にきびの部位ごとの原因とケア : 頭皮
頭皮にきびの原因と対処法は?
できやすい人の特徴とケア方法
くしで髪をとかした時に、"当たって痛い"と感じて頭皮にきびに気づくことがありませんか?髪の毛で隠れているために気づきにくく、みつけたときにはにきびが悪化していることも少なくありません。 なぜ頭皮ににきびができるのか、できやすい人の原因を詳しく解説します。さらに、頭皮にきびができた時の正しい対処法についてもお伝えします。
※この画像は、にきびができる部位を表現したイメージ画像です。にきびの症状を表現したものではありません。
1. 頭皮ににきびができるのはなぜ?
にきびというと、“思春期に顔を中心にできるもの”というイメージがありますが、大人になってからでも、にきびができることがよくあります。 にきびができる場所も顔だけに限らず、頭皮や顎まわり、背中、臀部などにもできます。個人差はあるものの、頭皮は、にきびができやすい条件がそろっているため、正しいケアを怠ると、にきびを発症することがあります。 ここでは頭皮ににきびができやすい原因を詳しくみていきましょう。
頭皮ににきびができるのはなぜ?
頭皮は全身のなかでも最も皮脂の分泌が多い部位のひとつです。個人差はありますが、頭皮には皮脂を作るための組織である皮脂腺が密集しており、毎日たくさんの皮脂を分泌しています。
全身の皮脂腺の密度の平均値は100個/cm2 (1センチ角大あたり100個)程度ですが、頭部ではなんと800個/cm2もあるといわれています。
思春期ににきびができやすい、いわゆるTゾーンと呼ばれる額部でも、皮脂腺の密度はおよそ400個/cm2 程度ですから、頭皮の皮脂腺密度はTゾーンのおよそ2倍ということになります。
このように頭皮はもともと皮脂腺が多く、皮脂の分泌も盛んなため、ホルモンバランスの乱れによって皮脂の分泌が過剰になると毛穴が詰まってしまい、頭皮にきびの原因となります。
出典:野村 浩一「メークアップ化粧料における皮脂コントロールの重要性とその対策」
Oleoscience 5 (10), 447-454, 2005
通気性が悪く蒸れやすい
頭皮は汗をかきやすいうえに、髪の毛で覆われていて通気性が悪いため、とても蒸れやすい環境です。蒸れた頭皮は、アクネ菌(※)やブドウ球菌などの雑菌が増殖する温床になり、にきびができやすくなります。 さらに頭皮の蒸れによって皮膚のバリア機能(※)も低下するため、頭皮にきび悪化の原因にもなります。 頭皮が蒸れてしまう原因はさまざまです。
スポーツや運動の後、通勤や通学、夏場のレジャー、入浴後、帽子やヘルメットを長時間かぶっている時など、頭皮がジメジメと濡れた状態のまま放置していると、頭皮の角質層がふやけてバリア機能(※)が弱くなります。バリア機能(※)が弱まると、少しの刺激でも頭皮が傷つき、雑菌が侵入することで炎症が起き、頭皮にきびなどの皮膚トラブルが起きやすくなります。
2. 頭皮にきびが悪化する原因
にきびは皮脂や老廃物によって毛穴が塞がれ、その中でアクネ菌(※)が増殖することで発症します。頭皮にきびは、日々の誤ったスキンケアや生活習慣、食習慣が原因で、知らず知らずのうちに悪化していることがあります。 頭皮にきびができやすい人は、次のような習慣がないかチェックしてみましょう。
シャンプーなどの洗い残しやすすぎ残し
毎日シャンプーしているつもりでも髪の表面をなで洗いするだけになっていたり、洗う時間が短すぎたりすると余分な皮脂や汚れなどが頭皮に残ってしまいます。
シャンプー後に頭皮のにおいやべたつきなどが残っている場合は、しっかりと洗えていないサインです。また、すすぎ残しも良くありません。
