目次
- 静脈のはたらきは?下肢静脈瘤とは?
- ゴースト血管との違い
- 下肢静脈瘤になりやすい人とは?
- 下肢静脈瘤の原因とメカニズム
- 下肢静脈瘤の種類と治療法
- おすすめ運動でむくみ・だるさ解消
- 予防にいい食べ物とは
- おすすめマッサージで血流促進
- 「血」「気」にアプローチする漢方でむくみや肥満に伴う関節の腫れや痛みを解消
脚に赤いクモの巣みたいな血管が増えてきた、脚の表面の血管がボコボコと、こぶ状に浮き出ているのを見られたくないからスカートが履けない、そんな悩みはありませんか?それは下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)かもしれません。下肢静脈瘤は、命の危険があるわけではありませんが、脚(足)のだるさやむくみなどの症状が慢性的に起こり、生活の質(QOL)を低下させます。下肢静脈瘤は「瘤(りゅう又はこぶ)」という字を書く通り、脚の皮膚の表面を走る静脈が蛇行し“こぶ”のように膨らんだ状態を言いますが、チリチリとしたクモの巣状の血管や青い網目状の血管が目立つ症状も下肢静脈瘤です。加齢による血管の老化が原因の1つですが、同じく血管の老化が原因の『ゴースト血管』との違いや予防のための運動方法等についてご紹介していきます。
静脈のはたらきは?下肢静脈瘤とは?
血液は、まず心臓から送り出され、動脈という血管を通って全身の隅々まで栄養や酸素を送り届けます。その後、血液は全身の細胞から発生した二酸化炭素や老廃物を回収して静脈という血管を通って心臓に戻ります。つまり動脈は上水道、静脈は下水道のような役割を持っています。カラダを巡って足の先まで届けられた血液が心臓に戻ってくるためには、筋肉のポンプ作用や呼吸による力が必要になります。
① 脚の筋力が重要!(筋ポンプ作用)
静脈は、心臓に送り返す血液の量に応じて太さが変化できるように、中膜は薄く柔らかくなっています。静脈内部には弁があり、血液が逆流するのを防いでいます。静脈を取り囲むように筋肉があるため、脚を動かすことによる筋肉動作で静脈を圧迫して静脈内の血液を心臓のほうへ押し出す手助けをしています。これを筋ポンプ作用と呼びます。
② 呼吸の力も大事!
呼吸で息を吸う際は横隔膜が収縮して下がり、胸腔(胸部の肋骨内エリア)の内圧が下がるために血液が胸腔内に吸引されます。これは何も入っていないスポイトの袋状の部分を押した状態(中の空気がない=内圧が下がっている状態)で液体に吸い口をつけてから指の力を弱めると、液体がスポイト内に吸入される(内圧が上がるために液体がスポイトに吸い込まれて満たされる)イメージです。つまり呼吸の質によって血流に影響がでるということがわかります。
③ 重力も影響している!
二足歩行の人間が立つ、座るという姿勢をしている場合、重力の影響でカラダを流れる血液は足の方へ引っ張られてしまいます。そのため心臓へ血液を戻す際に血液が逆流して下がらないように静脈の血管内には弁が付いています。
脚をあまり動かさない生活をしている、運動習慣がない又はストレスを抱えている等で呼吸が浅いという場合は血液がサラサラと流れていかない可能性があります。さらに、立ちっぱなしや座りっぱなしといった環境では静脈内の弁に負荷がかかり続け、心臓へ向かうはずの血液が重力に引っ張られて逆流し、脚に溜まってしまいます。特に膝より下の静脈弁には重力の大きな負荷がかかるため、弁が故障しやすく血液が足先に戻ろうと渋滞します。それにより血管は蛇行し、こぶのように飛び出る下肢静脈瘤を引き起こすのです。手の甲や額、足の甲などに見られる、単なる血管の目立ちとは構造的に違いがあるのです。
ゴースト血管との違い
血管には動脈、静脈の他に毛細血管があります。毛細血管とは、心臓から全身に酸素や栄養素を送る動脈と、全身に血液を戻す静脈をつなぐ役割を持つ極めて細い血管のことです。血管のうち95~99%が毛細血管であるため、非常に重要な血管ですが、何らかの原因で血管構造が破綻すると、血液が末端まで届かなくなり血流が滞ったり血管自体が消失したりしてしまうのです。このように血液が流れなくなった毛細血管の状態はゴースト血管と呼ばれています。原因は加齢による血管の老化と生活習慣の乱れによるものに大別されます。ストレスや睡眠不足、運動不足による肥満も血管へのダメージにつながります。毛細血管のゴースト化が進むと血液の老廃物が溜まったり、血管の劣化により血流が滞ったりするため静脈へのダメージが進み下肢静脈瘤の原因を作ってしまうことにもつながります。ゴースト血管は、血液さえ流れればすぐに復活しますが、完全に消失してしまった血管をもとに戻すことはできません。そのため日常的に血流を高める食材を摂取したり運動等で血行促進をしたりすることが重要なのです。
下肢静脈瘤になりやすい人とは?
