
咳や痰(たん)が止まらないときの対処法は?
つらい、しつこい咳を和らげる方法
最終更新日 2024年09月13日
目次
しつこい咳や痰(たん)は、体力を消耗し、のどだけでなく体全体が痛くなったり、睡眠不足になったりするなど、日常生活にも支障をきたすことのあるつらい症状です。
ここでは、咳や痰(たん)が出る理由やその原因、和らげる方法をご紹介します。
なぜ咳や痰(たん)が出るの?
咳は、吸い込んだ空気中のほこりや煙、風邪のウイルスなどの異物が体に入らないようにするための、体に備わった生体防御システムのひとつです。気道にあるセンサーが気道に異物などを感じると、その刺激が脳にある咳中枢に伝わり、異物を追い出すために咳が出ます。
痰(たん)の原因は、肺の分泌物や空気中の異物をからみ取った気道の粘液(分泌物)が溜まることで発生します。 通常、分泌物は気道の線毛の働きで、のどの方へ運ばれる間に吸収されたり、のどまで到達しても気づかないうちに飲み込まれたりするため、溜まることはありません。しかし風邪などによって気管支や肺に炎症が起きると、分泌物の量が増えて粘度が増し、線毛の動きも悪くなるため痰(たん)として溜まりやすくなります。そうして溜まった痰(たん)が、咳によって排出されるのです。
咳や痰(たん)を放っておくと?
咳や痰(たん)には重大な病気が隠れていることがあるため注意が必要です。症状はどのぐらい続いていますか?続いている期間によって、原因が予測できるかもしれません。
咳が長引くと体力が消耗し、強い咳では肋骨を骨折することもあります。咳や痰(たん)が長引いたら放っておかずに、医療機関を受診して診断してもらい、適切な治療を受けることが大切です。
3週間未満の咳(急性咳嗽:きゅうせいがいそう)
風邪やインフルエンザなどによる咳や痰(たん)は、3週間未満で治ることが多いです。
3週間以上8週間未満の咳(遷延性咳嗽:せんえんせいがいそう)
3週間以上になると、風邪以外の感染症、例えばマイコプラズマや百日咳菌による気管支炎や、感染症以外の病気の可能性が高くなってきます。
8週間以上続く咳(慢性咳嗽:まんせいがいそう)
咳喘息、副鼻腔気管支症候群(鼻と気管支の両方に炎症を生じる病気)、アトピー性咳嗽(がいそう)、胃食道逆流症、タバコ気管支炎の他、肺結核や肺がんなど重い病気が疑われる場合もあります。
痰(たん)が絡む咳と絡まない咳、
なにが違う?
咳はその性状によって、痰(たん)がからまない「乾性咳嗽(かんせいがいそう)」と、痰(たん)がからむ湿った咳の「湿性咳嗽(しっせいがいそう)」にわけられます。
その主な違いは以下の通りです。痰(たん)が絡む咳か、絡まない咳かによって、咳の原因を予測する目安になります。
乾性咳嗽と湿性咳嗽の違い
乾性咳嗽 | 湿性咳嗽 | |
---|---|---|
痰(たん) | からまない、または少量 | 咳のたびに痰(たん)がでる |
原因 | 気管支や肺の炎症が刺激となって出る咳 | 痰(たん)を排出するための咳 |
主な原因疾患 |
・風邪などの感染症後の咳 ・咳喘息 ・アトピー咳嗽 ・胃食道逆流症 ・一部の降圧薬の副作用など |
・副鼻腔気管支症候群(鼻と気管支の両方に炎症が起きる病気) ・後鼻漏 ・慢性気管支炎 ・気管支喘息など |
治療 | 咳を止める治療(咳止めなど) |
・痰(たん)を減らし、痰(たん)を出しやすくする治療 ・痰(たん)が増える病気を探して治療する |
痰(たん)の色から原因がわかる?
痰(たん)の色や粘り気は、原因となる病気の目安となります。痰(たん)の色や性状と疑われる病気を紹介します。
痰(たん)の色と原因疾患
痰(たん)の色や性状 | 疑われる病気 |
---|---|
透明で粘度が低い | 気管支喘息、気管支拡張症など |
無色透明~白色、 粘度が高い |
閉塞性肺疾患(COPD)、急性気管支炎の初期 |
薄い黄色、粘度が高い |
ウイルスや細菌による感染 慢性気管支炎、気管支拡張症など |
緑~黄色、粘度が高い | 細菌感染 |
茶色(血痰(たん)) |
炎症が強く血が混ざっている 肺がん、気管支拡張症、肺梗塞など |
咳や痰(たん)をとめるには
どうしたらいい?
