布やウレタンで作られたマスクに比べて、不織布マスクの方が、飛沫の飛散を抑える効果が高い傾向にあることが、国立研究開発法人「理化学研究所」(理研)によるスーパーコンピューター「富岳」を使ったシミュレーション結果で分かった。
理研チームリーダーで神戸大教授の坪倉誠氏は、「その日の体調や(感染)リスクなどを考えてマスクを選んでほしい」と呼びかけている。
作成:山本美雪/HuffPost Japan
マスクの素材やフェイスシールドで、飛沫の飛散抑制の効果はどう違う?(参考資料:豊橋技術科学大のプレスリリース)
理研、豊橋技術科学大、神戸大の研究チームは、マスクの素材ごとのフィルター性能と通気性を実験で計測した。実験結果を基に、人がマスクを着用したとき、飛沫を外に漏らさない「捕集効果」(=性能)をマスク別でシミュレーションした。
その結果、不織布マスクはウレタンや布よりも性能が高い反面、通気性が悪いことが分かった。
布マスクは、不織布やウレタンに比べて通気性が良く、性能も比較的良かった。おしゃれさが人気のウレタン製マスクは、不織布と比べて性能は劣った。
一方で、坪倉氏は「ひと口に不織布といっても性能幅がある。布マスクよりも性能が劣っている不織布も市販されている」と説明。「基本的には『息が吸いにくい=性能が良い』と覚えてもらいたい」とした。
日常の場面ごとに、どのマスクを選べば良いのか?
坪倉氏は「マスクは性能だけでなく、通気性や、(繰り返し使えるかという)対費用効果も考えて選択するのが良い。その日の体調やリスクを考えて選んでほしい」と述べた。具体的には、日常のオフィスなら布マスク、人と集まる密になるような機会があるなら不織布マスクを着けることを提案している。
マスクの素材別で、吸い込む飛沫量と吐き出す飛沫量はどれほど違うのか?
豊橋技術科学大のプレスリリースによると、吐き出しの飛沫量は不織布マスクは80%、布マスクは66%〜82%が抑制された。吸い込み飛沫量では、不織布マスクの場合はマスクと顔に隙間がある場合でも飛沫量を3分の1ほどにできるという。
一方で、フェイスシールドは大きな飛沫(50マイクロメートル以上の水滴)であれば抑制する効果が見込めるが、より細かいエアロゾルはほぼ漏れてしまうことが分かった。
マスクの素材別の吐き出し飛沫量・吸い込み飛沫量の違いを調べた研究チームの実験・シミュレーション結果は以下の通り。
(マスクなどの種類/吐き出し飛沫量/吸い込み飛沫量)
▽不織布マスク/20%/30%
▽布マスク/18〜34%/55〜65%
▽ウレタンマスク/50%/60〜70%
▽フェイスシールド/80%/小さな飛沫に対しては効果なし(エアロゾルは防げない)
▽マウスシールド/90%/小さな飛沫に対しては効果なし(エアロゾルは防げない)
※出典:豊橋技術科学大のプレスリリース
この記事は、ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン『ハフポスト日本版』(初出日:2020年12月15日)より、アマナのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。