漢方について
東洋医学の主役といえる漢方。今、多くの医療機関で漢方薬が処方されるなど、東洋医学の可能性について大きな期待が寄せられています。この秘めたるパワーをもった漢方のことをもっと知りたいという方へ贈る、10分で読める漢方コラムです。
季節別、肌トラブルに対応する漢方あれこれ
漢方で美肌を
季節の変化で起こる外界からの影響(漢方では六淫といい、風、暑、湿、燥、寒、火に分けられる)は、肌荒れの原因となりやすく、肌にトラブルが起こる前にしっかりと対応しなければなりません。漢方(中医学)によるスキンケアの基礎知識を知っておくことは、美肌を作るためにも非常に役立ちます。飲む漢方と塗る漢方をあわせた「内外同治(ないがいどうち)」という漢方独特の対処法によって、肌のトラブルに対応することが可能です。
春の肌トラブルと対処法
春は、気温の変化が激しい時季です。冬の間には乾燥によるダメージを受けて、肌表面のバリア機能や保湿機能が低下していますが、気温が上昇してくると、体の新陳代謝も活発になり、皮脂や汗の分泌量が増えてきます。さらに、花粉や黄砂など肌トラブルの原因となる刺激物質も飛んでいます。そのため、吹き出物などの肌荒れ症状が起こりやすくなります。春風にのった黄砂やスギ、ヒノキ花粉などで肌が刺激され、赤み・かゆみが出やすくなるのです。
予防としてはアーモンドスライス、スギナ、ハトムギなどの薬膳スープを毎日2回程度飲むことをおすすめします。軽症の場合、中医の現場では「小青竜湯」などを使用することがあります。外用ではラベンダーやマリーゴールドなど、肌荒れ予防に効果があるとされるハーブウォーターを使います。
夏の肌トラブルと対処法
夏肌の最大の敵は紫外線です。紫外線を浴びると肌の細胞がダメージを受けるため、早く修復させようと肌の生まれ変わりのスピードが速まります。その結果、未熟な細胞を生み出してしまい、バリア機能が低下します。さらに冷房による湿度の低下も、肌表面の保湿機能やバリア機能を低下させてしまいます。そのため、紫外線はさらに肌の奥へと侵入してしまい、肌のキメが乱れたり、くすみとシミの原因になったりします。とくに敏感肌の場合は肌のダメージを受けやすくなります。また、汗が肌に残れば、かゆみの原因になってしまい、皮脂分泌も増え、テカリやニキビができやすくもなります。そして肌表面のpHバランスがくずれ、細菌が繁殖しやすい状態になります。敏感肌の人は注意が必要です。
予防としては乾燥ニガウリ、シソの葉、緑茶などの薬膳茶を毎日2回程度飲むことをおすすめします。軽症の場合、中医の現場では「桂枝茯苓湯」や「冠心2号方」などを使用することがあります。外用ではレモングラスやリンデンなど、皮脂の調整によいとされるハーブウォーターを用います。
秋の肌トラブルと対処法
秋は、季節の変わり目にあたるため、肌はより敏感になりやすい時季です。秋の始めは、夏の間に浴び続けた紫外線の影響で保湿機能やバリア機能が低下し、さらにシミやそばかす、くすみが目立ちやすくなります。そして冬に向かって気温や湿度の変化も大きく、秋の終わりは気温の低下により皮脂や汗の分泌が減少するため、目元や口元、頬などにカサつきが目立ち始めるようになります。
予防としてはウワウルシ、ユキノシタなどの薬膳茶を毎日2回程度飲むのがおすすめです。軽症の場合、中医の現場では「芍薬甘草湯」などを使用することがあります。外用ではローズマリーやマシュマロウなど、肌の修復、弾力回復によく使うハーブウォーターを用います。
冬の肌トラブルと対処法
冬は、寒さから汗や皮脂が大幅に減少します。血行も悪くなりやすい冬は、肌にとって過酷な季節です。肌の水分量が減り、天然のクリームと呼ばれる皮脂膜が不足してしまうので、肌はカサカサして乾燥しやすくなります。このため、バリア機能やターンオーバー(肌の生まれ変わり)を低下させ、敏感肌の症状を引き起こすきっかけになりかねません。室内の暖房も乾燥に追い打ちをかける一因です。また、血行が悪くなることで肌が暗く見えたり、くまが目立ってきたりするほか、肌を健康に保つために必要な酸素や栄養素が届きにくくなるため、バリア機能が低下し、さらに刺激に弱い肌になってしまいます。
予防としては高麗人参、ショウガ、ナツメなどの薬膳スープを毎日2回程度飲むのがおすすめです。軽症の場合、中医の現場では「補中益気湯」を使用することがあります。外用はローズマリーやジャーマンカモミールなど、肌の修復、弾力回復によく使うハーブウォーターを用います。