ
飲食物で考えられる原因は、味の濃いもの・冷たいもの・アルコールなどのとりすぎです。とくに、コーヒー・緑茶など利尿作用のあるものはトイレが近くなることがあります。
・カラダが冷えている
冬やクーラーのある部屋などでカラダが冷えると、膀胱の筋肉は縮みやすくなりそれが刺激になるため、尿意を感じやすくなります。また、冬は汗をかきにくいためカラダの中に余分な水分がたまりやすくなるのも原因だと考えます。
・病気の可能性も
頻尿には、過活動膀胱・膀胱炎などの病気の可能性もあります。過活動膀胱は、尿が膀胱にたまっていないのに、膀胱が過敏になることによって尿意をもよおす病気です。膀胱炎は、膀胱内で炎症を起こすことが原因で起こります。トイレを我慢したり、水分の摂取が少なかったりすると雑菌が増えやすくなります。
【漢方的解説】頻尿になりやすい体質の人は?
頻尿になりやすい人は腎が影響している可能性があります。腎とは、西洋医学の腎臓と同じ意味ではなく、人体の生命活動に必要な働きをする場所です。
「腎は精を蔵す」という言葉があり、生命活動に必要な腎の精気は、先天の精と後天の精があります。先天の精は両親から受け継いだものですが、後天の精は、自分が食べたものや飲んだものによって補充することができます。腎のバランスを整えるためには、後天の精により補充することが大切です。毎日の食事や生活習慣が大きな影響を及ぼします。
また、「腎は水を主る」という言葉があり、腎はカラダの水分代謝のバランスを維持する働きがあります。腎は、必要な水分を全身の臓器に送り、不要な水分は尿として排泄させるという働きがあります。腎が衰えてくると、頻尿など尿のトラブルが発生しやすくなります。他にも、腎虚・気滞・水滞・瘀血が関係している場合があります。
・腎虚:老化、働きすぎ、不規則な生活が原因で腎の働きが悪くなっている
・気滞:ストレス、緊張などが原因で気の巡りが悪くなっている
・水滞:水分のとりすぎなどが原因でカラダの中に余分な水分が滞っている
・瘀血:カラダの冷えなどが原因によりカラダの中の血が滞っている
頻尿の人におすすめの対処法
カラダのバランスを整えるためには、その人の体質に合わせて生活環境を整えることが大切です。
・水分のとりすぎに注意する
水分をとりすぎると、トイレが近くなります。とくに、普段からカラダの中に水分が滞りやすい水滞の人は注意が必要です。
・食生活を改善する
普段の食事の中で塩分の多い生活を続けていると、カラダがむくみやすくなり、尿量を増やす原因につながります。
・緊張やストレスに注意する
ストレスが多い生活や緊張した状態が続くと、全身の気の流れが滞ってしまうため、イライラしたり、尿意を感じやすくなったりします。
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頻尿を防ぐ食材とは
老化による頻尿には、腎の働きを高める黒い食材がおすすめです。黒きくらげ・黒豆・わかめ・ひじきなどがあります。また、カラダの冷えを防ぐために辛味の食材もおすすめです。しょうが・ねぎ・シナモンなどがあります。
緊張やストレスには、気の流れをよくするレモンなどの柑橘系などがあります。それぞれ、自分の体質に合わせた食材を選んでいくことが大切です。
頻尿が気になる人は冬の過ごし方に注意
冬は、人の成長・発育・生殖のために必要な腎に大きな負担をかけます。カラダの中の気や血の巡りも滞ってしまうため、カラダの中の血行や代謝も低下します。
漢方では、腎の機能が衰えやすい冬は老化が促進しやすいと考えられています。冬は、ダイエット・冷たいもののとりすぎなど、体に負担がかかることは控えましょう。他の季節よりもしっかりと睡眠時間を確保することも大切です。
漢方では、冬は普段より早い時間に寝て、朝は太陽が出たころに起きるのがよいと考えています。腎を消耗すると、頻尿だけではなく、耳鳴りや白髪など老化の原因にもなります。また、冬に養生をしておかないと、春になっても手足が冷えたり、気温の変化に対応できなくなったりするなど、春の不調を引き起こすことも考えられます。
【頻尿に効く薬】老化が原因で頻尿が起きる方に
■八味地黄丸
トイレに行く回数が多い、夜中にトイレでよく目が覚めるといった症状の方に利用される漢方薬です。八味地黄丸はカラダを温める作用があるため、カラダが疲れやすい・冷えやすいといった方にも利用します。腎の不足で起こる腰痛・しびれ・高血圧に伴う随伴症状(肩こり、頭重、耳鳴り)にも向いています。
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監修
多田 有紀