漢方について知る

漢方の効果とは?
他の医薬品との違いから飲み方のポイントまで解説

自身が抱える体調不良の改善に漢方を取り入れようと考えているものの、果たして漢方は効果があるのか懐疑的な人もいるかもしれません。本記事では、漢方を試してみたい人に対して、その効果について紹介します。漢方の基礎を知り、自分に合う漢方を取り入れてみましょう。

漢方の効果とは? その他、漢方の基礎を解説

漢方とは

さまざまな生薬の組み合わせによって、その人の体質や症状に対応できる漢方薬は、何千年もの歴史があり、治療効果のあるものが今日も医薬品として用いられています。「漢方」とは鍼灸や食養生も含めた医学を意味しており、「漢方薬」は、漢方医学の理論に基づいて処方される医薬品のことです。

漢方の基本は、“人間の体も自然の一部”という考え方です。“病気ではなく病人をみる”、という考えで、体の一部分だけにスポットをあてるのではなく、体質や生活習慣から体全体の状態のバランスを総合的に見直し、整えるといった特徴があります。


漢方の歴史

5~6世紀頃に中国から日本へ伝わった中国伝統医学が基礎となりますが、その後、日本の気候や風土、日本人の体質に合わせて独自に発展したものを「漢方」と呼びます。漢方薬は長い歴史の中で、さまざまな作用を持った植物や動物、鉱物など、天然の素材を複数組み合わせて作られてきました。体のバランスを整えたり、巡らせたりするといった考え方が根底にあります。


漢方の効果

漢方薬は長く飲まないと効かないのでしょうか? 症状の度合いや期間の長さ、体質や生活習慣などで効果の発現は個人差があります。服用して効果が出ない場合は、薬が合っていない可能性がありますので、継続か変更かの判断は医師、薬剤師または登録販売者に相談しましょう。
また、漢方薬にも副作用はあります。いつもと違う異常を感じたら服用を中止し、すぐに医師、薬剤師または登録販売者に相談しましょう。

漢方の効果を知る! ほかの医学や医薬品との違いは?

漢方医学・東洋医学と西洋医学の違い

西洋医学と東洋医学の違いは、体の治し方にあります。西洋医学は投薬や手術といった方法で、体の悪い部分にピンポイントにアプローチして治療していきます。一方、東洋医学は病気や症状の発生部位ではなく、体質にアプローチして改善していく治療法です。東洋医学の領域では、具体的には鍼灸やあん摩、漢方薬といった方法で治療を進めていきます。また、病気を未然に防ぐため、日頃から疲れを溜めず抵抗力をつけておくというのも、東洋医学の考え方です。西洋医学と東洋医学は、どちらが良い悪いというものではなく、個人個人の状態に合わせて選んでいくことが大切です。


民間薬との違い

漢方薬で使われているものは植物が大部分をしめますが、鉱物・動物なども使われ、生薬と呼ばれています。生薬の種類はとても多く、その生薬がもつ特性(温めるのか冷やすのか、ゆるめるのか引き締めるのか等)により組み合わせていきます。漢方薬には中国の医学書である『傷寒論』、『金匱要略』などの原典が存在していて、生薬の基原、製法、用法用量などが記載されています。一方、どくだみ茶やクコ茶、ビワ葉など、健康や美容を目的にしたものは民間薬と呼ばれています。民間薬は、漢方薬のように生薬を組み合わせずに単独で用いられ、製法や対応疾患などは細かく決められてはいません。


西洋薬との違い

西洋薬には人工的に化学合成された物質がほとんどで、その多くは一つの成分で構成されており(総合感冒薬など、複数の成分を配合した医薬品も多く販売されています)、一つの疾患や一つの症状に強い薬理作用を示します。一方、漢方薬は天然の生薬を使用し、一つの薬方(処方)は原則として2種類以上の生薬で構成されていて、多くの成分を含んでいます。そのため、一つの薬方で色々な病状に対応することができます。また、漢方治療が向く病気は、病院において検査や画像診断をしても異常がないのに、自覚症状があるというような場合です。病気の原因が特定でき、原因別の治療が可能な場合や手術が必要な場合、緊急を要する疾患、重症の感染症などには一般的に西洋医学のほうが適しています。

効果の裏付け? 医療での漢方処方の実情とは?

日本漢方生薬製剤協会が行った医師への漢方薬の処方実態についての調査(2011年)を見てみると、漢方薬を処方している医師は約9割にのぼり、治療の効果や、患者さんの満足度等で高い評価を得ていることがわかります。漢方薬を処方する理由としては、西洋薬治療で効果がなかった症例で、漢方薬治療により効果が認められた、というものや西洋薬の補完として用いられている、新たなエビデンスが学会などで報告され有用性が認められた、というものがあげられました。

漢方薬の効果的な選び方とは?