汚れが落ちないだけでなく、シャンプーの成分が残ってしまい、毛穴に潜むアクネ菌(※)の栄養源になります。シャンプーやリンスなどの成分が残留することで、アクネ菌(※)などの雑菌の温床になり炎症を起こす原因になります。
頭皮の洗いすぎ、擦りすぎ
頭皮の洗いすぎ、擦りすぎにも注意が必要です。
爪を立ててゴシゴシと頭皮を擦り洗いしたり乱暴にシャンプーをしたりすると頭皮を傷つけてしまいます。頭皮の角質層がはがれると、これを修復しようとして頭皮のターンオーバー(※)のサイクルが乱れ、乾燥肌や頭皮にきびなどの皮膚トラブルが起きやすくなります。また、すでに頭皮にきびができている場合は患部を傷つけ、炎症を悪化させることにもつながります。
シャンプーの後、髪を濡れたまま放置する
髪を濡れたまま放置するのも、頭皮にきびを悪化させる原因になります。
髪をしっかりと乾かさずに長時間そのままにしていると、次第に頭皮の角質層がふやけてしまい、バリア機能(※)が低下し、頭皮にきびなどの皮膚トラブルが起きやすくなります。また、頭皮や髪が蒸れることで雑菌が繁殖し、不潔な状態になって頭皮にきびが悪化することがあります。
整髪剤やカラー剤の使用
ヘアワックスやヘアスプレーなどの整髪剤やカラー剤の過度な使用が頭皮にストレスを与え、頭皮にきびを悪化させてしまうこともあります。
また、カラー剤に含まれる薬剤によりにきびの部分が浸みて痛みを感じたり、症状を悪化させたりすることがあります。
紫外線による乾燥
太陽光に含まれる紫外線を浴びすぎると、頭皮が水分を失って乾燥し、荒れた状態になります。乾燥によって頭皮が荒れると皮膚のバリア(※)が機能しなくなり、ブラッシングや整髪料、さらなる日焼けなどによる少しの刺激でも炎症を起こしやすくなります。
また、頭皮の乾燥が進むと、皮脂の過剰分泌が起こり、毛穴を詰まらせることにより頭皮にきびの悪化につながります。
栄養の偏りや不足
現在のところ、特定の食品や栄養素の過不足が、にきびを悪化させるという証拠は見つかっていませんが、血糖値の急上昇がにきびの発症や悪化に関わっているケースが報告されています。
これは、甘いものや炭水化物を一度にたくさん食べることで血糖値が上がり、その血糖値を下げるためのホルモン「インスリン」が皮脂の分泌を促し、毛穴を詰まらせてしまうからだと考えられています。また、皮脂の分泌を調整するビタミンB2が不足すると、皮脂の過剰分泌によって毛穴が詰まりやすくなり、頭皮にきびができやすい頭皮環境になる可能性があります。皮膚のターンオーバー(※)を促進するビタミンB6やビタミンCなどの不足も、ターンオーバー(※)のサイクルを乱し、さまざまな皮膚トラブルの原因になることも考えらえています。
出典:日本皮膚科学会「尋常性痤瘡治療ガイドライン」
3. 「にきび」ではない可能性も?
その他の頭皮トラブル
頭皮のできものは、必ずしもにきびとは限りません。にきび以外の頭皮トラブルには以下のような病気によっても起こることがあります。
にきびとは原因や治療法が異なるため、気になる症状があるときは自己判断せず、医療機関を受診しましょう。
毛嚢炎(もうのうえん)
毛穴の中に黄色ブドウ球菌などの細菌が入り込んで炎症を起こす皮膚の感染症です。毛穴にそって、芯のあるブツブツができます。
炎症がひどいと患部がしこりのようになり、腫れや痛みがでます。
脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)
髪の生え際や頭皮など、皮脂の分泌が多いところにできる湿疹で、べっとりと湿った黄色っぽいフケがたくさんでるのが特徴です。マラセチアというカビが増えることで炎症が起きて、ブツブツやかゆみの症状がでます。
接触皮膚炎
強いかゆみのあるブツブツができて、放置しているとジュクジュクした傷になることもあります。
4. 頭皮にきびを改善&予防するには?
