論文及び学会発表資料
研究所では
研究成果を対外発表しています。
過去に発表した論文及び学会発表をご紹介します。
ホームプロダクツカンパニー
- The sensitive skin might be mild atopic dermatitis?
-
発表年2019年学会・媒体IFSCC 2019 Conference ミラノ大会
皮膚が過敏な状態となるアトピー性皮膚炎では皮膚常在菌叢が変化していることが知られており、皮膚常在菌が肌の過敏化に関係しているのではないかと考え研究を行った。敏感肌群と敏感肌ではない群では異なる菌叢構成が認められた。さらに、皮膚常在菌S.aureus及びM.luteusによって神経細胞の軸索伸長の亢進が認められた。このことから、皮膚常在菌が皮膚に作用して神経伸長を促進する因子が誘導されることで肌の過敏化が起こっている可能性が示唆された。
- 髪の動きの美しさを測定する評価技術
-
発表年2019年学会・媒体第85回SCCJ研究討論会
シャンプーのCMなどでよく見る髪をなびかせる動き、これがアジア人特有の髪に求める美しさではないかと着目し、髪の動きの美しさを測定する装置を開発した。本評価装置は指に見立てた稼働部がスライドすることにより毛がこぼれ落ちる様子をハイスピードカメラで撮影、この画像を密度の高低で2色に検出し、各瞬間のそれぞれの面積値を測定、数値化することができる。これら評価技術を用いた各種処理毛髪の測定結果より、美しい髪の動きは“サラサラと束感なく、打ち寄せる波のような動きとともに、毛髪がすきまなく一本一本指からこぼれ落ち、その後毛先まで元の位置にまとまり おさまる”であると考察した。
- カルボニル化による水分保持能低下が髪の老け見えに影響する
-
発表年2019年学会・媒体第85回SCCJ研究討論会
本研究では、健康な日本人女性の40代~60代を対象に、同一人毛における毛髪の内部解析を実施した。その結果、加齢により黒髪と白髪のカルボニル化度の差が大きくなることが分かった。さらに、顕微フーリエ変換型赤外分光光度計(FT-IR)を用いた新規の毛髪内水分挙動測定方法の開発を行い、当該方法を用いた同一人毛による白髪と黒髪の水分挙動を評価した結果、白髪の水分浸透性が向上し、水分保持能が低下することを明らかにした。この差によって、高湿および低湿のいずれにおいても水分による髪の乱れが起きやすくなり、老けて見える一因になると推測された。
- キューティクルのバイメタル性コントロールによるヘアケア技術開発
-
発表年2019年学会・媒体日本化粧品技術者会誌
本研究では、キューティクルケアを目的として、ブリーチ処理によるキューティクルダメージの作用機序の解明を試みた。その結果、タンパク質の側鎖カルボキシ基イオン化に起因するバイメタル効果が、キューティクルのリフトアップを促進させることを明らかにした。この機序を「キューティクルのバイメタル性」として提唱し、このバイメタル性をコントロールする成分としてグルタミン酸を見出した。さらに、新たに開発したキューティクル剥離の可視化・定量化技術を用いてグルタミン酸の効果を解析すると、コーミングによるキューティクルの剥離量減少が明らかとなり、バイメタル性をコントロールすることによるヘアケア効果が認められた。
薬品カンパニー
- 質量吸光係数比で値付けした4-ヒドロキシ安息香酸エステルによる[6]-ギンゲロール定量法
-
発表年2019年学会・媒体日本薬学会第139年会
日本薬局方ではショウキョウ等に[6]-ギンゲロールの定量法が設定されている。[6]-ギンゲロールは高価であるとともに、化学的な面で安定性に課題があり、更にその性状から秤量等における操作性が悪い。今回、qNMRとHPLCを用いて4-ヒドロキシ安息香酸エステルについて[6]-ギンゲロールに対する質量吸光係数比を算出し、質量吸光係数比で値付けした4-ヒドロキシ安息香酸エステルを用いて [6]-ギンゲロール定量法が実施できるかを検討した。質量吸光係数比で補正した4-ヒドロキシ安息香酸プロピル及びベンジルを用いてショウキョウの[6]-ギンゲロールを定量したところ、[6]-ギンゲロールを用いて定量した結果と比較して差はいずれも3%以内であった。一定条件下の定量法においては質量吸光係数比で値付けした代替標準品の使用は有用であり、他の成分についても検討を進めたい。
- 葛根湯エキス及びその構成生薬におけるマイコトキシンの分析
-
発表年2019年学会・媒体日本薬学会第139年会
マイコトキシンとは、カビが産生する二次代謝物の中でヒトや動物に健康被害を及ぼす化合物である。現在、日本薬局方では漢方処方やその原料である生薬に対する規格はない。そこで、代表的な漢方処方である葛根湯と葛根湯の原料生薬7種について、12種のマイコトキシンの測定法を検討した。多成分系である生薬では、その妨害成分の影響により一部のマイコトキシンの測定が困難であった。これに対し、生薬の前処理法を検討し、妨害成分を取り除くことで、マイコトキシンを特異的に測定する方法を設定した。定量下限及び分析精度に問題がないことが確認できたため、本法は葛根湯及び葛根湯の原料生薬のマイコトキシン12種の測定法として用いることが可能と判断した。