病状に合わせて選ぶ

漢方薬は、その人の体質や症状に合っていないと十分に効果を発揮してくれません。漢方では症状だけではなく、一人ひとりの体質に合わせて漢方薬が処方されています。体質や体型、体力、抵抗力、症状の現れ方などを考慮して、最も合っている漢方薬を選ぶことが大切です。医師、薬剤師または登録販売者に相談してみましょう。


体質に合わせて選ぶ

漢方では、人の体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つで構成されていると考えられています。「気」は目には見えないが人の体を支えるすべての原動力のようなもの、「血」は全身の組織や器官に栄養を与えるもの、「水」は飲食物中の水分からできた、体をうるおすもののことです。この3つは、お互いに影響しあっています。大切なのは、この3つがバランス良くめぐっていることです。どれかが多過ぎても少な過ぎてもいけません。

また、漢方は、病気にかかっている人の状態を、体質、病気の状態、環境などを含めたさまざまな角度からとらえ、「証」に基づいて治療します。「証」とは、ひとことで言えば、「病気の人が表すさまざまな症状や訴えのなかから、関連があるものを症候群としてとらえたもの」です。

「証」には、虚と実、寒と熱などがあります。「虚証」は、力が足りない状態で、体力が弱って病気への抵抗力が落ちている人です。「実証」は、力が余る状態で、体力があって病気への抵抗力が強めの人です。一方、「寒証」は、熱が足りていない状態で、寒気や冷えを感じる人です。「熱証」は、熱がたまった状態で、ほてりやのぼせを感じる人です。

「この証には…この漢方薬が最適」という処方があります。そのため、同じ病気でも異なる漢方薬を使うこともありますし、違う病名であっても、病気の原因が共通している場合は、同じ漢方薬を使うこともあります。

効果に影響?漢方の飲み方

飲むタイミング

漢方薬は一般的には、食前(食事の30分~1時間前)、食間(食事と食事の間のことで食後2時間ぐらい)に飲みます。用法・用量の記載を確かめて、その指示に従って飲んでください。何らかの理由で、どうしても食前や食間に飲めない場合は、医師、薬剤師または登録販売者に相談しましょう。


他の薬との併用

複数の漢方薬を同時に服用してしまうと、それぞれの漢方薬に含まれる生薬のバランスが乱れ、適切な効果を発揮することができない場合があります。相反する効果を持つ漢方薬を併用してしまうと、それぞれのよい効果が得られない場合もあります。併用については、医師、薬剤師または登録販売者に相談しましょう。

漢方の飲み方の疑問を解決!

妊娠中や授乳中の服用

妊娠中の体はとてもデリケートです。赤ちゃんへの影響が大きい時期なので、どんな薬を服用する場合も必ずかかりつけの医師へ相談するようにしましょう。授乳中の服用については、お母さんと赤ちゃんの状態を総合的に判断する必要があります。たとえば、構成生薬としてダイオウが配合されている場合、ダイオウの主成分であるアントラキノン誘導体は母乳中に移行して乳児に下痢を起こす可能性があることが知られています。ダイオウの入った漢方薬については授乳中は服用を避けるか、服用している間は授乳を一時中止するようにしましょう。詳しくは医師、薬剤師または登録販売者に必ず相談しましょう。


家族や友人が服用している漢方の服用

漢方医学は、個人個人の体質を重んじる医学であり、他の人に効果があった漢方薬と同じものが本人にも効果がある、という保証はありません。また、西洋医学の診断で同じ病名がついても、漢方医学的な診断が違う場合には使う薬も違います。自己判断で服用せずに必ず医師、薬剤師または登録販売者に相談しましょう。


飲みやすさの工夫

漢方薬は、本来その香りや味も重要な薬効の一つです。しかし、どうしても苦手で飲みにくい場合はオブラートに包んで服用しても問題ありません。胃の中で早く溶けるように少し多めの白湯をいっしょに飲むようにしましょう。


養生も必要

少しでも早く症状が楽になるよう、効果的にするには「養生(ようじょう)」も必要です。食生活の見直し、規則正しい生活、腹八分目、体を冷やさない、適度な運動で血行を良くする、などをあわせて行えば体内が活性化して効果も高まりやすくなります。ご自分の体質に合った養生法は、医師、薬剤師または登録販売者に相談しましょう。

まとめ

いかがでしたか? 漢方の効果や他の医薬品との違い、飲み方の工夫についてご紹介してきました。日々の養生を大切にしながら、漢方とも上手に付き合って、健康的な毎日が送れるように心がけましょう。

もっと漢方を知りたい!