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熱中症は何度から起きやすくなる?
指数の見方を解説

熱中症は気温と湿度が高い環境で起こりやすい病気です。
総務省によれば、6~9月の間に熱中症が原因で救急搬送される方は全国で5万人を超えることもあります。

「暑さ」による体調不良を防ぐためにも、正しい知識を持って、シーンに合わせた対策を行っていくことが大切です。
今回は、「熱中症になりやすい日」の目安について詳しく解説します。

熱中症の指標「WBGT」とは

熱中症は、気温や湿度の高い環境に身を置くことによって体温を調節する機能がうまく働かなくなり、発汗やめまい、吐き気などを引き起こす健康障害です。

私たちの身体には、暑さを感知すると皮膚の血管が広がって体内の熱を放出したり、発汗が促されたりすることによって体温を正常に保つ仕組みが働いています。

しかし、あまりにも温度や湿度の高い場所にいると、これらの仕組みが追い付かずに体温はどんどん上昇してしまうことに。
そのため、暑さを感じる時期になったら正しい熱中症対策を行っていく必要があります。

まずは、熱中症になりやすい日かどうかを見分ける指標「暑さ指数(WBGT)」について見てみましょう。

暑さ指数とは?

暑さ指数(WBGT)は湿球黒球温度(Wet Bulb Globe Temperature)のことで、1950年代にアメリカで提案された指標です。
現在では労働環境や運動環境の指針として有効であると認められ、国際的に規格化されていますが、あまりなじみがないという方も多いでしょう。

暑さ指数は、私たちの体温を調節する機能に大きく関わる「気温」「湿度」「輻射熱」の3つを元に数値化されています。
輻射熱とは地面や建物、体から出る熱のことで、温度が高いものほど輻射熱が出ます。

この暑さ指数(WBGT)の単位は「気温」と同じく「℃」で示されますが、「気温」とは全く意味の異なる数値なので注意しましょう。
たとえば、気温と輻射熱が同じ数値であっても、湿度が40%の場合と60%の場合とでは、60%のほうがWBGTの値は高くなります。

参考:環境省熱中症予防情報サイト 暑さ指数(WBGT)の詳しい説明
https://www.wbgt.env.go.jp/doc_observation.php

暑さ指数はどうやって計算するの?

暑さ指数(WBGT)は、「気温」「湿度」「輻射熱」の3つを元に数値化されていますが、それぞれの値は、乾球温度・湿球温度・黒球温度を測定することで求められます。

乾球温度とは乾いた空気、つまり「気温」を指します。
一方、湿球温度とは温度計を湿らせた布で包み、直射日光が当たらないよう空気中で測定した「温度」のことです。
湿度が低いほど湿らせた布の水分は蒸発して気化熱で温度が下がるため、湿度の違いを表す指標として用いられます。
そして、黒球温度は周囲の輻射熱を反映する指標です。

屋外で日射がある場合暑さ指数は「0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度」、屋内の暑さ指数は「0.7×湿球温度+0.3×黒球温度」という計算式によって算出することができます。

気温で熱中症のリスクは判断できる?

熱中症は「暑いところで発症する」というイメージが強く、熱中症になりやすいか否かを判断するには「気温」を知ればよいと考えている方が多いのが現状です。

しかし、熱中症の発症には気温だけでなく、湿度や輻射熱も大きく影響します。
このため、暑さ指数(WBGT)の算出には湿度の高低を示す指標である、湿球温度のウエートが大きくなっています。

熱中症のリスクを屋外の温度計などから簡易的に判断する分には問題ありませんが、正確なリスクを把握するために、暑さ指数(WBGT)を積極的に活用しましょう。

【熱中症対策に生かそう】
暑さ指数と気温の見方

近年は熱中症患者が増えていることから、暑い季節になるとテレビの天気予報やインターネットのニュースサイトでも全国の暑さ指数(WBGT)が公表されるようになりました。
熱中症対策を適切に行うため、暑さ指数(WBGT)ごとに危険度を見ていきましょう。

暑さ指数(WBGT)はどう評価するの?

暑さ指標(WBGT)は、先に述べた計算式で算出されます。
単位は「℃」。通常の「気温」と間違える方も多いので注意しましょう。
環境省の基準では、暑さ指数(WBGT)の値と熱中症の危険度は次のように評価されます。

① WBGT31℃以上:危険
運動だけでなく、通常の生活活動だけでも熱中症になる可能性が高い状態です。
高齢者など熱中症になりやすい方は身体を動かさなくても熱中症になる可能性が高く、若い方も不要な外出は避け、涼しい室内で過ごしましょう。

なお、WBGTが31℃以上という状態は、気温35℃以上に相当するとされています。


② WBGT28~31℃:厳重警戒
通常の生活活動を行うだけで熱中症になる可能性がある状態です。
日中の暑い時間帯の外出はできるだけ避け、午前中や夕方など気温が下がる時間帯を選びましょう。
運動を行う場合は、10~20分おきに休憩を取ってこまめに水分を補給する必要があります。

また、室内の気温もどんどん上がっていきますので、空調を効かせて室内を適温に保つよう注意することも大切です。


③ WBGT25~28℃:警戒
運動や激しい作業を行うと熱中症を発症する恐れがある状態です。
長時間身体を動かす場合は、適宜休憩を取ってこまめに水分補給しましょう。


④ WBGT25℃未満:注意
一般的に熱中症になる危険は少ない状態です。
しかし、マラソンなど長い時間にわたる運動や重労働をしていると熱中症を発症する方もいます。
こまめな水分・塩分補給を忘れずに行いましょう。

参考:日本生気象学会 日常生活における熱中症予防
http://seikishou.jp/heatstroke.html

熱中症を発症するのはどんな条件から?

総務省の統計によれば、暑さ指数(WBGT)が26℃程度になると熱中症を発症する方が少しずつ増え始め、28℃を越えると患者数が急激に増加することがわかっています。

天気予報などで暑さ指数(WBGT)が高値であるときは不要な外出は控える、運動を中止するなどの対策を立てることが大切です。

どんなシチュエーションに注意すべき?
活動の具体例

スポーツやレジャーを楽しむときや、家事や仕事でどうしても外に出なければいけない時は、どのようなシチュエーションに注意して熱中症対策を行えばよいのでしょうか。
ここでは、「注意すべき生活活動」の具体例を紹介します。

① WBGT28℃以上:すべての生活活動に注意が必要
あらゆる運動が危険です。ストレッチやゲートボールなどの一見ゆるやかな運動も控えましょう。
自動車の運転や机上事務、炊事や買い物などの日常の活動でも、熱中症を発症するリスクがあります。


② WBGT25~28℃:中等度の運動は避けて
体を動かす家事(布団の上げ下ろし・床磨き・庭の草むしり)や、自転車、階段昇降、ウォーキングなどのシーンで熱中症に注意しましょう。
ゴルフや野球などの運動は運動時間が長くなりがちなので油断は禁物です。


③ WBGT25℃未満:強い生活活動に注意
一般に熱中症の危険性は少ない環境ですが、激しい運動や重労働を行う際は十分な対策が必要です。
スポーツ(サッカー、エアロビクス、登山、剣道、水泳、バスケットボール、マラソン等)をする際は、適度に休息を取り、水分と塩分の補給を怠らないようにしましょう。

暑さ指数(WBGT)を
チェックしてから出掛けよう

暑さ指数(WBGT)は、熱中症になるリスクを示す指標の一つ。
熱中症の時期になったら暑さ指数(WBGT)をチェックし、その日に適した外出や運動の計画を立てるようにしましょう。