夜間頻尿にもう困らない。自分でできる骨盤底筋群のトレーニングとおすすめの漢方は?

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夜中にトイレに行きたくなり目を覚ますことはありませんか?その回数が1回ならともかく2回、3回と度重なることで睡眠にも深刻な影響がでてしまいます。ひと晩に1回でもトイレに起きることを「夜間頻尿」といいます。加齢とともにその頻度は高くなりますが、夜間頻尿は日常⽣活に支障がでる深刻な問題です。たびたび目を覚ますことで睡眠の質が悪くなり日中に眠気や倦怠感が生じるなど、QOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)に影響を及ぼすこともあります。また夜中に起きることで暗闇での転倒によるケガや骨折のリスクもあり、見過ごせない症状の一つです。そんな夜間頻尿にはどのように対処したらよいのでしょうか。この記事では夜間頻尿の原因と予防トレーニング法、おすすめの漢方をご紹介します。

あなたは夜間にトイレに行く?排尿習慣をチェック

夜間頻尿の原因は、大きく分けて3つ、①夜間多尿、②畜尿障害(膀胱容量の減少)、③睡眠障害に分けられます。原因によっては病気が隠れていることもあるため医療機関での治療が必要ですが、夜間多尿についてはセルフケアで解消されることもあります。排尿習慣を知るために、排尿日誌をつけてみるとよいでしょう。朝起きてから翌日の朝まで、排尿した時刻とメモリ付コップなどで測定した排尿量を日記のように記録すると正しく判断ができます。1回の排尿量(膀胱に溜めることができる膀胱容量)と排尿回数を知ることでおおよその原因を知ることができます。夜間の排尿の度に、毎回十分な尿量を排尿する場合(目安として200-300ml程度)は多尿もしくは夜間多尿による夜間頻尿となります。十分な尿量を排尿しない場合(目安として100ml以下)は膀胱容量の減少による夜間頻尿(畜尿障害)と考えられます。3つの原因について一つずつ見ていきましょう。

夜に何回もトイレに行く、夜間多尿の原因

夜間の尿量が1日の排尿量の33%を超える量が夜間(就寝から起床直後まで)に出ている状態のことを夜間多尿といいます。加齢とともに夜間多尿になりやすく、その原因としては睡眠中の尿意を抑える抗利尿ホルモンの分泌が減り、且つ心臓や筋肉の衰えにより血液循環が悪くなることで夜間の尿量が増えると言われています。特に高齢になると血流が悪くなるため下半身に水分が溜まりむくみやすくなります。その余分な水分は就寝時横になった際に排出が促されるため夜間に尿意が起きやすくなるのです。水分の摂りすぎや利尿作用の高い飲料(アルコール、カフェイン飲料)等で頻尿になっている場合は摂取を控えることが必要です。夜間多尿の改善のポイントは、下半身の運動、むくみを防止するために減塩の食生活を心がけること、早めの夕食や寝る前の入浴といった生活習慣を取り入れることです。特に下半身のむくみを取るには、ウォーキングなど下半身を動かす運動やふくらはぎの筋肉を使う運動がお勧めです。入浴時にバスタブに浸かることも、下半身に水圧がかかり血行促進されることで寝る前に尿が出やすくなるため効果的です。糖尿病、高血圧、心疾患、腎機能障害、睡眠時無呼吸症候群などの病気が原因となっている夜間多尿の場合は、基礎疾患の治療が重要です。

膀胱のキャパがない?畜尿障害とは

つい「念のため」と、尿意がなくてもついトイレに行く回数が多い方は膀胱の『尿を溜める機能』の低下が考えられます。膀胱のキャパシティを上げるために、尿意を感じるまで溜めておくトレーニングを日中に行うのも効果的です。前かがみの姿勢で排尿すると、腹圧と蓄尿の重力が膀胱出口に一直線的に移動するため排尿しやすくなります。つまり尿を溜める場合はカラダを反らすようにお腹を縦に伸ばすようなストレッチをして尿意を促さないようにするのも一つの手です。さらにトイレを早く済ませようと腹圧をかけて尿を絞り出すクセがある方も要注意です。尿道をコントロールしている骨盤底筋群に負荷をかけて疲労させてしまっていることから尿を溜める力を弱くしたり尿漏れを促したりしてしまうかもしれません。排尿時はリラックスして排泄のための筋肉をリリースさせる(緩める)ことが大事です。男性の前立腺肥大症や男女共通の過活動膀胱などの病気によって膀胱に尿を十分に溜められないという場合もあるため、泌尿器科を受診し適切な治療を行うことも重要です。

