ストーリーから見つける

思いのバトンを受け継いで、ロングセラーに新たな息吹を吹き込む。

2008年の発売以来、サロンの夏の風物詩として定着しているクラシエプロフェッショナルの「冷(ひやし)シリーズ」が、2023年にリニューアル。商品・ブランド開発のチームリーダーを担当したのは、入社4年目のNさんです。大きな改装に携わるのは初めての経験だったというNさんに、リニューアルにかけた思いを伺います。

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アイデンティティの核となる、「変えない部分」を見極める。

リニューアルにおける新たなチャレンジとして、ボトルに印刷するのではなくシュリンクフィルムを採用したことで、再現度が高いグラデーションを実現している。

自身にとって初めてのブランドリニューアルに臨むにあたって、Nさんは冷シリーズの前担当者や前々担当者に話を聞くことから始めたといいます。

「どんな思いでブランドを立ち上げたのか。どんなことを考えて改装に挑んだのか。これまでブランドを作ってきた人たちから、バトンを受け継ぐことが大切だと考えました」

さらに、ロングセラー商品だからこそ、今まで愛用してきた人たちが新しい商品を見て「冷シリーズのリニューアル版だ」と認識できることや、ネガティブな印象を持ってしまわないようにすることが重要だと考え、既存のユーザーの意見もじっくりと聞いたというNさん。社内外でのヒアリングを経て、最も大切にしたことは「変えない部分を見極めること」でした。

「他社商品もたくさんある中で、冷シリーズにしかないもの、アイデンティティの核となる部分は何だろうと考えた時、『冷』という漢字のロゴだと気づいたんです」

実は、自身が営業として現場に出ていた頃には、「隣の芝生は青く見えるじゃないですけど、他社商品を見て『横文字の商品名のほうが良いんじゃないか』と思ったこともありました」と笑うNさん。しかし、ヒアリングを重ねる中で、冷シリーズが既存のユーザーからいかに愛されているかを実感したと話します。

「今の冷シリーズが好きだと言ってくださるサロンの方がたくさんいましたし、このシリーズのボトルが店頭に並ぶと『今年もこの季節が来たんだね』とお客さまが言ってくださるという声もありました。そんな既存のお客さまの声をなくさないためにも、『冷らしさ』や『変わらない良さ』を大事にしたいと思ったんです」

漢字のロゴをアイデンティティとして残すと決めたNさん。そこから派生して、日本のメーカーらしさや和の良さを大切にしたいと考え、デザインに和のテイストを散りばめていきます。例えば、ボトルには江戸切子をイメージした模様を施し、藍染めを連想させる紺色や縹色(はなだいろ)を使用。また。毛髪補修成分として米ぬか発酵エキスEX*を配合し、デザインだけでなく成分でも和のテイストを取り入れました。
*「コメヌカエキス」+「サッカロミセス/コメヌカ発酵液エキス」+「DPG」

営業担当が商談の場で商品を語れるように、デザインやコンセプトのストーリー性や情緒感を重視。「ただモノを売るのではなく、『冷』を味わう時間を提案したいと考えています」

熱意を持って伝えるために、積み重ねたコミュニケーション。

こうして作り上げた新生・冷シリーズが世に出るにあたって、手ごたえは?と尋ねると、「正直、ありますね!」と冗談めかして答えるNさん。その後すぐに、「手ごたえがないと言ってしまったら、リニューアルに関わってくれた皆さんに失礼な気がして」と真面目な顔で付け加える姿から、社内外のコミュニケーションを丁寧に重ねてきたプロセスが垣間見えます。

多くの人たちとコミュニケーションを取りながらリニューアルを進めていく中で、Nさんが心がけていたのは「熱意を持って伝えること」だといいます。

「『自分はこう思うから、これをやらせてください』と熱意を持って伝えられなかったら、新しい挑戦はできないですよね。熱意を持って『こうしたい』と伝えるためには自信が必要です。だから自信を持てるようになるまで、先輩たちに何度も相談してディスカッションを重ねてきました」

そうやって自分の頭の中で思い描いたものを具現化してきたプロセスを、次にブランドを担当する後任者へと引き継ぐ際にもしっかりと伝えていきたいと、Nさんは冷シリーズのさらに先の未来を見据えています。

「これまで関わってきた人たちの思いやアイデンティティの核となる部分はきちんと継承しながら、これからも時代に合わせてブラッシュアップしていけるといいですね。そして、一軒でも多くのサロンの集客や収益性につながるブランド、理美容業界の文化に貢献していけるようなブランドを目指していけたらと思っています」