下肢静脈瘤は、職業や生活習慣などが要因で起こる場合が考えられます。具体的には以下が挙げられます。
- ・職業や習慣:立ち仕事をしている、長時間座りっぱなしである
- ・性別・体質:女性(特に妊娠・出産経験がある)、家族に下肢静脈瘤の人がいる
- ・体型:肥満
- ・年齢:中高年以上(加齢)
それぞれについて説明をしていきます。
★立ち仕事をしている、座りっぱなしである
脚(特にふくらはぎ)の筋肉は、動かすことで静脈の血液を心臓のほうへ送るポンプの働きをしています。長時間の立ち仕事や座り仕事をしている場合、このポンプ機能を使っていないため、血液が足側に溜まってむくみやすくなります。
★女性(特に妊娠・出産経験がある)、家族に下肢静脈瘤の人がいる
下肢静脈瘤は筋肉量が少ない女性に多いと言われています。さらに妊娠・出産経験がある場合は妊娠中に女性ホルモンの影響で静脈の弛緩が生じ血液の逆流を防ぐ役目を持つ静脈弁に不具合が出やすくなります。妊娠中はお腹に常時大きな圧力がかかるため、足の血流が心臓に戻りにくくなる点も挙げられます。家族に下肢静脈瘤の人がいる場合も遺伝的な要素から将来下肢静脈瘤ができる可能性があると考えられます。
★肥満
動脈は比較的厚く弾力性がある血管なのに対して、静脈は薄い構造をしています。その静脈は脂肪の間にも通っているため、余分な脂肪がついていると静脈の働きに負担をかけ、血液が心臓に返るのを妨げてしまいます。
★加齢
加齢による筋力の衰えも原因になりえます。静脈は脚の筋力に支えられて働くため、筋力低下によって静脈の機能が低下することと、血管自体の衰えが影響します。
他にも脚に力を入れるスポーツの経験がある人、身長が高い人、激しい咳を繰り返すような肺疾患がある人等も下肢静脈瘤ができやすい可能性が報告されています。下肢静脈瘤は一度できてしまうと自然に治ることはなく、ゆっくりと進行していく病気です。下肢静脈瘤ができやすい特徴に当てはまる場合は、予防や対策をしていきましょう。
下肢静脈瘤の原因とメカニズム
下肢静脈瘤の原因は、脚の表面近くにある静脈の逆流防止弁が壊れてしまい、立位や座位の時に、重力の影響で血液が逆流してしまうことにあります。血液が逆流すると、静脈は拡張し蛇行してボコボコと表面に表れてきます。血液の循環障害によりだるさやむくみ、こむら返りを自覚するようにもなります。
下肢静脈瘤の種類と治療法
下肢静脈瘤には、問題となる静脈の大きさによる分類があります。伏在(ふくざい)静脈という大きな静脈の弁不全により逆流がおこるタイプを「伏在型」、伏在静脈には問題がなく、支流である側枝(そくし)に逆流が生じる「側枝型」、そのまた支流の小さな静脈に逆流が生じる「網目状」、さらに小さな静脈に逆流が生じる「クモの巣状」という種類があります。下肢静脈瘤自体は良性の病気であるため、放置した場合でも命にかかわるような状態になることは基本的にありません。症状が軽い場合は、セルフケアで進行を遅らせたり、予防したりすることができますが、一度下肢静脈瘤を発症すると、自然に治ることはなく見た目が気になる場合や生活に支障が出るほど症状が強い場合には医療機関での治療が必要になります。下肢静脈瘤の治療法には弾性ストッキングを使う「圧迫療法」、注射で静脈を固める「硬化療法」、そして手術の3つがあります。手術には、静脈を引き抜く「ストリッピング手術」と、レーザーで静脈を焼く「血管内レーザー治療」の2つがあります。それぞれメリットとデメリットがあり、治療後の痛みの程度や治療費に差があるため医療機関にて適切な治療法を相談することがおすすめです。
おすすめ運動でむくみ・だるさ解消
