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排尿障害とは?

~症状と原因、対策について~

「尿がでにくい」「尿に勢いがない」など、排尿に関するトラブルを排尿障害といいます。排尿の悩みは加齢とともに増えていくため単なる加齢現象と思いがちですが、その背景には加齢に限らずさまざまな病気や生活習慣が関わっているケースがあります。

ここでは、排尿障害の代表的な症状と原因、正しい対処法について詳しく解説します。

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排尿障害とは

排尿障害イメージ

排尿障害とは、膀胱にたまった尿を身体の外に出す機能に異常をきたした状態のことをいいます。

排尿障害は、大まかに「畜尿障害(尿をためることができない)」と、「排出障害(尿を出せない・出しづらい)」の2つに分類されます。
ここからは排尿障害のメカニズムや症状、男女による違いについて解説します。

●畜尿障害

畜尿障害は、簡単にいうと膀胱に尿をためておくことができなくなる障害です。
通常、尿は膀胱内に100~150ml程度たまった時点で尿意として伝わりはじめ、300~400ml程度までためておくことができます。
ところが「尿をためておく機能」が障害されると、以下のような症状がみられます。


●排出障害

排出障害は尿を出しにくくなる障害です。
通常、排尿は1回あたり20~30秒で200~400mlぐらいの尿を出し切ります。 しかし排尿障害では、うまく尿が排出できなくなることで排尿時に以下のような症状がみられます。


また、排尿が終わった後には排尿後症状がみられます。

●男女での原因・症状の違い

トイレイメージ

排尿障害のうち、夜間頻尿や昼間頻尿は男女共通のよくある症状です。
しかし男性と女性とでは排尿に関わる体の構造が違うため、症状の出方や原因にも特徴があります 男性の尿道は、膀胱から尿動口までの全長が約20センチほどあり、L字カーブを描いています。

さらに男性の尿道は、男性にしかない前立腺という臓器に囲まれており、加齢とともに前立腺が肥大しやすい傾向にあります。

そのため男性は特に「尿を出す機能」にトラブルが発生しやすい構造になっています。 男性の排尿障害の原因疾患として最もよく見られるのが、前立腺肥大症です。 また、尿道を締めるはたらきをする球海綿体筋が衰えることで排尿後尿滴下も起こりやすくなります。

一方、女性の尿道は尿道口まで約3~4センチほどしかなく、カーブもありません。 女性の膀胱や尿道は骨盤底筋で支えているだけなので、加齢や出産などでこの骨盤底筋群がゆるむことで「尿をためる機能」にトラブルが発生しやすくなります。 重いものをもったり、くしゃみがでたりなどの拍子に尿が漏れる「腹圧性尿失禁」は特に女性に多い尿トラブルです。

出典
男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン
女性下部尿路症状診療ガイドライン第二版

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排尿障害の原因

排尿障害の原因

排尿トラブルは、加齢だけでなくさまざまな疾患や習慣が関係していることもあります。 排尿障害を引き起こす原因についてみていきましょう。

●蓄尿障害を引き起こす疾患

畜尿障害、つまり「尿をためておく機能」のトラブルを引き起こす主な疾患を紹介します。

過活動膀胱

何らかの原因によって膀胱が過敏になり、頻繁に強い尿意をもよおしてしまう病気です。 尿がたまる前に膀胱が収縮するため、尿を充分にためておくことができません。

脳卒中や脳梗塞、パーキンソン病などによって、排尿に関係する神経が侵されて発症するものや、骨盤底筋郡のトラブル、前立腺肥大症などによって発症するものもありますが、原因不明のケースも少なくありません。

尿路感染症

膀胱や尿道の感染症の総称です。 膀胱炎や尿道炎など、体内に入った細菌が繁殖する部位によって病名が異なります。 下部尿路感染症という尿道口に近い部分での尿路感染症の場合、膀胱が刺激されることで、尿を充分にためることができず、頻尿になります。 排尿痛や血尿などの症状をともなうこともあります。

間質性膀胱炎(かんしつせいぼうこうえん)

