産後の神経症
公開日:2022年12月09日最終更新日:2022年12月09日
産後の神経症の改善に効果的な漢方薬とは|原因と体質から適切な漢方薬を選ぶ
目次
産後の神経症とは
妊娠・出産における身体の変化
女性のライフサイクルにおいて、妊娠・出産は大きな出来事です。外見上の変化に加えて、妊娠にかかわる女性ホルモンの分泌変化のほか、循環器・呼吸器・消化器・泌尿器などでさまざまな変化が起こります。一般的に出産後6~8週間程度の産褥期(さんじょくき)を経て、妊娠前の状態に戻ります。しかし、この短い期間で急激な女性ホルモンの減少、身体の変化が起こり、体調不良を起こしやすいということから安静にすることが大切な期間ともいえます。
産後の神経症の症状
産後の神経症とは、出産から間もない女性に起こる精神障害で、怒りやすい・不安・落ち込み・無気力・涙もろい・不眠などの症状が見られます。これらの症状は世間では産後うつとも言われています。医療機関では、産後の神経症という病名はなく、出産直後に発生するマタニティーブルー、産後1カ月程度から起こる産後うつ病など、より詳細に分類されます。状況に応じて医療機関の受診や地域の保健所への相談が必要です。
漢方薬でのアプローチ
精神面と肉体面のケアを
漢方薬でのケアは、医療機関にかかるほどでもない、しかし心にしこりのある軽度の症状(一般的に産後うつとも言われる症状)を対象としています。西洋医学では、抗うつ薬などを用いますが、医療機関でしか処方できません。一方、漢方薬は、産後に起こる神経症に用いることのできる処方がいくつかあり、市販されています。これらの処方は、産後の乱れた心身のバランスを整えるため、精神面だけでなく、肉体面の不調もケアできます。
産後の母体は「気」「血」が不足しやすい
産後は出産により消耗した「気」「血」の不足が目立つ時期。食事によって得られた栄養は、母体の栄養供給にあてられて、「気」「血」の補充に用いられますが、一方で乳児の栄養となる母乳の生成にも用いられます。そのため、産後の「気」「血」の不足は、通常時よりも回復しづらく、また慣れない育児による心理的ストレスも相まって、心身の不調をきたしやすいとされています。
漢方では、産後の神経症は母体の体質である「気」「血」の不足や、「気」の巡りに着目します。「気」「血」が不足すると心を養うことができなくなります。このため、気分が落ち込んだり、やる気がなくなったり、涙もろくなったりと精神的に弱くなります。また、肉体的にも疲れやすい、食欲がない、貧血気味、めまい、脱毛、乳汁が出ないなどの不調が現れます。「気」と「血」はお互いを支え合う関係にあるため、出産などで「血」を大きく損なうと、その調和が崩れて、「気」の巡りが悪くなり、些細なことで怒りやすくなるなどの情緒不安がみられることもあります。
産後の神経症に効果的な漢方薬・生薬製剤3選
次に、産後の神経症に効果のある漢方薬、生薬製剤を見ていきましょう。
産後のストレスや不安感、体力低下に
芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)
体力中等度以下のものの次の諸症。ただし産後の場合は体力に関わらず使用できる。: 月経不順、産後の神経症・体力低下
一般的に「産後の神経症」に使われる漢方薬
「芎帰調血飲」の解説を見る
朝起きられない低血圧、体がだるい方に
四物血行散(しもつけっこうさん)
貧血に伴う全身倦怠、低血圧、月経異常、婦人科諸疾患に起因する神経症状(めまい、のぼせ、耳鳴、頭痛、不眠、憂うつ症、不安感)、子宮出血、産前産後及び妊娠による貧血、妊婦の強壮、産婦の強壮
一般的に「産後の神経症」に使われる漢方薬
「四物血行散」の解説を見る
周りにあたってしまう、怒りっぽくなってきた
抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
体力中等度をめやすとして、やや消化器が弱く、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)、更年期障害、血の道症、歯ぎしり
(注)「血の道症」とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状を指します。
一般的に「産後の神経症」に使われる漢方薬
「抑肝散加陳皮半夏」の解説を見る