スマホの中の自分より、
健やかに
自己肯定できる自分に。
東村アキコさん
漫画家。1975年、宮崎県生まれ。
1999年『ぶーけデラックス』増刊でデビュー。2007~2011年連載のエッセイ漫画『ママはテンパリスト』が人気に。2015年『かくかくしかじか』でマンガ大賞を受賞。『東京タラレバ娘』、『美食探偵 明智五郎』、『偽装不倫』などドラマ化した作品も多数。アラサー女子が登場する作品が多く、時代を生きる女性たちをリアルに描く作品で多くの読者から支持を得ている。
リアルな女性像を描く著作漫画が
多くの支持を得ている東村アキコさん。
自身が登場した美容に関する
エッセイ漫画も手がけた経験も。
コンスタントに作品を生み出している中での
生活スタイル、美容に対する意識や
ダイエットについて伺いました。
さらに、悩みをもつ女性を描いた
コッコアポの
キャラクター制作秘話もお話いただきます。
漫画家。1975年、宮崎県生まれ。
1999年『ぶーけデラックス』増刊でデビュー。2007~2011年連載のエッセイ漫画『ママはテンパリスト』が人気に。2015年『かくかくしかじか』でマンガ大賞を受賞。『東京タラレバ娘』、『美食探偵 明智五郎』、『偽装不倫』などドラマ化した作品も多数。アラサー女子が登場する作品が多く、時代を生きる女性たちをリアルに描く作品で多くの読者から支持を得ている。
コロナ禍のリモートワークで
すっかり生活が乱れて……
漫画家は不規則な生活で大変……というイメージですが、
東村先生の生活スタイルはどうでしょうか。
子育て中は、朝からオフィスに行って、夜に夕ご飯作るために家に帰るという規則的な生活を送っていたんですが、コロナ禍になってから、そのサイクルが崩れてしまったんです。リモートワークで仕事場に行かずに家で仕事ができるようになったら、メリハリがなくなって就寝時間がバラバラになったんですよね。他人と一緒に仕事をしていないから、緊張感がなくて眠くなってしまうんです。今は、仕事場に行くようにはなったんですが、それでも生活サイクルは戻せていなくて……。
生活の乱れの主な原因は韓国ドラマ。夜通し観て、朝4時ぐらいまで起きているので、昼12時まで寝てしまい、そこから仕事に行くのですが、やはり眠いんです。いわゆる、昼夜逆転。すべて、コロナのせいです(笑)。アシスタントも韓国ドラマを観ているので、みんなで話すのが楽しくてやめられないのもあるのですが。
生活が乱れると、
体の調子にも変化がありましたか。
やはり太りましたよ。夜中ずっと起きていると、とにかく食べてしまうんですよね。昼型だったとき、締め切り前にやむを得ず夜中まで起きていても、おにぎりなどを「エネルギー補給」という感じで食べていましたが、今の乱れた生活の中では「何か食べないと気が済まない」という感覚。脳が食べているというか……。お腹はいっぱいなのに、ジャンクフードやカップラーメンをつい口にしてしまいます。
夜勤の方や夜型の生活が得意な方はいらっしゃると思うのですが、私の体には合っていないので、さすがにこの生活は辞めたいんですよ。真剣に悩んでいます。
「自分の体と付き合っていく」 と
決めた 20代
体の変化を感じて、
ダイエットを始めたりしましたか。
体重を減らすというよりは、食生活を改善しなくてはと思ったことがあって。人間ドックに行ったら、「中性脂肪が高いから、ダイエットをしなさい」と言われました。そして、ほとんどお酒を飲まないのに、γ-GTP※1が非常に高いということが発覚して、食べ物に注意するようになりました。
気がつくと、甘いものと果物をたくさん食べてしまうんですよ。再検査は避けたいので、検査から1か月はそれらをあまり食べないようにしました。今まで、ちょこちょことダイエットをしたとき、1食を果物に変える方法も経験したので、その癖でつい果物を食べ過ぎてしまうんですね。なので、夜中に食べるのをやめて、甘いものと果物をあまり食べないようにしてタンパク質や野菜を多く摂ったら、2〜3kgは痩せました。でも、また食べたら戻りますからね。どうせ食べてしまうし……(笑)。
※1 飲酒量が多いときや胆道系疾患などで値が上昇し、肝機能の指標とされる。最近、アルコールとは無関係に栄養過剰や肥満がもとで数値が上昇する非アルコール性脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎といわれる病気が増えてきている。
ほかにどんなダイエットをしたことが
ありますか。
筋トレを頑張ったこともあるのですが、続かなかったですね。根っからの文系なので、「体育」の雰囲気自体が苦手なんですよ。ジムの縦長のロッカーを見ただけで萎えてしまうというか(笑)。トレーナーさんに家まで来てもらうことにしても、トレーニングの日は朝から憂鬱で……。トレーナーさんには本当によくしていただいたし、体の調子は良かったんですが、続かなかったんです。
今までの人生、しょっちゅうダイエットをして、頑張って3kg落としたあとまた食べて戻って終わりの連続。人生が激変するようなダイエットはしたことがなくて。物心ついたときから痩せたことがなく、ずっとぽっちゃり人生なんです。そんなに太っていると思われないかもしれないですが、常に平均体重よりは10kgぐらい重いし、見た目より太っているんですよ。家系的にお腹まわりに肉がつくタイプですね。でも、既製品の服も入るし、「もう自分は、これで良しとしよう」と20代の時に思ったんですよね。
