料理家・麻木久仁子さんに
くらしを豊かにする薬膳レシピをお願いしました。
50歳を目前にして、脳梗塞と初期の乳がんを立て続けに経験した麻木久仁子さん。それからは健康管理を真剣に考えるようになったそうです。
まずはきちんとした食事を摂ろうと薬膳の学校に通い、東洋医学の勉強を始めました。それまでは『古臭そう』と敬遠していた東洋医学でしたが、しっかりと体系立てられていることに興味を持ち、学んでいくうちにすっかりハマってしまったそうです。
「現代的な分析ができない時代から続く東洋医学だからこそ、人の健康をよく観察されていると思います。」
また、勉強していくうちに、薬膳にも魅力を感じました。
「カラダの不調はバランスの乱れが原因。その乱れは食材の力で整えることができるとされています。薬膳では“食材すべてに力がある”と考えているので、日々の食事で実践できて実用的な養生だと思いました。」
“食材すべてに力がある”から、普段の工夫でカンタンに取り入れられることに惹かれたそうです。
「カラダのバランスを大切にする薬膳では、旬を意識することも大切。今日は寒いからカラダを温める食材を摂ろう、とか、暑くてカラダに熱がたまっているなら熱を冷ます食材を使おう、と考えればいいのです。」
季節や体調、体質は毎日変わります。自分の状態を考え、必要なものをしっかり摂ることが薬膳です。
「コンビニに行ったときも、寒い日ならサラダではなく温かいスープを選ぶとか。つまり薬膳って、養生ができるオーダーメイドの料理ということなんですよ。」
病気を克服し、薬膳を始めてから10年が過ぎました。毎日の自分と向き合う生活はずっと続けています。
「今日はカラダが冷えるなという日は、白粥に生姜を入れて胃腸を温めます。さらに冬の寒い朝なら、お粥に鶏肉を入れて煮込んでもっとカラダを温める。
また、夏の暑い日にほてったカラダを冷やすためにスイカを食べる。たったそれだけで立派な薬膳になります。」
今日の自分の体調はどう? 疲れてない? 冷えてない? ほてってない? イライラしてない? その日の気候なども考え、それらにあった食材や調理法でカラダを整えます。
「今日は疲れたー」と思ったら、補気の作用があるお芋や豆類などを使って料理をします。それでも取れないようなひどい疲れなら漢方薬を。疲れが取れたら、また薬膳に戻って健康を気づかう。その繰り返しが麻木さんの日常に根付きました。
「たとえば、家族がいる方は盛り付ける量や調理をちょっとだけ変えるといいですね。育ち盛りの子には量を増やしたり、肉を多めにしたり。おじいちゃんやおばあちゃんの料理は、消化を助けるために、少し煮込む時間を長くするといった工夫をすればいいのです。」
自宅では、すぐに使えるように、免疫力を整えられるキクラゲや干し椎茸を戻して冷蔵庫に保存しているそうです。
「よく使う乾物はそうしておけば、調理時間を短縮できます。また、エネルギー不足の時のために、山芋をフードプロセッサーにかけてから冷凍しています。普段の美味しい食事で病気を防ぐことができるなんて、まさにセルフメディケーションですよね。」
おすすめグッズの紹介
RECOMMEND
乳鉢
カラダを温めるために、カルダモンやシナモン・クローブ・ブラックペッパーなどのスパイスを料理に使用する時は、直前に乳鉢で砕くと香りが良く、柔らかな風味に仕上がり、気分も上がります。
RECOMMEND
PROFILE
テレビ番組などで司会者、コメンテーターとして活躍。2010年暮れに脳梗塞を発症。2012年初期の乳がんを手術。その後、国際薬膳師(中国薬膳研究会認定)、国際中医師(世界中医薬学会連合会認定)、温活指導士(一般社団法人 日本温活協会認定)に。著書に『一生、元気でいたいから 生命力を足すレシピ』(文響社)、『ゆらいだら、薬膳』(光文社)、『おひとりさま薬膳 還暦からのごきげん食卓スタイル』(光文社)、『からだ整う 温活薬膳ごはん』(食べもの通信社)。