眠れない、又は中途覚醒してしまう

自律神経のリズムは昼間に交感神経が優位になって活動的になり、夜は副交感神経が優位に切り替わり入眠しやすくなります。しかし、精神的なストレス、肉体疲労、偏った食生活など不規則な生活習慣が続くと自律神経が乱れて夜間の継続的な睡眠ができない状態に陥ります。夜間頻尿で困っている場合、眠っている間に尿意を感じて目が覚める、又は途中で目が覚めたときに排尿したくなりトイレに行くという、相互の関係があります。中途覚醒を防ぐ、つまり自律神経の乱れを整えるためには朝食をしっかり摂り昼間に交感神経を働かせる習慣をつくること、夜はバスタブに浸かってカラダの深部体温をしっかり上げ、寝る前に自然と体温を下げるよう促すことなど、睡眠の質を高める工夫を取り入れましょう。寝る前のアルコールは入眠を促しますが中途覚醒の一因になるためおすすめできません。アルコールは夕食時に摂取し、寝る前は控えるとよいでしょう。

膀胱を下支えする骨盤底筋群にフォーカス

更年期世代以降は女性ホルモンの急激な変化に伴い尿トラブルの原因でもある“骨盤底筋群のゆるみ“が加速します。骨盤底筋群とは、骨盤内部に存在するインナーマッスルで骨盤内の臓器を下支えする繊細な機能を持つ筋肉のチームです。加齢とともに筋力は衰えていきますが、出産経験のある女性は出産に際して骨盤底筋群に大きな負荷がかかったことも加わり尿トラブルに発展しやすい傾向があります。夜間頻尿の原因でもある臓器の血行不良や膀胱の機能低下、さらには自律神経の乱れに抗うために、骨盤底筋群を活性化することで対策が可能です。骨盤内に張り巡らせている筋肉チームをしっかり使い、ゆったり休めるという意識で骨盤底筋群のトレーニングをはじめてみましょう。

<イラストの解説>骨盤底筋群はハンモック状の筋肉集合体で、膀胱、直腸、子宮といった臓器を骨盤の下から支えています。尿道、膣、肛門の周囲にあり、排泄をコントロールする筋肉でもあります。骨盤底筋群がゆるむと臓器が下がったり、尿道がゆるんだりしやすくなります。

骨盤底筋群のイラスト

骨盤底筋群をトレーニングしよう

例えば「足を動かす」「腕を動かす」といった筋肉は骨を動かすため筋肉が働いていることが目視できます。しかし骨盤底筋群は骨盤の中にあるため筋肉を動かしても見ることができません。さらに骨を動かす筋肉ではなく、内臓を支え排泄運動をする筋肉のため可動が外からは確認できません。そのため動かしているのを自身が『感じる』『イメージする』ことがとても大事になってきます。まずは骨盤底筋群の位置をしっかり認識し、呼吸を司る横隔膜との連係動作を意識しましょう。

骨盤底筋群のトレーニングのイラスト 横隔膜は胸郭と腹部を分けるように存在する筋肉で、呼吸に深く関与しています。息を吸う時に横隔膜が下がり肺に酸素が取り込まれ、吐く息で横隔膜が上に持ち上がります(イラスト)。骨盤底筋群は横隔膜に呼応するため、息を吸う時に横隔膜が下がるタイミングで骨盤底筋群はゆるみ、下方へ下がります。吐く息で横隔膜が持ち上がった時に骨盤底筋も上に持ち上がり収縮します(イラスト)。つまり、息を吐く時に骨盤底筋にキュっと力を入れ(筋トレ)、息を吸う時にゆるめる(ストレッチ)ということを意識することで骨盤底筋群の血行を促進し筋トレとストレッチを促すことができるのです。呼吸をする時に意識するだけで、いつでもどこでもトレーニングの機会を作ることができます。

◆骨盤底筋群トレーニング(ケーゲル体操)

