動脈硬化になる仕組みと対処法について
「動脈硬化」とは、簡単にいうと「血管が硬くなり、柔軟性がなくなっている状態」を指します。では、動脈硬化になるとどういった問題が起きるのでしょうか? また、なぜそうなってしまうのでしょうか? 動脈硬化について深く知るために、まずは、血管の仕組みとはたらきから見ていきましょう。
血管の仕組みとはたらき
血管は、血液を心臓から全身に届ける「動脈」、全身の血液を心臓に戻す「静脈」、体の末端まで栄養を届ける「毛細血管」で構成されています。 このうち、動脈、静脈は、外側から「外膜」「中膜」「内膜」という構造になっています。動脈の壁は静脈に比べてぶ厚くなっていて、ゴム管のように伸び縮みすることで心臓の拍動に伴う圧力に耐えられるようにできています。血管の内側は内皮細胞と呼ばれる細胞に覆われており、血液中の物質の出入りや血管の拡張、血栓の形成など、さまざまなはたらきに関与しています。こうした組織がうまくはたらくことで、血液が全身にスムーズに流れるようになっているのです。
動脈硬化はどのようにして起きる?
では、動脈硬化はどのようにして起きるのでしょうか? 一般には、下記のように始めに内皮細胞に何らかの原因で傷がつき、それによって生じる炎症反応で起きると考えられています。
- 内皮細胞に傷がついた際、血中のLDLコレステロールが多いと、損傷した部分から内皮細胞の内側に入り込みやすくなる。
- 内皮細胞と血管壁の間に入ったLDLコレステロールは酸化されて、体に不要な酸化LDLへと変化する。
- 酸化LDLは毒性を持つため、排除すべき異物とみなされる。すると、免疫細胞のマクロファージがやってきて、酸化LDLを食べるが、酸化LDLが過剰にあると、食べきれずに死んでしまう。
- 血中にLDLコレステロールが多い場合はこの反応を繰り返し、内膜の内側でこの「プラーク」(マクロファージが死んでできた、かゆ状のもの)が肥大化していく。
- さらにこの際、「線維化」と呼ばれる、組織が硬くなる現象が起きるため、動脈の柔軟性が失われてしまう。
これが動脈硬化です。
動脈硬化が進むと、血管が血液の流量に合わせて柔軟に伸縮できず、高血圧(高血圧の説明はこちら)の原因になるだけでなく、ひどいときには血流に耐えきれず破裂したり、狭くなった血管に血栓ができて詰まったりということが起こりやすくなります。その障害が起きる場所によって、「心筋梗塞」や「脳梗塞」「大動脈瘤」といった深刻な症状を引き起こすことがあるのです。
主な原因とその対処法は?
これまで見てきたように、動脈硬化は主に血中のLDLコレステロールがその起点となっているため、脂質異常症によるLDLコレステロールの増加は大きな要因のひとつですが、ほかに以下のような原因もあげられます。
- 高血圧
- 脂質異常症
- 糖尿病
- タバコやアルコールの摂取によって生じる化学的刺激
- ストレス
- 加齢
歳をとるのはどうしようもありませんが、高血圧や脂質異常症、糖尿病の大きな要因となる肥満は、努力すれば避けることができます。そのために、食事療法や運動をするのは効果的でしょう。具体的な対策は以下を参考にしてください。
1.バランスのいい食事をとる
食物繊維は、血中コレステロールを下げるはたらきがあり、さらにビタミンC、Eには抗酸化作用もあるため、野菜や果物などをしっかり摂るようにしましょう。また、脂身の多い肉、ラードなどの動物性脂の摂取を控えましょう。
2.適度な運動をする
一時的なエネルギー消費だけでなく、筋肉を増やして基礎代謝を上げることで、糖や脂肪の代謝をよくする効果も期待できます。
3.酒、タバコを控える
アルコールは長い間飲み続けると血圧を上げる可能性が高まります。また、タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は、血管にダメージを与えるため、これらの摂取は控えましょう。
とくに、動脈硬化の成立には「脂質異常症」が深くかかわっています。「脂質異常症」については、こちらのページをご覧ください。
「血(けつ)」の漢方的な考え方については、こちらからご覧ください。