漢方について知る

漢方薬とは?
~漢方薬の考え方や効果・服用する際の注意点も解説~

これまで漢方薬を何度か使ったことがあっても、どんな漢方薬が自分に合うのかわからない、最近体の悩みがあり、漢方薬を使いたいと考えている・・・。この記事では、漢方薬にはどのような効果があるのか、漢方薬の考え方などをご紹介します。服用方法や飲む際の注意点・ポイントについてもご紹介するので、ぜひ役立ててください。


目次

漢方薬とは

現在日本で用いられている「漢方薬」は、長い歴史の中で生薬の種類、量、組み合わせなどが工夫されて、薬として確立されたものです。また、薬として確立されたものは、「処方」とも呼ばれます。中国から伝わった処方のなかで、江戸時代に使われたものが中心となっていますが、「乙字湯(おつじとう)」、「七物降下湯(しちもつこうかとう)」など、日本で独自に作られた処方もあります。


漢方薬とは、生薬の組み合わせによって作られた薬

漢方薬の原料を生薬と呼び、草や木、動物や鉱物など、自然にあるものです。
たとえば、「ショウガを食べると体が温まる」といわれますよね。このような、植物などに備わった力を一つひとつ確かめ、組み合わせてできていったのが漢方薬なのです。漢方の治療原則は、熱ければ冷まし、冷えていれば温める。足りないものは補い、多過ぎるものはとり除く。このようにして、体が本来もつバランスを整えていきます。


組み合わせることで、さまざまな症状にきめ細かく対応できる

漢方薬で使われる生薬は、自然の原料からできています。生薬が、体に本来備わっている自然な治癒力を助け、病気を治療していきます。漢方薬は生薬を組み合わせており、症状を根本から改善していくことが特長です。さらに、個人個人の体質や症状を考慮して漢方薬の処方を決定するため、同じ症状なのに違う処方が用いられたり、違う症状なのに同じ処方が用いられたりすることもあります。


いまでは治療で漢方薬を使用する医師が9割近くいる

日本漢方生薬製剤協会が行った医師への漢方薬の処方実態についての調査を見てみると、漢方薬を処方している医師は約9割にのぼり、治療の効果や、患者さんの満足度等で高い評価を得ていることがわかります。漢方薬を処方する理由としては、西洋薬治療で効果がなかった症例で、漢方薬治療により効果が認められた、というものや西洋薬の補完として用いられている、新たなエビデンスが学会などで報告され有用性が認められた、というものがあげられました。

漢方薬 イメージ

漢方薬にはどのような効果があるのか

漢方薬と西洋薬の違い

西洋薬には人工的に化学合成された物質がほとんどで、その多くはひとつの成分で構成されており、ひとつの疾患やひとつの症状に強い薬理作用を示します。

それに対し、漢方薬は天然の生薬を使用し、ひとつの処方は原則として2種類以上の生薬で構成されていますので、多くの成分を含んでいます。そのために、ひとつの処方でいろいろな病状にも対応することができます。また、漢方薬は、病院において検査や画像診断をしても異常がないのに、自覚症状があるというような病気にも向いていると考えられています。原因の特定できない慢性の病気、体質がからんだ病気には漢方薬が向くことが多いとされます。

しかし、病気の原因が特定でき、原因別の治療が可能な場合や手術が必要な場合、緊急を要する疾患、重症の感染症などには一般的に西洋医学の方がすぐれていると考えられます。


漢方薬とハーブの違い

漢方薬は植物以外に、骨や角といった動物由来のものや、セミの抜け殻、牡蛎の貝殻なども使いますが、ハーブはほぼ植物だけを使います。また、漢方薬は一つの生薬だけを単独で使うことはほとんどありません。決められた配合量をもとに、いくつかの生薬を組み合わせて使われています。なお、漢方薬は漢方医学の理論をもとに処方される、効果の認められた医薬品です。一方、ハーブはハーブティーやアロマなどとして用いられ、赤ブドウ葉、チェストベリーなどの一部を除き、日本では医薬品としては認可されていないものも多いです。あくまで、消費者が自由に使う民間療法のひとつとしてとらえられています。ちなみに、海外では、エキナセア、セントジョーンズワートなど、医薬品として認められているハーブもあります。


