それって「ぎっくり背中」?突然の背中の痛みにおすすめの対処法とは

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ある日突然訪れる背中の激しい痛み、「ぎっくり背中」。ぎっくり腰やぎっくり首なら分かるけれど“背中”?と不安になったことはありませんか?ストレスが溜まりやすい環境、忙しい生活スタイル、季節の変わり目などに起きやすくなります。ぎっくり背中を誘引するきっかけは様々ですが、原因をしっかり理解した上で対処することが大切です。この記事ではぎっくり背中の症状とその原因を解説し、対処法をご紹介していきます。

ぎっくり背中とぎっくり腰の違いは?

ぎっくり背中は、急な背中の激しい痛みや寝違えに近い症状が起こります。ぎっくり背中と名前が似ているのがぎっくり腰。

一般的にはぎっくり腰の方が、知名度が高いかもしれません。どちらもいきなり現れるであることは共通していますが、痛むエリアが異なります。

ぎっくり腰は腰部周辺ですが、ぎっくり背中は胸の真裏あたりの背部が痛みます。ぎっくり背中は呼び名であり、正式には「筋・筋膜性疼痛症候群(きん・きんまくせいとうつうしょうこうぐん)」と呼ばれるものです。

背中の筋肉や筋膜(筋肉の周りを覆っている膜)が、過度なストレスや筋肉の緊張で軽い肉離れの様な状態になってしまう症状です。

痛みのメカニズムとしては、背中の筋肉や筋膜が刺激を受けて傷つくことで炎症が起こり、動作や呼吸で胸部が動くと症状が現れます。痛みが発生してから治まるまで平均すると5日から2週間かかると言われています。

発症してから、2日程度は炎症が強いため安静に。医師や薬剤師に相談の上、湿布剤などを用いると楽になる場合もあります。3日を過ぎると炎症が治まるため少しずつカラダを動かしていきましょう。痛みがひかない場合は医療機関で診てもらうことをおすすめします。

ぎっくり背中チェックリスト

ぎっくり背中を引き起こす原因をチェックしていきましょう。

① 急な動作・くしゃみなどの反射的動作

背後にあるスイッチを押すため振り向いた瞬間や棚のモノを取ろうと背伸びをした時などをきっかけに筋肉や筋膜が傷ついて起こります。運動不足や悪い姿勢によって血流が滞った結果、筋肉が伸縮できずに動作によって傷つき痛みが現れます。

② カラダが冷えている・温度や気圧の変化に弱い

寒さや血行不良による冷えやカラダを冷やす食生活が続いている場合、筋肉の柔軟性が落ちることで起こります。天候による影響がカラダにでやすい人も注意が必要です。気温差や気圧差で血の巡りが悪くなることなどで起こります。

③ 姿勢不良・運動不足

姿勢が悪い、運動不足、またはデスクワークや立ち仕事など同じ姿勢が多い場合、筋肉が凝り固まり柔軟性がなくなるため、ちょっとした動作で筋肉や筋膜が傷つくことが考えられます。

④ 睡眠不足・水分不足

睡眠不足は自律神経の乱れを促しカラダとココロのストレス回復を阻害します。また交感神経が働きすぎることは、筋緊張を生むため痛みを感じやすくします。水分不足も筋肉を凝り固まらせると同時に血行不良につながります。

背中に痛みが現れるものとして気胸(肺に穴があく病気)や背骨の骨折、内臓の病気などもあります。痛み以外に発熱やだるさ、食欲不振などを伴う場合は医療機関を受診しましょう。

「なりやすさ」をチェック!あなたはこれができますか?

ぎっくり背中になりやすい人は要チェック。これができないと“ぎっくり”になりやすいかもしれませんよ。

足指じゃんけん「パー」

足の指を開いてじゃんけんのパーのようにしてみましょう。横に開ける人はリスクが低いですが開けない人は要注意!足の指から背中までは一連の系統だった筋肉のチーム「経筋(けいきん)」でつながっているという漢方の考え方があります。

足指が動かない、つまり筋肉の柔軟性に欠ける場合は、背面の筋肉である腰や背中の柔軟性にも課題があるということがわかります。足がよくつる人も同様に要注意ですね。

足指じゃんけん

カラダの中からぎっくり背中を整える

漢方では「肝は筋を主(つかさど)る」と言われており、筋肉や筋膜は漢方の五臓の考え方である「肝」と密接な関係にあります。肝は血液の貯蔵や血流の調節をするとともに自律神経の調整も行います。

「肝」は相関関係にある「脾(消化器系統)」にも少なからず影響を与えているため、「肝」の乱れが他の臓器への負担にならないようぎっくり背中をカラダの中から予防する意識が大切です。

<整えポイント>

① 姿勢改善・運動不足解消

「血(カラダを流れる血液・栄養)」を整えることで筋肉の柔軟性を保ちます。

筋肉の素となるタンパク質を摂取し、姿勢を適切に保つために体幹の筋肉を鍛えましょう。例えば椅子の背に寄りかからずに食事をしたりできるだけ階段を使ったりするなど、日常の動作で運動を意識しましょう。

