暑い日が続くと、ついつい手が伸びてしまう冷たいかき氷やアイスクリーム、キンキンに冷えたジュースやビール。
しかし、冷たいものの摂りすぎは内臓を冷やしてしまい、体にとって負担になる可能性があるということをご存知ですか?

先日、献血に行ったスタッフが、暑い屋外から室内に入り冷たいお水を一気に飲んで採血しようとしたところ「採血がしにくいので温かいものを飲むように」すすめられたそうです。献血をするときはしっかりと水分補給しておく必要がありますが、採血前は温かい飲み物をと摂るほうが良いようです。
これは冷たい水分を摂ると血管が収縮してしまい、採血しづらくなることが理由のようです。

この記事では、冷たい飲み物が体に与える影響を見ていきます。

冷たいものと味覚・体への影響

一般的に、食べ物・飲み物は体温との温度差が25℃以上あると、美味しいと感じることができ、温かいものは60〜70℃冷たいものは5℃〜12℃と言われています。
逆に70℃以上や5℃以下は感覚が麻痺してしまうため、味を感じづらくなります。このため、自動販売機では「冷たい」は約5℃、「温かい」は約50℃に設定されているようです。

基本五味と温度の関係を見てみます。

  • 塩味:温度が低いと強く、高いと弱くなります。
  • 甘み:30℃くらいから体温に近いほど強く感じ、低温・高温になるほど弱くなります。
    ぬるくなったジュースやアイスクリームが、冷たいときに比べて甘さを強く感じるのはこのためです。
  • 酸味:温度によってあまり変化はありません。
  • 苦み:低温〜体温の温度では強く、高温では感じづらくなります
  • うま味:体温付近で最も感じやすくなります

これらのことから、私達が美味しいと感じるのは体温と関係が深く、「冷たいもの」か「温かいもの」の二極化していることがわかります。

しかし、私達の体は37℃前後で十分な機能を発揮できるようにできているため、冷たい飲み物が大量に入ってくると、内臓が冷やされるだけでなく、各消化器官にいる消化酵素が効率的に働くことができなくなる可能性があります。

具体的には、冷たい水分が体内に入ると、まず最初に胃が冷やされ、血管が収縮することで消化管の運動が妨げられることがあります。その後、十二指腸・小腸と流れ、体内に水分が取り込まれますが、冷たい水の場合は、血管が収縮し血流が悪くなったり、消化器官の働きが低下し、この状態で食事を摂ると栄養素を十分に吸収できなくなる可能性があります。
消化吸収が悪くなると、食欲が低下したり、手足の冷えや体のだるさ・むくみといった夏バテにつながる一因になります。
また腸が冷えることで腸内にいる免疫細胞の活動も低下し、感染症へのリスクも上がることも考えられます。

さらに夏の時期は、発汗や体温調節のため血液が体表を流れることが多く、体の深部である胃腸は流れが少なくなってしまいます。この状態で冷たい飲み物を一度に大量に摂取することは、胃腸にトラブルを起こしやすくなります。

中には、冷たいものを摂るとお腹がゆるくなってしまう方もいらっしゃると思いますが、これは冷たいものが胃に入ると反射的に大腸が収縮して血流が悪くなり消化不良を起こすだけでなく、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)の活発化も起こるためと考えられています。

その他にも、夏だけでなく冬にも氷が入った冷たいものを好んで飲む方がいらっしゃいますが、これは、近年エアコンのお陰で室内の温度が一定に保たれていたり、ごくごくといった喉ごしを求めていたり、猫舌などが理由と考えられます。
冷たい飲み物は温かい飲み物に比べ、水分吸収が早く乾きが満たされる感覚があったり、体の上部が熱を感じる冷えのぼせの状態が起こっていて冷たいものを欲していたり、それまでの長年の習慣も大きく起因しており、冷たいものが好きだと思っても、徐々に温かい飲み物を摂れるように意識を変えてみると、からだの調子が変わってくるかもしれません。

特に氷を沢山食べたくなる方は、「氷食症」とも呼ばれ、口の中の温度が高くなり、喉が渇き氷が食べたくなるような癖や行動を指します。
まだまだ解明されていない部分も多いですが、鉄欠乏性貧血などの状態に見られることがあるようです。

かき氷やアイスクリームを食べて、頭が痛くなる理由と対処法

暑い日にかき氷を食べると、頭が痛くなる経験は多くの方にあるものです。
英語でもIce-creamheadacheと呼ばれ、国際頭痛学会では「寒冷刺激による頭痛」に分類されています。

冷たいものが口に入ると上顎の近くにある、顔の感覚を支配する「三叉(さんさ)神経」に刺激が届きます。この刺激によって発生する伝達信号が脳に届き、痛みとして勘違いして頭痛を感じると言われています。