漢方薬と健康食品・サプリメントの違い

漢方薬と健康食品・サプリメントの違いは、医薬品と食品の違いといえます。漢方薬はさまざまな症状を改善する、生薬の組み合わせによってできた医薬品です。一方、健康食品・サプリメントは、ビタミン、ミネラルなど日常で足りない栄養素などを補給する食品です。病気の治療には効能・効果が認められている医薬品の漢方薬を、日頃の食生活などで不足しがちな栄養素を補うためには健康食品・サプリメントを利用しましょう。

漢方薬の違い イメージ

漢方薬の服用方法

漢方薬の剤形としては、煎剤、散剤、丸剤が中心です。「漢方薬と言えば煎じ薬!」。かつてはこんなイメージが一般的でしたが、現在では生薬からエキスを抽出して、顆粒・細粒、錠剤に加工したエキス製剤などが多くなっていて、用途に応じて使い分けが可能です。

剤形による効果の違いはあるのかが気になるところかと思いますが、実はほとんどの場合は大差がなく、剤形よりも、原料の生薬の質によって優劣が決まるといえるでしょう。


煎剤
生薬に含まれる有効成分を熱湯で煮出すことを「煎じる」と言います。煮出したスープ状の薬汁が「煎薬」になります。
散剤
生薬を粉砕して、粉状にしたもの。
丸剤
散剤に水分や蜜分を加えて丸い粒状にしたもの。
顆粒
煎じ液を濃縮したあとに、水分を蒸発させて、取り出し、加工して顆粒状にしたもの。
錠剤
抽出したエキスに賦形剤を加えて定形に圧縮したもの。
漢方薬服用 イメージ

服用する際によくある質問

ここでは、漢方薬を服用する際にチェックしたい、飲み方やほかの薬との併用、服用する時間、とくに気をつけたい妊娠中や授乳中の服用などについてご紹介していきます。


水以外のものといっしょに飲んでもよい?

漢方薬は、原則として、コップ1杯の水または白湯で飲みます。濃いお茶、ジュース、牛乳、アルカリイオン水などは、薬の吸収に影響して、効果に影響を及ぼすことがありますので、避けるようにしましょう。


ほかの薬(西洋薬)と併用しても大丈夫?

いくつかの漢方薬を併用した場合や西洋薬の成分が漢方薬と重なった場合、とくにカンゾウ、マオウ、ダイオウ、ブシなどが含まれている漢方薬は注意する必要があります。詳しくは薬剤師、登録販売者または販売元に問い合わせをしましょう。
2種類以上の薬を同時に服用する場合に問題となるのは、一方の薬の薬効が期待通りに現れなかったり、逆に薬効が増強されたりするなど、思わぬ現象(相互作用)が起きることです。したがって、2カ所以上の病院や薬局でもらったお薬を自分の判断で併用することは、絶対に避けてください。漢方薬に限らず、お薬を併用する場合は、必ず、医師、薬剤師または登録販売者に相談しましょう。


妊娠中や授乳中でも服用できる?

妊娠中の体はとてもデリケートです。赤ちゃんへの影響が大きい時期なので、どんな薬を服用する場合も必ずかかりつけの医師へ相談するようにしましょう。授乳中の服用については、薬の種類にもよりますが、お母さんと赤ちゃんの状態を総合的に判断する必要があります。構成生薬として下剤に用いられるダイオウが配合されている処方の場合、ダイオウの主成分であるアントラキノン誘導体は母乳中に移行して乳児に下痢を起こす可能性があることが知られています。ダイオウの入った漢方薬については授乳中は服用を避けるか、服用している間は授乳を一時中止するようにしましょう。詳しくは医師、薬剤師または登録販売者に必ず相談しましょう。


服用する時間はいつが適切?

漢方薬の飲み方で、まず守らなければいけないのは、決められたタイミングで飲むことです。漢方薬は薬効成分が吸収されやすいように、食前・食間に服用するという用法が多いのですが、つい飲み忘れてしまう人がいます。このような人は、あらかじめ飲む時間を決めておくと、飲み忘れが少なくなります。ちなみに、「食前」とは、食事の前30分から1時間を、「食後」とは、食後30分位までをいいます。

服用 イメージ

まとめ

漢方薬の考え方や、さまざまな剤形の種類について、服用する際に覚えておきたい注意点など気になる情報をご紹介してきましたが、いかがでしたか? 漢方薬について十分理解し、正しく服用して、その効果をしっかり活かしましょう。