漢方とは?
~西洋医学やハーブとの違いを含めわかりやすく解説~
公開日:2018年08月01日最終更新日:2019年08月01日
「漢方」について、難しい、よくわからない、歴史がある、など、名前は聞いたことがあるが実際はどういうものかイメージできていない方は多いのではないでしょうか? この記事では、漢方について、そもそも何なのか、というところから、西洋医学・ハーブとの違いまでを解説していきます。漢方を有効活用するためのポイントもご紹介していきますので、ぜひご参考にしてください。
目次
漢方とは何か?
さまざまな生薬の組み合わせによって、その人の体質に適したからだの症状に対応できる漢方薬は、何千年もの歴史があり、治療効果のあるものが今日も医薬品として用いられています。ここで押さえておいていただきたいのが、「漢方」と「漢方薬」の意味するものの違いです。「漢方」とは鍼灸や食養生も含めた医学を意味しており、「漢方薬」は、漢方医学の理論に基づいて処方される医薬品のことです。「漢方」と「漢方薬」が混同されて用いられてしまう場合もありますので、区別しておきましょう。
漢方の基本は、“人間の体も自然の一部”という考え方です。“病気ではなく病人をみる”、という考えで、体の一部分だけにスポットをあてるのではなく、体全体の状態のバランスを総合的に見直すといった特徴があります。また、体質や生活習慣などから見直し、整えていきます。なお、漢方は、病名がついていない不調(未病※)にもアプローチできるのも大きなポイントです。
※人の健康状態は、ここまでは健康、ここからは病気と明確に区分できるわけではなく、健康と病気の間を変化しています。「未病」とは発病には至らないものの軽い症状がある状態をいいます。
漢方の歴史
漢方の歴史は古く、その豊富な経験が活かされています。ここでは、漢方がどのように日本に伝わり、進化していったのかをご紹介します。
元々は中国から伝わってきた伝統医学
漢方とは、古来、中国から伝わり、日本において発展してきた日本の伝統医学。もともとは中国生まれで、当初日本では、中国医学をそのまま受け入れていましたが、次第に診断法や漢方薬の選び方などをもっとわかりやすく、日本人の体や気候に合わせて日本流に改良することが行われ、独自の発展をとげてきました。
6世紀ごろから日本に医学が伝わってきた
日本は、さまざまな文化・技術を中国から輸入してきました。医学もそのひとつで、6世紀ごろには朝鮮半島を経て、中国の医学が伝えられたといわれています。遣隋使や遣唐使が中国へ渡り、正式な交流が始まった7世紀以降には、中国の文化とともにいろいろな医学書が輸入されていました。
漢方という名称の由来
「漢方」という言葉が定着したのは、江戸時代後期のあたり。長崎から入ってきたオランダ系医学、「蘭方」に対する呼び方として使われるようになったと言われています。明治以降は、西洋医学に対して、中国医学を土台にした伝統的な日本の医学を「漢方」と呼んでいます。
漢方の考え方
漢方の考え方「気・血・水」「証」とは?
漢方では、人の体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つで構成されていると考えられています。「気」は目には見えないが人の体を支えるすべての原動力のようなもの、「血」は全身の組織や器官に栄養を与えるもの、「水」は飲食物中の水分からできた、体をうるおすもののことです。この3つは、お互いに影響しあっています。大切なのは、この3つがバランス良くめぐっていることです。どれかが多過ぎても少な過ぎてもいけません。
水は流れ、温めれば蒸発する。重いものは下へ行き、軽いものは上へ行く。そんな自然の摂理を体のはたらきに当てはめ、バランスを調節するのが漢方です。その人にとって本来の“ちょうどいい”状態に戻していきます。
また、漢方は、病気にかかっている人の状態を、体質、病気の状態、環境などを含めたさまざまな角度からとらえ、「証」に基づいて治療します。「証」とは、ひとことで言えば、「病気の人が表すさまざまな症状や訴えのなかから、関連があるものを症候群としてとらえたもの」です。
「証」には、虚と実、寒と熱があります。「虚証」は、力が足りない状態で、体力が弱って病気への抵抗力が落ちている人です。「実証」は、力が余る状態で、体力があって病気への抵抗力が強めの人です。一方、「寒証」は、熱が足りていない状態で、寒気や冷えを感じる人です。「熱証」は、熱がたまった状態で、ほてりやのぼせを感じる人です。
このような「証」に基づいた治療は、漢方独自のもので、西洋医学との大きな違いでもあります。「この証には・・・この漢方薬が最適」という処方があります。そのため、同じ病気でも異なる漢方薬を使うこともありますし、違う病名であっても、病気の原因が共通している場合は、同じ漢方薬を使うこともあります。
漢方の考え方「五行」とは?
