【中医学で考える】愛犬といつまでも一緒にいられるごはん作り

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【中医学で考える】愛犬といつまでも一緒にいられるごはん作り

目次

愛犬が口にするものを気づかい、手作りのごはんを与えている方も多いことでしょう。そこで、中医学的な犬の食事内容を清水加奈子さんに教えてもらいました。日々、身近にいる飼い主だからこそわかる愛犬の体質と、それに合わせた食事を与えながら、いつまでも愛犬と一緒に暮らしていきたいものですね。

人間と同様に犬も高齢化し体調の悩みが増加

高齢化が進んでいるのは人間だけではありません。最近では14~15歳の犬はざら。20歳近い犬も多くなりました。

そのため、老いの悩みも人間と同じように出てきます。徐々に毛づやが悪くなり、抜け毛が増え、白髪のような白っぽい毛が増えていきます。歯は色が変わっていき、歯周病で口臭がしはじめます。太りすぎてしまうと腰痛になったり、生活習慣病と同様に心臓や腎臓に負担がかかっていきます。

犬は、寿命の3分の2を過ぎると「シニア犬」と呼ばれます。小型犬なら11歳、中型・大型犬は8歳、超大型犬は6歳を過ぎたら、シニア犬に合った食事を意識してあげたいものです。

市販のカリカリとした食感のペットフードは完全食。年齢や体の大きさに合わせて、必要な栄養が摂れるように作られています。しかも犬種や体の大小ごとに、飲み込めるような粒の大きさになっています。

「飲み込んでしまっていいの?」「ちゃんと噛めたほうが健康的なのでは?」と、心配する方もいますが、犬は丸呑みができるので大丈夫。というのも、穀物を主食としている人間は、穀物をすりつぶすために歯の60%以上が臼歯ですが、肉を主食としている犬は、引きちぎって呑み込んで食べるので、噛みしめるということはなく口の中にある時間は短時間。だから、犬に複雑な味覚はないそうです。

また、人間のだ液には、炭水化物(でんぷん質)を消化するためのアミラーゼが含まれていますが、犬の唾液にアミラーゼはほとんど含まれていません。その代わりに強い消化液が胃や腸へ分泌されて、吸収・分解されますから、ペットフードも丸呑みできるような形状になっているのです。

中医学的に愛犬の体質を知る観察方法

愛犬には手作りのごはんを食べさせたいという方がいます。また、健康面でさまざまな不調が現れ、その不調に合わせた手作りごはんを食べさせる必要が出る場合もあります。

特に、シニア犬になると、人間と同じような糖尿病や肥満などの不調が現れるようになります。そこで、獣医師が犬ごとに摂るべきカロリーを計算し、その数字をもとに栄養管理をすることになります。

この時、中医学的に犬を観察し、体質を知ることできれば、より愛犬の健康を守ることができます。

下記は、犬の体質を知るための方法の一つです。犬は、どこがつらいとか、痛いとか言えないため、下記のような点を観察する必要があります。

① 望診

動きや表情を観察。さらに目や舌の色をチェックして、体質を見極めます。例えば、健康なワンちゃんの舌は淡紅色で、濃すぎる場合はストレスを感じている可能性があります。また、青紫、黒い舌は瘀血の可能性もあります(もともと舌が黒い犬種は別です)。

➁ 聞診

体臭や呼吸臭などのニオイを嗅ぐことで体調をチェック。「痰湿」という体質だと代謝が悪く、ニオイが強くなる傾向があります。例えば、悪臭がする場合は高脂血症の可能性もあります。

③ 切診

  • ●脈診:太ももの内側で脈拍を測り、健康状態を確認します。風邪の引き始めなどは、軽く触っただけで脈を強く感じたりします。
  • ●腹診:おなかの張りや硬さから病気を診断。胃のあたりに水が溜まっているように感じるときは消化器系の異常が疑われます。
  • ●その他;肉球を触り温度や乾燥状態をみます。

愛犬の体質に合った食材で手作り食事を

観察をした上で、下記の□をチェックしましょう。チェックの多いところが、愛犬の体質です。Gタイプの愛犬は健康ですが、それ以外の愛犬には、ここに書かれた食材を食事に加えるようにしましょう。

A:元気不足タイプ(気虚・陽虚)

