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漢方薬の香りと聞くと、独特な香りを連想することがありませんか?漢方薬になじみがない方は、その香りに驚いたことがあるかもしれません。実は、漢方薬に使われている生薬は私たちの生活にも深く関わっています。今回は、私たちの身近にある生薬の働きと香りの関係について紹介します。
私たちの生活に深く関わる香り。使い方や効果を見てみましょう
私たちの生活には、香りが深く関わっています。例えば、リラックスしたいときや集中力を高めたいときにアロマを利用した経験はありませんか?アロマでよく使用される「ラベンダー」の香りにはストレスなどによる緊張や不安を和らげたり、リラックスさせたりする効果があると考えられています。
また、薬膳では食材が本来持っている香りにも効果があると考えられています。そのまま生で食べたり、ジュースやドライフルーツなどにも加工されている「みかん」や「レモン」の香りは、心身をリフレッシュしストレスを軽減する働きがあると考えられています。他にも、料理を調理する過程で、肉や魚の臭み消しとして香りのある「ねぎ」や「しょうが」がよく使われています。
香りは、私たちの嗅覚を通じて脳に直接働きかけ、私たちの心身のバランスを整える力を持っていると考えられています。私たちは日頃から多くの香りに触れ、そこから様々な影響を受けています。
身近な食材にもある、生薬の香りがもたらす作用
みなさんが普段口にしている食べ物の中には、生薬(しょうやく)に使われている食材があります。生薬とは植物の葉、茎、根、動物の全体または部分、あるいは鉱物などの天然物に乾燥などの加工をしたもので、漢方薬を構成する原料のことです。
漢方薬を構成する原料といえば、生薬は漢方専門店でしか取扱いがないと思われるかもしれませんが、実は結構身近に存在しているものもあります。
例えば、シナモンロールを作る際に材料として使われる「シナモン」は生薬の1つです。生薬として使われる場合は、桂皮(けいひ)と桂枝(けいし)の2種類があります。桂皮や桂枝には、カラダを温める作用があり、腹痛や生理痛などの痛みを和らげる作用も期待できます。
漢方薬に利用される生薬の香りは、使用する人の体調や体質によって、感じ方がことなります。例えば、ミントガムの原材料に使われている「薄荷(はっか)」の香りには、気分をリフレッシュさせ、疲労感を軽減する効果があると言われていますが、その香りを強い刺激と感じて苦手な方もいます。
【香りのある生薬】
漢方薬には香りのある生薬が多く利用されています。その独特な香りにより、気の巡りをよくしてイライラや不眠などの症状を和らげると考えられている生薬もあります。日常生活の中でなじみのある植物の皮や根などから作られている香りのする生薬をご紹介します。
・桂皮(ケイヒ)
胃腸の調子を整える働きがあり、食欲不振や消化不良に用いられます。スパイシーで甘みのある香りがします。味は甘味と苦味があります。
・牡丹皮(ボタンピ)
血行を促進する働きがあり、生理不順・生理痛・頭痛などに用いられます。香りが強く、独特な印象があり、少し辛くて苦い味がします。
・芍薬(シャクヤク)
血液(栄養)をおぎなう働きがあり、筋肉のこりや腹痛、生理不順などに用いられます。香りが強く、独特な印象があり、少し甘味と苦みがあります。
・薄荷(ハッカ)
気の巡りをよくする働きがあり、風邪による頭痛・目の充血などに用いられます。すっきりとした香りがし、少し渋味があります。
・陳皮(チンピ)
気の巡りをよくする働きがあり、お腹の張りや食欲不振などに用いられます。さわやかな柑橘系の香りがし、少し苦味があります。
香りのする生薬をいくつかご紹介いたしましたが、牡丹皮・芍薬・薄荷が含まれる漢方薬のひとつに「加味逍遥散」があげられます。「加味逍遥散(かみしょうようさん)」は月経前不快気分障害(PMDD)や更年期障害に利用される漢方薬です。
■加味逍遥散(かみしょうようさん)
女性特有の症状や、心身の不調の改善に効果的な漢方薬です。冷えやのぼせがある、イライラする方に適しています。生理不順や更年期障害にも改善させる効果が期待できます。
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生薬は漢方薬以外にも活用されているのをご存じですか?
生薬は漢方薬以外にも、様々な用途で利用されています。例えば、お香や入浴剤、健康茶などがあります。
・お香
香りを嗜むものを総括したものをさします。
お仏壇やお墓参りなどのお供えに使う「お線香」「お焼香」、玄関や部屋に置く「香木」、手の甲や首元などに塗り香水の代わりとして使う「塗香(ずこう)」、身につけたり箪笥の引き出しにいれる匂袋(匂い袋)などがあります。お香には、牡丹皮・桂皮・芍薬などを利用した商品も販売されています。
・薬用入浴剤(医薬部外品)
香りや色を楽しんだり、入浴そのものによって得られる温浴効果や清浄効果を高めたりするものがあります。温浴効果には身体の芯まで温め湯冷めしにくくする、清浄効果には皮脂や汚れを落とし皮膚を清潔にするといった作用があります。牡丹皮・桂皮・芍薬などの生薬を使用した薬用入浴剤(医薬部外品)には、肩こりや腰痛・肌荒れの効果があるものがあります。
・健康茶・薬膳茶
シナモン(桂皮)・ハッカ(薄荷)・みかんの皮(陳皮)は、健康茶としてもよく利用されています。紅茶とシナモンの組み合わせは、相性がよくカラダを温める飲み物としても人気です。普段飲んでいるお茶に風味を加えることにより、健康の維持に役立てることができます。
生薬は漢方薬だけでなく、日常生活の様々な場面で取り入れられています。もしかしたら、みなさんが普段利用している他の日用品にも利用されているかもしれません。
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多田有紀(https://x.com/sora_writer)
漢方薬膳コンサルタント