「いぼ」の部位ごとの原因とケア:手のいぼ
手や指のしこりはいぼ?
原因と対処法、見分け方を
解説
家事や洗顔のときに気になってしまうのが、手にできるいぼ。いぼをつい触ったり、つぶそうとしたりすると、かえって悪化してしまう場合があります。今回は、手のいぼについてご説明します。
1. 手や指にできる「いぼ」の種類と原因
手や指にできるしこりは、「いぼ」である可能性があります。一口にいぼといっても、いくつかの種類がありますが、たいてい手や指にできるいぼのほとんどは、ウイルス性のいぼ、もしくは老人性のいぼです。それぞれ詳しくみていきましょう。
ウイルス性のいぼ
いぼの中で最もよくみられる良性のいぼで、ウイルス感染が原因で皮膚に盛り上がりやしこりができます。手の甲や手のひら、指、爪など手のさまざまな場所にでき、子どもにもよくみられます。形や色はさまざまで、大きさは豆粒以下のものがほとんどですが、複数できることもあります。
老人性のいぼ
老人性のいぼは、脂漏性角化症とも呼ばれる良性のいぼです。
「老人性」といわれる理由は、加齢による肌の老化が原因のひとつと考えられていることに由来しています。
直径 1 〜 2 cm程度で境界がはっきりしており、灰褐色〜黒褐色に盛り上がっているのが特徴です。老人性いぼは、加齢のほかにも紫外線が一因といわれており、手や指のほか、頭や体幹部にもよくみられます。
2. いぼとタコ、魚の目の違いは?
いぼとタコ、魚の目は似ていますが、それぞれ違う病気です。
いぼは、ウイルス感染や加齢などによって肌にもりあがりができる病気であるのに対して、タコや魚の目は、物や靴などとの摩擦刺激によって、肌表面の角質層が厚く固くなる病気です。ちなみにタコは、ペンや靴などがあたる場所の角質層が固くなり、黄色っぽい色を帯びながらなだらかに盛り上がるのが特徴で、通常痛みはありません。
一方、魚の目は、角質層の一部が固い芯のようになる病気です。大きくなってくると角質の芯が皮膚に食い込み、強い痛みを感じるようになります。
3. 手や指のいぼ、
悪化させないためにできることは?
手や指のいぼに気付いたら、悪化させないように対策することが重要です。
いぼを悪化させないための正しい対処法のポイントをみていきましょう。
触らない、自分で取ろうとしない
いぼが気になっても、むやみに触ったり自分で取ろうとするのはやめましょう。いぼを傷つけると、そこから細菌感染を起こして化膿するなど、症状が悪化する恐れがあります。
特にウイルス性のいぼの場合、傷ついたところからウイルスが広がっていぼが増えたり、人にうつしてしまう危険もあるので、むやみに触るのはやめましょう。
保湿し、乾燥を防ぐ
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通常、健康な肌にはウイルスなどの外敵からまもるための「肌のバリア機能
(※)」が備わっています。しかし手指が乾燥すると、このバリアが低下して摩擦に弱くなったり、傷ができやすくなったりして、そこからウイルスが侵入する機会が増えます。
いぼの悪化や発症を予防するためには、肌の乾燥を防いでバリア機能を高めることが大切です。水仕事のあとや乾燥しやすい冬場などは、保湿ケアをしっかりとおこなうと良いでしょう。
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紫外線対策をする
特に老人性いぼの悪化を防ぐためには、紫外線対策が大切です。
老人性いぼは、加齢による影響のほか、日焼けによる肌の遺伝子のダメージを上手く修復できない状態が重なり、角質層が異常に増殖することによって発症・悪化すると考えられています。老人性いぼを悪化させないためには、外出時に帽子、日傘などを活用する、日焼け止めをこまめに塗るなどして、紫外線を浴びない工夫をしましょう。
4. 手や指のいぼは放置しても平気?
自然に治ることはある?
いぼは自然治癒することもありますが、なかにはいつまで経っても治らない、炎症を起こして痛くなる場合などがあります。
いぼができたかな?と思ったら、放置しないことをおすすめします。
放置するといぼが増えることも
ウイルス性のいぼの中には、放置していると次第に大きくなったり、ほかの場所に広がったりしていぼが増えてしまうものもあります。また、タオルの共有や接触などによってうつしてしまうリスクもあるため、注意しましょう。
手指にできるいぼは良性のものがほとんどですが、ごく稀に悪性のものも存在します。
気になるいぼをみつけたら、自己判断せずに医師に相談しましょう。
5.手や指のいぼの治療法は?
手や指のいぼの一般的な治療法としては、「いぼを除去する方法」と「内服薬を飲む方法」の2つが挙げられます。
いぼの部分を除去する治療では、液体窒素を含んだコットンを患部にあてていぼを凍らせて除去する「凍結凝固療法」や、メスでいぼの部分を切り取る「外科的切除」、炭酸ガスレーザーを照射していぼを除去する方法のほか、塗り薬や貼り薬を使って徐々にイボを小さくしていく方法などがあります。
内服薬による治療では、「ヨクイニン」を飲む方法があります。
ヨクイニンはハトムギの皮を除いた種で、消炎作用や体の水分バランスを整える作用があるといわれており、古くから肌あれやいぼの治療に用いられてきました。
どの治療を選択するかは、いぼの種類や大きさ、できた場所、患者さまの希望などを考慮し、医師が最適な治療法を決定します。
6. まとめ
摩擦による刺激や乾燥・紫外線によるダメージを受けやすい手や指は、いぼができやすい部位のひとつです。
手や指にいぼができるとつい気になって触ってしまいがちですが、むやみに触ると悪化するおそれがあります。いぼが気になる時は、無理に取ろうとせず皮膚科を受診し、医師に相談しましょう。
いぼを治療する場合は、外科的な方法だけでなく内服で治療する方法もあるので、自分に合った治療をうけましょう。
用語解説
手のいぼの理解に役立つ用語について解説します。
●肌のバリア機能
乾燥や外部刺激から肌を守るはたらきのこと。肌にうるおいが保たれているときにバリア機能が発揮される。
出典:環境省/紫外線環境保健マニュアル
形成外科診療ガイドライン 皮膚疾患1
尋常性疣贅ガイドライン:日本皮膚科学会雑誌第129巻第6号
榎本 蒼子
医学博士、医学研究者。2015年まで公立医科大学にて医学研究および医学教育に従事。在職中は医師・研修医向けの東洋医学セミナー等を担当。現在は医療ライターとして、健康に役立つ情報や最新の医学研究に関する情報を発信している。