脚がむずむずして眠れない!むずむず脚(レストレスレッグス)症候群の症状と対策とは

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脚がむずむずする、かきむしりたくなる、虫が這っているような嫌な感じがする、など脚の深部から感じる何とも言えない不快な症状はありませんか?夕方から夜にかけてあらわれたり、強くなったりすることで睡眠障害になることも…。それはもしかしたら、むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)かもしれません。むずむず脚症候群の原因はまだ明らかにはなっていませんが、有力な説として脳内の神経伝達物質の1つであるドーパミン(ドパミン)の機能障害や鉄分の不足が関与していると言われています。この記事ではむずむず脚症候群についてと、症状の緩和につながる日常生活の改善ポイントをお伝えします。

むずむず脚症候群とは?

むずむず脚症候群は“レストレスレッグス症候群(restless legs syndrome:RLS)” “下肢静止不能症候群”とも呼ばれ、主に下肢に不快な症状を感じる病気です。夜眠ろうとベッドに入った時や、電車内あるいは映画館などでじっと座っている時に、脚の内側から不快感が起こり、脚を動かすと和らぐ…といった特徴があります。感じ方としては、脚がむずむずする、ほてる、かきむしりたくなる、脚を動かしたくて我慢できなくなる、虫が這っているような感じがするという、いずれも生活の質を低下させるような症状です。『レストレス(restless)』とは「そわそわした」、「絶え間なく動く」という意味があります。むずむず脚症候群の患者は人口の2%~4%で、日本国内では200万~400万人にあたります。このうち治療が必要なのは70万人ほどと考えられています。さらに女性が男性の1.5倍と言われ、年齢が上がるとむずむず脚症候群にかかる率が高くなる、という欧米での調査結果があります。*1

むずむず脚症候群の原因はまだ明らかにはなっていませんが、脳内の神経伝達物質の1つであるドーパミンの機能障害や鉄分の不足が関与しているようです。ドーパミンは、さまざまな運動機能を潤滑にする働きをします。また鉄分はドーパミンを作る過程で欠かすことのできない物質です。その鉄分の不足によりドーパミンがうまく合成されないことで症状を引き起こすのではないか、と考えられているのです。またビタミンDやマグネシウム、葉酸不足も関係していると言われ、妊娠をきっかけに症状があらわれるとも考えられています。むずむず脚症候群は、原因がはっきりわからないもの(一次性)と、他の病気や薬などが原因となって起こるもの(二次性)に分けられます。二次性の原因としては、慢性腎不全(特に透析中)、鉄欠乏性貧血、妊娠、糖尿病、パーキンソン病、関節リウマチなどが挙げられます。
*1 久米 明人ら. 日本人特発性レストレスレッグス症候群の臨床的特徴. 臨床神経 2010;50:385-392.

どんな症状が出るの?生活に及ぼす影響は?

むずむず脚症候群の症状には、4つの特徴的な自覚症状があり、これらにあてはまる場合は、むずむず脚症候群の可能性があります。

1.脚の不快な感覚のため、脚を動かしたくてたまらなくなる
2.安静にして、横になったり座ったりしていると症状があらわれる、または強くなる
3.脚を動かすと、不快な感覚が軽くなる
4.夕方から夜にかけて症状が強くなる

むずむず脚症候群の特徴は、夕方から夜の落ち着いている時に症状が強くあらわれることです。その結果なかなか寝付けない、一旦眠っても脚の不快感で目が覚めてしまう、ということが多く睡眠の質が落ちるため、日中のパフォーマンス低下などに影響してしまいます。

むずむず脚症候群の診断には何が必要?