- 「生薬及び生薬を主たる原料とする製剤の微生物限度試験法」の黄色ブドウ球菌試験における生薬付着菌の影響について
-
発表年2019年学会・媒体日本防菌防黴学会 第46回年次大会
第十七改正日本薬局方では特定微生物試験の大腸菌やサルモネラの判定において、生薬に付着する様々な微生物の影響を考慮し、酵素基質培地を用いることができる。しかし、黄色ブドウ球菌試験については酵素基質培地の記載が無い。そこで、本報告では生薬付着菌が黄色ブドウ球菌試験に与える影響を検証し、酵素基質培地を適用し、その有用性について評価した。
11検体を用い、黄色ブドウ球菌試験を行った結果、すべての生薬において黄色ブドウ球菌陽性と推定されるコロニーが見られたが、すべてBacillaceaeであり、生薬付着菌による偽陽性と考えられた。同検体に黄色ブドウ球菌を接種し、酵素基質培地を用いて試験した結果、黄色ブドウ球菌と生薬付着菌をコロニーの色調で区別することができた。ただし、付着菌の種類や数によっては、陽性コロニーの判別が困難な生薬も存在したため、さらなる検証が必要である。
- リアルタイムPCR法による生薬付着菌の検出法の検討(第3報)
-
発表年2019年学会・媒体日本防菌防黴学会 第46回年次大会
生薬は天然物であるため様々な微生物が付着している。製品の品質を担保するために、原料生薬、生薬エキス及び製品に病原微生物である大腸菌やサルモネラが付着しているかを試験する必要がある。しかし、これらの試験は培養法を採用しており、対象となる微生物が目視で観察できる様になるには数日間を要する。そこで、培養法の代替法として、迅速に試験結果が得られるリアルタイムPCR法の適応可否について検討した。
試験の結果、柴胡加竜骨牡蛎湯の構成生薬、エキス及び製剤に大腸菌及びサルモネラを添加した場合、リアルタイムPCR法により検出でき、培養法の代替法として適応できる可能性が示された。今後は他の生薬を用いてさらに検討する予定である。
- 生薬及び漢方エキス製剤の残留農薬分析における試料前処理法の検討
-
発表年2019年学会・媒体日本分析化学会第68年会
日本薬局方及び日本漢方生薬製剤協会自主基準として、一部の生薬、生薬製剤及び漢方製剤について、残留農薬に対する試験方法および基準が設定されている。しかし、この試験法は操作に熟練を要し、また、全工程の試験には長時間を要すため、迅速かつ簡便な試験法の導入が望まれる。そこで本研究では、葛根湯構成生薬及び葛根湯エキス製剤を対象に、主に食品分野で用いられる残留農薬迅速一斉分析法「STQ法」による分析を行い、本法の適用可否を検証した。
その結果、ほとんどの項目において、実用的な真度及び精度が認められ、定量に影響を与える妨害成分は確認されなかった。生薬、生薬製剤及び漢方製剤にSTQ法を適用することにより、多成分を含む複雑な試料でも、簡便かつ高精度に分析できる可能性が示唆された。
- タンジンの遺伝的多様性についての解析(第2報)
-
発表年2019年学会・媒体第42回 日本分子生物学会年会
タンジンは第十七改正日本薬局方に収載されており、基原植物はSalvia miltiorrhiza Bunge(Labiatae)の根と規定されている。中国産タンジンの流通品の状況としては、1970年代から栽培品の量が増えつつある。栽培地の違いによる遺伝子配列の違いがあると考えられるため、違いを知ることによって品質管理やトレーサビリティ管理に利用できる可能性がある。本研究では中国産各産地のタンジン遺伝子に対してMIG-seq法による解析を行った。
解析の結果、産地ごとに遺伝子配列に大きな違いがあることが分かった。また、同じ産地内サンプルでも遺伝的多型が見られた。今後はさらにサンプル数を増やし、MIG-seq法などを利用した調査を継続すると共に、形態等との相関性について調べる必要があると考える。
- 桜皮配合十味敗毒湯のエストロゲン様作用およびエストロゲン分泌促進作用について
-
発表年2019年学会・媒体医学と薬学 76(10) 1449-1456
皮膚においてエストロゲンは重要な働きを担っていることが知られている。十味敗毒湯は尋常性痤瘡やアトピー性皮膚炎によく用いられる漢方処方である。そこで、本研究では桜皮配合十味敗毒湯のエストロゲン様作用およびエストロゲン分泌促進作用について検討した。検討の結果、十味敗毒湯にはエストロゲン様作用があり、その作用には甘草と桜皮が大きく寄与していることが示唆された。更に十味敗毒湯にはエストロゲン分泌促進作用が認められた。一方、桜皮一味抜き十味敗毒湯ではエストロゲン分泌量の増加は認められなかった。このことから、十味敗毒湯のエストロゲン分泌促進作用に桜皮が寄与していることが示唆された。以上のことより、桜皮配合十味敗毒湯は主にエストロゲン様作用およびエストロゲン分泌促進作用を介して尋常性痤瘡やアトピー性皮膚炎の臨床症状を改善しうると考えられた。
