11月16日(水)は「世界COPDデー」
『COPDとフレイルの関係』を漢方視点で解説~喫煙者ほど“フレイル”には要注意/喫煙指数とフレイル傾向の関係を調査~
<2022年、日本が向き合う12の暮らしの不調>
漢方薬を中心とした一般用医薬品と医療用医薬品を販売するクラシエ薬品株式会社では、「2022年、日本が向き合う12の暮らしの不調」と題し、1年間を通して季節や流行に応じた漢方情報を発信してまいります。11月は『COPDとフレイル』をテーマに、その密接な関係性や、フレイルについての実態調査などについてご紹介します。
- 「タバコ病」とも呼ばれるCOPD/11月16日(水)は「世界COPDデー」
- 実はCOPDと関係性の深い“フレイル”/COPD患者の56%がプレフレイルという報告も
- 喫煙指数の高い高齢者ほど、フレイルと関連する3指標の低下した人が多い結果に
<調査概要>
○調査対象:全国の40代~70代の男女1000名(有効回答数) ○調査期間:2022年9月20日 ~ 2022年9月26日
○調査方法:インターネットアンケート/クラシエ調べ(株式会社ドゥ・ハウスmyアンケートlight利用)
調査の結果を年代別に見ると、高齢者において「運動量」と「疲労感」の項目でブリンクマン指数699以下のグループと比べて700以上のグループでは約20%高い数値となりました。「運動量」や「疲労感」という項目はフレイルの診断基準にも含まれている項目で、このまま悪化が見られるとフレイルに陥る可能性があります。一方で、中高年層ではブリンクマン指数による変化はあまり見られませんでしたが、実は中高年層ほど、フレイル予防を意識することが重要です。中高年層は現役で働いている世代でもあるため、フレイルの兆候を実感していない方が多く、気づかないうちにフレイルが進行しているケースがあります。特に喫煙本数が多く、ブリンクマン指数が高い方は、日常から軽い運動を心掛けるなどフレイル予防を意識的に心掛けましょう。
※1 世界各国でCOPDへの関心を高めることを目的に、GOLD(the Global initiative for chronic Obstructive Lung Disease: “慢性閉塞性肺疾患に対するグローバル・イニシアティブ”)が、毎年11月の第三水曜日を「世界COPDデー」として2002年に制定
※2 Marengoni A et al. CHEST 2018; 154(1): 21–40.※3 一日に吸うたばこの本数と喫煙年数をかけた指標のこと。例えば毎日1箱(20本入り)を20歳から吸っている40歳の人は、20本×20年=400となる
- 昭和大学医学部 内科学講座 呼吸器・アレルギー内科学部門 主任教授 相良 博典 先生より解説
●COPD(慢性閉塞性肺疾患)について
COPDとは、主に長年の喫煙習慣などのために肺に炎症が起きる病気です。肺に炎症が起きると空気の通り道である気道や気管支が狭くなったり、気管支の先のぶどうの房状の肺胞が壊されたりして、呼吸機能が低下していきます。また、壊れた肺は治療しても元に戻ることはありません。
▶ 特徴的な症状は?