診断は、患者への問診により4つの特徴的な自覚症状や他の症状の有無を確認します。間違われやすい他の病気と区別するために、補助的に検査をする場合もあります。むずむず脚症候群は、医師が患者の症状を聴き取って診断する病気です。そのため、症状をできるだけ正確に伝える必要があります。ご自身が感じている症状を医師に正しく伝えられるように、必要事項をメモしていくとよいでしょう。

<5つの必須診断基準>※
1.脚を動かしたいという強い欲求が常にではないものの通常不快な下肢の異常感覚に伴って、あるいは異常感覚が原因と感じて起こる
2.その強い欲求および異常感覚が、安静にして、静かに横になったり座ったりしている状態で始まる、あるいは増悪する
3.その強い欲求および異常感覚は運動によって改善する
4.安静時におけるその強い欲求および異常感覚が日中より夕方・夜間に増悪する
5.これらの特徴を持つ症状が、他の疾患・習慣的行動で説明できない(筋肉痛、静脈うっ血、下肢浮腫、関節炎、こむらがえり、特定の体位における不快感、フットタッピングなど 類似疾患を鑑別除外)
※IRLSSG(国際レストレスレッグス症候群研究グループ)診断基準2014年改訂版

何科を受診すればよい?間違われやすい他の病気とは

症状によっては薬による治療の必要性や、他の病気の可能性も考えられます。そのためむずむず脚症候群を疑う場合は脳や神経に関する病気を専門としている脳神経内科への受診がおすすめです。不眠やストレスとの関係から考えると心療内科や精神科も適切でしょう。全身状態から総合的に診てもらうとしたら内科がよいでしょう。さらにむずむず脚症候群と間違われやすい疾患としては以下が挙げられます。

・不眠症:夜寝付けない
良質な夜間の睡眠を十分に取ることができず、仕事や学業など日中に機能障害が生じ生活に支障が出るような状態を指します。寝付きが悪い(入眠困難)、夜間に目覚めてその後眠れない(睡眠維持困難)、朝早くに目覚めてしまう(早朝覚醒)などのタイプがあります。

・坐骨神経痛:脚の不快感や痛み
坐骨神経に沿ってお尻から脚の後面や外側にかけて起こる痛みの総称です。坐骨神経は腰の辺りから足の方向に伸びる神経で、何らかの原因で刺激されると痛みやしびれが生じます。坐骨神経痛を引き起こす病気としては、腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)、腫瘍(しゅよう)などが原因の可能性もあります。

・うつ病:気持ちの落ち込み
うつ病とは、日常生活に強い影響が出るほどの気分の落ち込みが続いたり、何事にも意欲や喜びを持ったりすることができなくなる病気です。うつ病の原因は遺伝、ストレスのかかる出来事、薬の副作用、ホルモン分泌異常などさまざまなものが挙げられます。

・皮膚疾患:皮膚の不快な感覚
かゆみを伴う代表的な皮膚疾患には、痒疹、接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、皮膚搔痒症などがあります。皮膚の病気で慢性的に強い痒みがある場合、繰り返してかくことで皮膚バリア機能が破綻し、皮膚の炎症が悪化して、かゆみがさらに増すこともあります。

自分で取り組める対策とは

むずむず脚症候群の原因に関わるひとつの要素として鉄分の欠乏が考えられます。症状が軽い場合は、食事による鉄分の補給やカフェイン・ニコチン・アルコールを控えるなど、日常生活を改善することで症状が緩和する場合もあります。

日常で取り入れられる対策

1.鉄分の補給

鉄欠乏が症状を引き起こす原因のひとつと考えられているため、鉄分豊富なレバーやほうれん草、あさり、いわしなどを積極的に摂取しましょう。さらに良質なたんぱく質やビタミンCは、鉄分の吸収率を促進させる働きがあるため、バランスの良い食事を心がけるとよいでしょう。サプリメントで鉄分を補給することも有効です。しかしせっかく鉄分を摂取しても吸収を阻害してしまう落とし穴があります。食直後にコーヒー、紅茶、緑茶を飲むと、これらに含まれるタンニンが鉄分と結びついて鉄分の吸収を邪魔してしまいます。食後30分くらい空けてから飲むか、ほうじ茶や麦茶などタンニンの含まれない飲み物がおすすめです。

