目次
- 40歳を過ぎたら目の健康を見直そう
- あなたは大丈夫?アイフレイルをチェックしましょう
- 「アムスラーチャート」でさらにセルフチェック
- 目の加齢は「血管」がポイント
- 目にもエイジングケアの視点を取り入れる『眼活』 とは
- アイフレイルの予防のために~眼活・食事編~
- アイフレイル予防のために~眼活・目のストレッチ編~
- アイフレイル予防~眼活・ツボ編~
- アイフレイル予防~眼活・メンテナンス編~
- アイフレイル予防~眼活・漢方編~
「フレイル」という言葉を聞いたことがありますか?フレイルとは加齢に伴いカラダの様々な機能が衰えていくことにより健康障害に陥りやすい状態を指す概念です。中でも「アイフレイル」は、加齢による目の衰えに、様々な外的ストレスが加わることにより目の機能が低下した状態、またはそのリスクが高い状態のことをいいます。日常生活において、目の不具合や不快感を放置していると視覚機能の衰えが進み、常に見えづらい状態が続いてしまいます。さらに視覚機能の低下はQOL(生活の質)にも影響を与えると言われています。目の機能は刻々と加齢の波に飲み込まれているのに加え、PCやスマートフォンが欠かせない今、ブルーライトによる目の酷使が積み重なります。この記事では目から健康を考えるためにアイフレイルの知識と予防に取り組む『眼活』についてご紹介します。
40歳を過ぎたら目の健康を見直そう
40歳以上の方に健康面で不自由を感じていることを聞くと、半数近い人が「目(視覚)に関すること」と回答しています。一方で、普段から健康維持や病気予防に努めていることは、「目(視覚)に 関すること」に 比べ「歯に関すること」や「足腰に関すること」が多いというデータがあります※1。実際に、目に関して気になっていることは「小さな文字が読みにくい」51.3%、「目が疲れやすい」42.8%、「視力が低下している」40.7%というものです。視覚は五感から受け取る情報のうち、8割以上を占めるといわれているため、目の健康状態を維持することは生活をする上で非常に重要なポイントになります※2。さらに40代は多くの人が老眼(老視)を自覚しはじめる年代。今まで目の病気を意識したことがなかった人でも、初めて目の問題と向き合うことになるのが40代と言われています。老眼は加齢による目の調節力の低下であり、アイフレイルのひとつです。老眼の他にも見え方の問題は、単なる加齢によるものだけではなく他の病気などが隠れている可能性もあります。不調や不便を感じたら目の問題を自分の健康問題として捉えて、早めに生活習慣の見直しや眼科の受診など、行動に移すことが推奨されます。
※1日本眼科啓発会議「目の健康に関する意識調査2021年」
※2教育機器編集委員会 編:産業教育機器システム便覧, 日科技連出版社. p4. 1972.
