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昔よりも疲れやすくなった。朝起きた瞬間から疲れを感じる。更年期に起こるこれらの悩みは、睡眠の質の低下が関係しているかもしれません。睡眠に関する興味・関心は以前よりも高まり、最新の研究結果にも注目が集まる今。疲れを感じやすい更年期の女性に知ってほしい、「睡眠の質」に迫ります。
疲れのスパイラルから抜け出せない!?

更年期は疲れを感じやすい
昔と比べて、仕事や家事のパフォーマンスが落ちた。特別なことをしているわけではないのに、1日の終わりには疲れてぐったり。このように、日常生活の中で以前よりも疲れを感じる機会は増えていませんか?
「疲れやすい」という体質の変化は、加齢による体力の衰えと一言でくくられがちですが、実は女性ホルモンの乱れによって起こる更年期症状の一つでもあります。
更年期に疲れを感じやすいのはなぜ?
更年期は、女性ホルモンの急激な減少によって自律神経に乱れが生じやすい時期です。自律神経には、
①「交感神経」・・・活動時に働く(アクティブモード)
②「副交感神経」・・・休息時に働く(リラックスモード)
の2種類があり、この2つがオンとオフを切り替えながらバランスを取って機能しています。
しかし、自律神経の乱れ、つまり交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまうと、アクティブモードとリラックスモードの切り替えがうまく行われなくなってしまいます。
さらに、更年期は女性ホルモンの減少に加えて、忙しさによるストレスなど他の要因も重なりがちのため、交感神経が優位になりやすく、アクティブモードが続くことに。
その結果、体はオーバーワークの状態になり、気づかないうちに体に疲れがたまり、それがだるさや倦怠感を感じる原因となっているのです。
寝ても疲れが取れない

疲れをとるために大切なのは、しっかりと休むこと。特に睡眠は、心身の疲労回復のために、私たちの毎日の生活になくてはならない行動です。しかし、更年期に起こる自律神経の乱れは、疲労対策に有効な睡眠にも悪影響を与えてしまうのが悩ましいところ。
前述の通り、自律神経は活動モードと休息モードを切り替える機能があるので、睡眠と覚醒のリズムを整える重要な働きを担っています。そのため自律神経がバランスを崩すと、次のような睡眠のトラブルが起こりやすくなります。
- 寝つきが悪くなる(入眠障害)
- 夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)
- 朝早く目覚めてしまう(早朝覚醒)
- 寝た気がしない(熟眠感の欠如)
このようなトラブルを抱えた睡眠では疲れがとれにくいことは一目瞭然でしょう。せっかく睡眠時間を確保しても、睡眠の質が低いため朝起きても体はだるいまま。疲れが取りきれていない状態で1日がスタートし、また新たな疲れが生まれ、と、疲れのスパイラルから抜け出せなくなってしまうのです。
大切なのは睡眠の質を上げること
この悪循環から抜け出すためには、自律神経の乱れを最小限に抑えて、睡眠の質を改善することが非常に重要です。
女性ホルモンの減少を止めることは残念ながらできませんが、自律神経の乱れは生活習慣の改善によってミニマムにすることはできます。朝目覚めてから夜寝るまでの過ごし方を見直すことで、自律神経のバランスを整えやすくし、睡眠の質を上げる意識をしてみましょう。
睡眠の質を高めるために意識したいこと3選
①「睡眠中央時刻」をずらさない

睡眠中央時刻とは、就寝時刻と起床時刻のちょうど中間にあたる時間のことです。例えば、夜12時に寝て朝7時に起きる場合、睡眠時間は7時間なので、睡眠中央時刻は午前3時30分になります。この睡眠中央時刻が毎日一定に保たれていると、私たちの体に備わっている体内時計のリズムが整い、睡眠の質は高まります。
ところが、仕事や学校がある平日は規則正しい生活を送っていても、休日の前の晩は夜更かしをしたり、寝ダメしようと朝寝坊をしてしまうと、睡眠中央時刻は後ろにズレてしまいます。この平日と休日の睡眠中央時刻のズレによって体内リズムが乱れることを「社会的時差ぼけ(ソーシャルジェットラグ)」と言い、いわゆる海外旅行をした時の時差ぼけのように睡眠と覚醒にトラブルが生じてしまいます。
そのため、疲れを取るためにいつもよりも長く睡眠時間を取りたい時は、睡眠中央時刻をずらさないようにするのがポイント。例えば、平日よりも1時間多く眠りたい時は、寝る時刻を30分前倒しにして、起きる時刻を30分遅くすれば、睡眠中央時刻はずらさずに睡眠時間を増やすことができます。
睡眠中央時刻のズレ幅が大きいほど、体内リズムも乱れ、自律神経の働きに負担がかかることに。また、一度ずれてしまった体内リズムを再度正常に戻すためには、個人差があるものの3日間程度かかると言われています。疲れを取る目的の休日の寝ダメが、かえって体内リズムを狂わせ睡眠トラブルを引き起こしてしまっては本末転倒です。睡眠の質を高めるために、平日と休日とで生活サイクルを大きく変えることは避け、睡眠中央時刻はできるだけ同時刻をキープするように心がけましょう。
②「頭寒足熱」の睡眠環境を作る

