夏風邪の症状と原因は?
早く治すための対処と予防策
最終更新日 2024年06月28日
目次
夏風邪は比較的子どもに多く、高熱やのどの痛みなどの症状が激しい傾向にあります。
ここでは夏風邪の症状や原因について解説し、早く治すための対処や予防策について詳しく紹介します。
「夏風邪」とは?
夏にかかる風邪を「夏風邪」と呼びます。
風邪の原因のほとんどはウイルスで、感染したウイルスの違いによって症状などの特徴が異なります。
中でも夏に子どもを中心に流行するヘルパンギーナ、手足口病、咽頭結膜炎(プール熱)はウイルスによる感染症であり、症状が特徴的なため一般的に夏風邪と呼ばれています。
夏に多い感染症の症状と原因
夏に多いウイルス感染症である、ヘルパンギーナ、手足口病、咽頭結膜炎の原因や症状について
詳しく解説します。
ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは、乳幼児を中心に夏に流行する風邪のひとつで、口やのどの粘膜に小さな水疱ができるウイルス性の感染症です。
原因・感染経路
原因はコクサッキーウイルスを含むエンテロウイルス属のウイルスによる感染です。
ヘルパンギーナにかかった人の咳やくしゃみ、唾液などから感染します(飛沫感染)。また、水疱や感染した人の便に触れることで、口の粘膜からウイルスが入り感染します(経口・接触感染)。
エンテロウイルス
エンテロウイルスは5月から10月にかけて流行する夏風邪の原因となるウイルスです。ヘルパンギーナや手足口病はエンテロウイルスによる感染症の代表と言えます。
エンテロウイルスは腸の中で増殖するウイルスの総称で、67種類のウイルス型があります。毎年流行するウイルス型が異なり、違うウイルス型が検出されることが多いため、ヘルパンギーナや手足口病は何回もかかることがあります。
コクサッキーウイルス
コクサッキーウイルスは、エンテロウイルス属のウイルス型のひとつで、コクサッキーA群 、コクサッキーB群があります。ヘルパンギーナはほとんどがコクサッキーA群による感染症です。
症状
潜伏期間は2~4日で、突然38℃を超える高熱、のどの粘膜や口の中に小さい水疱があらわれます。小さい水疱が破けて潰瘍(かいよう)になるとのどの痛みが強くなり、食事や水分が摂れず脱水になったりすることもあります。
また、高熱による熱性けいれんをともなうこともあります。発熱の期間は2~4日程度、遅れて口の中の症状もおさまり7日間程度で回復します。
手足口病
手足口病は、5歳ぐらいまでの幼児を中心に夏に流行する夏風邪のひとつで、その名の通り手や足、口に水疱性の発疹ができるウイルス性の感染症です。大人もかかることがあります。
原因・感染経路
原因はエンテロウイルスに属するコクサッキーA群のほか、エンテロ71型などのウイルス感染です。
感染経路はヘルパンギーナと同様、手足口病にかかった人の咳やくしゃみ、唾液などによる飛沫感染や水疱や感染した人の便などによる経口感染や接触感染です。
症状
潜伏期間は3〜5日で、手のひら、足の甲または裏、口の粘膜に2〜3mmの水疱があらわれます。肘や膝、おしりなどにも出ることもありますが、かゆみはほとんどありません。
3割ぐらいの方が発熱しますが、高熱になることは少ないようです。3〜7日で発疹は消えてかさぶたになることはありません。
一般的に予後は良いのですが、エンテロ71型による手足口病は、髄膜炎や脳炎を合併することがあり、吐き気や頭痛、高熱をともなう場合には注意が必要です。
咽頭結膜熱(プール熱)
咽頭結膜熱は、小児を中心に流行する夏風邪のひとつで、高熱、のどの痛み、結膜炎の3つの症状があらわれるウイルス性の感染症です。プールでの集団感染がみられていたことからプール熱と呼ばれていました。
原因・感染経路
原因はアデノウイルスによる感染です。感染経路は、咽頭結膜熱にかかった人の咳やくしゃみなどによる飛沫感染や、感染した人が触れた物に付着したウイルスが、手を介して口や眼の粘膜から入る経口感染や接触感染です。
以前は汚染されたプールの水やタオルの共用などが主な感染源でしたが、プールに関連しない飛沫・経口感染でも感染の可能性があり、冬季にも小さく流行する傾向があります。
アデノウイルス
咽頭結膜熱の原因であるアデノウイルスには多くのウイルス型があり、一般的な風邪の原因にもなります。
他にも、「はやり目」といわれる流行性角結膜炎、出血性膀胱炎、胃腸炎、重症の肺炎などの原因となります。
アデノウイルスの流行は夏以外にも1年を通じて見られ、咽頭結膜熱は冬期にも小流行がみられるようになってきました。ウイルス型が多いため、何回もかかることがあります。
症状
潜伏期間は5〜7日間で、38〜39℃の高熱、のどの痛みや発赤、目の充血や目やになどの結膜炎が代表的な症状です。目の症状は片側から始まりますが、その後他方にもあらわれ、下まぶたの症状が強い傾向です。
目の症状は3〜5日間続き、1〜2週間で回復し、視力に影響を及ぼすことは通常はないといわれています。そのほかリンパ節の腫れ、下痢や腹痛、食欲不振になる場合もあります。頻度は多くありませんが、重症化すると肺炎を起こすこともあります。
夏風邪を早く治すには?治療と対処法
夏風邪は熱が続くと体力が消耗し、のどの痛みなどで水分を摂らないと脱水になることもあるため、早く治したいものです。夏風邪を早く治すためのポイントを紹介します。
医療機関への受診
まずは医療機関を受診し診断を受け、医師の指示に従うことが大切です。
原因が明らかになれば今後の経過や回復の目途が立ち、症状の変化に注意することもできます。
十分な水分摂取と安静
食事が摂れなくても水分だけはしっかり摂るようにしましょう。
のどや口の中の痛みで飲み込みにくい時には、熱い物や刺激のある食べ物、柑橘系のジュースなどは避けることをおすすめします。
スポーツドリンクやのど越しの良いアイスクリームやプリンなどが良いでしょう。加えてしっかり睡眠をとり、安静に過ごすことが大切です。
漢方薬の活用
からだをあたためて体力の回復を助けたり、のどの痛みをやわらげたりする漢方薬を活用するのも良いでしょう。
夏風邪ののどの痛み、長引かせないためには?
