目次
- 骨粗鬆症の症状と予防
- あなたは大丈夫?かんたん骨粗鬆症予備軍チェック
- 骨粗鬆症による骨折リスクを認識する
- カルシウムだけでは不十分?骨のための栄養とは
- 効果的に骨をつくる「骨活」食事法
- ビタミンDを太陽からもらう「骨活」日光浴
- 骨密度のために重力と体重を利用するかんたん「骨活」トレーニング
- 漢方で足腰をいたわりイキイキと
骨粗鬆症と聞いて高齢者の病気だと思っていませんか?自分にはまだ関係のない先の話ではなく、若くても栄養不足や運動不足、ステロイドの薬物治療などで骨粗鬆症を発症するリスクがあります。骨粗鬆症とは骨量(骨密度)が少なく、また骨質が低下することで骨がもろくなり骨折が起きやすい状態か、もしくは既に骨折が起きている疾患のことです。特に更年期前後の女性は、女性ホルモンが乱れやすくなり、閉経後に急激な低下をきたすため、骨密度が低下し骨粗鬆症の発症リスクが高まります。骨の健康は日常の行動すべてに関わってくるため、骨粗鬆症の予防対策のために効果的な食事方法や、効率のよい運動を取り入れる「骨活」はどの年齢の方においても大事なアクションです。
骨粗鬆症の症状と予防
骨粗鬆症は骨内部の密度が低下し骨の強度が低下することで骨折リスクが高まる状態か、もしくは既に骨折が起きている疾患の病気です。骨粗鬆症は加齢や閉経に加え、食事からの栄養摂取不足や運動不足などが原因で起こります。痛みなどの自覚症状がない場合もあり、転倒や衝撃によって骨折してから気付くということも起こります。そうならないためにも自分の骨密度を認識しておくことがリスク回避の1つになります。特に女性は更年期を機に女性ホルモンが減少することで骨密度が低下するリスクを抱えています。骨は、古い骨を壊して全身にカルシウムを送り出し、その場所に新しい骨を形成する新陳代謝 を繰り返していますが、女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、骨の代謝に際して新しい骨の形成を促す作用があります。そのため閉経期を迎えエストロゲンの分泌が減少すると、古い骨の破壊に新しい骨の形成が追い付かなくなり骨密度が低下してしまいます。骨粗鬆症は食事や運動などの生活習慣の見直しにより予防することができるため、今から対策をしておきましょう。
あなたは大丈夫?かんたん骨粗鬆症予備軍チェック
あてはまるものにチェックを入れてみましょう!
□過度なダイエットをしている
□食べ物の好き嫌いが多い
□乳製品、魚、大豆製品をあまり食べない
□運動不足である
□あまり日光に当たることがない
□喫煙している
□閉経している
□最近背中が丸くなり、背が縮んだ気がする
□ちょっとしたことで骨折した
※チェックが複数入った人は注意が必要です。今から骨活をはじめましょう。
骨粗鬆症による骨折リスクを認識する
骨粗鬆症によって骨の強度が低下すると荷物を持ち上げる、手をつくなど日常の何気ない動作で骨折が起きやすくなります。また自分の体重に背骨が耐えきれなくなり、気付かないうちに背骨が圧迫され骨折していることがあります。背骨の骨折は単なる腰痛だと軽く考えてしまうことで別の個所の骨折を引き起こす骨折ドミノのリスクも考えられます。腰や背中の痛み、身長が低くなってきたなどの変化がある場合はまず病院を受診してみましょう。骨折が起きやすい部位は背骨(椎骨)、腕の付け根(二の腕の骨)、足の付け根(大腿骨の骨盤に隣接している部分)、手首(橈骨)などです。40歳、45歳、50歳、55歳、60歳、65歳、70歳の女性を対象とした国が行う骨粗鬆症検診というものがあります。お住まいの地域の広報誌やホームページ、保健センターに問い合わせするなどして確認できます。特に閉経後の女性は、可能であれば1年に1度検診を受けるとよいとされています。検診で骨密度が減っていると判定された人は、指示された時期に医療機関で診断を受け、治療の時期を逃さないようにしましょう。
カルシウムだけでは不十分?骨のための栄養とは