~骨盤底筋群トレーニングはアメリカの産婦人科医アーノルド・ケーゲルが考案したことから「ケーゲル体操」と名付けられています~

【注意ポイント】骨盤の中にある筋肉群を思い描き、動きをしっかりイメージしましょう

[やり方] 1セット10~20回、1日に数セットを目安に

★座位、立位、寝て行うなど、どのような姿勢でもトレーニング可能です。

①息を吐く時におしっこを我慢するときのように骨盤底筋群(尿道・膣・肛門周辺の筋肉)をカラダの中心に集めるように力を入れます。

<イメージ>

  • ・肛門をカラダの中へひきこむ
  • ・膣から水を吸い上げるように意識を向ける
  • ・おへそを胸の方へひきあげるように意識する

<注意点>

  • ・下方向への圧をかけないこと
  • ・お尻の力(殿筋)を使わないで骨盤の中の筋肉を意識すること

② 骨盤底筋群を引き締めたままキープ。

③ 息を吸いながら骨盤底筋群を緩めます。

※引き締めと緩めが意識できるようになったら引き締めと緩めを各10秒キープしてみましょう。

◆座って行う『骨盤底筋群+内もも』トレーニングでパワーアップ

骨盤底筋群は動かすことを認識するのが難しいためトレーニング効果が分かりにくいという難点があります。骨盤底筋群と近しい筋肉を同時に動かすと少し意識がしやすくなります。『内もも』の筋トレと組み合わせると下半身のトレーニングとして相乗効果が期待できます。

[やり方] 1セット10~20回、1日に数セットを目安に

★用意するもの:椅子、トレーニング用の柔らかいボール又はタオル

①椅子に腰かけて膝の間にトレーニング用の柔らかいボール又は丸めたタオルをはさみます。

②息を吸って準備を整え、吐く息とともに骨盤底筋群を引き締めて椅子の座面をカラダの中に引き込むようなイメージを持ち、同時に内ももの力を使って膝にはさんだボール(又はタオル)をギュッとつぶします。

③息を吸いながら骨盤底筋群を緩め、内ももの力も緩めます。

※姿勢を正して息を止めないように行いましょう

[この記事のセルフケアを試して改善が見られない場合や既往症が症状に関係している場合は主治医に相談するか医療機関の受診をおすすめします]

漢方の力を借りて尿トラブルを改善する

年齢を重ねるにつれ基礎代謝や基礎体温が下がり、うるおいが失われ体が硬くなっていきます。このような機能低下は「気」「血(けつ)」「水」の不足と、「腎(じん)」の低下が原因であると漢方では考えます。泌尿器・生殖器・腎臓などの機能を「腎」 と呼び、この「腎」に蓄えられた「腎精(生命活動の源やホルモン)」が加齢により減ると老化現象が目立つようになります。加齢による尿トラブルは「腎虚(じんきょ)」が原因だと考えます。「腎」機能が低下している状態が「腎虚」です。加齢は止めることができませんが「腎」の衰えや不足を補うことで、加齢による様々な症状を緩和し改善できるように働きかけます。

・夜間頻尿、排尿困難、冷え性の方に

■八味地黄丸(はちみじおうがん)

八味地黄丸は桂皮、地黄、 山茱萸、山薬、附子、牡丹皮、沢瀉、茯苓の8つの生薬からできています。これらの生薬は腎の働きをよくしてくれるため、「腎」機能の低下状態に効果的です。「気」「血」「水」を増やし、巡らせる作用と体を温める作用の組み合わせで、頻尿や軽い尿もれ、残尿感、夜間頻尿、排尿困難などを改善していきます。

・夜間頻尿、重だるい慢性的な痛みやむくみに

■牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)

冷えると痛む悩みに、栄養分を補給するとともに温めることで対処します。筋肉や骨に栄養分を与え、水分代謝を良くする「八味地黄丸(はちみじおうがん)」の処方に、さらに生薬を加えたものです。とくに、尿量減少、腰痛、下肢のむくみの強いものなどに用いられるほか、足腰などの痛みやしびれの改善に作用する薬で、下半身の痛みや排尿トラブルなどがある方におすすめの薬です。

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那須久美子(https://www.kandworks.com/about
ヘルスケアデザイナー・漢方アドバイザー・ピラティストレーナー・ヨガセラピスト・バレエティーチャー・アスリートキャリアコーディネーター・介護予防運動指導員

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