フーズカンパニー
- 甘栗摂取による腸内環境への影響
-
発表年2019年学会・媒体日本食品科学工学会 第66回大会
1週間当りの排便日数が3~4日と比較的便秘傾向にある30代・40代女性を対象に、「甘栗」を2週間摂取した前後での腸内環境、排便日数等を評価した。 試験の結果、比較的便秘傾向な30代・40代女性について、甘栗摂取前の尿中インドキシル硫酸値は 67.0±22.3 [μg/mg・Cre]、摂取後は53.1±25.5 [μg/mg・Cre]と有意に腐敗物質が減少した。また、1週間当りの排便日数が3.5±0.5日から5.0±1.3日と有意に増加した。
- ガム咀嚼が脳血流に与える影響
-
発表年2019年学会・媒体日本咀嚼学会 第30回記念学術大会
クラシエフーズ㈱が販売している市販のガムを試験食として用いた。ガムを噛む前後に課題①(絵を記憶する課題)を行ったが、ガム咀嚼前後の課題中における脳血流量に有意な差はみられなかった。
次にガムを噛みながら課題②(メンタルローテーション課題)を行うとガムを噛まない時に比べ、左脳測定部位において有意に脳血流量が増えた。回答時間分布に関してもばらつきが抑制され、集中力持続効果が示唆された。
- ガムの硬さが唾液と脳活動に与える影響
-
発表年2018年学会・媒体日本食品科学工学会誌 Vol65, No.3, 118-123 (2018)
硬さの違うガムを噛んだ際の咀嚼効果の検討を行った。「軟ガム」よりも「硬ガム」を噛む方が、刺激時唾液量が有意に多くなること、「硬ガム」の咀嚼前後で有意に唾液中の菌数が減少していることが確認された。また、「硬ガム」と「軟ガム」を比較すると、咀嚼前後における唾液中菌数の減少率に有意な差が認められた。更に、「硬ガム」を噛んだ後の方が噛む前に比べて、認知課題中の前頭前野の脳活動が有意に高くなることが確認された。「硬ガム」の方が「軟ガム」より、刺激時の唾液分泌量を増加させ、唾液中の菌数を減少させ、前頭前野の脳活動を高めた。硬いガムは咀嚼に効果的である事が示唆され、口腔衛生への寄与が期待された。
その他(3事業の枠を越えた研究)
- Arctigenin suppresses the activation of NLRP3 and AIM2 inflammasomes
-
発表年2017年学会・媒体The 46th Annual Meeting of The Japanese Society for Immunology
炎症応答制御に関わるインフラマソームの活性化は、2型糖尿病、痛風、心疾患を含む様々な生活習慣病の発症や悪化を引き起こす。漢方生薬として用いられるゴボウシに含まれるアルクチゲニンは様々な生理活性を有し、NF-κBの発現抑制を介した抗炎症作用および抗酸化、抗肥満作用などを示すことがこれまでに分かっているが、インフラマソームに対する効果については不明であった。
本研究では、ヒト由来マクロファージ細胞THP-1を用い、NLRP3およびAIM2インフラマソームに対するアルクチゲニンの効果を評価した。その結果、刺激物質(ATP、尿酸、パルミチン酸、Poly(dA:dT))によって誘導されたインフラマソーム活性化に伴うIL-1β およびカスパーゼ-1の活性化を顕著に抑制した。これらの結果から、インフラマソームの関与する生活習慣病の予防や治療に対し、アルクチゲニンが効果的な素材であることが示唆された。
- アルクチゲニンの未分化細胞除去効果
-
発表年2018年学会・媒体第17回日本再生医療学会
iPS細胞を利用した再生医療において、目的とする組織細胞に分化させる際、未分化細胞が1個でも残存したまま移植すると癌化を引き起こしてしまうという課題があり、未分化細胞を選択的に完全に除去する方法が注目されている。本研究では、ゴボウ種子などに含まれるアルクチゲニンが未分化iPS細胞の除去効果を有することを見出した。未分化細胞および分化細胞に対する影響を調べるため、各種細胞(iPS細胞株3種(201B7、253G1、771-2株)、ヒト皮膚繊維芽細胞、ヒト心筋細胞、iPS由来心筋細胞)をアルクチゲニンで処理したときの細胞生存率を評価した。その結果、アルクチゲニンは濃度依存的に未分化細胞を除去し、一方で、分化した細胞への影響は見られなかった。さらに、未分化細胞と分化細胞の共培養系におけるフローサイトメトリーの結果から、アルクチゲニンは未分化細胞を選択的に除去する作用を有することが示された。