くらしを豊かにするモノづくり #03 おくすりパクッとねるねる編
お子さまの服薬をサポートする商品「おくすりパクッとねるねる」。商品誕生までの苦労や部署を超えた連携、商品をお客さまに届けるまでの想いを聞きました。
Member
クラシエ薬品株式会社
関越医薬支店(MR)
永井 辰憲
クラシエ薬品株式会社
東京第一医薬支店(MR)
松阪 萌々子
クラシエ株式会社 フーズカンパニー
食品研究所第一研究部
機能食品グループ
瀧川 雄太
クラシエ株式会社 フーズカンパニー
マーケティング室菓子部
木下 優
クラシエ株式会社 フーズカンパニー
マーケティング室菓子部
今村 翔大
クラシエ株式会社
ホームプロダクツカンパニー
事業企画室企画部
本田 涼
クラシエ株式会社
ホームプロダクツカンパニー
営業統括室営業統括部
坂本 博樹
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「ねるねるねるね」で
楽しく服薬してほしい
2023年10月にお子さまが楽しく前向きに薬を飲めるようにと「おくすりパクッとねるねる」が発売されました。この商品が生まれたきっかけは何でしたか?
最初は、重度の子どもたち向けに高度専門医療を提供する国立成育医療研究センター(以下、成育医療センター)の薬剤部の先生から「ねるねるねるね」を使って、子どもの服薬をサポートする商品ができないかというご相談をいただいたことがきっかけです。「まずは薬品部門に」とお電話をくださったので、上司である永井さんに相談をしたことが始まりでした。
成育医療センターの先生方は「少しでも子どものストレスを和らげたい」という思いで模索したところ、「ねるねるねるね」などで服薬をさせたという古い論文を発見したことから、着想されたそうです。松阪さんから連絡を受け、支店を通じて本社に連絡したところ、みんながすぐに興味を持って話をフーズ部門まで通してくれました。
一番初めに話を聞いたときに、みんなが「こういうのがあったらいいよね」と意見が一致したので、話が具体的に進んだのです。先生方は「少しでも楽しく薬を飲ませたい」と日々試行錯誤し、実際に「ねるねるねるね」で試していた事例もあったようです。
成育医療センターの先生方のただひたすら「子どもたちのために」という姿勢が、こちらも“ぜひ一緒に作り上げたい”というモチベーションになりました。
※国立成育医療研究センターとの共同研究成果に基づき、クラシエが商品化しました。
そして、実際の開発に入るのですね。
最初は服薬補助の観点から当時の新規・食品グループが担当していたのですが、デザインや形状を考えると、知育菓子®の「ねるねるねるね」チームの方がスムーズに開発を進められるという判断になりました。パッケージの中にトレイやスプーンを入れることは「ねるねるねるね」やその他知育菓子®の標準仕様でもあり、知見がありました。
僕は2020年に入社し、約半年間の研修テーマとして、「ねるねるねるね」の特性を生かした服薬補助食品の開発に取り組んでいました。当時は商品化されるとは思っていませんでしたが、2021年の頭ぐらいに完成に近いものが見えてきて、発売が現実味を帯びてきました。
私が担当になった時には、すでに瀧川さんが、「ねるねるねるね」のふわふわした物性を生かした試作品を作っていました。私が開発に参加した後は、フレーバーや食数、店頭化や店頭での見え方などを考慮したサイズや形状など、仕様の検討を進めました。形になってからは、実際に1〜9歳のお子さまに会場で使用してもらい、「作業性に問題がないか」、「お薬の苦味を感じにくくなっているか」、「楽しく前向きにお薬* を飲めているか」などを調査しました。お客様が購入しやすいことはもちろん、企業として商品提供を継続しつづけることができることを考慮した価格設定を検討し、受容性があるかを確認していきました。
*薬ではなく、苦みのある偽薬をつくり調査
服薬補助食品として
初めてのチャレンジ
商品開発にはどのような苦労がありましたか?
服薬補助食品というのは嗜好品ではないので、砂糖が主原料の「ねるねるねるね」がふさわしいのかという議論もありました。ただ、調査を通じて「楽しく前向きに薬を飲んでほしい」という保護者の思いはわかっていましたし、「ねるねるねるね」の泡沫状の物性に自体にマスキング効果があることもわかっていたので、1日3回薬を服用することを考慮して、お菓子感覚で服薬ができるように、瀧川さんには砂糖の使用量を抑えるよう開発してもらいました。
アレルゲンを使わないでほしいというリクエストもいただきました。これが難しくて(笑)。「ねるねるねるね」はもともと卵白を使っており、当初は卵白を大豆に置き換えるつもりでしたが、特定原材料に含まれる大豆も使えないとなり……。試行錯誤の結果、「スーパーソーダガム」という商品が過去にあったのですが、その商品で使用していた2種類の原料を同じように併用すると、卵白を使用した時のような物性を再現できることがわかりました。そうしてようやく「ねるねるねるね」に近い品質のものができあがったんです。トレイの設計や味についても、研究所とマーケティング部門のメンバーや、成育医療センターの先生方と議論を重ねながら改良していきました。
私は「できた商品をどのように患者様やお客様に届けるのか」という部分に携わってきました。今回の服薬補助の商品はお菓子ではなく服薬補助食品としての取り扱いになります。服薬補助食品についてお客様に知っていただく方法としてはドラッグストアと調剤薬局のような店舗様に商品をお取り扱いいただく事が重要であると考えましたが、その為には過去にお取引の無い流通の方々へもご提案を行う必要がありました。
はじめてお取組みされた流通で、全くの新商品を新規で扱っていただけたのはすごいことだと思います。
「ねるねるねるね」のブランド力も後押しとなりましたが、新しい価値を世の中に提供できる可能性を感じていただけたことが、ご提案のチャンスに繋がったと思います。
フーズの担当の方から「ねるねるねるね」のブランドと特長を活かして既存品とは異なるニーズの新たな提案を考えているというお話を聞き、私たちも大変共感する部分がありました。今後それをどのようなチャネルや売り場で展開していくかについて、意見交換をさせていただきました。
色々と意見交換をすることができ、従来の食品中心の店舗様以外にもお取り扱いいただける可能性があるのではないかと考えが広がりました。沢山のお客様にこの商品のことを知っていただくために、何がベストなのかをしっかり考えることができたと思います。
今回はクラシエとしてはいままでにない新しい発想の商品でしたが、何度かやりとりを重ねていく中で、今村さんからこの商品にかける熱量を感じました。私たちもその姿を見て、一緒にこの商品を盛り上げていきたいと考えました。
今村さんはスタートの段階から、業界の枠を超えて情報収集に努めていることが印象的でした。他業界の状況も丁寧に把握しながら、全体を俯瞰的に捉えて提案を進められており、そのことが多くのお客様に商品をお届けする一つのきっかけとなったように感じます。