目次
- 不眠症とは?漢方ではどう考える?
- 【不安感で眠れない】気滞(きたい)タイプ
- 【神経過敏で眠れない】気逆(きぎゃく)タイプ
- 【体力がなくて眠れない】 気血両虚(きけつりょうきょ)タイプ
- 【漢方で】眠れるように心身のバランスを整えることで、良質な睡眠を
- 【漢方薬紹介】不眠症に用いられる主な漢方薬
- 眠れるようになるための、5つの生活習慣アドバイス
新型コロナウイルス感染症の影響で、ストレスや不安を抱える人が増加しているといわれています。厚生労働省が実施した「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルス調査※」によると、コロナ禍が続く中で「半数程度の人が何らかの不安等を感じている」という結果も!ストレスは心身の不調と関係が深く、中でも不眠はあらわれやすい症状のひとつ。「ベッドに入ってもなかなか寝つけない」「夜中に何度も目が覚める」など、眠りに悩みがあるのなら、漢方薬を試してみませんか? 今回は、東洋医学の視点から“不眠”を解説するとともに、不眠症に用いられる漢方薬についてご紹介します。
※2020年9月インターネット調査・回答数10,981件
不眠症とは?漢方ではどう考える?
ひとくちに「眠れない」といっても、原因や症状は人それぞれ。多くの場合、不眠は、加齢やストレス、環境の変化、不規則な生活習慣など、さまざまな要因が重なって起こり、代表的なタイプとして、寝つきが悪い「入眠障害」、夜中に目が覚めてしまう「中途覚醒」、早朝に目が覚めてしまう「早朝覚醒」、ぐっすり眠った気がしない「熟眠障害」にわけられます。東洋医学では、不眠は「気(き)※1」「血(けつ)※2」の異常によって起きることが多いと考え、以下のように分類しています。
※1「気」とは目に見えないが人のカラダを支えるすべての原動力のようなもの
※2「血」とは全身の組織や器官に栄養を与えるもの
【不安感で眠れない】気滞(きたい)タイプ
「気滞」とは、気のめぐりがスムーズでなく、エネルギーが停滞している状態。気分がふさぎ、常に不安感があったり、ささいなことが気になったりして、寝付きが悪くなります。
☑ イライラ
☑ 情緒不安定
☑ 不安感
☑ 憂鬱感
☑ 胸やのどのつまり感
☑ お腹の張り
【神経過敏で眠れない】気逆(きぎゃく)タイプ
「気逆」とは、気が本来とは逆の方向に流れる状態。人は夜になると、気から生じる熱を鎮めることで眠ります。しかし、このタイプは気の熱を十分に鎮められず、寝つきが悪く、一旦寝ついても夜中に目覚めやすい傾向にあります。
☑ 神経過敏
☑ 怒りっぽい
☑ イライラ
☑ 焦燥感
☑ のぼせ
☑ ほてり
☑ 動悸
☑ げっぷ
☑ 吐き気
【体力がなくて眠れない】 気血両虚(きけつりょうきょ)タイプ
「気血両虚」とは、快眠のために大切な気、血が不足し、はたらきが低下している状態。ぐっすり眠るエネルギーが足りないことから、「疲れているのに眠れない」「熟睡感を得られない」といった症状が起こりがちです。
☑ 全身倦怠感
☑ 気力がない
☑ 疲れやすい
☑ 血色が悪い
☑ 貧血気味
☑ 食欲不振
☑ 胃もたれ
☑ 食後の眠気
☑ 寝汗をかきやすい
【漢方で】眠れるように心身のバランスを整えることで、良質な睡眠を
不眠に対して、東洋医学では「眠ること」そのものに対処するのではなく、「眠りを妨げる原因」を含めたアプローチを行います。たとえば、気が滞って眠れない場合は気のめぐりを促す処方、イライラして眠れない場合は、気分を落ち着かせる処方というように、不眠が起きている背景を考慮して薬を用いるのも西洋医学とは異なるところ。直接的に眠りを誘発するのではなく、“眠れるように心身のバランスを整える”ので、より自然なかたちで“良質な睡眠”へと導くことができるのです。
次は、不眠症に用いられる代表的な処方をご紹介しましょう。
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【漢方薬紹介】不眠症に用いられる主な漢方薬
■柴胡加竜骨牡蛎湯 (さいこかりゅうこつぼれいとう)
<ストレスなどによるイライラからくる不眠に>
