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尿漏れ(尿失禁)とは?
~男女別の原因と対策について~
尿漏れとは、医学用語では「尿失禁(にょうしっきん)」といい、「自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまうこと」と定義されています。尿漏れは人に話しにくいと思う方がいる一方、実は多くの方が悩んでいる症状なのです。ここでは、尿漏れの原因と対策についてご紹介します。
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尿漏れの症状や原因にはいくつかのタイプがあります。それぞれ解説していきましょう。
腹圧性尿失禁
骨盤内の臓器を支える骨盤底の筋肉が緩んで尿道や膀胱が下がったり、尿道括約筋が傷んで尿道を閉じられなくなったりすることが原因とされています。女性に多い尿漏れのタイプです。
切迫性尿失禁
正常な排尿では、膀胱がひろがって尿をためる「畜尿」と膀胱を収縮させて尿を出す「排尿」は、脳からの指令でコントロールされています。しかし切迫性尿失禁の場合、加齢や脳血管障害などが原因で勝手に膀胱が収縮してしまい、急に尿意をもよおしてしまいます。
溢流性(いつりゅうせい)尿失禁
同時に尿意切迫感をともなうことがあったり、体を動かしたときや夜間に尿意がないのに漏れたりと、症状はさまざまです。排尿障害の原因として、前立腺肥大症や前立腺癌などで尿道が狭くなって尿が出せなくなる場合と、糖尿病や腰の病気、直腸がんや子宮がんの術後に、膀胱を収縮させる神経の障害によって尿が出せなくなる場合があります。男性に多い尿漏れの原因です。
その他
●混合性尿失禁
急な尿意でトイレが間に合わずに漏れてしまうことがあり、さらにお腹に力が入ったときにも尿漏れするなど、切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁の両方の症状が併発することがあります。こうした症状を「混合性尿失禁」といいます。
●機能性尿失禁
歩行困難などの身体的な機能の問題でトイレに行く前に漏れてしまったり、認知症でトイレの場所がわからなくなってトイレ以外の場所で排尿してしまうなど、膀胱や尿道などには問題がないにも関わらず尿を漏らしてしまう場合を「機能性尿失禁」といいます。高齢者の場合、他のタイプの尿漏れに身体機能や認知機能の衰えによる機能性尿失禁を併せ持つケースが多いです。
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女性の尿漏れは、若い人から高齢者まで年代を問わず経験することがあり、40代以降になると4割以上の方にみられるといわれる、女性の悩みのひとつです。 特に腹圧性尿失禁が多いのが特徴です。
では、なぜ女性に腹圧性尿失禁が多いのでしょうか。その理由として、「男性と比べて尿道が短く直線的であること」や「骨盤内の靱帯や筋肉が男性より弱いこと」が挙げられます。
骨盤底筋群は、骨盤内の子宮や膀胱、直腸などの臓器の位置を安定させ、尿道を締めることで尿漏れを防ぐ役割があります。しかし妊娠や出産で負担がかかって臓器が下がったり、閉経で女性ホルモンが低下して筋肉の弾力が低下したりすると、骨盤底筋群がゆるみ腹圧がかかることで尿漏れが起きてしまうのです。参考:日本泌尿器学会/こんな症状があったら/尿が漏れる・尿失禁がある/尿失禁とは
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男性の尿漏れの特徴は、加齢にともなう前立腺肥大症や、前立腺癌による排尿障害が原因の切迫性尿失禁と溢流性尿失禁が多いことです。男性特有の臓器である前立腺は尿道を取り囲むように膀胱の出口にあり、前立腺肥大症や前立腺癌により尿道が圧迫されると尿が出にくくなる排尿障害を生じます。
前立腺肥大症には膀胱が過敏になる過活動膀胱をともなうことが多く、切迫性尿失禁の原因となります。また、排尿障害が進むと排尿できなくなり、溢流性尿失禁が起こることがあります。尿漏れ以外に、頻尿、夜間頻尿、残尿感、排尿後に便器から離れた後に尿がたれるなどの症状をともなうこともあります。 男性でも加齢による骨盤底筋群のゆるみや、前立腺肥大症や前立腺癌の手術後に尿道括約筋の筋力が低下することによって、女性に多い腹圧性尿失禁が起こることもあります。参考:名古屋大学大学院医学系研究科泌尿器科学教室/前立腺肥大症/前立腺肥大症の原因と症状