あなたは大丈夫?アイフレイルをチェックしましょう
目にちょっとした違和感や不調を覚えたら、「年のせい」などと放っておかずに状況を把握し対処することが大切です。アイフレイルの症状や程度は幅広く、なんとなく調子が悪いと感じるだけで、大きな視覚機能低下に至らないこともあれば、原因によっては視覚機能が大きく低下してしまうこともあります。目の異常にいち早く気付けるように、定期的にアイフレイルの自己チェックを行うことをおすすめします。以下の項目で2つ以上当てはまった方は、一度眼科を受診してみましょう。
- □目が疲れやすくなった
- □夕方になると見にくくなることが増えた
- □新聞や本を長時間見ることが少なくなった
- □食事の時にテーブルを汚すことがたまにある
- □眼鏡をかけてもよく見えないと感じること多くなった
- □まぶしく感じやすくなった
- □はっきり見えない時にまばたきをすることが増えた
- □まっすぐの線が波打って見えることがある
- □段差や階段が危ないと感じたことがある
- □信号や道路標識を見落としそうになったことがある
- ※アイフレイルチェックリスト Ver. 1.1 (2023年11月改訂)
☆チェックが0の人は…
あなたの目は今のところ健康です。変化を感じたらチェックしましょう。
☆チェックが1つの人は…
目の健康に懸念はありますが、直ちに問題があるわけではありません。
★チェックが2つ以上の人は…
アイフレイルかも知れません。一度、眼科専門医にご相談ください。
「アムスラーチャート」でさらにセルフチェック
見え方の変化を自分でチェックする方法として、「アムスラーチャート」と呼ばれる格子状の表を用いて確認する方法があります。自己チェックは「片目」ずつ行います。見え方に違和感があれば、眼科専門医に相談しましょう。
<チェックの仕方>
※片目ずつ行います。眼鏡をかけている方はかけたままで行いましょう。
① 目から30cm位チェックシートを離します。
② 片目ずつ、格子の中央の黒い点を見ましょう。
③ 線がゆがむ、中心が見えない、一部が欠けて見える、など見え方がおかしい場合はすぐに眼科専門医を受診しましょう。
*アイフレイル啓発公式サイトで他にもセルフチェックができます。
目の加齢は「血管」がポイント
目の加齢対策や健康不良を防ぐにはどこに気を付けたらよいのでしょう?目の奥には「網膜」という薄い膜があり、ここで視覚の情報を認識しています。この網膜には多くの血管があり、目の細胞に栄養や酸素を運んでいます。加齢や高血糖などの要因によりこれらの血管にストレスがかかり続けると、血管がもろくなったり、異常な血管(新生血管)が発生したりします。もろくなった血管や新生血管からは血液や血液成分が漏れ出しやすくなり、網膜からの出血やむくみを生じ、見え方の異常や視力悪化の原因となることがあります。つまり、目の健康を保つには、いきいきとした血管の健康を保つ必要があるのです。目の健康を損なう要因として、喫煙や高血圧、紫外線、生活習慣の乱れなどが知られています。日常生活を見直してこれらの要因を避けることも同時に意識しましょう。
目にもエイジングケアの視点を取り入れる『眼活』 とは
40代頃から現れ始める老眼。まだ自分は見えるから…と気持ちで頑張っていても、加齢によって水晶体の弾力性が失われ、ピント調節機能が衰えることで近くの物に焦点を合わせにくくなります。自分の目の状態に合う老眼鏡(手元用メガネ)を上手に活用し、カラダに余計な負担をかけないことも大事です。機能性が高くておしゃれな老眼鏡、老眼用コンタクトレンズも登場しています。さらにアイフレイルを予防するためには、生活習慣の見直しも大切です。食生活に気を付け、高血圧・糖尿病などの疾患を予防しましょう。運動習慣、特に有酸素運動を取り入れることも、目のみならずカラダ全体のアンチエイジングに効果的です。ウォーキングやジョギングなど無理のないものから取り組めるとよいでしょう。さらに喫煙の習慣は、血行不良を起こすことにより目の細胞が傷ついたり視力の維持に必要なビタミン類が欠乏したりすることで視力低下を促進するため禁煙がおすすめです。目のエイジングケアのためにできること、いわゆる『眼活』を身近なところから始めてみましょう。