日本人のカルシウム摂取量は、全年代において日常的に不足していると言われています。年代別のカルシウム摂取量では、男女ともに学校給食で牛乳を飲むことができる7~14歳がピークで、この時期を過ぎるとカルシウムの摂取量も減少傾向に。どの年代も1日あたりの目標摂取量に届いていないのが現状です。それに加えて現代人は紫外線予防意識の高まりからビタミンDが不足しているとも言われています。ビタミンDは皮膚が日光に当たることで生成されますが、UVカット効果の高いアイテムを使用した箇所ではビタミンD生成の機会を得られていない可能性があります。ビタミンDはカルシウムの吸収を促す役割があり、カルシウムとビタミンD双方の欠乏から骨がもろく弱くなり骨粗鬆症の危険性が高まります。 食事で摂ったカルシウムやミネラルが腸で吸収され、骨に定着することで骨密度が上がります。カルシウムの吸収にはビタミンDが必要で、さらに定着のためにビタミンKも必要になります。ビタミンDは脂溶性のため脂分に溶けることで効率が上がるため脂質も必要になってきます。骨は新陳代謝を繰り返しているため、日々さまざまな栄養を補給しないといけないことがわかります。
効果的に骨をつくる「骨活」食事法
加齢によって骨の強度が低下する理由は、女性ホルモンの分泌量減少に加えて腸でのカルシウムの吸収率が低下すること、カルシウムの吸収を助けるビタミンDをつくる働きが弱まることなどがあげられます。つまり、年齢とともにより効率を重視した食事を選択する必要性があるのです。知っていると得する「骨活」食事法をご紹介します。
①カルシウムは複数の食材を毎食ちりばめて
牛乳や乳製品、小魚にカルシウムが含まれていることは有名で、積極的に摂取している人も多いと思います。その他にカルシウムは大豆製品や野菜にも含まれているため、できるだけ多くの食材から毎食選んで食べることを心がけましょう。天日干しをすることで栄養価が上がる切干大根についてはカルシウムが生の大根の20倍近くにもアップするため効率よく摂取することができます。
★カルシウムの多い食材:
牛乳、乳製品、小魚、大豆製品(豆腐、豆乳、枝豆、納豆)、干しエビ、小松菜、春菊、モロヘイヤ、チンゲン菜、シソ、ケール、切干大根
②カルシウムの吸収にかかせないビタミンDは太陽を味方につけて
ビタミンDを多く含む食材は限られています。主に魚類に多く含まれているため魚食がとても有効です。しかし魚の好き嫌いがある場合におすすめなのはきのこ類です。ビタミンDはきのこ類に多く含まれていますが、きのこを天日干しにする(紫外線に当てる)ことで栄養効果が増加することがわかっています。干し椎茸などの乾物であってもさらに傘の裏側のひだ部分に日光を当てることでビタミンDが増えます。調理前に1~2時間日光浴させることで栄養がアップします。ビタミンDとビタミンKは脂溶性ビタミンで熱に強い性質を持つため、油で調理することでさらに吸収率が上がります。油で調理しなくても仕上げにオイルをプラスしたり、揚げ物と一緒に食べるなどの組み合わせでも問題ありません。
★ビタミンDの多い食材:
きくらげ、カツオ、イワシ、ニシン、サケ、マス、マグロ、干し椎茸、エリンギ、しめじ、舞茸、卵
③カルシウムの定着にはビタミンK
ビタミンKは血液を凝固させる働きを持つ脂溶性ビタミンです。緑黄色野菜、海藻類、緑茶、植物油などに含まれ、カルシウムの骨への定着を促して流出を防ぎます。ビタミンDと同様に脂溶性で熱に強い性質を持つので、炒めものなどの油を使った調理法がおすすめです。
★ビタミンKの多い食材:
納豆、ブロッコリー、モロヘイヤ、小松菜、ほうれん草、ワカメ、海苔
※血栓を防ぐためにワルファリン(血液を固めないようにする薬)を服用している場合、血中ビタミンKの値が高くなると薬の効き目が弱まることがあります。服用している方は医師に相談が必要です。
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ビタミンDを太陽からもらう「骨活」日光浴
ビタミンDは食事から補うことができますが、80%は日光に当たることでカラダの中で生成することが可能です。そのため過度な紫外線予防対策は、ビタミンDの生成を妨げて骨をもろくしてしまう可能性があるため、毎日の適度な日光浴を心がけましょう。特に女性の美白意識の高まりにより、若い世代の骨粗鬆症予備軍が増えています。シミ・そばかすやシワが気になる場合は手のひらだけの日光浴がおすすめです。手のひらはカラダの他の部分に比べ、日焼けの原因となるメラニン色素が少ないため1日数回程度、手のひら日光浴ができるといいでしょう。日光浴は足し算のようにためることができるため、信号待ちの1分間、洗濯物を干した後の数分間、などコツコツ手のひら日光浴でビタミンD貯蓄を続けられるとベストです。