ストレス、疲れなどで滞った気をめぐらせ、カラダにこもった熱を冷ますとともに、ココロを落ち着かせる処方。精神的ストレスからくる不眠を改善します。体力中等度以上で仕事や人づき合いなどでイライラし、思い悩んでしまう人、試験前などに緊張して眠れない人などに効果的です。
■黄連解毒湯 (おうれんげどくとう)
<のぼせ、ほてり、興奮をともなう不眠に>
のぼせやほてりがあり、イライラ・カッカして眠れないタイプの不眠におすすめ。体力中等度以上でがっちりタイプ、体力がある人に向いている処方です。体の熱を冷まし、興奮を鎮める作用があり、スムーズな入眠をサポートします。
■桂枝加竜骨牡蛎湯 (けいしかりゅうこつぼれいとう)
<神経過敏からくる不眠に>
体のバランスを整える「桂枝湯」をベースに、「竜骨」「牡蛎」等を加えた処方。これらが一緒に働くことで、気、血のバランスが整い、不安定な精神を落ち着かせます。「常に不安で落ち着かない」「戸締りや火の元など、ささいなことが気になってしまう」といった神経過敏型の不眠に効果的です。
■抑肝散加陳皮半夏 (よくかんさんかちんぴはんげ)
<神経の高ぶりからくる不眠に>
「肝」※の高ぶりを抑える「抑肝散」に「陳皮」「半夏」を加えた処方。自律神経のはたらきを安定させるとともに、血を補い、気、血をめぐらせることによって、いらだち、怒り、緊張などを和らげ、眠りやすいコンディションに整えます。
※漢方では、「肝」は、「肝臓」だけでなく、感情のコントロールや自律神経系の機能も含めた幅広い概念で考えます。
■加味帰脾湯 (かみひきひとう)
<不安や気分落ち込みによる不眠に>
眠りに導くために必要な血を補い、気をめぐらせることによって気持ちを落ち着かせ、不眠を改善します。体力中等度以下でストレスによる不安感、気分の落ち込み、焦りなどからくる不眠に頼りになる処方です。
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眠れるようになるための、5つの生活習慣アドバイス
よく眠るためには、生活のリズムを整えることも大切です。5つの生活習慣アドバイスをご紹介します。できることから、取り入れてみてはいかがでしょう。
1. 規則正しい生活と食事を心がける
眠れても、眠れなくても、起床時間を極端にずらさないこと。そして朝起きたら、まずは太陽を浴びましょう。太陽光を浴びると体内時計がリセットされ、夜、自然に眠くなるように睡眠リズムが整ってきます。食事は朝昼晩と3食規則正しく摂ることと、栄養のバランスを意識しましょう。
2. 日中、適度な運動をする
運動にはストレス解消や自律神経を整えるはたらきがあり、良質な睡眠を促すことが知られています。
ウォーキングや軽いランニングなどの負担が少なく長続きできるような運動習慣を取り入れてみてはいかがでしょう。
3. ぬるま湯で入浴
入浴は、就寝の2時間ほど前にするのが理想的。38~40℃くらいのぬるめのお湯に25~30分ほど浸かることで、より誘眠効果が得られやすくなるとされています。
4. 就寝前に喫煙やカフェインをとらない
寝る前の喫煙は睡眠を妨げる原因になるので、避けたい習慣です。カフェインの摂取も、入眠を妨げたり、睡眠を浅くしたりする可能性があるため、就寝前3~4時間からは控えたほうが良いでしょう。
5. 寝る前にスマホを見ない
テレビやスマホ、パソコンも要注意。脳を刺激するため、寝る直前まで見ていると眠気が起きづらくなります。寝る1時間前にはスイッチオフを心がけてください。
「よく眠れない…」という人は、悩みを抱え込まず、専門機関を受診することをおすすめします。自分でも気がつかない不眠の原因が明らかになるかもしれません。不眠の原因は別の病気だった、という場合もあります。
漢方薬を処方してくれる病院もありますので、自分にあった漢方薬を相談してみるのもよいでしょう。
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睡眠はQOL(Quality of life=生活の質)を左右する、とても重要な要素です。自然な睡眠リズムで休息をとって、日々いきいきと活動できるようにしましょう。
監修
乾 真理子