自分の体質を受け入れました。今思えば、自分でもそれはよかったなと。心身のバランスが崩れなくてすみました。便秘になったり、むくみが気になったりはしますが、大きい病気もせずに健康体でいられたと思います。
「悩み」からキャラを作ったのは初めて。
こだわったリアルさ
便秘など、体の調子が崩れてしまうときは、どんな対処をしていますか。
子どものころから漢方には馴染みがあって、ちょっと体型が気になったときや便秘が気になるときは漢方を利用していました。漢方薬局にもよくお世話になっていたので、漢方は身近な存在ですね。ドラッグストアで買うときは、漢方といえばという感じでコッコアポにスッと手が伸びていましたよ。
今回、コッコアポのキャラクターと
漫画を制作いただきました。
制作時に留意したことはありましたか。
今回のお仕事、実は大変でした(笑)。いや、勉強になりました。「悩み」からキャラクターをつくるということが初めてだったんです。アシスタントと一緒に試行錯誤しながら、リアルさに重きをおいて制作しました。
漫画の絵がプロモーションで使われるとき、ともすると現実味がない表現になってしまいます。でも、私が担当するということは、現実にいるOLさんや女子大生を表現してほしいという依頼だと思いました。ですので、身近な友達にいそうな雰囲気だったり、見ている人が「これ、私だわ」と感じてくれたらうれしいなと思いながら描きました。部屋着はかわいいパジャマじゃなくて、ゴムのパンツでしょ?とか思いながら(笑)。
メインキャラクターの女の子も、ド美人とかスーパーモデルではなく、悩みを抱えている子たちが体の調子が良くなったり、ダイエット頑張ったらこういう感じになれるかな?というイメージで描かせてもらいました。
年を重ねても、シルエットと
豊かな髪が美しさを決める
ご自身の美容体験を描いたエッセイ漫画「即席ビジンのつくりかた」から数年経ち、
今「美」や「美容」については
どう考えていますか?
「即席ビジンのつくりかた」は、私が40歳のときに連載していたのですが、今は40代半ばになっています。このときは科学の力でどうにかならないのかと思っていました。加齢と戦っていくスタンスでしたが、今は少し考えが変わっています。
40代や私より年上の50代の方でキレイな人はとてもたくさんいらっしゃいます。そういう方たちを観察していると、「女の人は髪の毛が豊かだったらいける」という気がしているんです。髪がとても豊かな70代の銀座のママはやっぱり美しいんですよ。それに、人はそんなに他人の顔をじっくり見ないですよね。顔の細部ではなく、「シルエット」を見ているんじゃないかと思っています。
細かいシワがあっても輪郭線がキレイだと、歳を重ねても素敵な人でいられるんじゃないかな。私はぽっちゃりで生きる道を選んだわけです。好きなものも食べたいし、「美」に自分の全てを振って他を失うのは嫌だなと。今の自分のままで好きなファッションをして、好きな食べ物を食べていたい。その上で輪郭線が整って、髪がツヤっとしていればいいと思っています。
豊かな髪のために何かしていることは
ありますか?
ヘッドスパに行ったり、海藻を食べたりはしているのですが、どれくらい効果があるのかは分からないですね。昔は毛量が多いことが悩みだったくらいですが、今はそれなりに量も減り、細くなったと感じます。
漢方的には「髪や爪は“血”という栄養物質からできていて、“血”を補うことが大切」と聞きました。ということは、血液をキレイにしたらいいのかな? やはり、美しい髪を保つのも体の状態が大切なんですよね。私は特に鉄分が不足しがちなので、積極的に取ろうと思います。
スマホの中の評価より、
自己肯定できることが大事
世間的な「美」に振り回されてしまう人もいるかと思います。
美の基準について
感じていることはありますか。
今、「ルッキズム※2」が強すぎませんか? 若い人たちの間で、異常に外見を気にする風潮があると感じています。かわいい自撮りをSNSに載せるのは素敵だと思うんですよ。私もやっていますし。でも、それにとらわれすぎていないかな。痩せすぎていたり、ほとんど食べていない人もいたり。バランスがおかしくなっているなと思うこともあって。
私が子どものときに活躍していたアイドルの人たちは、今のアイドルよりふっくらした人が多かったけれど、今見ても「美しいな」と思うんです。若くて、短パンを履いた足がムチムチしているのが、健康的で美しい。
美の基準は人それぞれですが、スマホの中の「みんなに見せる自分」なんて、そんなに重要ではないと思いませんか? 自分のまわりの人に「健康的でかわいいね」と思ってもらえれば、それでいいのでは?と思います。
※2 外見的な美醜を基準にして、人を評価する考え方。容姿による差別をいう。
誰のための「美しさ」か、ということですね。
モデルのような容姿でなくても人気者になる人はいるし、ぽっちゃりさんでおしゃれなインスタグラマーもたくさんいます。みんなで同じような顔や体型を目指す必要はないんです。K-POPの女性アイドルが好きでよく見るのですが、彼女たちは痩せ過ぎではなく、筋肉がきちんとついていて健康的で素敵です。
そして、顔がキレイだとか、スタイルが良いことよりも大切なことは、どれだけ自己肯定できるかではないでしょうか。「自分のことが好き」と思っていれば、太ってようが、痩せていようが「理想の自分」だと思います。自分で自分を肯定したら、イケてる人になりますよ。
自分を肯定するには、健康な体が必要なのかもしれませんね。漢方を利用したり、運動をして、健やかな体になって自己肯定できるといいですよね。私、運動が苦手ではありますが、やっぱり再開します!