痩せすぎ大人の危険性!かんたんトレーニングで美しく筋肉をつける

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日本は先進国の中で痩せた女性の割合が最も高いと言われています(BMI 18.5未満の成人女性の割合の国際比較2016年*)。肥満が健康にとってよくないことは知られていますが、実は痩せすぎも大きなリスクになりえます。痩せすぎることによる栄養不足は女性の美容を損ない健康を害するだけでなく、いつか子供を産みたいと思っている女性と、その将来にも大きな影響を与えてしまいます。社会的には食べられる食品を捨てる「フードロス」が問題となっている日本で静かに広がっている低栄養問題。ダイエットを気にする若い女性だけでなく、中高年女性が直面する『大人の痩せすぎ』リスクとその対策についてご紹介します。

*参考:厚生労働省:活力ある持続可能な社会の実現を目指す観点から、優先して取り組むべき栄養課題について

痩せすぎの定義とは?

カラダの肥満度を表す指数として、ボディマス指数(Body Mass Index)=BMIと呼ばれるものがあり、体格を示す指数として国際的に用いられています。日本でも肥満度の判断基準や特定健診・特定保健指導の基準として採用されています。一般的には肥満状態、つまりBMIの数値が高い方に注目が集まりがちですが、近年ではBMIの数値が低い痩せすぎの健康リスクについても問題視されています。BMIは身長と体重の数値を下記の式に当てはめて計算することができます。

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

例えば身長158cm、体重55kgの方であれば<55÷1.58÷1.58=22>でBMIは22となります。

肥満度分類(日本肥満学会)
BMI(kg/m2) 判定
18.5 未満 低体重
18.5 以上 25.0 未満 普通体重
25.0 以上 30.0 未満 肥満(1度)
30.0 以上 35.0 未満 肥満(2度)
35.0 以上 40.0 未満 肥満(3度)
40.0 以上 肥満(4度)

※肥満(BMI 25.0以上)は、医学的に減量を要する状態とは限りません。

※標準体重(理想体重)は最も疾病の少ないBMI 22.0を基準としています。

上の表の通り、BMI 22.0は最も疾病が少ないとされるため標準体重として日本肥満学会の基準の数値になっています。BMI 18.5未満は痩せ(低体重)という基準に当てはまります。BMIは身長と体重で導き出した数字のため、筋肉量や体脂肪の量が考慮されていません。必ずしもBMIだけで痩せすぎと判断できるわけではありませんが、自分が痩せすぎていないかどうかの参考になるでしょう。

痩せすぎると困ること

女性が痩せたがる背景には、適切な体形についての認識不足や「痩せているほうが良い」という価値観の普及、誤った美意識により氾濫した様々なダイエット方法などが影響していると考えられます。そして不適切なダイエットなどによる偏った食生活は、筋肉量の低下や貧血などの栄養不良によるリスクを高めてしまいます。また年齢を重ねるにつれ、食欲が落ちていくことや食の好みが変化することに加え、食べたものを消化吸収する力自体が落ちていきます。そのため免疫機能の低下、貧血や骨粗鬆症などの症状、認知機能の低下などが心配されます。カラダの栄養不足は臓器の機能低下だけでなく、肌荒れやシワ、髪や爪のエイジングサインの増加など、美しさが損なわれたり見た目年齢が上がって見えたりすることにつながります。「キレイになりたい」と痩せる努力をした結果、老化を早めてしまっては元も子もありません。

大人は「体重」をむやみに減らさないこと!

カラダを構成する脂肪と筋肉の組織を比較すると、その密度には違いがあります。脂肪組織と筋肉組織の1cm3(立法センチメートル)当たりの重さを比較すると以下のようになります。

脂肪組織の密度は 0.9007g / cm3
筋肉組織の密度は 1.100g / cm3
ちなみに、水は 1.000g / cm3

つまり同じ体積であれば、筋肉の方が重く脂肪は軽いため、『筋肉は小さいのに重く、脂肪は大きいのに軽い』と言えるのです。痩せすぎ、つまり体重が軽いということは筋肉量が不足していると考えられます。カラダを構成する主な筋肉としては、カラダを支えたり動かしたりする「骨格筋」、心臓を動かず「心筋」、血管壁や内臓壁などを構成する「平滑筋」があります。単純に筋肉量が多いと、それだけ代謝や血行が良くなり若々しくいられます。例えば心臓といった臓器自体も筋肉(心筋)で構成され、その作用で全身に血液を送り出しますが、血液を心臓に戻す際には骨格筋がポンプの働きをして血液の循環を促します。生きるためには一定の血液循環が必要であるため、痩せすぎて骨格筋の少ないカラダの場合、骨格筋のポンプの不十分な働きを補うため心臓にかなりの負担をかけます。体重を減らすと、同時に骨格筋の量も減ってしまうため、大人は骨格筋の量を維持または増進させることが重要になるのです。骨格筋の量を増やすことで基礎体温並びに基礎代謝が上がり、免疫力が向上すると言われています。筋肉には他にも体熱の産生とカラダの水分を蓄える保水タンクなどの機能があるため、痩せることによって骨格筋の量が減少することは健康なカラダへの大きなダメージにつながります。加齢に伴って意識すべきは「体重」を気にするのではなく『筋肉量を減らさない、特に骨格筋』ということに尽きます。

