漢方薬を選ぶ

むくみ

むくみ改善に効果的な漢方薬とは|原因と体質から適切な漢方薬を選ぶ

足や腕など体がむくみがちでなかなか改善できず悩んでいる人も多いのではないでしょうか? 本記事では、むくみにつながるさまざまな要因を解説するほか、むくみに効く漢方薬を紹介します。漢方薬ごとに、その効果やどのような人におすすめかも解説しているので、ぜひ役立ててください。

目次

なぜむくみが起きるのか

まず、むくみが起こる原因について見ていきましょう。


筋力低下

人体の約60%は水分です。その多くは細胞や血管内に存在していて、細胞や血管からしみ出したり、戻ったりして入れ替わっています。この水分がうまく回収されず、細胞のすき間にたまってしまった状態が「むくみ」です。とくに、足のむくみの原因のひとつとして考えられるのが、運動不足やそれに伴う筋力低下です。筋肉は血液やリンパ液を循環させるポンプの役割もしています。普段ほとんど運動をする機会がない人だと、筋肉量が落ちて、その役割を十分果たせなくなってしまい、むくみの症状が出てくると考えられています。


長時間、同じ姿勢でいる

同じ姿勢での長時間の活動も足のむくみの原因になります。仕事で一日を通して座りっぱなしや立ちっぱなしなど、同じ姿勢で長時間過ごしていると、血液やリンパ液の流れが悪くなり、むくみが起きやすくなるといわれています。


水分・塩分の摂り過ぎ

顔のむくみなどの原因になるのが水分や塩分の摂り過ぎです。水分を摂り過ぎると、体内の水分量が増えて、むくみやすくなります。同様に、塩分の摂り過ぎも、塩分濃度を薄めるために水分を溜め込もうとするのでむくみの原因になるといわれていますので、普段から減塩を心がけましょう。また、食事制限をして無理なダイエットをしていると、体内の水分調節に必要不可欠な栄養素の摂取量も減ってしまい、むくみの原因となるので、バランスの良い食事が大切になります。


アルコールの摂取

アルコールを飲むと、血管の透過性が高まり、血管中の水分が増えてしみ出しやすくなります。そのため、むくみを引き起こしやすくなるといわれています。

漢方医学で考えるむくみとは

次に、漢方医学の面からむくみについて見ていきましょう。


「気」「血」「水」とは? むくみはどういう状態?

「気」は、生命のエネルギーのこと。元気、気力などの「気」で、人を支える原動力を指すといわれます。「血(けつ)」は、主に血液のことを指します。全身を巡って栄養を運びます。「水(すい)」は、血液以外の体液のこと。水分の代謝や免疫系などにかかわっています。この3つが全身を巡り、バランスが保たれていることで、健康は維持できていると漢方医学では考えられます。このうちのどれかが不足したり、巡りが悪くなったりすると、体に不調をきたします。
むくみとは、「水(すい)」が停滞した状態のことで、場合によっては「気」の不足が加わることもあります。


「脾」「肺」「腎」の機能低下もむくみの原因となる

漢方医学では、消化吸収をコントロールする役割のあるものを「脾」、呼吸や水分循環をコントロールするものを「肺」、水分代謝全般を調節するほか、生命力を貯蔵する役割のあるものを「腎」といいます。むくみは、余分な水分(代謝できない水分)が、体内や体表面に溜まってしまった状態をいいますので、こうした「脾」「肺」「腎」の機能が低下していることもむくみの原因と考えられています。

漢方薬を選ぶ際に注意する点

漢方治療の最も大きな特徴は、漢方医学的に診断して治療することにあります。これを「証をみる」といいます。「証」をみて漢方薬を選ぶと、高い効果を発揮することができるとされています。

「証」とは、自覚症状及び他覚的所見からお互いに関連し合っている症候を総合して得られた状態(体質、体力、抵抗力、症状の現れ方などの個人差)をあらわす漢方独特の用語で、治療の指示(処方の決定)につながります。言い換えると、からだが病気とどんな戦い方をしているかをみるもので、体質や抵抗力、病気の進行度などをあらわします。