□疲れやすい  □皮膚がたるんでいる  □鳴き声が小さい

(補気のために加えたい食材)穀物類、イモ類、豆類、いんげん、シイタケ、牛肉(加熱すること)、鶏肉(加熱すること)、コーン、カボチャ、ハチミツ、ナツメなど

B:ストレスタイプ(気滞)

□情緒不安定  □不眠  □肉球がつめたい

(理気のために加えたい食材)ピーマン(分量に注意すること)、鮭、柑橘の果肉、果汁(分量に注意すること)など

C:栄養不足タイプ(血虚)

□貧血おこしやすい  □肉球がひび割れている

(補血のために加えたい食材)ニンジン、レタス、枝豆、黒豆、松の実、黒ゴマ、アサリ(加熱すること)、カツオ(加熱すること)、マグロ(加熱すること)、レバー(加熱すること)、鶏卵 (加熱すること)、桃、クコの実(少量で分量に注意すること)など

D:ドロドロタイプ(瘀血)

□出血しやすい  □皮膚にざらつき、シミがみられる

(活血のために加えたい食材)黒豆、茄子、菜の花、パセリ、イワシ(加熱すること)、サバ(加熱すること)など

E:ほてりタイプ(陰虚)

□四肢にほてりがある  □暑がり  □痩せ気味

(補陰のために加えたい食材)白キクラゲ・黒キクラゲ(分量に注意すること)、黒豆、長イモ、鶏卵(加熱すること)、豚肉(加熱すること)、鴨肉(加熱すること)、ハチミツ、豆乳、牛乳(少量、分量に注意する。薄める、加熱すること)、梨、すいかなど

F:むくみタイプ(水滞)

□むくみやすい  □軟便傾向  □肉球に悪臭

(利水のために加えたい食材)ハト麦、黒豆、小豆、冬瓜、アサリ(加熱すること)、スズキ(加熱すること)、ワカメ(少量で分量に注意すること)、昆布(少量で分量に注意すること)、コーンなど

G:健康(中庸)

□A〜Fのどれにもチェックがつかない

以上のチェックのあとに、体質をみて、肉球が乾燥している・熱を持っている・冷えているなど 、水が足りなそうなときは、ベースの食事に加えて適量の水分補給ができる梨・スイカなどの果物を加えてもよいでしょう。

常に意識して水分の補給を

下記は、健康的な犬の大きさに合わせた1日に接種すべき栄養分の基本です。カロリーやタンパク質、脂肪などを記しました。カリカリのペットフードだけを与えている場合でも、手作りの食事を加えている場合でも、1日のカロリーは下記を目安に調整しましょう。

また、水分は意識して多めに与えましょう。人間は、食事の時に味噌汁やスープ、お茶などからも水分を補給していますが、犬も同じです。乾燥したペットフードだけでは水分が不足してしまい、体調不良を起こしますので、ご注意を。

超小型犬(体重2kgの場合)の1日の必要量
カロリー:188 Kcal  水分量:188ml  たんぱく質量:11.3g  脂肪量:3.8g

小型犬(体重5kgの場合)の1日の必要量
カロリー:375Kcal  水分量:375ml  たんぱく質量:22.5g  脂肪量:7.6g

中型犬(体重10kgの場合)の1日の必要量
カロリー:630Kcal  水分量:630ml  たんぱく質量:37.8g  脂肪量:12.7g

大型犬(体重30kgの場合)の1日の必要量
カロリー:1436kcal  水分量:1436ml たんぱく質量:86.1g 脂肪量:20.3g

超大型犬(体重40kgの場合)の1日の必要量
カロリー:1781kcal  水分量:1781ml  たんぱく質量:106.9g 脂肪量:25.1g

※健康な成犬、通常の活動量を基本に算出。
参考文献;「小動物の臨床栄養学」第5版

なお、塩分の取り過ぎは、人間だけでなく犬にもよくありません。犬が1日に摂る塩分の量は、人間の1/3程度が目安と言われます。無意識に塩分を多く含むおやつなどを与えていると心臓や腎臓に負担を与えてしまいます。

市販のおやつを与えるときは成分の表示を確認するようにして、手作りの食事やおやつを与えるときは、食塩などの調味料はなるべく使わないようにしましょう。また、犬は噛まずに呑み込んで食べることが多いので、食材は、細かく小さく切ったり工夫をしましょう。