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どのような習慣が尿漏れのリスクになるのでしょうか。
水分やカフェイン飲料の
摂り過ぎ
尿量が増えるため、腹圧性尿失禁のリスクが高まります。水分や利尿作用のあるカフェイン飲料の摂り過ぎには注意が必要です。
肥満
お腹回りの脂肪が膀胱を圧迫するため、腹圧性尿失禁のリスクが高くなります。減量することで尿失禁が減ることがわかっています。
便秘
肥満と同様、膀胱を圧迫するため腹圧性尿失禁の原因となります。食生活以外にストレスも便秘の原因になります。
着脱しやすい下着や
トイレまでの導線
脱ぎにくい下着は時間がかかり、漏らしてしまう原因になります。切迫性尿失禁のある方は、脱ぎやすい衣服や下着をつけたり、トイレまでの導線を考えておいたりすることも大切です。
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尿漏れにはどのような対策や改善策があるでしょうか。紹介していきましょう。
●医療機関の診断を受ける
尿漏れの原因によって治療方法が異なるため、泌尿器科のある医療機関や専門医の診断を受けてみましょう。検査には問診の他、尿検査や尿失禁の量をパッドに吸わせて測定するパッドテスト、エコー検査、必要に応じて尿流動体検査、膀胱鏡検査などがあります。また、原因に適した薬を服用することで症状が和らぐことがあります。
●骨盤底筋を鍛える
骨盤底筋の訓練は、女性の腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁に効果があるといわれています。また男性でも、腹圧性尿失禁や排尿後に残った尿が垂れてしまう場合に効果があるといわれています。次の基本姿勢や椅子に座った姿勢だけでなく、生活の中に組み入れて、続けて取り組むことが大切です。
基本姿勢
- ① まずは仰向けに寝て足を立てて少し膝を開きます。
- ② 肛門を閉めたまま膣と尿道をぎゅっと10秒縮め、30秒リラックスします。これを10回繰り返します。
- ③ 次に、肛門、膣、尿道を締める緩める動作を早いテンポで10回繰り返します。
以上の動作を1日に数回にわけて、合計5セット以上おこないます。
座った姿勢
- ① 背筋を伸ばして、少し浅めに椅子に座ります。
- ② 両足を肩幅程度に開きます。
- ③ 基本姿勢と同様、肛門・膣・尿道を締める緩める動作を繰り返します。このとき、肩とおなかに力が入らないようにしましょう。
回数は基本姿勢と同様です。
●尿に対する不安を減らす
吸水ケア用品を活用して、尿漏れの不安を減らすことをおすすめします。消臭効果や吸水性の高い吸水ケア用品を使い、運動したり外出したりすることで、骨盤底筋の訓練や体重管理につながります。
●漢方薬を活用する
漢方薬を活用するのもよいでしょう。尿漏れなどの排尿トラブルの場合、「腎気」を補う漢方薬がすすめられます。『八味地黄丸』は体を温めて体全体の機能低下を改善する効果が期待でき、軽い尿漏れ、頻尿、夜間頻尿、残尿感、排尿困難などの症状に用いられます。
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尿漏れは、若い方から高齢者まで幅広い世代で多くの方が経験することがわかっています。男性も前立腺肥大などの症状のひとつとして起こることがあり、男女問わず悩んでいる方が多い症状です。
ひとことで尿漏れといっても、その原因によって尿漏れが起こる状況や頻度は異なります。まずは医療機関を受診し、原因に合わせた対策や治療をおこない、尿漏れに対する不安を解消することが大切です。
小谷敦子
薬剤師免許取得後、病院薬剤師として就職。ライフステージの変化にともない、調剤薬局の薬剤師とメディカルライターとしての実績を積んできた。東洋医学専門診療科のある大学病院の門前薬局では、漢方薬の処方に対する数多くの服薬指導を経験。
参考:
・日本泌尿器学会/こんな症状があったら/尿が漏れる・尿失禁がある/尿失禁とは
・名古屋大学大学院医学系研究科泌尿器科学教室/前立腺肥大症/前立腺肥大症の原因と症状
・東京女子医科大学付属足立医療センター骨盤底機能再建診療部/骨盤底筋訓練
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