毛髪柔軟成分の吸着・浸透を飛躍的に増強する新技術を開発
従来の発想からの転換、未中和「3級アミン」に着目
~使い続けたくなる感触のトリートメントを実現~
クラシエ株式会社は、毛髪のコンディショニング状態を良好にする研究を続けている中で、毛髪にうるおい感を与えて柔軟にする成分として知られているカチオン性界面活性剤が、未中和「3級アミン」によって飛躍的に毛髪へ吸着・浸透する新技術を開発しました。また新技術により、毛髪に対するシリコーンの過剰な吸着も抑制されビルドアップを防ぐことも確認しました。
1.背景・目的
毎日の髪のお手入れとして使用されるヘアトリートメント製剤においては、毛髪に柔軟性や平滑性を与える目的でプラスの電荷を有するカチオン性界面活性剤が広く使用されており、重要なキー成分となっております。カチオン性界面活性剤は、アルキル第4級アンモニウム塩やアルキル第3級アミン(以降、3級アミン)を単独、または、組み合わせて使用することが多くみられます。ここで、3級アミンは製剤配合時に酸を同時に使用することでpHを酸性側にコントロールし、アミンを中和してプラスの電荷(カチオン性)を付与することが一般的であります。
カチオン性界面活性剤の毛髪柔軟効果を高めるために、その配合量や種類、組み合わせ、また他の配合成分との相性など様々な検討がこれまでにもなされてきましたが、目的とする性能向上を実現することは困難でした。カチオン性界面活性剤を製剤中に多く配合することによりその効果を高める工夫は一般的ではありますが、塗布した製剤を毛髪からすすぐ際にその多くは洗い流されてしまい、効果を飛躍的に高めることまでには至りませんでした。そこで、より効率的に多くのカチオン性界面活性剤を毛髪に吸着・浸透させ、今までよりもさらに高い効果実感を実現することを目指して、ヘアトリートメント配合成分の抜本的な見直しに取り組みました。
その結果、トリートメント製剤中で酸を使用せずに未中和のままの「3級アミン」によって、第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤の吸着・浸透を飛躍的に増強できる新技術を確立いたしました。
2.効率的吸着・浸透技術の開発
通常「3級アミン」は、酸と一緒に用いることで、カチオン性界面活性剤の一種として使用されます。今回、配合成分を抜本的に見直す中で、酸を使用しない未中和「3級アミン」に着目、第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤と組み合わせてヘアトリートメント中に配合することで、第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤が短時間で効率的に毛髪に吸着・浸透することが可能となることを見出しました。
酸を使用した従来技術と酸を使用しない新技術で、毛髪に対して同じ時間(1分間)処理を行い、カチオン性界面活性剤の毛髪への吸着・浸透量を比較すると、新技術において吸着・浸透量が顕著に多くなり、また毛髪表面からより深い位置まで吸着・浸透量が増えていることが確認できました。新技術での1分処理では従来技術の60分間処理よりも吸着・浸透量が多くなり、短時間で効率的に毛髪への作用を高めていることを示しております。(図1)。
図1 第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤の毛髪への吸着・浸透性
図1のプロファイルからキューティクルの厚みを推定し、表面から180nm付近まで(キューティクル1枚分)の吸着・浸透量積算値を比較したところ、新技術では、従来技術の24倍以上のカチオン性界面活性剤の吸着・浸透があることが確認されました(図2)。カチオン性界面活性剤の吸着・浸透量が多くなるということは、毛髪への柔軟性付与効果が飛躍的に高まることになり、より補修感を実感することができる新技術となります。
図2 第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤の毛髪への吸着・浸透性に関する表面積算量
さらに、新技術ではヘアトリートメント処理後のシリコーンの吸着状態にも変化が見られました。従来技術では、シリコーンが過剰に毛髪表面に吸着し、次のヘアトリートメント使用時に洗い落としきれずに重なって吸着してしまう、「ビルドアップ」という現象が生じやすい状態でしたが、新技術では、全体的に薄く均一に吸着し、「ビルドアップ」が生じにくい状態であることが確認されました(図3)。これにより、繰り返し使用しても心地良い補修感、自然な風合いを体感することができます。
(A)従来技術 (B)新技術
図3 シリコーンの吸着状態の変化
3.まとめ
(1)酸を用いない未中和「3級アミン」とカチオン性界面活性剤をヘアトリートメント中に配合することで、柔軟成分カチオン性界面活性剤の毛髪への効率的な吸着・浸透量の増強を実現する新技術を開発しました。
(2)新技術ではヘアトリートメント使用後のシリコーン吸着状態に変化が生じ、「ビルドアップ」が生じにくい、薄く均一な毛髪への吸着に変わり、心地良い補修感、自然な風合いを実感できるため、使い続けたくなる感触のトリートメントを実現することができました。
今後、今回の研究成果を2024年春発売予定のヘアケア製品に応用する予定です。
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