漢方薬名解説

一般的に「せき」に使われる漢方薬

麦門冬湯(ばくもんどうとう)

目次

コンコンと乾いたせきが出る、せきこむ方向けの漢方薬

漢方では、肺はいわゆる呼吸(酸素と二酸化炭素の交換)だけでなく、2つのはたらきがあると考えます。ひとつが「気(き)」「水(すい)」が外に向かって出る、あるいは上に向かって上がる、というはたらき。外向きに発散するイメージから、これを「宣散(せんさん)」と呼びます。もうひとつが、肺の内側に取り入れた「気」や「水」を下に向かって下げていくはたらきで、これを「粛降(しゅくこう)」と呼びます。

呼吸の場合、漢方では単なる空気ではなく「気」の流れとして考えます。外向きに「気」が流れる、内向きに「気」が入ってくる。空気の出し入れを「気」の動きとしてとらえるわけです。

健常な方なら、この「気」の出し入れを健全に保てます。しかし、乾燥などの影響で出し入れのバランスが乱れてしまうと、せきこむような症状となります。漢方では、この出し入れのバランスを整えることでせきを鎮めようと考えます。また、肺のうるおいがなくなると、エネルギーが弱って「気」が乱れることで、せきが出てしまいますが、体がうるおえば、肺もうるおいせきが止まると考えます。

「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」は、「気」の通り道である気管全体をうるおして、からぜきなどに効果を発揮する処方です。からぜきが続く、のどにたんがひっかかるような感じがして不快、といった症状の方におすすめできる漢方薬です。

効能・効果

体力中等度以下で、たんが切れにくく、ときに強くせきこみ、又は咽頭の乾燥感があるものの次の諸症:からぜき、気管支炎、気管支ぜんそく、咽頭炎、しわがれ声

配合生薬(成分・分量)

成人1日の服用量18錠(1錠200mg)中
麦門冬湯エキス(1/2量)…2000mg〔カンゾウ・ニンジン各1.00g、コウベイ・ハンゲ各2.50g、タイソウ1.50g、バクモンドウ5.00gより抽出。〕
添加物として、乳糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸Mg、メタケイ酸アルミン酸Mgを含有する。


生薬ファイル

成分に関連する注意

本剤は天然物(生薬)のエキスを用いていますので、錠剤の色が多少異なることがあります。

用法・用量

次の量を1日3回食前又は食間に水又は白湯にて服用。

年齢1回量1日服用回数
成人(15才以上)6錠3回
15才未満7才以上4錠
7才未満5才以上3錠
5才未満服用しないこと

用法・用量に関連する注意

小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させてください。

注意点・副作用

使用上の注意
  • 相談すること
    1. 次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください
      (1)医師の治療を受けている人
      (2)妊婦又は妊娠していると思われる人
      (3)水様性の痰の多い人
      (4)高齢者
      (5)次の症状のある人
        むくみ
      (6)次の診断を受けた人
        高血圧、心臓病、腎臓病
    2. 服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください
      消化器食欲不振、胃部不快感
    3. まれに下記の重篤な症状が起こることがある。
      その場合は直ちに医師の診療を受けてください。
      間質性肺炎階段を上ったり、少し無理をしたりすると息切れがする・息苦しくなる、空せき、発熱等がみられ、これらが急にあらわれたり、持続したりする。
      偽アルドステロン症、ミオパチー手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
      肝機能障害発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振等があらわれる。
    4. 1カ月位(からぜきに服用する場合には1週間位)服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください
    5. 長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください

保管方法

(1)直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい所に保管してください。(ビン包装の場合は、密栓して保管してください。なお、ビンの中の詰物は、輸送中に錠剤が破損するのを防ぐためのものです。開栓後は不要となりますのですててください。)
(2)小児の手の届かない所に保管してください。
(3)他の容器に入れ替えないでください。(誤用の原因になったり品質が変わります。)
(4)使用期限の過ぎた商品は、服用しないでください。
(5)水分が錠剤につきますと、変色または色むらを生じることがありますので、誤って水滴を落としたり、ぬれた手で触れないでください。
(6)6錠分包の場合、1包を分割した残りを服用する時は、袋の口を折り返して保管してください。なお、2日を過ぎた場合には服用しないでください。

製品情報

【麦門冬湯エキス錠クラシエ】

麦門冬湯 第2類医薬品

「麦門冬湯」の詳細を見る
コンコンと乾いたせきが出る、せきこむ方向けの漢方薬です。

よくある質問

Q 服用して効果が出るまでにどれくらいの時間がかかりますか?
A 効果が出るまでの期間は、体質や症状によりさまざまです。用法・用量を守ってお飲みいただき、1カ月位(からぜきであれば1週間位)服用しても症状が良くならない場合は、服用を中止し、医師、薬剤師または登録販売者にご相談ください。
Q 「半夏厚朴湯」「麻杏甘石湯」「五虎湯」との使い分けを教えてください。
A 「麦門冬湯」は空気の乾燥やのどの乾燥感などがきっかけとなり、せき込んでしまう方に効果的な処方です。一方、「半夏厚朴湯」は精神的なストレスがきっかけとなり、のどがつかえたり、せき込んでしまったりする方に適した処方です。また、せきが強く、のどが渇いて呼吸が苦しい場合には「麻杏甘石湯 」が適しています。「五虎湯」は炎症傾向が強く黄色いたんを伴うような激しくせき込んでしまう方に効果的です。
Q 添付文書内の“相談すること”の欄には「水様性のたんの多い方」と記載がありますが、なぜでしょうか?
A 「麦門冬湯」は、乾いた粘膜に水分を与えてせきやたんの症状を改善する処方です。このため、もともと水分がある水様性のたんの多い方には適していません。たんの水分量が少なく、せきをしても切れにくい方に適しています。