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職場における人間関係や仕事などのストレスは、多くの人が直面する問題のひとつです。「仕事の量が多い」「残業時間が長い」「上司や同僚とうまく付き合っていけない」などの悩みは、ココロとカラダの不調につながるケースも少なくありません。みなさんは、ストレスでカラダに不調があらわれたとき、どのように対処していますか?厚生労働省の調査によると、うつ病を経験した人の4人に1人しか医療機関を受診していないという報告もあります。
参考:厚生労働省:地域におけるうつ対策検討会報告書 - 3.本人をサポートするネットワーク作りに向けて
職場でストレスがあっても、だれに相談をしていいのかわからない。とお悩みの人に、ストレスの種類や自分でできるケア方法などを紹介していきます。
職場で感じやすいストレスとは
職場のストレスを解消するには、仕事の内容や量、人間関係などを改善することが必要です。しかし、これらのストレスを完全に遠ざけることは難しいこともあるかもしれません。「今日はカラダがだるくてしんどい」と思いながらも、特に対処をせずに働いている人も少なくないのではないでしょうか?最近では、このような不調を抱えながら働く「プレゼンティーズム」が問題となっています。プレゼンティーズムとは、何らかの病気や症状などの不調がある状態で働いているため、労働生産性が落ちている状態のことをいいます。厚生労働省の調査によると、「強い不安、悩み、ストレスを感じる事柄がある」といった不調がある方は、令和3年は53.3%あるのに対し令和4年には82.2%と急激に増えていることがわかります。「ストレスとなっていると感じる事柄」のTOP3は、次のようなものとなっています。
1.仕事の量 36.3%
2.仕事の失敗、責任の発生等 35.9%
3.仕事の質 27.1%
人員不足などによる過剰な労働量や仕事量は、残業や長時間労働の原因となります。また、能力を超えた仕事や、責任の重い仕事を任せられるとストレスにつながることもあります。
参考:厚生労働省:令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況 (p13)
職場でストレスを感じたときは誰に相談している?
仕事でストレスを感じている人は、だれに相談しているのでしょうか?厚生労働省の調査によると次のような結果が出ています。
実際に相談したことがあると答えた人は69.4%となっており、その中でも相談できる相手は同僚が63.5%と最も多く、次に家族・友人の62.0%となっています。仕事上でのストレスは、自分自身の問題だと感じている人も多く、だれにも相談できず一人で悩んでいることもあります。職場の同僚や家族・友人などに相談できない場合は、ひとりで悩まずに医療機関の専門家に相談しましょう。
「これくらいの状態で受診してもいいのかな?」と考えている方もいるかもしれません。精神科や心療内科の医師は、客観的に患者の状態を診察・治療をおこなうプロです。原因のわからない体調不良にも対処することができます。自分で判断できない場合は、専門家に相談しましょう。
ただし、初めて受診する方は、精神科と心療内科のどちらか迷う方もいるでしょう。精神科は「精神状態の治療」を、心療内科は「カラダ全体の治療」を中心におこないます。どちらか迷った場合は、精神科・心療内科のどちらも標榜しているクリニックを選ぶ。または直接電話やメールで相談するといった方法があります。
参考:厚生労働省:令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況 (p15)
仕事に対するストレスの状態をチェック
仕事にストレスを感じていても、心身に表れる症状はさまさまです。まずは、仕事に対するストレスがどれくらいあるかをチェックしてみましょう。
□イライラする
□いつも疲れている
□不安になることが多い
□やる気が起こらない
□何をするのもだるい
□急に悲しくなる
これらの症状がある人は、ストレスを感じている可能性があります。くわしい検査を受けたい方は、医師やカウンセラーなどの専門家に相談することをおすすめします。また、もしあなたでなくあなたの周りにこうした症状に悩んでいる方がいたら、この記事を参考に、相談にのってあげてください。
チェックリスト:厚生労働省:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル (p35簡略版)
職場のストレスによる不調を改善するには
仕事や人間関係のストレスをなくすのは、難しいことがあるかもしれません。しかし、ストレスをそのままの状態にしていると、心にも身体にも悪い影響を与えます。まずは、以下より、自分でできそうなところからはじめてみましょう。
1. 上司や同僚、家族・友人に相談をする
周りの人に相談するのもひとつの方法です。仕事の状況を容易に理解できる同じ職場の人を相談相手にすることにより、ストレスに対する対応が可能になるかもしれません。例えば、体調が悪いときは休暇をとる、異動をさせてもらうなどです。人と話すことはストレス解消になることがあります。
2. セルフケアをする
周りの人に相談するのは少し抵抗があるという人は、自分で簡単にできることからはじめてみましょう。体調が良い日は、近くを散歩するなどカラダを動かすことをおすすめします。漢方の考えでは、ストレスを感じているときはカラダの中の気が滞っていると考えられており、カラダを動かすことにより気が巡り気持ちが楽になると言われています。
3. 医療機関で相談をする
カラダの状態が改善しない人は、専門家に相談することをおすすめします。「これくらいの不調で相談してもいいのかな?」と不安に思う人もいるでしょうが、少しの不調でも問題ありません。できるだけ早く相談してみましょう。
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ストレス症状におすすめの漢方薬は?
ストレスは、カラダだけでなくココロにもさまざまな影響を与えます。自分の体質や症状に合わせた漢方薬を選んでいきましょう。ストレス症状に使われる漢方薬には次のようなものがあります。
■半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
気分が落ち込む、のどが詰まったような感じがする、咳払いをよくする、動悸・めまいなどの症状がある方に適した漢方薬です。これらの症状は疲労やストレスがたまっているため、気が滞っている方に起こりやすい症状です。半夏厚朴湯は気のめぐりをよくし、ストレスによって生じる不安や気分の落ち込み、のどのつかえ感、動悸、めまいなどのココロとカラダの不調を改善します。
■抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
ささいなことでイライラする、気持ちが抑えられない、寝ている間に歯ぎしりをするなどの症状がある方に適した漢方薬です。仕事が思う通りにいかなかったり、ちょっとした言葉で不快に感じたりする方に向いています。血の不足をおぎない、気のめぐりをよくして、ストレスによって生じるイライラや神経のたかぶり、不眠などの症状を改善します。
■柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
気持ちに落ち着きがない、イライラして気持ちが高ぶる、なかなか寝つけない、眠りが浅い、動悸がするなどの症状がある方に向いている漢方薬です。仕事に焦りがあったり、プレッシャーを感じたりする方に向いています。気のめぐりを良くし、カラダの上の方にこもった熱を冷まして、精神不安や不眠、動悸などの症状を改善します。
■加味帰脾湯(かみきひとう)
女性の症状によく使われる漢方薬です。なかなか眠れない、眠りが浅く、よく夢を見る、疲れている、胃腸の調子が悪いなどの症状がある方に向いている漢方薬です。仕事に対する不安などを落ち着かせる作用があります。カラダの足りない血を補い、気をめぐらせて、貧血や心身の疲れ、不眠や精神不安などの症状を改善します。
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監修
森林公園メンタルクリニック
稲見 浩太先生