夏の熱帯夜は寝苦しくて夜中に起きてしまったり、部屋が冷え切った冬は布団に入っても寒くて寝つけなかったり、室温の影響で安眠できなかった経験のある人は少なからずいるでしょう。睡眠の質を上げるためには、快適な室温環境を朝まで保つことが重要です。安眠のための理想的な室温は夏は26~28℃、冬は18~20℃が目安と言われています。
そして、室温と同じくらい大切なのが「頭寒足熱」の睡眠環境を作ることです。頭寒足熱とは、頭部は涼しく、足元は温かくすること。昔から健康法の一つとして重宝されていますが、睡眠の質を上げるためにも有効な手段となります。
頭はもともと脳が活発に働いてエネルギーを使う場所のため、他の部位に比べて熱がこもりやすい場所となっています。頭が熱いままだと脳が休まらず入眠しづらい状態に。頭を冷やして脳をクールダウンさせることで、睡眠を誘うメラトニンというホルモンが分泌されやすくなり入眠を促し、足を温め血行が促進されることでリラックスした状態になるので、「頭寒足熱」はスムーズな入眠と質の高い睡眠が期待できます。
夏は、頭の温度を下げるために、冷却枕やタオルに包んだ保冷剤などを活用するのが簡単な方法です。近年では熱中症予防のためにエアコンをかけたまま就寝することも多いでしょう。その時は、首から下には布団をかけ、頭部は涼しく足元は冷やさない対策で頭寒足熱の環境を作りましょう。
冬は、寝る前までは靴下をはき足元を温めておき、寝具の足元あたりを事前に温めておくとよいでしょう。ここでポイントなのは、温めるのは「寝る前」までにすること。人は体の内部の温度(深部体温)が一旦上がってから下がる時に脳と体が休息モードになるとされているので、深部体温の低下を妨げてしまっては眠くなりにくくなってしまいます。寝る時は靴下を脱ぎ、湯たんぽのような時間の経過により温度が下がるアイテムを使って、上手に頭寒足熱を実践するようにしましょう。
③寝る前のショート動画は要注意

忙しい1日が終わりベッドに入ってやっと一息。よくないとわかっていつつ、つい寝る前にスマホを手に取ってしまう癖はありませんか?スマホの明るい光やブルーライトが睡眠に悪影響を与えることはよく言われていますが、実はもっとも気をつけるべきことは、「スマホで何を見るか」、つまり見る内容です。
寝る前に避けた方がいいコンテンツの筆頭がショート動画です。ショート動画は、1本が短時間で展開が早く、次から次へとおすすめ動画があがってくるため、つい「あと1本だけ」という気持ちになり、結果的に長時間見てしまいがちに。また、ユーザーの興味を引くために、最初の数秒をインパクトのある映像にしたり、サムネイルに煽り文句を載せているものが多いため、脳が興奮してしまい睡眠に悪影響を及ぼします。
ショート動画以外にも、ゲームやチャットも脳が休息モードに入るのを妨げてしまうため、寝る前に見るのは避けたいコンテンツです。
スマホから入ってくる情報量をコントロールするのが難しい現代。寝る前のスマホ利用はできるだけ控えた方がベターですが、リラックスするためにどうしてもスマホを見たい場合は睡眠の質を下げないようにひと工夫を。
画面の明るさを調整して、ブルーライトの放出を抑えるダークモードに設定しつつ、ショート動画やゲームやチャットアプリは強い意志でシャットアウト。自分にとって癒しとなるペットや自然などの動画や写真を眺めることで脳を落ち着かせ、睡眠の質の向上を目指しましょう。
「睡眠の質アップ」の理想的な1日の過ごし方
それでは、睡眠の質を上げるためには、どのような1日を送るのが理想的なのでしょうか。時間帯に合わせたおすすめの過ごし方を具体的に紹介していきます。
朝:太陽の光と朝ごはんでスイッチオン!