毛づやを良くするために 人間と愛犬の食事を一緒に作る

シニア犬だけでなく、栄養の偏りなどで毛づやが悪くなることがあります。毛づやを良くするためには、人間同様「ビタミンA」「ビタミンC」「ビタミンE」「ビタミンB群」「タンパク質」が大切になります。

そこで、これらの栄養を入れながら、ご自身の食事と愛犬の食事を一緒に作る料理をご紹介します。

「鶏肉とさつまいものグラタン」

【材料:飼い主1人+3kg小型犬1匹分】
鶏ささ身……1本
さつま芋……1/4本
玉ねぎ……1/8個
バター……10g
小麦粉……適量
牛乳……150ml+小さじ1
溶けるチーズ……適量
パン粉……適量

【作り方】

  • 1) 鶏ささみは筋を取り除き、皿にのせてラップをし、電子レンジで2分加熱する。粗熱が取れたら裂く。さつま芋は一口大に切り、さっと水にさらして、電子レンジで柔らかくなるまで加熱する。
  • 2) 【愛犬用】❶のうち、鶏ささみ5gと、さつまいも10gを小さく切り、耐熱皿に入れる。
  • 3) 【愛犬用】❷に牛乳(小さじ 1)と、パン粉(少々)をかける。犬は熱いものは食べられないので、トースターで少し焼き目がつくくらい焼いたら冷まして、愛犬用のごはんの完成。
  • 4) 玉ねぎをスライスする。フライパンにバターを溶かし、玉ねぎを炒める。そこに小麦粉を振り入れ、牛乳を少しづつ加え、トロリとなったら鶏ささみ、さつまいもを加えてさらに煮る。
  • 5) 耐熱皿に❸を入れ、溶けるチーズ、パン粉 (少々)をかける。トースターで焼き目がつくまで焼いたら、飼主用のグラタンの完成。

愛犬のごはん作りのポイントは、犬には食べさせてはいけない食材や調味料を省くこと。そして、このグラタンのように、人間の食事を作るときに、愛犬のごはんを同時に作れば、一石二鳥で面倒なく作れるはずです。

犬に与えてはいけないものリスト

最後に、犬に与えてはいけないものをご紹介します。一切れ食べたからどうにかなるというものではありませんが、ヒトでは代謝ができても、犬では代謝できない食べ物もあるため、できるだけ避けるにこしたことはありません。覚えておいてください。

犬には害になることがある食材

  • ・ネギ類・玉ねぎ 、長ネギ、ニラ、ニンニク(ネギ類に含まれる成分が貧血起こす中毒に)
  • ・チョコレート(チョコレートに含まれるテオブロミンによる嘔吐下痢など症状に)
  • ・ブドウ、干しぶどう(特に皮は急性腎不全の原因に)
  • ・アボカド(高カロリー、高脂質で消化不良を起こすことがあるため注意)
  • ・いちじく(アレルギーを起こしやすい成分をふくむので下痢や嘔吐の原因に)
  • ・鶏の骨(鋭利に裂けやすいので胃腸を傷つける)
  • ・キシリトール(低血糖や肝障害の原因)
  • ・香辛料類(胃に刺激が強いので下痢や嘔吐の原因に)

犬には注意して与える必要がある食材

  • ・生の魚、イカやタコなどの魚介類、カニやエビなどの甲殻類(酵素チアミナーゼがビタミンB1を分解する。必ず加熱すること。また消化不良の原因にもなるため分量に注意して与えること)
  • ・生の豆やナッツ類(消化不良の原因に)
  • ・生卵(大量摂取すると、酵素アビジンが皮膚炎や成長不良を引き起こすことがある)
  • ・ホウレン草(大量摂取すると、シュウ酸がカルシウムの吸収を阻害、またマグネシウム過剰で尿路疾患を起こすことがある)
  • ・煮干し、のり(大量摂取すると、マグネシウム過剰で尿路疾患を起こすことがある)
  • ・砂糖(大量摂取すると、消化不良を起こす)
  • ・珈琲、紅茶、緑茶(カフェインが体調不良の原因になることがある)

参考;「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」 環境省

清水加奈子

プロフィール

管理栄養士、国際中医薬膳師。フードコーディネーターとして企業の食品開発に携わることもあり、犬の管理栄養士としてペットフードの開発にも関わる。


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