また、冷たいものを口にいれると口の中や喉が冷え、この冷えた状態を回避するために頭につながる血管が膨張し、血液量を増やして温めようとすることから頭痛を誘発していると言われています。

このアイスクリーム頭痛を避けるには、急いで食べず口内でゆっくり時間をかけて食べることと、冷やしすぎないように温かい飲み物を一緒に飲むことがオススメです。

またアイスクリーム以外にも、お刺身や生の野菜サラダも急激に体を冷やす可能性があるので、食べ方に注意が必要です。

夏場の冷えにも温かい飲み物! 体に与える効果とオススメの飲み物

温かい飲み物は、体全体を温め、内臓が温まるため、胃腸の消化吸収が向上し、むくみが改善したり排便の促進が期待できます。体温が上がると免疫力も向上し、消化酵素も活発に活動してくれると言われています。

また、日本には昔から「暑いときこそ熱いものを」という考えがあります。
これは熱いものを摂ることで発汗を促し、結果的に体温を下げるという効果を期待したもので、暑い夏にも冷たいものばかり摂ることは良くないという考えが根付いています。もちろん、目もくらむような炎天下や湿度の高い状況で熱いものを飲んだり食べたりすることは熱中症につながりますのでご注意ください。

では、具体的にどういうものを摂ればいいのでしょうか。

夏に冷たい麦茶を用意するご家庭が多いと思いますが、室内の冷房などで体が冷えている時などは、常温や温かい麦茶に変えてみるのもオススメです。カフェインには利尿作用があり、血管を収縮する働きもありますが、麦茶はノンカフェインで妊娠中や授乳中のお母さんや、高齢の方まで安心して飲める飲み物です。麦茶にはカリウムが含まれており、カリウムは血管を拡張させることで血圧を低下し、体の熱を体外に排出してくれる効果があります。

他にもカリウムが多く含まれるお茶の原料としては、たんぽぽ根・ペパーミント・ハトムギ・カリン・ジャスミン・カモミール・月桃葉といったものがあります。
お茶は温めることで香りもたつのでリラックス効果も期待できます。

他にも生姜湯・ゆず茶・甘酒、ハーブやスパイスが入った飲み物や香辛料・香味野菜・酢を使った料理は血行を促進し、食欲も出て発汗作用があるため夏バテを回避するのにはぴったりです。

お隣、韓国には、暑い日に参鶏湯を食べる習慣があるそうで、ほろほろの鶏肉・もち米・高麗人参になつめやネギがはいった滋養食で、温かい参鶏湯を食べることでじんわり汗をかいて夏を健康的に乗り切る風習のようです。
参鶏湯のように、温かいスープは煮ることで野菜の嵩が減り、生野菜よりも効率よく食物繊維が摂取できるだけでなく、消化もしやすくなります。塩分は控えた味付けにし、食事の前に摂ると早食い予防にもなりますし、十分な栄養が入ったスープを摂ると脳が飢餓状態と感じることがなくなるので、おやつを欲することも少なくなると言われています。

近年、健康を意識して白湯を飲む方も増えています。白湯も体を温めるためには良い習慣ですが、ノンカフェインで体に嬉しい栄養素が入っているスープやお茶なら、より香りも豊かで美味しく、楽しみながら温活できるので、おススメです。

どうしても、冷たいものが飲みたくなったら?

からだがほてったり、暑さを感じている訳でもないのに、どうしても冷たいものが取りたくなった時は、どうすればいいでしょうか。

一気飲みしない、量を少なめにする

一度にたくさんの冷たいものが体内に入ることで体は冷えます。
なるべく氷少なめ氷なしを選択するのもよいかもしれません。

温かいものと交互に飲む

体が冷えないことが重要なので、温かいものと交互に飲むことで体温を下げすぎないように注意しましょう。

体を温める効果のあるものを摂る

体を温めることで知られている生姜ですが、生のものは「ジンゲロール」、加熱すると「ショウガオール」という成分が多くなります。
「ジンゲロール」には発汗作用があり体温を下げることになりますので、加熱したものを選びましょう。
その他にも唐辛子、たまねぎ・柑橘類・梅干し・青魚・ナッツ類・緑黄色野菜、タンパク質、根菜は体を温めてくれます。


これら以外にも腸内環境を整えたり、運動・入浴・睡眠で自律神経のバランスを整えるのも大切です。意識を少しずつ変えて、習慣を変え、続けることで日々のセルフケアに繋がります。

猛暑が予測される今年の夏、熱中症などの熱さ対策にも気を付けながら、冷えによる夏バテ予防も意識したセルフケアで、快適に過ごしましょう。

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