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監修:杏林堂漢方薬局 薬剤師 若山忠裕 先生

高血圧になる仕組みとその弊害について

年齢を重ねると起こりがちな「高血圧」。
血圧が高くなるということは知っていても、なぜ高血圧になるのか、血圧が高くなるとなぜ良くないのか、ご存知の方は意外と少ないかもしれません。そこでここでは、高血圧になるメカニズムと、その弊害・対処法などについてご説明しましょう。

高血圧で悩む人イメージ

血圧について

まず、血圧についてご説明しましょう。
血圧とは、文字どおり「血管内の圧力」ですが、その圧力は主に心臓の収縮で送り出された血液によって生じます。全身から心臓に戻ってきた血液は、心臓の収縮によって再び全身に送り出されます。この収縮によって血管内部にかかる圧力が「血圧」と呼ばれるものです。
血液を送り届けるため、心臓は常に拍動していて、ギュッと縮んでいるときを収縮期といい、このときの血圧を「収縮期血圧」と呼びます。反対に、弛緩しているときが拡張期で、このときの血圧は「拡張期血圧」と呼ばれます。当然、血液を送り出すときの「収縮期血圧」のほうが血圧は高く、「拡張期血圧」のほうが低くなります。

血圧※イメージ図

高血圧になる仕組み

そんな血圧ですが、その圧力は心臓が押し出す力の強さだけでなく、血管の柔軟性にも左右されます。
たとえば、血管が柔軟な場合、心臓が強い力で血液を押し出しても、血管は広がりやすいので内部の圧力は分散されます。ところが、血管の柔軟性が失われて硬くなると、血管が自由に広がれなくなります。そのため、逃げ場がなくなり、血管内の圧力が高まるというわけです。たとえて言うなら、ゴム風船をふくらませるときに、硬いゴムより、柔軟なゴムの風船のほうが力まずにふくらませることができるのに似ています。
一般的に、血管が硬くなるのは、加齢によって柔軟性が失われることや、血中のコレステロールが多過ぎて、「動脈硬化」になることなどが原因とされます。これらは知らず知らずのうちに起こり、その結果重大な疾病を引き起こすことがあるため、高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれています。
なお動脈硬化については、こちらのページで詳しく解説しています。

高血圧の基準を知っておこう!

早い段階で異変に気づくためにも、ここで高血圧の基準を再確認しておきましょう。以下は、日本高血圧学会が発表している「高血圧治療ガイドライン2019」をもとにした表になります。
「診察室血圧」と「家庭血圧」で値が違いますので注意してください。

成人における血圧値の分類(診察室血圧)
分類収縮期血圧(最高血圧)  拡張期血圧(最低血圧)(mmHg)
正常血圧<120 かつ <80
正常高値血圧120~129 かつ <80
高値血圧130~139 かつ/または 80~89
I度高血圧140~159 かつ/または 90~99
II度高血圧160~179 かつ/または 100~109
III度高血圧≧180 かつ/または ≧110
(孤立性)収縮期高血圧≧140 かつ <90
成人における血圧値の分類(家庭血圧)
分類収縮期血圧(最高血圧)  拡張期血圧(最低血圧)(mmHg)
正常血圧<115 かつ <75
正常高値血圧115~124 かつ <75
高値血圧125~134 かつ/または 75~84
I度高血圧135~144 かつ/または 85~89
II度高血圧145~159 かつ/または 90~99
III度高血圧≧160 かつ/または ≧100
(孤立性)収縮期高血圧≧135 かつ <85
(日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」より)

このように、医療機関などで血圧を測定する「診察室血圧」と、家庭などで自分で測定する「家庭血圧」があり、正常な範囲として、「正常血圧」「正常高値血圧(正常範囲内だが、高血圧の注意が必要な血圧)」「高値血圧」の3種類が規定されています。2019年に策定された「高血圧治療ガイドライン2019」によると、「診察室血圧」は140/90mmHg以上で、「家庭血圧」は135/85mmHg以上で高血圧とされています。また、降圧目標は、75歳未満で前者が130/80mmHg未満、後者が125/75mmHg未満となりました。それまでよりも降圧目標の数値が10引き下げられ、厳しくなっていますので注意しましょう。なお、75歳以上の後期高齢者では、降圧目標は140/90mmHg未満となっています。
「高血圧」の分類は以前と同様、その値によってI度~III度に分けられています。III度のほうが「収縮期」「拡張期」いずれの血圧も高く、それに伴って健康上のリスクも高くなっています。
なお、高血圧にはこのほかに「(孤立性)収縮期高血圧」として、収縮期血圧が高血圧の基準以上であるにもかかわらず、拡張期血圧が低めに出るものもあります。これは、高齢者に多い症状で、血管が硬くなっているために下の血圧が下がっていると考えられていて、こちらも治療の対象になります。

高血圧もいろいろ! ~白衣高血圧・仮面高血圧~

このようにさまざまな段階がある「高血圧」ですが、同じ人でも病院などの医療機関で測る場合と自宅で測る場合とで数値が大きく異なることがあります。このような状態を「白衣高血圧」「仮面高血圧」と呼び、それぞれ、以下のような特徴があります。

白衣高血圧イメージ
白衣高血圧

医療機関で、白衣を着た医師、看護師などに血圧を測定された場合に、家で測るよりも血圧が高くなること。
⇒年齢が高い人や緊張しやすい人にみられることが多い。

仮面高血圧

医療機関での血圧(診察室血圧)は正常なのに、家庭などでの血圧が高くなること。
⇒降圧薬を使っている人にみられることが多い。

これらの現象は、医師の前だと「緊張する」、あるいは「安心する」ことで生じているとも考えられますが、人によっては注意をしておく必要があります。
たとえば降圧薬を使っている人の場合、通院の時間帯に薬の効果が強く現れているために正常と判断される場合があります。こうしたケースでは、本来の血圧がわからず、正確な診断と適切な治療ができないことがあります。さらに、本人も血圧が下がっていることに安心して薬の服用をやめてしまうことも考えられます。
自身の健康状態を正確に把握するためには、血圧を医療機関などで計測してもらうだけでなく、自分でも家庭で毎日血圧を測定し、記録しておくことが重要です。その際は、計測する時間帯を揃えたり、薬の服用前と服用後で測定したりするなどして、自身の血圧の推移がどうなっているのか把握しやすくしたほうがいいでしょう。

高血圧に対応するには……?

高血圧を放っておくと、持続性高血圧により、臓器障害や心血管疾患の発症のリスクが高まるため、血圧を下げる生活を心がけることが大切になります。食事内容の見直し、適度な運動、睡眠の改善、ストレスの解消など、生活習慣の改善に取り組んでいきましょう。
なお、肩こり、頭痛など、高血圧の随伴症状には、漢方薬で対処することができます。

「高血圧」に関する漢方的な解説はこちら