~“ゆがみ毛”は繰り返しの「引っ張りダメージ」によってさらにゆがむ!~
「引っ張り」ダメージを予防・補修し、ゆがみを抑える
「PPG-2アルギニン」に着目
クラシエホームプロダクツは、“ゆがみ毛”について研究する中で、ゆがみ毛が手ぐしやコーミングなどの「髪を引っ張る(伸ばす)行為」を繰り返し行うと、ゆがみ毛の曲率が有意に上昇すること、つまり、“ゆがみ毛”がより大きくうねってしまうことを確認しました。その理由は、ゆがみ毛内部の毛髪タンパク質の構造が変性したためです。さらに、「引っ張りダメージ」の予防・補修に効果のある成分として、「PPG-2アルギニン」を見出しました。
1.背景
加齢にともない、うねり・くせ・広がりがある毛髪が増えていきます。そのような毛髪を当社は“ゆがみ毛”と呼び、これまでにゆがみ毛の内部観察や、ゆがみ毛を扱いやすくするソリューションを開発してきました。しかし、ゆがみ毛のケアは完全に解決されたわけではなく、ゆがみ毛保有者のヘアケア行動については未解明な部分が多く存在しています。そこで今回は、ゆがみ毛保有者の日々のヘアケア行動に着目して、まずは行動調査を実施しました。
2.ダメージ現象の解明
(1)Web調査結果 -ゆがみ毛保有者は髪を引っ張る行為によってまとまり感の低下を実感
35歳から44歳までの日本人女性の465名に対してWebにてアンケートを実施したところ、髪のゆがみを整えるためにすることとして「髪を引っ張る(伸ばす)」行為を最も行っていることが分かりました。髪を引っ張る回数が多いほど、髪のまとまり実感が低くなることを見出しました(図1)。
(2)マクロおよびミクロレベルにおける形態観察 -ゆがみ毛の曲率の有意な上昇を確認
同一人物から入手した“直毛”と“ゆがみ毛”で作成した毛束について、繰り返し3,000回のコーミングを行い、その前後の各毛束の状態について観察しました。その結果、ゆがみ毛の方がコーミング後のまとまり感が低下し、うねりが増加している様子が確認できました(図2)。
さらに、同一人物から入手した直毛とゆがみ毛について、テクスチャーアナライザにて一定の速度と応力の条件で反復延伸を行いました。形状解析レーザー顕微鏡を用いて得られた画像から、反復延伸(毛髪を繰り返し引っ張る行為)前後の各毛髪の曲率の観察と計測解析を実施しました。その結果、ゆがみ毛は500回の反復延伸によって有意に曲率が上昇したのに対して、直毛では反復延伸による変化が認められませんでした。この曲率の上昇が髪のまとまり実感の低下につながると考えられます(図3)。
※曲率:毛髪のカールの強さを表す数値
(3)ゆがみ毛内部の構造変化解析 -システイン酸が生成し、構造安定性が低下
次に、顕微赤外分光分析と多変量スペクトル分解を用いて、延伸(毛髪を引っ張る)回数に伴う毛髪タンパク質の構造変化を観察しました。その結果、延伸によってシステイン酸(SO3H)が生成されていることを見出しました(図4)。つまり、毛髪内部タンパク質で毛髪の構造安定性に寄与するジスルフィド結合が切れていることが考えられました。
また、高圧示差走査熱量測定によって、反復延伸したゆがみ毛は構造安定性が低下していることも明らかとなりました(図5)。
3.有効成分の探索、発見
そこで、繰り返しコーミングを行っても、毛髪内部の構造安定性が保持できていれば、ゆがみ毛の曲率の上昇を抑制できるのではないかと考えました。
「反復延伸によるゆがみ毛の曲率の上昇」を抑制する成分について、さまざまな成分を探索した結果、「PPG-2アルギニン」が有効であることを発見。ゆがみ毛に「PPG-2アルギニン」を処理すると、毛髪内部まで浸透し(図6)、反復延伸によっても構造安定性が維持されることを確認しました(図7)。
さらに、毛髪の「引張ダメージ」のケア効果を調べるために、反復延伸による曲率変化を計測しました。その結果、「PPG-2アルギニン」は、反復延伸による有意な曲率の上昇を抑え、かつ、反復延伸前よりも曲率を有意に低下させる効果があることが明らかとなりました(図8)。
4.まとめ
(1)まとまり実感の低下は、髪を繰り返し引っ張ること(反復延伸)による毛髪の曲率上昇が一因であり、それはゆがみ毛において、より顕著にみられました。
(2)反復延伸によりゆがみ毛の内部ではシステイン酸が生成し、さらに内部タンパク質構造の不安定化が起こったことが判明しました。
(3)さらに、「引っ張り」ダメージを予防・補修し、ゆがみを抑える成分として「PPG-2アルギニン」を見出しました。
今後、今回の研究成果を2023年秋発売予定のヘアケア製品に応用する予定です。
以 上
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