膀胱に慢性的な炎症がおきる病気で、主に中高年の女性に多い傾向があります。 他の膀胱炎のように細菌感染ではありませんが、根本的な原因はよくわかっていません。 少し尿がたまっただけで強い尿意を感じ、膀胱に不快感や下腹部に痛みが出るため、尿をためておくことができなくなります。

●排出障害を引き起こす疾患

排出障害、つまり「尿を出す機能」のトラブルを引き起こす主な疾患は次の通りです。

前立腺肥大症

男性特有の臓器である前立腺が加齢にともない肥大する男性特有の病気で、尿に関するいろいろな症状が起こります。 例えば、前立腺が肥大することで尿道の一部が細くなり排尿しづらくなります。 また膀胱内に尿が残っているのに、出しきれないため残尿感や頻尿などの症状もみられます。

尿道狭窄症(にょうどうきょうさくしょう)

尿道が狭くなったり、詰まったりする病気です。 主な症状としては尿の通りが妨げられるため、排尿しにくくなることが挙げられます。 その他、いくつかの兆候としては血尿、排尿時痛、腹痛、尿路感染などがみられることもあります。 発症の原因はさまざまで、外傷、術後の後遺症で発症するケースや感染症や腫瘍にともなう炎症の影響で発症するケースもあります。

●両方の原因となる疾患

畜尿障害、排出障害の両方の原因になり得る疾患は以下の通りです。

骨盤臓器脱(こつばんぞうきだつ)

加齢や出産、肥満などによって骨盤底筋郡がゆるみ、膀胱、子宮、小腸、直腸などの、骨盤内の臓器の位置が下がってくる病気です。 女性に多い病気で、下がってきた臓器に膀胱が押されて頻尿や失禁を起こしたり、尿道が圧迫されることによって尿が出にくくなるなどの症状がみられます。

尿路結石

尿の通り道に結石ができる病気で、主に中高年の男性や閉経後の女性に多いのが特徴です。結石の大きさや結石ができた場所によりさまざまな症状がありますが、主に背中、腰、脇腹などの激しい痛みや血尿などの症状がみられます。 また結石が途中でつまってしまうと尿の流れが妨げられ、尿をためにくくなったり、尿を出しにくくなったりといった症状もみられます。

膀胱がん

膀胱にできるがんで、主に高齢の男性に多いのが特徴です。膀胱粘膜に腫瘍ができることによって、炎症が起き、血尿や排尿痛、残尿感や尿意切迫感などが起こります。 病気が進行し腫瘍が大きくなると、尿の通り道が圧迫されて尿が出にくくなったり、脇腹などが痛んだり、足がむくんだりする症状が加わることもあります。

●排尿障害を引き起こす生活習慣・要因

排尿障害は上記の疾患以外にも、日常的な生活習慣などが関わっていることもあります。 排尿障害を引き起こす習慣や要因についても見ていきましょう。

肥満・糖尿病

肥満は尿失禁や過活動膀胱などの排尿障害と関係していることが知られています。 肥満のため、腹圧が高くなり骨盤内の臓器が下がってくる「骨盤臓器脱」が起こりやすく、その影響で排尿トラブルを発症することもあります。

また、糖尿病がある人では、病状の悪化によって、排尿障害が起きることがあります。 糖尿病が進行すると排尿をコントロールする末梢神経に支障が出て、尿がたまっても尿意を感じにくくなり、次第に尿を押し出す力が低下することで排尿しにくくなります。 そのため一回で尿が出しきれず、膀胱の中に残ってしまうことで頻尿になったり、尿が膀胱からあふれ出て失禁する状態になることもあります。

便秘

便秘によって膀胱が圧迫され、尿の通りが悪くなったり、排便・排尿に関わる神経や筋肉にダメージが及んだりすることで、排尿トラブルが起きることがあります。 また、便秘によって排便のたびにお腹に力を入れることで骨盤臓器脱が起きやすくなり、排尿障害を引き起こすこともあります。

過剰な水分やアルコール、カフェインの摂取

普段から水分を必要以上に多く摂る習慣がある人は、その分尿量も増えるので、それが原因で昼間頻尿・夜間頻尿などのトラブルが起きます。 また、アルコールやカフェインなど利尿作用のあるものを多量に摂取することで、尿量が増え、トイレの頻度が増えたり尿漏れを起こしたりすることもあります。


