漢方で考える健康とは、陰陽(いんよう)のバランスがとれている状態を意味します。
みなさんが住んでいるこの地球上にあるものすべては「陰陽」で表すことができます。朝になると空に現れる太陽や、夜になると現れる月にも陰陽はあります。もちろん陰陽は人間にも当てはめることができます。陰陽は健康を維持するためや病気の治療にも使われます。
陰陽のバランスは漢方の基礎知識4「陰陽とは」で紹介したように、陰が盛んになり陽が衰える、もしくは逆に陽が盛んになり陰が衰えるというように対立したり、依存したりすることを繰り返しています。この陰陽の状態が人間の体に影響を及ぼしているのです。今回は「陰陽」について、さらにくわしく説明を進めていきます。
陰陽のバランスとは~冬は環境に合わせて、行動を控える~
漢方の基本的な考えである「陰陽学説(いんようがくせつ)」では、この世界にあるあらゆるものは、陰と陽に分けることができると示されています。陰がなければ陽はなく、逆に陽がなければ陰もありません。ようするに、陰と陽は常に互いに影響を受けながら変化し続けているのです。
例えば、陰は日の当たらない影であり、陽は日の当たる日向であるという考えがあります。
この影と日向は常に変化を続けています。このように、陰陽は常に変化をしながらバランスをとっています。人間で考えると、冬は陰が強くなるため、環境に合わせて、行動を控えるという考えがあります。
逆に春から夏に近づくと陽が強くなるため、積極的に行動し太陽の光を浴びて陽の気を体にとりいれることが大切だと考えています。また、ずっと寒い日が続くと体は冷えてしまい、暑い日ばかりだと体に熱がこもり体調を崩しやすくなってしまいます。
人間で考える陰陽とは~男性が陽、女性が陰
人間の健康に影響を与える陰陽には、さまざまなものがあります。これまでのコンテンツ(漢方の基礎知識4「陰陽とは」)で紹介したように、男性と女性で考えると男性が陽で、女性が陰です。
これには男性と女性がいなければ新しい命を生み出すことが出来ないという事を表しています。
また、人間が生きていくために必要な食材にも陰と陽があります。体を温める食材は陽で、体を冷やす食材は陰です。
みなさんは、よく「健康を維持するためには体を温めることが大切だ」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?ところが、どんな人でも体を温めると健康を維持できる、病気がよくなるわけではありません。体が冷えている人には温める食材、体に熱がこもっている人は冷やす食材をとる、もしくは体質や症状に合わせた薬を飲むなど、そのときの体質や症状、環境に合わせることがなによりも大切なのです。これも陰陽の考えのひとつなのです。
陰陽のバランスが崩れるとどうなる?
陰陽のバランスが崩れるとは、陰が強くなる、または陽が強くなるといった状態です。ここでは、陰陽のバランスが崩れると起こる「陰陽失調(いんようしっちょう)」について説明をします。
陰陽失調(いんようしっちょう)とは
「陰陽失調」とは、陰陽のバランスが崩れたことによって起こります。陰陽失調は、陰陽・気血・臓腑(内蔵)のつながりが悪くなる状態です。病気が発症するもしくは進行する原因は、その人が持っている陰陽のバランスによって異なります。
陰陽のバランスが崩れると、陰陽はお互いに制御することが難しくなるため病気になります。このような状態が続くと、正常な陰陽のバランスが維持できなくなるため、次に紹介する「陰陽偏盛(いんようへんせい)」といった状態に移ります。「陰陽失調」は必ず体内に原因があり、病気が起こる状態と進行に影響を与えます。「陰陽偏盛」とは、陰陽のどちらかが強くなった状態を意味します。陰陽のバランスを整えるには、お互いに不足しているものを補う方法と、過剰になっているものをとりのぞくといった方法があります。
陰陽偏盛(いんようへんせい)とは
「陰陽偏盛」には、陽の偏盛と陰の偏盛の2つがあります。陰陽がどのような状態で病気になるのかを考えていきましょう。
陽の偏盛(ようのへんせい)
「陽の偏盛」とは、陽の邪気が盛んになる状態を現しています。陽の邪気が必要以上に体に入り込む状態(実熱)と、陰のパワーが少なく陽のパワーが多く見える状態(陰虚)の2パターンがあります。
この場合、高熱・喉の乾き・目が赤くなるなどの症状が現れます。陽の邪気をとりのぞいても陰が不足しているため、元の健康な状態に戻るのに難しくなることがあります。陽が盛んになると冷やす力が不足する「陰虚」という状態になります。
陰の偏盛(いんのへんせい)
「陰の偏盛」とは、陰の邪気が盛んになる状態を現しています。陰の邪気が必要以上に体に入り込む状態(虚寒)と、陽のパワーが少なく陰のパワーが多く見える状態(陽虚)の2パターンがあります。
この場合、悪寒・冷え・下痢などが起こります。さらに進行すると、冷えの状態が取り除かれても必要な陽は減っているため、元の健康状態に戻ることは難しくなる場合があります。陰が盛んになると温める力が不足する「陽虚」という状態になります。