アイフレイルの予防のために~眼活・食事編~
規則正しく、栄養バランスのよい食事を摂りましょう。これは目だけではなく、カラダのフレイルにも言えることです。中でも目の健康に良い栄養素とそれを含む食べ物で代表的なものを例としてご紹介します。
・ビタミンB群 | 視神経を正常に保つ、充血の解消【豚肉、うなぎ】 |
・ビタミンC | 水晶体の透明度を保つ、コラーゲンの生成【ピーマン、みかん】 |
・ビタミンA | 網膜の保護【レバー、にんじん】 |
・ビタミンE | 血行促進、抗酸化【かぼちゃ、アーモンド】 |
・アントシアニン | 疲れ目回復、抗酸化、細胞の保護【ブルーベリー、さつまいも】 |
・ルテイン | 網膜の変性を防ぐ【ケール、ほうれん草】 |
アイフレイル予防のために~眼活・目のストレッチ編~
目の機能に関わる筋肉を鍛える運動を3つご紹介します。ストレッチ&トレーニング効果で目をイキイキと保ちましょう。
※痛みや不快感がでるようなら控えましょう。
① まばたきでグーパー運動(ドライアイ対策)
目の動きでグーとパーの形を体現するまばたきエクササイズです。まばたきにより古い涙を排出し、新しい涙を目に広げるため目を潤します。同時に眼輪筋のトレーニングを兼ねるため、まぶたのむくみや目元のクマ対策も期待できます。
<やり方>5回程度目安
(1)額や眉間にシワを作らないように注意しながら目をギュッと閉じてそのまま2秒キープします(グーの動き)。
(2)目をパッと大きく開いて2秒キープします(パーの動き)。
※額や眉間にシワが寄らないように手のひらを額につけて皮膚が動かないようにすると効果的です。
② 視線ストレッチ(眼精疲労対策)
近くのものと遠くの景色を交互に見ることで目の筋肉と水晶体をほぐし、ピントフォーカス機能を高めるトレーニングです。
<やり方>5~10往復程度目安
(1)ペン等を手に持って腕を伸ばし、焦点を合わせて1~2秒見つめます。
(2)次に遠くの景色(3~5メートル先)に視線を移し1~2秒焦点を合わせます。
(3)(1)と(2)を繰り返します。
※眼鏡やコンタクトレンズをつけたままで大丈夫です。
※顔を動かさずに視線を動かしましょう。
③ 時計ストレッチ(目の血行促進・疲労回復)
時計の針をなぞるように眼球を動かす眼筋ストレッチ。黒目を上(12時)向きから時計回りに丁寧に動かしていくことで眼球に付随している筋肉群をほぐし血行を促進します。目の血流が促されることで目の疲れを解消し視界までクリアに。
<やり方>5回転程度目安
(1)顔を動かさないように気を付け、目だけを動かし黒目が真上(時計の針の12時方向)になるように視線を上向きにします。
(2)自分の顔を時計の文字盤に見立てて目線を針のようにイメージし、眼球を時計回りに1時から順番に動かし1周させます。
(3)逆回りに目線を動かしてもOKです。
※顔を動かさずに眼球だけを動かすことがポイントです。
※顔を動かさないようにするために、テーブルの上に両肘を乗せて頬杖をつくように顔を固定させると効果的です。
アイフレイル予防~眼活・ツボ編~
眼筋運動の他にも、ツボを押すことで目に関係する血流を促進したり辛い症状の緩和が期待できたりします。仕事や家事の合間などに目に効くツボを押してリフレッシュする習慣付けを。ツボを試すときは食前食後、お酒を飲んだ後は避け、「痛気持ちいい」と感じる程度の強さで押しましょう。呼吸を止めずに5秒程度指で押したら離す、というのを数回繰り返すとよいでしょう。アイフレイル対策に効果的なツボを3つご紹介します。
① 晴明(せいめい)
晴明は目の疲れに効くツボとして有名で、目の充血やかゆみなど目に関連した症状全般に効果が期待できます。
ツボの場所:目頭の内側からやや上方にある窪んだ所
② 太陽(たいよう)
パソコンなどのデスクワークによる眼精疲労におすすめです。また目からくる頭痛にも有効です。
ツボの場所:眉尻と目尻の中央からやや後ろ(こめかみ寄り)の窪んだ所
③ 陽白(ようはく)
目の痛み、目のかすみや充血、ドライアイに効果が期待できます。目元のクマや額のシワなどにも効きます。