骨密度のために重力と体重を利用するかんたん「骨活」トレーニング
いくつになっても、骨は運動によって強くすることができます。ポイントは骨に刺激を与えるような運動。重力と自分の体重を効果的に利用することや、骨密度を高めるのに必要な衝撃を与える運動がおすすめです。ジョギングやウォーキング、階段の上り下りの他、かかと落としやジャンプといった運動や片足立ちも有効です。縄を使わないエアー縄跳びや動画を見ながらのダンスなど、楽しみながら骨への刺激を与えましょう。
★かかと落とし(1日50回が目安)
かかとの骨に刺激を与えて骨密度を強化するエクササイズです。かかとを落とす際の衝撃には、骨を新しく作りやすくする効果があると考えられています。かかと落としはカラダ全体へ刺激を与え、全身の骨密度アップが期待できます。
<やり方>
①背筋を伸ばして、足を肩幅に開いて立ちます。
②両足のかかとを上げてつま先立ちになります。(2〜3cmから始め少しずつ高く持ち上げられるとよいでしょう)
③膝を曲げずに両足の力を抜いてかかとを床にストンと落とします。
※椅子や壁につかまりながら行うと安定します。転倒の恐れがある方は座って膝下のみ行いましょう。
※重度の骨粗鬆症で治療中の方、腰痛や膝痛のある方は主治医と相談の上、椅子に座って膝下だけ行う方法も取り入れるなど注意して行いましょう。
★開眼片足立ち(1回1分×2<左右>が目安)※何かにつかまって行います
椅子の背などにつかまり、片足を床から持ち上げて片方の足だけで体重を支えるエクササイズです。バランス感覚を養う目的ではないので何かにつかまって行い、転倒しないようにしましょう。片足立ち1分間(×2<左右>)の負荷は、ウォーキングを約53分行ったものとほぼ同じというデータもあります。(出典『科学的エビデンスにもとづく100歳まで健康に生きるための25のメソッド』 東京大学出版会)骨に対しては体重を片足にかけることで負荷になりますが太ももや骨盤周囲の筋力トレーニングにもつながり健康維持増進に効果的な運動といえます。
<やり方>
①椅子の背を持つか壁などに手をつき片足を床から持ち上げます。立っている足から頭までを一直線になるようにイメージすると体幹の筋肉も意識できます。
②持ち上げている足が軸足につかないように注意し、そのまま1分間キープします。
③軸足を変えて同じように繰り返します。
※股関節や膝などに痛みがでる場合は時間を短くするか控えましょう。
※より強度にするには何もつかまらない状態で行うと難易度が上がります。転倒に注意して行いましょう。
漢方で足腰をいたわりイキイキと
漢方では老化の原因をそれぞれ関連性のある五臓(心、肝、脾、肺、腎)の機能低下と考えます。五臓のなかでもとくに、「腎(泌尿・生殖・発育・老化に関わる臓器)」の機能低下が老化現象に大きく関わっていると言われています。『腎は骨を主り、髄を生ず』と言われ、骨の健康にも関与します。腎のエネルギーを補うことで足腰の衰えや冷え、痛み、しびれ、むくみなどの緩和に効果が期待できます。
■八味地黄丸(はちみじおうがん)
漢方で、骨の健康は「腎」と関係があるとされており、腎の機能を元気にする『八味地黄丸』は、足腰が重だるく、四肢が冷えやすい方の腰痛や下肢痛などに効果があります。
■牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
『牛車腎気丸』は、八味地黄丸に、血流と水はけが良くなる生薬を加えた漢方薬です。八味地黄丸に比べて、むくみや痛みをとる作用が強いお薬になります。
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那須久美子
ヘルスケアデザイナー・漢方アドバイザー・ピラティストレーナー・ヨガセラピスト・バレエティーチャー・アスリートキャリアコーディネーター・介護予防運動指導員