基本的には一度壊れてしまった静脈弁は元に戻りません。むくみやだるさなどの不快な症状への対応策はいろいろとありますが、対応策は血液の流れをよくすることで症状を緩和したり進行を遅らせたりするものになります。そのままにしておけば症状は進行してしまうため、運動や呼吸法、食事等で血流を促進する対策を取り入るとよいでしょう。ウォーキングやジョギングなど、ふくらはぎを使う運動は足の筋肉のポンプ作用を強化するため、下肢静脈瘤によるむくみやだるさなどの症状を和らげるのに効果的です。水中ウォーキングや水泳は浮力と水圧によって脚の静脈の血液循環を促すため、下肢静脈瘤の予防に有効と考えられます。しかし加圧トレーニングやウエイトトレーニングは特定の筋肉内の血管に圧力が加わるためおすすめできません。
★自宅でかんたんにむくみやだるさをリフレッシュする体操
立位や座位の運動は足元に血液が溜まることから、寝転んで行う体操が無理なく効果的です。寝る前の習慣にすることで血液の循環を促し、疲れた足のむくみやだるさを緩和させましょう。
① ゴキブリ体操
インパクトのあるネーミングですが、仰向けで両手・両脚を持ち上げ、ブルブルと震わせるだけのかんたんな体操です。
<やり方>
目安:2~3回程度
- 1. 仰向けで横になり、両手・両脚を天井方向へ持ち上げた状態を5秒程度キープします。
できるだけ手脚は床と垂直にしましょう。膝は曲がっても問題ありません。 - 2. 1の姿勢から手脚の力を抜いてリラックスさせた状態で30秒間程度、プルプルと小刻みに揺らし続けます。
- 3. 脱力して小休止。これを2~3回繰り返しましょう。
※両手脚を同時に上げるのがつらいときは、脚だけ、手だけなど分けて行ってもOK。
※疲れたら手脚を床に下ろして休憩をはさんでも大丈夫です。
② 壁を使った逆転のポーズ
壁を利用して脚や骨盤を床から持ち上げることで下半身の血流改善を促進し、呼吸を用いて体幹の強化も図ります。
<やり方>ヨガマットなどの上で行うと滑らずに安定します。
目安:1~3回程度
- 1. 壁側に足がくるように仰向けで横たわります。膝を曲げて、スネの長さ位の距離までお尻の位置を壁に近づけ足裏を壁にぴったりと付けます。太ももが床と垂直になり膝の角度が直角になるとベストです。お尻の下に枕やクッションを置いてもよいでしょう。
- 2. 手のひらを下に向け、息を吸って準備し、息を吐きながら壁を足裏で押し、肩甲骨で床を支えるようにゆっくりとお尻(骨盤)を持ち上げます。首や肩に緊張が起きないところまでにし、可能であれば2~3呼吸ゆっくりと数え姿勢をキープします。
- 3. 吐く息でゆっくりとお尻を床(クッション)に下ろしましょう。
※裸足で行うと滑りにくいため安全です。お尻を床に下ろす際にはゆっくりと行いましょう。
※呼吸を止めないように注意しましょう。
③ 壁を使ったリラクゼーション
脚を動かすのが大変、お尻(骨盤)持ち上げるのがつらい、という場合はお尻を壁に近づけ、壁を利用して脚を持ち上げた状態を保つとよいでしょう。クッションで軽くお尻持ちあげておくと心地よいでしょう。むくみや脚の疲れにも有効です。
予防にいい食べ物とは
摂取するだけで下肢静脈瘤が完治するような食べ物はありませんが、悪化を防いだり症状の軽減をしたりするのに役立つと言われている食材と、逆に悪化を促すため注意したい食材をご紹介します。選んで摂り入れたり、避けたりすることで自分のカラダへの気遣いを意識できるかもしれません。
<おすすめ食材>
~便秘予防・血流促進・抗酸化が期待できます~
全粒小麦粉、そば粉、雑穀類、豆類、野菜、にんにく、たまねぎ、しょうが、ヒハツ、赤トウガラシ、赤ワイン、緑茶、みかん、いちご、チェリー、パイナップル、魚
<NG食材>
~摂りすぎると体の血管状態に悪い影響を及ぼすと言われています~