ツボの場所:眉毛の中央部分から2cmほど上のやや窪んだ所
アイフレイル予防~眼活・メンテナンス編~
まぶたの縁(まつ毛の根元)には、マイボーム腺という脂腺があり、涙の蒸発を防いで目の乾燥を防ぐ役割を果たしています。しかし、この腺が汚れやアイメークで詰まることでドライアイや麦粒腫(ものもらい)などのトラブルが発生します。アイフレイルに発展しないようにまぶたやまつ毛をキレイに保つケアが大切です。
① 温罨法(おんあんぽう)
ホットタオルを目元にのせて温めることで、マイボーム腺の詰まりを緩和するケア方法です。目全体を温める効果もあるため血行を促し目の疲れにも効果が期待できます。
<やり方>
(1)フェイスタオルを水にぬらし水気を絞ります。
(2)タオルをおしぼりのように丸め、電子レンジ(500W)で1分ほど温めます。
(3)加熱直後はタオルが熱くなっているので少し冷ましてから目を閉じてホットタオルをのせて目を温めます。血行を良くすると同時に、詰まって固くなったマイボーム腺の皮脂を溶かします。
※ホットタオルでやけどをしないように温かいと感じる温度まで冷ましてから顔にのせましょう。
② リッドハイジーン(眼瞼清拭法)
マイボーム腺を含むまぶたのキワ、まつ毛周辺の清潔を保つことを『リッドハイジーン(眼瞼洗浄)』と呼びます。ぬるま湯を使ってリッドハイジーンを行うことで目元をキレイに保ちアイフレイルを予防します。
<やり方>
(1)石鹸で手をキレイに洗います。
(2)ぬるま湯(約37〜40度)で目の周りを濡らし、指の腹を使ってまつ毛の根元周囲をやさしくマッサージするように、固まった脂や汚れの排出を促します。
(3)ぬるま湯に浸したコットンやガーゼで、まぶたの縁を優しく拭き取ります。
(4)清潔なタオルで目元を軽く押さえるように水気を拭き取ります。
※コンタクトレンズは外して行いましょう。
※ぬるま湯が目にたくさん入らないように注意しましょう。
※汚れが強い場合はアイシャンプーを使用してみましょう。
※痛みや異常を感じた場合は、直ちに中止し眼科専門医に相談してください。
アイフレイル予防~眼活・漢方編~
カラダにとって「気<エネルギー>」と「血(けつ)<栄養>」「水<潤い>」が満ち足りて滞ることなく巡っていることが健康を保つ秘訣です。中でも肝(肝臓エリア)は血を貯める臓器ですが、肝に蓄えられた血がカラダを満たし巡ることで、目も正常な状態に保つことができるとされています。腎(腎臓、泌尿器エリア)は血を蔵する肝とも密接な関係にあり、肝腎同源とも言われています。加齢とともに腎の機能は低下しやすくなるため、腎を補う生薬を含む処方でカラダを底上げすることが大切です。
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■杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)
腎のはたらきが低下した状態を改善する補腎(腎の機能をサポート)の考え方を取り入れた処方です。エネルギーを蓄える腎を補い、かすみ目、つかれ目、視力低下にも効果が期待できます。目が疲れ、夕方になるとピントが合わずぼやける方におすすめです。
那須久美子
広告会社、大手化粧品会社宣伝部にてCM、雑誌等の広告制作に携わる。
その後フリーランスとしてバレエ講師、ピラティスマスターストレーナー、ヨガセラピスト、介護予防運動指導員として老若男女への伝える仕事に従事。
企業や官公庁での健康アドバイザーや研修講師も務める。
国家資格キャリアコンサルタントとしては企業内障害者ジョブコーチを経て自治体事業の就労支援プログラム講師とカウンセラーを兼任。
現在は就労支援事業の現場統括責任者を務める傍らキャリアコンサルタントのスクールにおいてオウンドメディアの監修も担当。
・ヘルスケアデザイナー
・バレエティーチャー
・ピラティストレーナー、ヨガセラピスト
・アスリートキャリアコーディネーター
・国家資格キャリアコンサルタント
・漢方アドバイザー
・介護予防運動指導員
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