出典
男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン
女性下部尿路症状診療ガイドライン第二版

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排尿障害の対策・改善策

排尿障害の対策・改善策イメージ

尿の出方がおかしい、頻尿になった、残尿感がある…など排尿機能に異変を感じたら、症状の原因をつきとめ適切に対処することが大切です。 排尿のトラブルへの正しい対処法や改善策についてみていきましょう。

医療機関の診断を受ける

医療機関の診断を受ける

排尿機能に異変を感じたら、まずは医療機関(泌尿器科)を受診し、医師の診断治療を受けましょう。

一口に排尿障害といっても症状や原因はさまざまで、適切な対処法・治療法が異なります。我慢をせずに早めの受診を心がけましょう。

記録を付ける

排尿について記録を付ける

受診の際、事前に「排尿日誌」を付けておくと診断時に非常に役立ちます。 排尿日誌とは、1日の排尿回数や尿量を記録するものです。1日に摂取した水分量も記録します。

「尿が出るのに時間がかかった」「残尿感がある」「尿漏れした」など、気付いたことがあれば、あわせて記録します。夜間にトイレに行った場合も必ず記録してください。

排尿日誌(記入例)

時間 水分(ml) 排尿(ml) 備考
6時 お茶 200 200 残尿感あり・尿漏れ
8時 コーヒー 200 150
10時 お茶 150 100
12時 味噌汁 200
14時 お茶 200 250 出るのに時間がかかる
16時 コーヒー 200
18時 味噌汁200
お茶 200
200 出るのに時間がかかる
20時 250
22時 お茶 200
24時 100

出典
日本泌尿器学会
膀胱訓練や骨盤底筋訓練

膀胱訓練や骨盤底筋訓練をおこなう

頻尿や急な尿意(尿意切迫感)がある場合は、膀胱訓練をおこなうことで改善が期待できます。 膀胱訓練は、尿意を感じたときすぐにトイレに行かずに少しだけ我慢をして、徐々にトイレの感覚を伸ばすことで膀胱の容量をひろげる訓練です。


ただし前立腺肥大が原因で尿トラブルがある人の場合は逆に症状を悪化させてしまうこともあるため、医師の指導の下におこないましょう。 骨盤底筋訓練も排尿障害の改善に役立ちます。 骨盤底筋訓練は、肛門や膣を締めることで、尿道括約筋(にょうどうかつやくきん)や骨盤底筋郡を強くし、尿漏れを防ぐトレーニングです。

楽な姿勢をとりながら、肛門と尿道、女性の場合は膣も一緒に10秒程度ぎゅーっと締め、その後30秒ほどリラックスする運動を10回程度繰り返します。 骨盤底筋訓練の効果は2~3か月たったころに実感できるため、毎日根気よく続けることが大切です。

漢方薬を活用する

漢方薬を活用する

排尿障害には漢方薬も有効で、八味地黄丸などがよく用いられます。八味地黄丸は、体力中等度以下で疲れやすく、四肢が冷えやすい方に向いている漢方薬です。 漢方薬は自分の状態にあったものを選ぶことが大切です。

ドラッグストアや薬店で購入する際は自分に合っているかどうか、薬剤師に相談してみましょう。

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まとめ

排尿障害が気になって外出がおっくうになったり、運動や旅行を楽しめなくなったりと、生活の質を下げてしまうことも。 「仕方がない」とあきらめず、変化に気付いたら早めに対処しましょう。 排尿障害といっても、その原因は加齢による変化だけではなく、別の病気が引き起こしているケースや毎日の生活習慣が尿トラブルを引き起こしているケースもあります。

早めに泌尿器科を受診し、適切な治療や指導を受けることによって改善が期待できます。


出典
男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン
女性下部尿路症状診療ガイドライン第二版
日本泌尿器学会

榎本 蒼子

医学博士、医学研究者。2015年まで公立医科大学にて医学研究および医学教育に従事。在職中は医師・研修医向けの東洋医学セミナー等を担当。現在は医療ライターとして、健康に役立つ情報や最新の医学研究に関する情報を発信している。

「八味地黄丸A」について

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