動物性タンパク質、チーズ、バター、アイスクリーム、揚物、加工品や精製された食べ物、砂糖、塩、アルコール類、コーヒー飲料
おすすめマッサージで血流促進
マッサージは下肢静脈瘤による脚の血液の交通渋滞を緩和し、むくみやだるさを軽減させることが期待できます。座り仕事や立ち仕事に従事している方は仕事の合間に行うことがおすすめです。しかし、静脈瘤のある位置を強くマッサージすることは避けましょう。静脈瘤のある血管は拡張して壁が薄くなっているため、破れて皮下出血を起こす危険性があるためです。マッサージをする場合は、足底部を中心にすることと、静脈瘤のない場所を選んでマッサージをしてください。足の指から心臓に向かってマッサージすることで血液循環をサポートすることができます。
※マッサージは脚のだるさやむくみを解消しますが、マッサージで静脈瘤が治るわけではありません。
「血」「気」にアプローチする漢方でむくみや肥満に伴う関節の腫れや痛みを解消
筋肉量の少ない方や疲れやすい方は、水分代謝が悪く、余分な水分が重力の影響で下に溜まりやすくなるため、下半身にむくみが起こります。筋肉量の減少により「気(き)」が足りない状態、いわゆる「虚証(きょしょう)」と捉え、エネルギーを補うことで巡りを促す漢方がおすすめです。
■防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)
防已黄耆湯は、胃腸の働きを高めることで余分な水分の排泄を促します。水はけのよいカラダへ導くことでむくみを防ぎます。
体力中程度以下の方の肥満症・肥満に伴う関節の腫れや痛みにも有効で、体の水分バランスを整えるため、疲れやすく、汗をかきやすい方にも用いられます。
一方、下肢の静脈血が停滞した状態は、漢方で考えると瘀血(おけつ)の症候の一つと言えます。瘀血は「血(けつ)・栄養分」の流れが滞り、栄養成分がカラダを巡っていない状態です。滞ったものは温かければ上へ昇り、冷たければ下へ降りる性質があるため、上半身はのぼせ、下半身は冷えるという、いわゆる「冷えのぼせ」の状態となって生理不順が起こることがあります。そのような方には血行を促進させる処方がおすすめです。
■桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
桂枝茯苓丸は、滞った血の巡りを促進することで全身の熱のバランスを整え、のぼせや足冷えなどを感じる方の生理痛、月経不順、月経異常、血の道症などを改善します。比較的体力があり、上半身と下半身の血流のバランスが悪い冷えのぼせのある方におすすめです。ニキビやしみなど肌悩みの症状や生理によるイライラなどの改善にも効果が期待できます。
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那須久美子
広告会社、大手化粧品会社宣伝部にてCM、雑誌等の広告制作に携わる。
その後フリーランスとしてバレエ講師、ピラティスマスターストレーナー、ヨガセラピスト、介護予防運動指導員として老若男女への伝える仕事に従事。
企業や官公庁での健康アドバイザーや研修講師も務める。
国家資格キャリアコンサルタントとしては企業内障害者ジョブコーチを経て自治体事業の就労支援プログラム講師とカウンセラーを兼任。
現在は就労支援事業の現場統括責任者を務める傍らキャリアコンサルタントのスクールにおいてオウンドメディアの監修も担当。
・ヘルスケアデザイナー
・バレエティーチャー
・ピラティストレーナー、ヨガセラピスト
・アスリートキャリアコーディネーター
・国家資格キャリアコンサルタント
・漢方アドバイザー
・介護予防運動指導員
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