よって、むくみに効くもののなかでも、自身の証に合う漢方薬を選ぶことが大切です。

むくみ改善に効果的な漢方薬3選

次に、むくみに効果のある漢方薬を見ていきましょう。


むくみ、飲み過ぎによる二日酔いに

五苓散 第2類医薬品

五苓散(ごれいさん)

(お酒を飲んだ次の日に顔がパンパンになる方、お酒を飲むとよくおなかをこわす方、お酒を飲んでいるときトイレに行く回数が少ないという方などにおすすめです。体のはたらきを高めて、余分な「水(すい)」を体の外へ出す処方。余分な「水(すい)」だけを出すので、一時的に不要な「水(すい)」が体にたまっているときに効果的です。)


体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔
(注)「しぶり腹」とは、残便感があり、くり返し腹痛を伴う便意を催すものを指します。



一般的に「むくみ」に使われる漢方薬
「五苓散」の解説を見る


足腰の冷え、貧血や生理不順の方に

当帰芍薬散 第2類医薬品

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

(生理前は水分をため込む時期なのでむくみやすくなります。手足が冷たくなりやすい冷え症体質で、生理痛のある人に向いています。全身に大切な栄養素を与え、血行を良くするのと同時に、水分代謝を整えることで余分な水分を体からとり除いて、足腰の冷えや生理不順を改善します。)


体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを訴えるものの次の諸症:月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、産前産後あるいは流産による障害(貧血、疲労倦怠、めまい、むくみ)、めまい・立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え症、しもやけ、むくみ、しみ、耳鳴り



一般的に「むくみ」に使われる漢方薬
「当帰芍薬散」の解説を見る


むくみがあり、太り気味の方に

防已黄耆湯 第2類医薬品

防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)

(消化吸収を助けながら、余分な「水(すい)」をとり除き、全身の機能を高める処方です。胃腸がきちんと機能することによって、体に必要なエネルギーをつくり出すことができるようになります。また、余分な水分を排泄することで、体をひきしめ、水太りやむくみを改善することができます。)


体力中等度以下で、疲れやすく、汗のかきやすい傾向があるものの次の諸症:肥満に伴う関節の腫れや痛み、むくみ、多汗症、肥満症(筋肉にしまりのない、いわゆる水ぶとり)



一般的に「むくみ」に使われる漢方薬
「防已黄耆湯」の解説を見る

まとめ

いかがでしたか? 足がむくみやすい方、朝、顔がパンパンになりやすい方に効く漢方薬といっても、一つだけではありません。自分の体質をしっかり把握して正しい漢方薬選びをすれば、むくみを改善できるかもしれません。ただし、食生活などの見直しなどもお忘れなく!

よくある質問

Q むくみの効能を持つ漢方薬として「防已黄耆湯」「五苓散」「当帰芍薬散」等ありますが、使い分けるポイントはありますか?
A 下半身のむくみが気になり、汗をかきやすいのであれば「防已黄耆湯」を、冷えを伴ったり手足や顔のむくみが気になる方には「当帰芍薬散」を、口の渇きがあったり天候が悪くなると体の調子が悪くなる方は「五苓散」をお試しください。
Q なぜむくむのですか?
A 筋肉量が少なかったり体が冷えやすかったりすると、血液やリンパの流れが悪くなり、水分代謝が悪くなります。この水分が細胞や細胞の間に滞った状態がむくみです。また腎臓や循環器に疾患があるときに、むくみが現れることがあります。
Q むくみを予防する方法はありますか?
A 普段から水やアルコールの摂り過ぎに注意しましょう。水分を摂るときは冷たいものより、温かいもののほうがいいでしょう。また塩分を摂り過ぎると、体内の塩分濃度を下げるために水分を蓄えようとするので、控えめにしましょう。マッサージなどリンパや血流の流れを整える方法も有効です。