漢方について
東洋医学の主役といえる漢方。今、多くの医療機関で漢方薬が処方されるなど、東洋医学の可能性について大きな期待が寄せられています。この秘めたるパワーをもった漢方のことをもっと知りたいという方へ贈る、10分で読める漢方コラムです。
関節痛の漢方治療と養生法
関節痛の主な原因
関節痛は関節周辺で生じる痛みのことをさします。関節痛の主な原因は以下のとおりです。
- 自己免疫疾患
- 運動等により軟骨が擦り切れた状態で起こる炎症
- ひざ関節の骨の一部に壊死のような変化が起こり荷重によって陥没してしまう
- 年齢とともに軟骨が擦り減る など
このような原因があり、主に中高年の方々を悩ませています。
鎮痛薬を飲んでも痛みが続くことがあります。また、長期に飲むと胃が荒れたり、お薬の種類によっては骨粗鬆症などの重篤な副作用を引き起こしたりすることもあります。
中医学では関節痛のことを「痺症(ひしょう)」といいます。痺症には主に「行痺(こうひ)」「痛痺(つうひ)」「着痺(ちゃくひ)」「熱痺(ねつひ)」という4種類に分類され、それぞれ病態と治療方法が異なります。それでは、順番に解説していきます。
行痺(こうひ)
外感頭痛とはかぜや感染症など、外部からの侵入(外邪)によって発症する頭痛であり、比較的強めの痛みが多く見られます。急性頭痛の多くは外感頭痛に該当します。
痛痺(つうひ)
痛痺の特徴は関節の痛みが固定されていて、寒さによって悪化することです。痛みで歩けなくなる場合もあります。温めると痛みはやわらぎますが、関節運動に障害があったり、皮膚が冷たく感じたりすることもあります。これは主に寒邪(かんじゃ)の侵入による経絡の流れの阻害、栄養(気血)の循環不良、関節部の脈絡の閉塞によるものです。
治療方針は寒邪を取り除き、脈絡を疎通、風邪や湿邪を追い出すことで、これによって痺れを取り除き、痛みをやわらげます。
着痺(ちゃくひ)
着痺は強い湿気により関節が重く、痛みや腫れが生じます。痛みはそれほど強くありませんが、しびれたり、関節の動きが悪くなったり痛みを感じたりします。また水分が関節内に溜まるため、関節が腫れます。湿気は経絡の流れを遮断するため、筋肉も皮膚も麻痺したりします。
治療方針は水分を排泄させ湿邪を取り除くことで、脈絡の疎通により痛みを緩和します。
熱痺(ねつひ)
熱痺は風熱の邪(何らかの熱症状の要因)が侵入し、関節に発赤、腫れ、熱および痛みを引き起こします。これは移動性の場合もあり、局部の紅斑や皮下結節も現れたりします。
治療方針は熱邪(ねつじゃ)の除去で、脈絡を疎通し、痺れや痛みをやわらげます。
養生方法について
養生の方法は主に以下があげられます。
- 適切な運動
- 生活習慣の見直し
- 食の改善 など
関節痛の患者に対しておすすめの運動は水中運動や気功、太極拳などの激しくない運動です。無理のない範囲で運動に取り組んでみてください。
生活習慣については、湿度が高い、高温、寒い環境を避け、適切な衣服の調整や飲食の工夫をしてみてください。また、毎日7時間程度の睡眠、そしてストレスがない環境に身を置くことも重要です。
関節痛予防におすすめの食材
原因ごとに関節痛予防におすすめの食材の一例をご紹介します。
生ものや冷たいもの、脂っこい物、甘い物は控えるようにしましょう。
行痺
生姜、ネギ、蓮根、大根、白菜、桑の葉、くず粉、菊の花 など
痛痺
ネギ、生姜、ニラ、山椒、紫蘇、玉ねぎ、栗、黒豆、よもぎ、シナモン、黒糖 など
着痺
ネギ、シナモン、山椒、生姜、ハトムギ、とうもろこし、よもぎ、コーン茶 など
熱痺
蓮根、キュウリ、たけのこ、苦瓜、冬瓜、ゆり根、ナツメ、クチナシの実 など
関節痛予防におすすめの漢方の一例をご紹介します。
桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)
「桂枝加苓朮附湯」は、胃腸が弱く、冷え症の方の関節痛、神経痛などに使用します。身体を温め、血液循環を促進し、痛みをやわらげる作用があります。
疎経活血湯(そけいかっけつとう)
「疎経活血湯」は、経絡の流れを改善し余分な水分を除き、「気」「血」の巡りを整え、血のはたらきを活発にすることで痛みやしびれを改善します。
血流を良くすることでさまざまな症状に対応することを目的とした処方もいっしょにご紹介いたします。
冠心逐瘀丹(かんしんちくおたん)
「冠心逐瘀丹」は中国では冠心2号包変方という処方で、中医学的にいう「活血化瘀止痛」の効能があります。これは、血液の流れが悪くなった状態、血液の粘りが高くなり、血液が血管内に滞留している「瘀血(おけつ)」という状態に対して、血流を良くすることで改善します。瘀血が発生する場所にもよりますが、痛み、出血、こぶ、経絡の不通等の問題を引き起こします。
血液循環を良くすることは痛みの改善と予防に有効です。
漢方には上記以外にも血液の巡りを良くしてくれることを目的とした処方もありますので、専門家に相談をされることをおすすめします。