[新型コロナ後遺症] 頼りになる漢方薬や簡単なセルフケアを医師が指南!

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[新型コロナ後遺症] 頼りになる漢方薬や簡単なセルフケアを医師が指南!

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新型コロナウイルス感染症の患者数は増えたり減ったりの波がある一方で、後遺症とみられるさまざまな症状に悩まされる人は、日を追うごとに増加しています。一つでも症状があると QOL(Quality of Life:生活の質)が大きく低下し、仕事や学校など社会生活に影響が・・・。軽視できない新型コロナ後遺症について、ヒラハタクリニック院長の平畑光一先生にお伺いしました。

感染者の10人に1人が発症!?増加する新型コロナ後遺症

― 新型コロナ後遺症とはどのような状態を指すのでしょうか?また、発症する原因は何でしょうか?

平畑先生:新型コロナ後遺症は「ロング・コビッド(Long COVID)」とも呼ばれ、新型コロナウイルス感染症から回復したにもかかわらず不調が続く、あるいは、新たな症状が現れるなどの状態を指しています。WHO(世界保健機関)では「新型コロナウイルスに罹患した人にみられ、少なくとも2カ月以上持続し、また、他の疾患による症状として説明がつかないもの(通常は発症から3カ月経った時点にもみられる)」と定義しています。原因については、少量のウイルスが体内に残り続ける「持続感染」や免疫システムが自身の細胞を攻撃する「自己免疫反応」、血管や神経の損傷、肺の機能の低下などの可能性が考えられていますが、現在のところ不明な点が多いようです。

―新型コロナウイルスの感染拡大から3年、この間、新型コロナ後遺症患者数は変化していますか?

平畑先生:新型コロナウイルスの感染者数については、増減を繰り返しながら現在に至っていますが、新型コロナの後遺症の患者数は、遅れて発症するケースや症状が長期にわたるケースもあるため一貫して増え続けています。特に、感染力の強いオミクロン株が主流になった2022年2月以降、爆発的に増加しています。

世界的に見ても後遺症に悩む人の数は増えており、WHOは、感染者の10人に1人が新型コロナ後遺症になるとの見解を示しています。また、アメリカでは、新型コロナ後遺症によってフルタイム当量で約400万人が就労困難となっている可能性があるとされ、多額の経済損失が懸念されています。*1

データや論文にばらつきがあるため断言はできません。しかしながら、私が新型コロナ後遺症専門外来で治療に当たってきた経験も踏まえると、おおよそ感染者の10人に1人に治療が必要なレベルの後遺症が残ると考えても差し支えないでしょう。国内の新型コロナウイルスの累計感染者は3,000万人を突破していますから、約300万人に後遺症が出ている可能性があるわけです。また一つわかってきたのは、女性の方が後遺症を発症する傾向が高いということです。*2

平畑光一先生

個人差が大きく、多岐にわたる新型コロナ後遺症の症状

― 新型コロナ後遺症の症状には、どのようなものがあるのでしょうか?

平畑先生:倦怠感、疲労感、微熱、食欲不振、せきやぜんそくのような症状、頭痛、不眠、息苦しさ、体の痛みなど多岐にわたります。人によって現れる症状や度合いは異なり、複数の症状が同時に見られることもあります。中でも、圧倒的に多いのが倦怠感、気分の落ち込み、思考力の低下で、これらがコロナ後遺症の中心的な症状といえると思います。症状が悪化することで、仕事や学校に行けなくなってしまうケースも珍しくありません。

新型コロナ後遺症で多い症状

― 倦怠感を覚える人が特に多いようですね。

平畑先生:「だるい」「疲れやすい」といった軽度のものから「起き上がれないほど体が重い」といった重度のものまで幅広い症状がありますが、軽い労作後やストレスの後、5~48時間後に急激に強いだるさが出る「PEM(Post-exertional malaise:労作後の疲労)」がある場合は特に注意が必要です。なぜなら、PEMの傾向があると「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(Myalgic encephalomyelitis/Chronic fatigue syndrome:ME/CFS)」に移行するリスクが高まるからです。ME/CFSは、強烈な全身倦怠感が回復せずに日常生活が著しく困難になる病気です。