2.ビタミンDやマグネシウム、葉酸の補給

ビタミンDやマグネシウム、葉酸欠乏によって引き起こされる可能性もあるため、ビタミンDやマグネシウム、葉酸摂取を心がけましょう。ビタミンDは青魚、キクラゲ、干し椎茸などに多く含まれています。マグネシウムはほうれん草、牡蠣、大豆、米、みそ、ひじき、まぐろ、海苔など。葉酸は牛レバー、豚レバー、卵黄、大豆、納豆、ほうれん草、ブロッコリーなどに多く含まれています。

3.カフェインやアルコール、喫煙を避ける

コーヒー・紅茶・緑茶などに含まれるカフェインは鉄分の吸収を阻害することに加え、眠りを浅くすることがあるので、できるだけ摂取を控えるようにしましょう。アルコールや過度の喫煙も症状を悪化させることが知られているため注意が必要です。

4.ストレッチやマッサージを習慣にする

規則正しい生活を心がけ、ウォーキングなどの軽い運動を習慣化するとよいでしょう。また、就寝前にストレッチやマッサージなどで筋肉をほぐすことも睡眠の質を高めるために効果的です。就寝前の激しすぎる運動は自律神経を乱し、症状を誘発する原因になることがあるため避けましょう。

5.睡眠環境を見直す

睡眠は自律神経と深く関わるため、自律神経が乱れないように早寝早起きを習慣づけましょう。寝汗をかくような寝室環境は自律神経の体温調節機能を酷使するため寝室の室温設定は一定に保つようにすると安心です。眠る時はできるだけ暗い状態に整え、ブルーライトの影響を避けるため、寝る前のスマホなどの操作は控えましょう。

ツボ押しでセルフケア!

むずむず脚症候群の症状が出ている時にマッサージをして症状が緩和した人なら、その効果をより上げるためにツボを押すと効果的です。血流促進や睡眠障害に効くツボをご紹介します。ツボは呼吸を止めないように吐く息と共に親指で指圧します。1回ずつ指を肌から離さずに同じツボの位置を指圧するとよいでしょう。ツボは痛気持ちいいくらいの力加減で押し、『指を骨の裏側に入れ込む』ように圧することもポイントです。ツボ押しは停滞している神経の巡りを促します。神経は骨に守られた場所に密集しているため、骨の裏を狙うイメージで押してみて刺激があるところを探しましょう。

<三陰交(さんいんこう)>

血液の循環を促し、必要な栄養をカラダに行き渡らせるサポートをします。このツボ位置を靴下やレッグウォーマーで温めることも効果的です。

場所: 足首の内側で内くるぶしの骨から指の幅4本分上に位置
やり方: ①ツボの場所に手の親指をあて、ゆっくりと息を吐きながら痛気持ち良い力加減で指圧します。
②息を吸いながら力を緩めて、次の吐く息で同じ場所を指圧します。
③反対の脚も同様に行います。 三陰交(さんいんこう)のツボ押しのやり方
回数: 両脚各3回程度

※三陰交は陣痛を促進するツボとしても働くため妊娠中の方は避けましょう。

<合谷(ごうこく)>

手軽に押せる手の甲にあり、眼精疲労や頭痛そして痛み全般に効果的とされている、まさに万能のツボです。

場所: 足手の甲側にあり、人差し指の骨と親指の骨を手首方向になぞって合流した地点を探します。その合流地点からやや人差し指の方へ上がったところにあります。
やり方: ①甲側のツボの場所に反対の手の親指をあて、他の4本の指は押される側の手の親指を根元から軽く握るように支えます。
②ゆっくりと息を吐きながら痛気持ち良い力加減で指圧し、吸う息で力を緩めます。
③反対の手も同様に行います。 合谷(ごうこく)のツボ押しのやり方
回数: 両手各5回程度