夜の睡眠の質を高める準備は、朝起きた瞬間からスタート。起床時間は毎日一定にし、朝起きたらカーテンを開けたりベランダに出たりして積極的に朝の光を浴びるようにしましょう。太陽光を浴びると、体内時計が正常に進み活動モードがオンになります。そして、眠気を誘うメラトニンの分泌が止まり、14〜16時間後に再びメラトニンが分泌されるように体内時計でコントロールされているので、夜になると自然に眠くなるサイクルが作られます。
朝ごはんを食べることも、体内リズムを整える大切なポイント。起きてから1時間以内に朝食を摂り、体をしっかりと活動モードに切り替えましょう。メニューは、睡眠のリズムを調整しているメラトニンの生成に必要な栄養素「トリプトファン」を多く含む食材がおすすめです。
【トリプトファンを多く含む食材】
- 大豆製品(豆腐・納豆・味噌・しょうゆなど)
- 乳製品(チーズ・牛乳・ヨーグルトなど)
- 卵 など
ただし、忙しくておすすめ食材を使ったメニューを用意することが難しい場合は、お湯を注ぐだけのスープや果物だけでも大丈夫。自分にとって無理のない朝ごはんメニューで体内リズムのスイッチをオンにしてあげましょう。
日中:軽い運動と賢い仮眠が◎

体を適度に動かすとストレス解消になり、自律神経の安定に効果的。特にウォーキングやヨガ、ストレッチなどの軽い有酸素運動は、心身をリラックスさせ、睡眠の質を向上させます。
でも、どうしても日頃十分な睡眠時間を確保できず、睡眠不足を感じているようであれば無理は禁物。日中に15分から20分程度の昼寝をするのも一つの手です。
このような短い仮眠は「パワーナップ」と呼ばれ、海外では仕事の効率を上げる有効な休憩の取り方として浸透しています。仮眠時間は長くても20分以内にし、タイミングは午後の早い時間が望ましいです。夜に眠れなくなってしまっては困りますので、遅くとも14時までには済ますようにしましょう。
夕方:夜に向けて眠れる体に整える
夕方以降、飲み物はノンカフェインのドリンクに切り替えましょう。カフェインの覚醒効果は4〜5時間続くと言われていますが、人によってはもっと長く続くこともあります。カフェインの影響を受けやすい人は、午後早めの切り替えを。何種類かノンカフェインのティーバッグを用意しておけば、その日の気分や体調に合わせて選べて気分も落ち着きます。
夜:入眠時間から逆算したプランニングを

夕食を食べたら入浴して、明日の準備をして寝る支度。家で過ごす夜時間は、なんだかんだでやることがいっぱい。入眠時間を基軸にして、心地よい眠りにつけるような行動計画を立ててみましょう。
夕食は、寝る前3〜4時間前に食べておくのが理想的です。食べ物を消化するためには消化器官が活発に動いて入眠の妨げとなるため、寝る前までに消化されていることが大切です。
入浴は、就寝する1〜2時間前に入るのがスムーズな入眠には効果的。「頭寒足熱」のところでも触れましたが、人は深部体温が一旦上がってから下がる時に眠りやすいと言われています。寝る1〜2時間前に入浴で体を芯まで温めておくと、寝る時に体温が下がるタイミングが訪れ、寝つきがよくなります。
就寝時:質の高い睡眠に向けてラストスパート!

いよいよ、寝る時間がやってきました。
寝る環境としては、「暗い」「静か」「快適な室温」が揃っているとベターです。窓から光が入ってくる場合はカーテンでシャットアウト。人の話し声や音楽も脳を刺激してしまうので、ドアを閉めたりして音のない空間を作るようにしましょう。
快適な室温は、寝る時だけでなく朝まで保つことが大切です。夏や冬などエアコンを使用する季節は、途中で切ってしまわず、できるだけ朝までつけたままにすることが睡眠の質を高める上では最適解です。
また、寝る時のパジャマに、最近話題になっているリカバリーウェアを取り入れてみるのもおすすめです。リカバリーウェアは、遠赤外線効果で血行を促進し、体の疲労回復をサポートしてくれるので、疲れやすく、疲れが取れにくい更年期女性にはぴったり!きちんとした効果が実証されている「一般医療機器」の商品を選ぶと安心です。
睡眠の質アップで疲れ対策
更年期の女性に訪れる「寝ても疲れが取れないピンチ」は、「睡眠の質を見直す大チャンス」です。
1日のうち1/3もの時間を費やす睡眠タイム。今の自分のためにも、未来の自分のためにも、睡眠の質が上がる暮らし方を意識しましょう。
今回おすすめした方法のすべてができなくても問題ありません。まずは一つでいいので、自分の生活に取り込めそうなものを試してみてください。