② 栄養バランス・水分補給

「水(カラダを巡る血液以外の水分)」を整えることで血行も促され潤いを保ちます。

カラダのすみずみまで栄養や潤いが巡ることで冷えや代謝不良が解消されしなやかなカラダが保てます。利尿作用の強いコーヒー、アルコール、栄養ドリンクを多く摂取しがちな人は水分がカラダを巡る前に排泄されてしまうためこまめな水分補給をこころがけましょう。

③ 質の高い睡眠

「気(カラダを巡るエネルギー)」を整えることで疲労をためにくくします。

疲労やストレスが強いと自律神経が乱れ、筋肉もガチガチに緊張し硬くなります。自律神経のバランスを整えるために入浴や香りなどでリラックスできる時間を持ちましょう。寝汗をかく人は寝ている間に体温調節を司る自律神経を酷使していることになるため吸湿性のある寝間着を選ぶことや室温などの睡眠環境を整えることも大事です。

気血水について知りたい方は、漢方の基礎知識(気血水とは)を参考にしてください。

【動画で解説】ぎっくり背中対策のおすすめストレッチ&ツボ

ぎっくり背中は痛みが出ている炎症期はできるだけ安静にし、筋繊維の早期回復を誘いましょう。痛みが強い場合は炎症を広げないためにアイシングすることも有効です。

モノを拾う時などは背中の筋肉をあまり使わないように股関節や膝関節を曲げるように動かすなど動作の工夫が必要です。くしゃみや咳が響く場合は壁に手をつき、振動を逃がすことで少し緩和されます。痛みが引いてきた段階で様子を見ながらストレッチをはじめましょう。

寝たままできる簡単背中ストレッチ<2選>

【ア―ム・サークル】(両側各5回目安)

1. 両膝を軽く曲げて横向きに床に寝て、両腕を胸の前で伸ばし手のひらを合わせます。首がつらい場合は頭の下にタオルや枕を置くとよいでしょう。

2. 息を吸いながら、上になっている腕が床をなぞるように頭上の方向に持っていき、胸を開いて円を描くように後ろへと回します。

3.息を吐きながら、回した腕が脚方向を通過するように動かし開始位置まで戻します。

4.反対側も同様に行います。

※腕や肩が痛い場合は肘を曲げた状態で、動かせる範囲で行いましょう。

※無理がなければ動かしている手の方向に目線を持っていくと首周りもほぐれます。

【アーム・アンフォールディング】(両側各5回目安)

1.両膝を軽く曲げて横向きに床に寝て、両腕を胸の前で伸ばし手のひらを合わせます。首がつらい場合は頭の下にタオルや枕を置くとよいでしょう。

2.息を吸いながら、上に重ねた手で下の腕をなぞるように手首から鎖骨へ向かって動かし、胸を開いて両腕を左右に開くようなイメージで後方まで長く伸ばします。目線は動いている手を追います。

3.息を吐きながら、後方に伸ばした腕を逆再生するように腕の付け根から鎖骨を通って下の腕をなぞりながら開始位置に戻り、さらに通り越すところまで動かします。

4.反対側も同様に行います。

※腕や肩が痛い場合は動かしている腕は曲げたままで動かせる範囲で行いましょう。

※首がつらい場合は目線を動かさないで腕の動きのみにしましょう。

※できれば骨盤から下は動かさないで行うと効果的です。

痛い時・予防に効果的。おすすめのツボ<2選>

背中のツボは自分では押せませんが、経筋としてつながっている下腿(膝下)のツボを押すことで背中や腰もほぐれてきます。

<ツボの押し方>

① ツボに親指を当て指の力ではなく体重をかけるように3~5㎏くらいの力で圧をかけます。

② 押す時に息を吐き、はなす時に息を吸いましょう。(3~5秒)

※爪を立てないように、呼吸を止めないで行いましょう。

※押した親指をゆるめる時にツボから指を完全にはなさないで触れたままにしておくとツボを見失わないで済みます。

【承山(しょうざん)】

アキレス腱をかかとから上に向かってたどり、ふくらはぎの筋肉との境目にあるツボです。

背中や腰の張りや重だるさに効き、こむら返りなどにも効果があります。

【太渓(たいけい)】

内くるぶしとアキレス腱の間の凹んでいるところにあるツボです。

血行促進作用があり、冷えやむくみの予防にも効果があります。お腹の冷えにも効くため便秘の予防にも。

急な痛みの症状を和らげる、おすすめ漢方処方

芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)

鎮痛作用と筋肉弛緩作用があるため筋肉のけいれんやこむら返りに効く処方です。急に強い痛みが出る、運動中や就寝中に足がつる、たまに運動するとこむら返りや腰痛を起こすなどの際におすすめの漢方です。

独活葛根湯(どっかつかっこんとう)

体力が中等度またはやや虚弱な方によく知られている「葛根湯」をベースに2つの生薬をプラスしたものです。

「気」や「血」が補われることでカラダの血行がよくなり、寝違えの症状を和らげてくれます。

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那須久美子

JACDS認定漢方アドバイザー、ピラティス・ヨガセラピスト、ACC認定アスリートキャリアコーディネーター、介護予防運動指導員


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