<失眠(しつみん)>

文字通り不眠のツボで、血液の循環とカラダを満たしている水分の循環を促進することで自律神経を整え眠りに誘います。強く押しすぎると逆に眠れなくなるため注意が必要です。

場所: 足の裏側で、かかとの中央にある少しくぼんだ場所です。
やり方: ①椅子に座り、片足を反対の膝の上に乗せると足裏が自分の方に向きやすくなります。
②ゆっくりと息を吐きながら、手の親指でかかとの真ん中にあるツボを押します。かかとは硬いため両方の親指を重ねて押すと力が入りやすいかもしれません。
③反対の足も同様に行います。 失眠(しつみん)のツボ押しのやり方
回数: 両足各3~5回程度

むずむず脚症候群の漢方的アプローチ

漢方に興味のある方なら『陰陽(いんよう)』という言葉を聞いたことがあるかもしれません。全てのものには「陰」と「陽」があると考え、人のカラダの状態を把握することや治療にも利用されています。例えば人のカラダは、背中が「陽」でお腹は「陰」と考えます。背中は太陽の光が当たるため「陽」、お腹は影になるため「陰」というイメージ。このように、「陰と陽」がうまくバランスを保って共存することにより健康を維持していると考えるため、陰(潤い・静)が足りないと陽(熱性・動)が亢進(こうしん)する(=強まる)という表裏一体の関係でもあります。むずむず脚症候群を漢方では「陰虚(いんきょ)」、または「気血両虚(きけつりょうきょ)」の考え方が深く関与していると捉えています。「陰虚」とは『血(けつ=血液などの栄養成分)』や『津液(しんえき=カラダを流れる血液以外の水分)』などの陰液(いんえき)が不足してカラダに潤いがない状態です。カラダを潤して熱をさます働きが弱っているため、のぼせや口渇、皮膚への乾燥感があらわれます。相対的に陽(熱性・動)が優勢になっている状態であると言えます。「気血両虚」とは『気(カラダを巡るエネルギー)』と『血(カラダに流れる栄養成分)』が共に足りていないとするものです。むずむず脚症候群には陰液(血や津液)を積極的に補うものや気血を補う処方でカラダの潤いと巡りを中から整えるものがおすすめです。

あわせて読みたい>>漢方の基礎知識4「陰陽とは」

■睡眠障害でお困りの方に 加味帰脾湯(かみきひとう)

人は夜に「気」から生じる熱を鎮めることで眠ります。この時に「血」が足りていないと、「気」のエネルギーを十分に鎮められず睡眠の質が低下します。消化器のはたらきを助けながら「血」を補い、「気」を巡らせることで精神を安定させる作用があるため、むずむず脚症候群で不眠症や精神不安、神経症のある方におすすめです。

■かゆみやほてりがつらい方に 六味丸(ろくみがん)

加齢に伴い「気」「血」を生み出しにくくなる「腎虚(成長・生殖などに関わる泌尿器・生殖器・腎臓などの機能が低下している)」の状態を改善する処方です。カラダの熱や炎症をとり、陽の亢進を鎮める働きがあり陰虚にも対応します。カラダの内側から潤いとエネルギーを補いのぼせやほてりなどの熱感を抑え、かゆみやしびれを和らげます。

■痛みなどの不快症状がある方に 疎経活血湯(そけいかっけつとう)

経絡(気血の運行ルート)の滞りがあり痛みやしびれなどの不快な症状のある方に、気血の流れを促し回復させる処方です。「気」の巡りを良くする作用や「血」の巡りを良くする作用、「気」が動かなくなるために生じた熱を冷ます作用があり、神経痛をじっくりと治していきます。

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那須久美子(https://www.kandworks.com/about
ヘルスケアデザイナー・漢方アドバイザー・ピラティストレーナー・ヨガセラピスト・バレエティーチャー・アスリートキャリアコーディネーター・介護予防運動指導員

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