― 直後ではなく、「少し時間が経ってからだるくなる場合」というのが意外に思えます。

平畑先生:買い物などの軽い家事、あるいは、家族とのちょっとしたケンカといったストレスになる出来事の5時間以上経ってから急激にだるさが起こり、何もできなくなってしまうのがPEMの特徴です。もしも、こうした傾向がある場合は頑張って動こうとしないことが肝心です。少しの無理でも急に悪くなることがありますから。

倦怠感/疲労感に有用な漢方薬

― 平畑先生がお使いになられる漢方薬について教えて下さい。

平畑先生複数の生薬が配合され、一剤で多様な症状に対応できる漢方薬は、さまざまな原因が複雑に重なって生じている新型コロナ後遺症の症状改善に効果が期待できます。よく使っているのが、加味帰脾湯(かみきひとう)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)、人参養栄湯(にんじんようえいとう)、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)などです。東洋医学の治療の基本である「証(しょう):体質、体力、抵抗力、症状などの現れ方」に合わせて処方しています。

加味帰脾湯は、倦怠感、疲労感に加えて、気分の落ち込み、不眠などの症状がある患者さんにおすすめしています。消化器の働きを助けながら不足している「気」や「血」を補ったり、滞った「気」を巡らせることで精神を安定させる作用が期待できます。また、症状が長く続いていて全身が冷え、心身が弱っている患者さんには、健康に不可欠な「気」「血」の両方を補い、すみずみまで栄養を行き渡らせてくれる十全大補湯や人参養栄湯を処方します。比較的若い方では十全大補湯、40代以降の方で咳が出るなどの呼吸器系の症状がある場合は、人参養栄湯が向いていると思います。柴胡桂枝乾姜湯は、体の熱や炎症、冷え、動悸や息切れ、不安感を取りのぞき、心身の働きを整える処方です。

平畑光一先生

おすすめのセルフケアは1日3回の鼻うがい

― 新型コロナ後遺症に対する西洋医学的アプローチとしては、どのような治療法が有効でしょうか。

平畑先生:新型コロナ後遺症に対する治療法は確立されておらず、現状では、気分の落ち込みには抗不安薬や抗うつ薬、不眠には睡眠薬、せきが続くのならせき止めの薬といった具合に、症状に応じた対症療法が中心です。そんな中で最近注目されているのが、上咽頭(鼻とのどの間の部分)に薬液を直接塗布する上咽頭擦過療法です。50年以上前からある治療法ですが、新型コロナ後遺症に対する効果を裏付ける論文*3,4が発表されてきたことで、世界的にも期待が高まっています。漢方の服用をはじめ、さまざまなケアと組み合わせることでより効果が高まると思われます。ただし、この治療法を受けられる医療機関は非常に少ないので、受診する際には事前に問い合わせることをおすすめします。また、新型コロナ後遺症は呼吸機能と関連している場合もあり、呼吸リハビリテーションが効果的とされています。

― 病院での治療以外に、自宅でできるセルフケアはありますか?

平畑先生簡単で効果的なのは鼻うがいです。1日2~3回程度、鼻の中を洗浄することで症状が改善する場合が多く、また感染予防にも役立ちます。コツは下を向いて行うこと。片方の鼻から入れて反対の鼻から出すのが理想ですが、最初は同じ鼻から出しても構いません。何度か行って慣れてきたら、徐々に奥まで入れてみましょう。繰り返すうちに反対側から出せるようになります。体温程度のお湯で作った1~2%塩水を使えば痛くありませんので、ぜひ試してみてください。

新型コロナ後遺症については、世界各国で研究が進められている最中で、未だ不明な点も多いのですが、感染歴がある方は、とにかく無理をしないことです。多少だるい程度でも軽く考えないで、十分な睡眠と休養を取るように心がけてください。ストレスをためないよう、リラックスした時間を持つことも大切です。

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監修者
平畑 光一先生
ヒラハタクリニック院長

(注釈)参考文献
*1 https://www.brookings.edu/research/new-data-shows-long-covid-is-keeping-as-many-as-4-million-people-out-of-work/
*2 Miyazato Y, et al. J Infect Chemother. 2022; 28(9): 1242-1248
*3 Imai K, et al. Viruses. 2022; 14(5): 907
*4 Nishi K, et al. Int J Mol Sci. 2022; 23(16): 9205


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