筋肉量をアップさせるには

大人が健康的に筋肉量を増やして体重を適切に維持するにはどのようなことに気を付ければ良いのでしょうか。まずは①筋肉のもととなるタンパク質をしっかり食べること、②食べたタンパク質がカラダを巡り吸収させるための消化器系の働きを整えること、③タンパク質が筋肉として定着するように運動をすること、の3つがとても大切です。3つのポイントを順に解説していきましょう。

1.<栄養補給編>効果的に身につくタンパク質を摂取する

日本人の食事摂取基準によると一日に必要なタンパク質は、推奨量としては18~64歳の男性は一日65g、18歳以上の女性は一日50gとなっています。活動量によっても異なりますが、簡単に考える方法だと男性でも女性でも体重10kgにつき10gほど(体重50kgの場合は約50g)と言われています。さらに『中高年は良質のタンパク質を摂取しましょう』と言われますが、良質のタンパク質とはどのようなものでしょうか。タンパク質を構成するアミノ酸のうち、体内で充分な量を合成できず栄養分として食品から摂取しなければならないアミノ酸のこと必須アミノ酸と言います。必須アミノ酸がバランスよく含まれているものが『良質のタンパク質を含む食品』というわけです。タンパク質は、肉類・魚介類・卵類・乳類など動物性の食品のほか、豆類・穀類など植物性食品にも多く含まれています。一般的に、動物性食品に含まれるタンパク質の方が、必須アミノ酸のバランスが良いものが多いですが、特定の食品に偏らないようバランスよく食べるようにしましょう。

参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」2020年版

<良質なタンパク質を摂取するポイント>

・一度にたくさん食べられない場合は食事回数を増やす
間食にチーズや魚肉ソーセージなどを食べたり、飲み物を牛乳や豆乳に置き換えたりすることでこまめにタンパク質を補給するとよいでしょう。

・タンパク質が多く含まれる植物性食材とは
必須アミノ酸のバランスがよくタンパク質が多い野菜は枝豆、ブロッコリーなど。穀物ではキヌアにタンパク質が多く含まれるため白米に混ぜて炊くのが簡単でおすすめです。

・痩せていても注意!血糖値を考え健康的な食べ方を
筋肉は人体の中でブドウ糖を貯蔵する最大の臓器ですが、痩せて筋肉量が少ない女性は食後に十分な量のブドウ糖を筋肉に取り込めず、高血糖を生じる可能性があります。食物繊維を豊富に含む野菜などを先に食べる、ベジファースト(ベジタブル・ファースト)を意識することで血糖値の急激な上昇を抑えることができます。

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2.<消化吸収・代謝編>カラダがタンパク質を受け入れる体制を整える

食事はよく噛むことで、食べ物の表面積が増え消化酵素が速やかにまんべんなく作用するため必要な栄養が体内に取り込まれやすくなります。また咀嚼することで、口の中から大量の感覚情報が脳に送られます。それによって自律神経系が刺激され、消化管の運動が活発になり腸に吸収されやすくなるのです。また、噛むことで出る唾液には殺菌・抗菌作用や抗酸化作用があり、よく噛んでしっかり唾液を出すことはアンチエイジングにもつながります。唾液が少ないと、口の中に雑菌が増え、口内環境が悪化する原因になるためです。しかし咀嚼回数を増やそうと『ひと口何回噛む』と無理にルールを作るとストレスになる方もいるかもしれません。そのような場合は、料理に硬い食材を取り入れたり食材を大きく切ったりすることで、自然と噛む回数を増やすなどの工夫を取り入れるとよいでしょう。食べる時の姿勢についても背中を丸めて食事をすると消化器のある腹部を圧迫するため、背筋をシャンと伸ばして食べることが大事です。タンパク質は消化酵素の力で分解され、アミノ酸の状態になってから吸収されます。胃や小腸など様々な器官で消化・吸収が行われますが、ビタミンはそのサポートをする役割があります。たとえば、ビタミンB6はタンパク質代謝の中心的存在で、タンパク質の分解や合成を助けます。ビタミンB2はタンパク質の分解を助ける役割があり、ビタミンCはコラーゲンの生成に必要な栄養素です。タンパク質を効率よくカラダに定着させるためには食べ方、姿勢、食材の組み合わせなど様々な連携が必要だということがわかります。

3.<運動編>かんたん筋トレで筋肉量アップをはかる

筋肉のもととなる栄養を蓄えたら、それを増量させるために筋肉にアプローチして成長を促す筋力トレーニングが効果的です。筋肉量を効率よく増やすためには、大きな筋肉から先に鍛えていくことがポイントです。成長が早い大きな筋肉からアプローチし、その後に気になる部分へと範囲を変えていくといいでしょう。一般的に大きな筋肉とは、脚、お尻、お腹にあります。自宅でかんたんにできる筋トレをご紹介します。水分補給をしながら無理のない範囲で行いましょう。