COPDの症状は長引く咳や痰、労作時の息切れなどありふれたものですが、これらの症状が慢性的(約3ヵ月以上)に続いている場合は、COPDが疑われます。
▶ 早期の段階で適切な対応を
厚生労働省の2017年の統計によるとCOPDによる死亡者数は18,523人で、男性では死亡原因の8位となっています。COPDの患者数は40歳以上の人口の8.6%、約530万人と推定されていますので、まだ診断も治療もされていない患者さんが多数いると考えられています。
症状が進行すると、歩くだけでも苦しくなり外出や運動を避けるようになってしまうため、体を動かす機会も減少し、呼吸が苦しいことを感じづらくなります。COPDは初期症状の咳や痰から、ゆっくり時間をかけて進行しますが、症状が進むと酸素吸入をしないと動けなくなるため、早い段階での対応が重要です。
▶ 十分な食事ができず、低栄養傾向も
COPDの患者さんの肺は、息をうまく吐き出せず膨らんでいるため、その下にある胃が圧迫され食欲があまりわきません。また、胃が食事で膨れると、肺を圧迫するため苦しくなり、十分な量を食べられなくなります。さらに、COPDの患者さんでは、呼吸に消費するエネルギー量が健康な人より約10倍も多いため、ますます栄養状態が低下していきます。一度に多くは食べられないので、1日3回の食事以外に、果物やチーズ、ゆで卵など手軽なおやつで上手に栄養補給しましょう。
<COPDとフレイルの関係性>
COPDでは、息切れや呼吸困難に伴って身体活動量が低下し、摂取エネルギーが減少する一方で、安静時エネルギー消費量は増大する、という不均衡が問題となります。COPDの患者さんは低栄養や活動量の低下に陥りやすくなるため、近年、フレイルとの関係が注目されています。COPDの患者さんではフレイルを併存すると呼吸機能がより低くなり、生命予後に影響を与えると考えられているため、フレイルへの対策も必要です。
●フレイルについて
フレイルとは、加齢に伴い、身体の様々な臓器の機能が低下することにより、ストレスに対する回復力が低下した状態です。疲れやすくなり、筋力が低下するため身体機能が低下し、活動量も減少します。消費エネルギー量の減少によりますます食欲が低下し、低栄養やサルコペニア*が悪化する負の循環(フレイルサイクル)を生じます。
*サルコペニア:筋肉量が減少して筋力低下や、身体機能低下をきたした状態
▶漢方視点で見る“フレイル”
漢方医学では、からだは3つの要素(気血水)で構成され、各要素がバランス良く体内を循環していることが健康な状態と考えられています。このバランスが崩れると、なんらかの不調を生じます。漢方薬は崩れたバランスが元へ戻るように、からだを整えていきます。病気は突然起こるものではなく、その前から徐々に進行し、からだが耐えられなくなると病気として発症するものと考えます。発症する前でも何らかの不調がある時には本当の病気にならないように予防医学的なアプローチを行うことがあります。これを「未病を治す」といい、漢方では重要視しています。
フレイルは体や心の活力が低下した状態ですが、適度な運動やバランスの良い食事などを取り入れることにより、健康な状態へ戻る可能性がある状態です。フレイルは漢方でいう「未病」の段階かもしれません。
▶フレイルと漢方薬
フレイルの兆候である「食欲がない」や「疲れやすくて、体力がない」などの症状は、東洋医学においては主に、エネルギー(気)や栄養(血)が不足した状態と捉えています。このような気や血が消耗してしまった状態の方には、不足している要素を補う生薬である人参や黄耆が配合された補剤といわれるグループの漢方薬を用います。
<監修医プロフィール>
相良 博典(さがら ひろのり)先生
昭和大学病院 病院長
昭和大学医学部 呼吸器・アレルギー内科学部門 主任教授
1993年獨協医科大学大学院医学研究科修了。同大学病院で勤務した後、2013年に昭和大学医学部内科学講座・呼吸器アレルギー内科学部門の主任教授に就任。2017年より同大学病院内科学講座主任、副院長を務め、2020年4月に現職就任。喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸器感染症における豊富な診療経験を持つ。日本呼吸器学会呼吸器専門医。日本アレルギー学会アレルギー専門医。
- おすすめの漢方薬
<食欲や体力が落ちており、回復させたい方向けの漢方薬>
人参養栄湯(にんじんようえいとう)
「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」は消化器のはたらきを高め、栄養をすみずみにいきわたらせ、「気」と「血(けつ)」の両方を補う処方です。また、『有形の「血(けつ)」は自生することあたわず、無形の「気」より生ず』と言われるように、同時に「気」を増やすことで、補血を助ける作用があります。
<漢方セラピー>
人参養栄湯エキス顆粒クラシエ【24包】
【第2類医薬品】
希望小売価格:2,640円(税込)
効能:体力虚弱なものの次の諸症:病後・術後などの体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血
- クラシエ薬品について
クラシエ薬品は漢方のプロフェッショナルとして、半世紀以上にわたり日本に暮らす人々の健康で豊かな暮らしをサポートしてきました。漢方薬を中心に一般用医薬品から医療用医薬品まで自社一貫体制の下で幅広く提供しています。
近年、健康の価値や暮らしのあり方が大きく変化している社会の状況を受けて、クラシエ薬品は漢方事業における医療用分野と一般用分野の連携を強め、「クラシエの漢方」として事業一体で漢方薬を通じた健康価値の提供を高めていくことに挑戦していきます。
漢方を通じて、日本に暮らす人々が自らの健康を総合的に見つめ、理想とする健康的な暮らしをつくることをサポートしていきます。
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