漢方療法推進会 こころとからだに自然の力

漢方について

漢方ってすばらしい! ~10分で読める 漢方医学コラム~

東洋医学の主役といえる漢方。今、多くの医療機関で漢方薬が処方されるなど、東洋医学の可能性について大きな期待が寄せられています。この秘めたるパワーをもった漢方のことをもっと知りたいという方へ贈る、10分で読める漢方コラムです。

― 第6回 ―

肌のトラブルを防ぐ、中医学的予防法

上海中医薬大学附属日本校
校長 矢尾 重雄(医学博士)

肌トラブルの三つの原因

肌を気にする女性イメージ

肌の状態というのは、毎日の生活習慣・季節の変わり目・体調などに大きく影響されます。コンディションを日々細かく観察し、ケアすることで、ツヤや弾力があり、吹き出物などがないきれいな肌を保ちたいものです。肌トラブルの原因は基本的に3つあります。まず、季節や居住環境などの「外因」です。これには、肌の乾燥、紫外線、不衛生などがあげられます。2つ目は年齢や体調などの「内因」によるものです。3つ目は精神的なストレスによる「不内外因」です。

紫外線を浴び過ぎるとシミが発生しやすくなったり、肌のハリや水分を保持する力が低下したりして、赤み・炎症・乾燥につながります。また、エアコンを使用すると肌が乾燥しやすくなります。スキンケアをしないまま寝てしまったり、汗が出るとクリームを使用せず化粧水のみで済ませてしまったりすることも良くありません。過剰な保湿により肌の表面がベタつくと、肌呼吸がうまくいかず、またバリア機能も低下し、細菌など微生物が増えやすい環境になります。さらに、洗顔のし過ぎや化粧水をパッティングで浸透させようとする行為が肌に負担をかけてしまっていることもあります。

暗い部屋でスマホを見ている女性イメージ

不規則な生活リズム、ストレスなどによる過度なダイエットや偏食などは、肌荒れの「内因」になってしまいます。パソコンやスマートフォンのブルーライトを浴びてしまうことで睡眠の質が低下し、睡眠不足になって自律神経のバランスが崩れてしまうことも原因の1つと考えられます。さらに、暴飲暴食による腸内環境の悪化や便秘などが、肌荒れを引き起こすこともあります。なお、女性の場合は、月経周期によってホルモンバランスが乱れやすく、肌荒れが起こりやすくなるということもよくあります。

肌トラブルを防ぐ中医学的予防法

薬膳イメージ

中医学的な肌の養生については、主に薬酒、薬茶、薬膳により体質を調整し、瞑想によりストレスを改善するという手法があります。
そこで、手軽にできる薬酒・薬膳スイーツをご紹介します。
(上海中医薬大学附属日本校 『中医健康養生学講座 テキスト』より引用)

紫蘇(シソ)の薬酒

シソイメージ

紫蘇は解毒、消化を助け、発汗、発散を促すデトックス効果が期待できます。肌の新陳代謝を高め、血液循環を良くします。蜂蜜も美肌効果の高い食材として知られています。

材料

  • 青じそ:10枚
  • ハチミツ:大さじ5杯
  • 焼酎:1リットル

作り方

  1. 青じそはよく洗って水気を取る。
  2. 清潔な密閉容器(ガラス瓶など)に材料をすべて入れてしっかりフタをし、冷暗所に2週間ほど置く。
  3. 寝る前に、そのままおちょこで1杯ほど飲む。水、お湯で割って飲んでもよい。

胡桃(クルミ)汁粉(2人前)

クルミイメージ

胡桃は中国では「胡桃肉(コトウニク)」といい、昔から美容と若返りの妙薬として知られていました。「補腎温陽」=腎のはたらきを助けて温める力を蓄え、若さや美しい肌を維持します。
「健脳」、つまり若々しい脳を保ち、「潤腸通便」=お通じを良くし老廃物を代謝するので肌を美しく保ちます。胡桃汁粉は、かの西太后が美容と若さのために飲んでいたとして有名です。

材料

  • むきクルミ:60g
  • 砂糖:大さじ3~4
  • 塩:少々
  • 水:250cc

作り方

  1. 鍋に水と砂糖、塩を入れて溶けるまで温める。
  2. くるみと①をミキサーに入れ、なめらかになるまでかき混ぜる。
  3. 器に注いでできあがり。

甘さは好みで加減する。水の代わりに豆乳でもよい。

肌の養生にぜひ一度、これらをお試しいただくといいでしょう。
肌トラブルが起きてしまった場合には、漢方薬での治療もおすすめします。

上海中医薬大学附属日本校 校長 矢尾 重雄(医学博士)

上海中医薬大学附属日本校
校長 矢尾 重雄(医学博士)

矢尾重雄先生プロフィール

  • 1958年3月生まれ(中国名 姚重華)
  • 1978年2月上海中医薬大学医療学部入学。1984年7月卒業。
  • 1984年8月より上海市第一人民病院で臨床医として勤務。中国の国宝級の名老中医に師事。臨床医として経験を積んだのち日本に渡る。
  • 1994年3月神戸大学大学院医学研究科(分子病理学)で医学博士の学位を取得。
  • 1994年4月よりP&G(プロクター・アンド・ギャンブル社)、1997年9月より大塚製薬株式会社にて二十数年間にわたり医薬品開発と臨床開発に従事。
  • 2017年12月より上海中医薬大学附属日本校校長に就任。長年培った医薬経験を生かして、日本の東洋医学の発展に貢献している。

上海中医薬大学付属日本校ホームページ