・脚の中でも、第二の心臓「ふくらはぎ」を攻略し強い血流を生み出すカラダになる

<ドンキーカーフレイズ>

ドンキーカーフレイズのイラスト

[やり方] 30回目安

①椅子、又は机などに両手をつき、股関節から上半身を曲げて立ちます。できるだけ背をを丸めないように頭からしっぽ(イメージ)までを一直線にします。
※肩の真下に手のひら、股関節の真下に足がくるようにしましょう。

②腰の位置をあまり前後にスライドさせないようにしながらつま先立ちになり、かかとの上げ下げをゆっくりと行いましょう。可能であれば上げたかかとを下す際に地面につかないようにギリギリのところで止め、上げ下げを繰り返すと効果的です。
※手首を痛めている場合は手の下にタオルをクッション替わりに置く
※膝は曲げずに伸ばしたままで行う
※ふくらはぎがつりそうになったらやめて水分補給を行う

・気になる「お腹周り」をトータルに攻略し、内臓へもイキイキとした刺激をプラス

<ヒールタッチクランチ>

ヒールタッチクランチのイラスト

[やり方] 各5~10回目安

① マットの上で仰向けに横になり、足は肩幅に開き膝を立てて、両手は体側に添わせておきます。

② うなずくように顎をひいて頭を床から起こして目線を足の方に向け、両肩を床から起こします。

③ 右側の肩甲骨でカラダを支えたまま右手で右足のかかとをタッチするように右のウエストを縮めます。左の肩甲骨を床から持ち上げ目線は右足の方へ向けましょう。

④ 頭を床から起こしたまま、次は左側の肩甲骨でカラダを支え左手で左足のかかとをタッチするように左のウエストを縮めます。右の肩甲骨を床から離し左足に目線を向けます。
※イラストは④の姿勢
※呼吸を止めないように交互に繰り返す
※首がつらくなったら頭を床に下ろし休憩を入れる
※かかとに手が届かなくてもOK

・「お尻と太もも」の筋肉を同時に鍛えてパンプアップ

<ランジ>

バンプアップのイラスト [やり方] 各5~10回目安

① 手を腰に当てて両足のつま先と膝の向きを正面に向け、目線は水平を見て立ちます。

② 片足を一歩前方へ大きく踏み出し、前の足に体重をかけます。後ろの足の膝が床につかないところまで腰を落としましょう。その際に踏み出した足のつま先より膝が前に出ないように気を付けます。

③ 前の足を踏みしめ、元の位置に戻りましょう。その際にバランスを崩しそうな場合は前に出した方の太ももを両手で押して踏みしめをサポートしましょう。

④ 反対側も同様に行い繰り返します。
※呼吸を止めずに行う
※カラダのバランスがくずれやすい場合は踏み出す歩幅を狭くしたり屈伸を浅くしたりすることで調整し転倒に気を付ける

痩せすぎが気になる、体質的に太れない方のための漢方とは

食欲がなく普段から小食である、疲れやすく出かけるのもおっくうという方は、年を重ねるに伴い体力や体重の減少に悩むことがあるかもしれません。漢方では胃腸の働きが弱ることで、カラダを巡るエネルギーである「気」や栄養物質である「血(けつ)」の生成ができなくなり、疲労倦怠・貧血・手足の冷えが起こると考えられています。消化器のはたらきを高め、カラダに栄養を行き渡らせるために「気」と「血」の両方を補う処方の漢方薬を取り入れるのがおすすめです。

・疲れやだるさ、病後の体力低下でお悩みの方へ

■十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)

胃腸の機能を高め、「気」「血」の生成を促す漢方薬です。「気」の生成が整うことで、カラダの各部位に「気」が行き届き、疲労倦怠や手足の冷えが改善され、「血」の生成が整うことで、貧血が改善されます。また、栄養を取りこむためのもととなる胃腸の機能を高めるため、食欲不振も改善します。

・疲れやすく食欲や体力を回復させたい方へ

■人参養栄湯(にんじんようえいとう)

消化器の働きを高め、栄養をすみずみに行き渡らせ、「気」と「血」の両方を補う処方です。人参養栄湯は消化器のはたらきを高め、栄養をすみずみにいきわたらせ、「気」と「血(けつ)」の両方を補います。病後の体力低下や疲労倦怠、食欲不振、手足の冷え、貧血などの症状を改善する効果が期待できます。

あわせて読みたい>>漢方の基礎知識3「気血水とは」

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那須久美子(https://www.kandworks.com/about
ヘルスケアデザイナー・漢方アドバイザー・ピラティストレーナー・ヨガセラピスト・バレエティーチャー・アスリートキャリアコーディネーター・介護予防運動指導員

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