漢方では、「五行」は「気・血・水」と同様に自分の体を調べる物差しと考えられています。もともと「五行」とは、自然界の代表的な「木」「火」「土」「金」「水」の5つの物質を用いて物事の性質を分類した考え方です。この考えを人の体に応用して、5つに分類したのが「五臓」という考え方です。五臓は、「肝」「心」「脾」「肺」「腎」と分けられ、体を支えるものとして重要視しています。
それぞれの役割は以下の様に分類されます。
- 「肝」… 栄養物の貯蔵、自律神経系の血の流れを調整する。精神情緒や運動神経系のバランスを調整する。
- 「心」… 精神、思考、意識、感情、血の生成・運行を行う。
- 「脾」… 消化吸収や栄養物と水分の運搬・筋肉の栄養バランスの調整をする。
- 「肺」… 呼吸からの気の摂取。皮膚の機能の制御、防衛力の保持、気の生成、水分の調整、免疫機能の調整をする。
- 「腎」… 成長や発育を担う。老化との関連。深い呼吸、水分ろ過と再吸収の機能。生命エネルギーの貯蔵と生命活動の統括維持をする。
「気・血・水」と同様に、「五行」をもとにした「五臓」がしっかり体を支えることで健康な状態を保てるようになります。まずは、「五臓」のうち、自分の体でどこかにトラブルを抱えていないかを知ることが大切になります。
漢方と類似している治療法の違い
ここでは、西洋医学、ハーブ、健康食品やサプリ等と漢方、その違いについてそれぞれご紹介していきます。
漢方薬と西洋薬の違い
漢方薬は生薬でできたもので、西洋薬は化学的に合成した成分でできたものです。もちろんそういった違いもありますが、漢方薬と西洋薬は、“治し方”に対する考え方が違います。
漢方医学は、長い伝統と豊富な経験から作られてきたもので、体本来のもつはたらきを高めるように作用して、体自身の力で正常な状態に戻そうとするものです。局所的に現れた症状だけを見るのではなく、病気の人全体を見て、心身全体のひずみを治していくという総合治療だと言えます。自覚症状を重視して、その人ごとに違う個人差を大切にします。そのため、具合が悪く病院で検査をしたが、数値は悪くないといった症例にも対応していくことができます。
一方、西洋医学は、症状として起きている現象に対して、局所的に対応するものです。病気を部分的に見ることで、本来体がするべきはたらきを薬が代わりにし、そのはたらきが切れると元の状態に戻ってしまうこともあります。病気を診る場合、客観性が重視されるため、自覚症状だけでなく、他覚症状や検査数値が重視されます。
ただ、漢方薬、西洋薬、どちらが優れているというわけではないので、それぞれの得意分野を組み合わせるかたちで併用することが有効だと考えられています。
漢方を有効活用するには
漢方の考え方には、日々をより健やかに美しく生きる知恵がつまっています。長い人生、晴れの日ばかりではなく雨の日もあります。体も同じで、体調が良い日ばかりとは限りません。とくに女性は、月経や出産などで、一生のうちでも体のバランスが大きく変わり、ついていけずに不調を感じることも多いものです。病院に行くほどではなくても、「なんとなく不調・・・」。漢方は、そうした体のバランスの変化に対応し、整えていきます。
また、漢方薬を選ぶときには、症状だけでなく、その人の体の状態を考慮することも重要です。たとえば、同じ「冷え症」でも、手足が冷えるのか、足腰が冷えるのか、足は冷えるのに顔はのぼせるのかで、選ぶ薬が違ってくるのです。大切なのは、その人が本来もっている体のバランス。ひとつの症状だけで考えず、今の体の状態を考えて選んでみましょう。
まとめ
いかがでしたか? 漢方の歴史や西洋薬との違い、有効活用の方法などをご紹介してきましたが、漢方についての“?”が少しでも解消できたでしょうか。
漢方では、症状ひとつだけを見るのではなく、体全体、その人そのものを見ます。また、体と心はつながっているという考え方から、心のはたらきもその人の一部として考えます。このことから、一見関係のないように見える複数の症状に、1つの漢方薬で対処できることもあります。なんとなく、あちこちがしっくりしないというとき、漢方を試してみませんか?