咳や痰(たん)には、気道内の異物などを吐き出す働きがある為、むやみに止めるべきでありません。しかし、どうしたらつらい咳や痰(たん)を和らげることができるのでしょうか。ここでは、咳や痰(たん)を和らげる方法をご紹介します。
横向きに寝る
横向きに寝ると、うつ伏せ寝や仰向け寝より気道を確保できるため、夜間の咳を和らげることができます。また横向きや上半身側を少し高くすると呼吸がしやすいだけでなく、鼻水や痰(たん)がのどに流れにくくなり咳が軽減されます。
濡れマスクをつける
濡れマスクをつけると、喉や鼻の粘膜を潤す効果が非常に高く、鼻呼吸も促すため、気道の刺激となる乾燥や異物の侵入を防いで咳を和らげることができます。
〈 誰でもカンタン!お手軽濡れマスク 〉
- ①マスクを水でぬらして軽く絞ります。
- ②マスクの上1/3を外側へ折り返します。
そうすることで就寝時のマスクのズレも防げます。

水分をとる
喉が乾燥すると刺激になり咳が出やすくなるため、水分を摂るようにします。また水分を多く摂ると痰(たん)の粘度が低くなり、排出しやすくなります。
漢方薬を活用する
漢方では、「咳」「痰(たん)」という症状から、根本的な原因を突き詰め治癒を目指します。たとえば「咳」の症状に対しては、「咳」を抑えるのではなく、その原因となっているからだの状態を見極めます。ここでは咳や痰(たん)の傾向から、効果的な漢方薬をご紹介します。
〈 乾いた咳が出る場合… 〉
オススメの漢方は
乾いた咳は、熱によってからだの水分(喉の粘液)が失われていると考えられます。体に水分を与え喉の粘膜を潤す効果をもった麦門冬湯が選ばれます。
〈 湿った咳が出る場合… 〉
オススメの漢方は
痰(たん)がなかなか切れず、消化器の働きが衰え、消化・吸収がうまくいかず、余分な水分が排出しきれず滞った状態と考えます。消化器の働きを助けると共に余分な水分を排出する働きをもった竹茹温胆湯が選ばれます。
咳や痰(たん)は意外と体力を使ってしまうものです。体力が落ちているときや高齢の方は、さらに体力を低下させることあるので、早めに対処しましょう。
ツボを押す
咳に効果のあるツボを紹介します。
中府(ちゅうふ)
尺沢(しゃくたく)
肺兪(はいゆ)
咳が出るときにおすすめの飲み物
温かい飲み物
咳が出る時には、温かい飲み物をおすすめします。温かい飲み物をゆっくり飲むと、鼻やのどを加湿し、気道の線毛運動がスムーズになり、痰が出しやすくなります。喉や気道、体全体が温まり血行も良くなり、呼吸が楽になると咳が治まりやすくなります。
はちみつを入れた飲み物
はちみつに含まれている成分には、殺菌作用や荒れた粘膜を保護して炎症を抑える作用などがあり、のどを潤して口やのどの乾燥を防ぐため、はちみつを入れた温かい飲み物がおすすめです。ここでは、体を温める生姜を合わせた「はちみつ生姜湯」の作り方を紹介します。
〈 ハチミツ生姜湯の作り方 〉
- ①お湯を沸かします。
- ②おろした生姜とハチミツを入れてよく混ぜます。
(市販のチューブのすりおろし生姜でも代用できます) - ③お湯を注いで混ぜます。
- ④ハチミツを足して味を調えます。
(お好みでレモン汁やスライスレモンを入れても
美味しいですよ。)

咳や痰(たん)が出るときに
避けるべきこと
咳や痰(たん)を長引かせたり、悪化させたりしないためには、どのような注意が必要でしょうか。具体的な例を紹介していきましょう。
冷たい飲み物は避けましょう
冷たい飲み物が過敏になっている気道を刺激し、かえって咳の原因になることがあるため、避けるようにしましょう。
刺激物は摂らないようにしましょう
辛い食べ物、熱すぎる物、炭酸が強い飲み物、アルコールは、粘膜を傷つけたり、気道を刺激したりすることがあるため、避けるようにしましょう。唐辛子やわさび、からしなど刺激の強い香辛料も控えることをおすすめします。
喉を使い過ぎないように注意しましょう
カラオケや長時間のおしゃべり、大きな声を出すようなスポーツ観戦などは、のどの乾燥を招き、粘膜を傷つけるなど、のどや気道の負担が大きくなり咳が出やすくなるため避けるようにしましょう。
タバコは控えましょう
つらい、しつこい咳が止まらないのは、喫煙のせいかもしれません。喫煙は、たばこの煙やニコチンがのどや気道を刺激し、咳の原因になることがあります。また、喫煙は、肺がんだけでなく他のがんの原因になることや、慢性気管支炎、肺気腫、喘息などの慢性の呼吸器疾患や、心筋梗塞や狭心症などの心臓の病気のリスクも上がることがわかっています。これを機会に、禁煙の治療をはじめてはいかがでしょうか。
痰(たん)を出したほうが、
風邪は早く治る?
痰(たん)を出さずに気道にたまっていると、呼吸困難や息切れ、感染による肺炎などのリスクが高まるため、痰(たん)は出した方が良いでしょう。ただ、痰(たん)を出すために強く咳をすると、のどが切れることがあるので、無理は禁物です。水分を十分に摂り、痰(たん)の粘度が薄まると出しやすくなります。また、空気が乾燥していると痰が硬くなるため、加湿器を使用して部屋の湿度を上げたり、マスクをして口からのどの乾燥を防いだりすることも大切です。
まとめ
咳は異物から身体を守る生体防御システムのひとつのため、危険を知らせてくれるサインです。しかし感染や炎症が進むと刺激となって、しつこい咳や痰(たん)に悩まされることになります。咳や痰(たん)が長期間になると、風邪以外の他の病気が隠れている場合などがあり、適切な治療が必要となります。そうなる前に、咳や痰(たん)を和らげる方法を身に付けておくことをおすすめします。
小谷敦子
薬剤師免許取得後、病院薬剤師として就職。ライフステージの変化にともない、調剤薬局の薬剤師とメディカルライターとしての実績を積んできた。東洋医学専門診療科のある大学病院の門前薬局では、漢方薬の処方に対する数多くの服薬指導を経験。