のどが痛いと食事や水分がとり辛く、声が出しにくいと日常生活にも支障があるため、長引かせたくないものです。
のどの痛みを和らげる効果が期待できる漢方薬をご紹介します。
銀翹散(ぎんぎょうさん)
銀翹散は、のどや体表の炎症を抑えて熱を冷やし、かぜによるのどの痛みを和らげることが期待できる漢方薬です。
炎症を抑える作用や、のどの渇きや咳を和らげる作用があります。
麦門冬湯(ばくもんどうとう)
麦門冬湯は、のどや気道の分泌液を促すことで気道を潤し、咽頭炎を和らげることが期待できる漢方薬です。
炎症を抑える作用や、のどの粘膜を潤す作用、咳を鎮め、痰を出しやすくする作用があります。
夏風邪の感染予防、心がけるポイントは?
夏風邪にかからないためにどのようなことを心がければ良いのでしょうか。ここからは夏風邪の感染予防や対策について紹介します。
POINT 01夏バテを防止する
夏バテは体力や食欲不振につながるため、夏風邪には大敵です。原因を意識して対策し、夏バテを防止しましょう。
夏バテの 原因 |
夏バテの 防止対策の例 |
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食事 |
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環境 |
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睡眠 |
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運動不足 |
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POINT 02手洗いうがいを習慣づける
夏風邪のほとんどはウイルス感染のため、まず体に入れないための感染対策が大切です。石鹸と流水による手洗いとうがいを習慣づけましょう。
また、症状が収まった後もしばらくウイルスを排泄することがあります。家庭内の二次感染を予防するため、感染した子どものおむつ替えの時は手袋をして石鹸で手を洗いましょう。
POINT 03感染しやすい場所を意識する
感染しやすい場所を意識することも夏風邪の予防につながります。
家庭内で感染しやすい場所
家族が感染した時や職場や学校で感染者がでた際は、水場での感染リスクが高くなるため、トイレや洗面所等でのタオルやコップなどの共有は避けましょう。
プール
最近では塩素消毒が徹底されていますが、感染のリスクが高い場所であることを意識しましょう。プールの時はサイズの合ったゴーグルを付け、プールの後は涙の組成に近い目薬や洗眼液を使うことをおすすめします。
夏風邪に関するよくある質問
夏風邪に関するよくある質問にお答えします。
夏風邪は子どもと大人、両方かかりますか?
夏風邪は子どもに多い感染症ですが、大人もかかることがあります。
大人の手足口病は発疹の症状が強く、痛みが出ることもあります。また、咽頭結膜炎もまれに大人も感染し高熱が続くこともあります。
夏風邪はいつから登園・登校可能ですか?
ヘルパンギーナと手足口病は、学校保健法における第3種感染症「その他の感染症」で、発熱症状がなく、口の中の水疱の影響がなく普通の食事が摂れて、全身状態が安定して元気であれば出席が可能です。
便から長期間ウイルスが排泄されるため、出席停止は現実的でないという理由からです。ただし、登園届の提出が必要な場合があります。
一方、咽頭結膜熱は、学校保健法における第2種感染症のため、発熱症状やのどの痛みが軽快し、目の充血や目やにが治って通常に戻ってから2日経過後から出席が可能です。
参考:日本小児科学会 予防接種・感染対策委員会「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」
夏風邪で下痢をした場合、
下痢止めを飲んでも大丈夫?
夏風邪の下痢は、腸内のウイルスを排泄する効果があります。下痢止めを飲むとウイルスが排泄されないため、回復が遅れる可能性があります。
ただし下痢が続いて消耗が激しい、脱水の可能性があるなど、対処が必要な場合もあります。まずは医療機関を受診して相談するようにしましょう。
まとめ
夏にかかる風邪を「夏風邪」と呼びます。代表的な夏風邪にはヘルパンギーナ、手足口病、咽頭結膜熱(プール熱)があり、共通の症状として「のどの痛み」があります。
食事が摂りにくく、声が出しにくいなど日常生活にも支障があり早く治したいものです。のどの痛みを長引かせないポイントとしては生活上の対策もありますが、漢方薬の活用も一つの方法です。
のどが痛いときに用いられる漢方薬として、銀翹散と麦門冬湯があります。上手に活用しつつ、症状がつらいときは医療機関を受診するようにしましょう。
出典:
国立成育医療研究センター ヘルパンギーナ
厚生労働省/手足口病に関するQ&A
NIID国立感染症研究所 咽頭結膜熱とは
日本小児科学会 予防接種・感染対策委員会「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」
小谷敦子
薬剤師免許取得後、病院薬剤師として就職。ライフステージの変化にともない、調剤薬局の薬剤師とメディカルライターとしての実績を積んできた。東洋医学専門診療科のある大学病院の門前薬局では、漢方薬の処方に対する数多くの服薬指導を経験。