頭皮にきびを改善、予防するためには、正しいヘアケアを取り入れ、食生活を見直すことが大切です。具体的にどのようなことに取り組めばよいのか詳しくみていきましょう。
頭の洗い方やケアを変える
まずはシャンプーの仕方を見直しましょう。シャンプー剤は、洗浄力が強すぎず、適度に汚れを落とせるものを選びましょう。余分な皮脂を落とすシャンプーのポイントは、シャンプーをつけるまえに前にあらかじめブラッシングをすることと、1分間の予洗いをすることです。
こうすることで汚れを浮きあがらせ、シャンプーの馴染みも良くなります。シャンプーを手にとったら、爪を立てないように注意し、指の腹を使ってやさしく頭皮をマッサージしながら頭全体に行き渡らせていきます。シャンプーが全体に行き渡ったら、37度ぐらいのぬるま湯で時間をかけてしっかりとすすぎます。特に耳周りや後頭部、髪の生え際などはすすぎが不十分になりやすいため、念入りにすすぎましょう。シャンプー後は、清潔なタオルで余分な水分をとり、ドライヤーでていねいに乾かしましょう。自然乾燥は頭皮が乾くのに時間がかかり、蒸れによって雑菌が繁殖したりバリア機能
(※)が低下してしまうため避けましょう。
頭皮を紫外線から守る
頭皮も全身や顔の皮膚と同じように、日焼けによってダメージを受けます。外出する時は、帽子や日傘などを活用し、頭皮を紫外線から守りましょう。特に夏場のレジャーやスポーツでは一度にたくさんの紫外線を浴びてしまうため、日焼け対策を怠らないようにしましょう。帽子による蒸れが気になる時は、帽子の代わりに頭皮に使える日焼け止めを活用するのもおすすめです。
日焼けしてしまった場合は、冷水や濡れタオルを使って頭皮をクールダウンしましょう。
頭皮の蒸れやダメージを抑える
頭皮にきびを防ぐには、頭皮の蒸れやダメージを抑えることが大切です。汗をかいたら、清潔なタオルやハンカチでこまめに拭き取ったり、ドライヤーの冷風をあてて頭皮をクールダウンしたりして、蒸れを防ぎましょう。頭皮が濡れている時は、表皮の角質層がふやけてバリア機能(※)が弱くなっています。タオルやブラシで強く擦ることは避け、頭皮へのダメージを抑えましょう。
生活習慣や食事を改善する
頭皮の健康は全身の健康状態を表すバロメーターです。生活習慣の乱れや偏った食事は頭皮に悪影響を及ぼすため、頭皮にきびが気になる時は生活習慣を見直しましょう。
十分な睡眠を確保するのはもちろんのこと、ストレスの少ない環境づくり、バランスの良い食事を心がけることが大切です。
特に食生活に関しては、間食を避け、厚生労働省がすすめる主食・主菜・副菜のそろったバランスの良い食事を毎日とりましょう。バランスの良い食事を続けることで、健康維持に必要なビタミン・ミネラル類も一緒に摂取することができるため、意識的にとるようにしましょう。また食事の際は、食後の高血糖を防ぐため、食べる順番を工夫するのもおすすめです。食物繊維やタンパク質を多く含む野菜類、肉・魚類を先に食べ、その後に糖質を多く含む米やイモ類を食べるようにすると、糖質の吸収をおだやかにし、食後に血糖値が上がるのを抑えることができます。
漢方薬を使って体質改善をはかるのもおすすめです。一口に漢方薬といってもいくつかの種類があります。にきびの色や炎症の状態にあったものを選ぶ必要があるため、漢方薬を試したい時は薬剤師に相談してみましょう。
5. まとめ
頭皮にきびができやすいという人は、普段のヘアケアや生活習慣を見直すことで改善できる可能性があります。
ただし、にきびだと思っていても実は別の病気である可能性もあります。それぞれ原因や治療法が異なるため、症状が治まらない、またはひどくなる場合は医療機関を受診し、医師に相談しましょう。
用語解説
頭皮にきびの理解に役立つ用語について解説します。
●アクネ菌
常に皮膚に存在し、皮膚の健康に関係するといわれる細菌のひとつ。毛穴の奥などに存在し、皮脂や汚れを栄養源として増殖する。
●ターンオーバー
皮膚細胞の生まれ変わりのこと。一定の周期で新しく生まれた細胞が皮膚表面まで押し上げられ、はがれ落ちるまでのことを指し、平均的な周期は約28日間とされる。この周期が乱れると、肌トラブルが起きやすくなる。
●肌のバリア機能
乾燥や外部刺激から肌を守るはたらきのこと。表皮の一番外側にある角質層とその表面を覆う皮脂膜からなる。肌にうるおいが保たれている時にバリア機能が発揮されるが、極度の乾燥や表皮がふやけたり、傷いたりするとその機能が低下する。
出典:野村 浩一 Oleoscience 5 (10), 447-454, 2005
日本皮膚科学会 尋常性痤瘡治療ガイドライン 2017
榎本 蒼子
医学博士、医学研究者。2015年まで公立医科大学にて医学研究および医学教育に従事。在職中は医師・研修医向けの東洋医学セミナー等を担当。現在は医療ライターとして、健康に役立つ情報や最新の医学研究に関する情報を発信している。