毎日目にして、身近な存在なのに意外とぞんざいに扱われがちな手。更年期は、見た目の変化や以前には感じなかった手の感覚にとまどうことも出てくる時期です。

今回は、更年期に起こりやすい手の悩みについて解説します。

年齢が上がるにつれて、手の悩みは増えていく

 服に覆われることがなく、何かと人目につきやすい「手」。仕事や家事で日常的に負担がかかることが多く、1年を通して手荒れが気になる女性も少なくありません。特に女性は年齢が上がるにつれて、手にまつわる悩みも増えていく傾向にあります。

女性の手のお悩み①:手の老化

 40代以上になると避けて通れないのが、手の老化です。エイジングサインがはっきりと現れた自分の手に、驚きと落胆を感じたことがある方も多いのではないでしょうか。

 手に現れるエイジングサインには、主に下のようなものがあります。

【手のエイジングサイン】
  • 甲や指のしわ
  • しみ
  • ささくれ
  • ガサガサやひび割れ
  • 関節のゴツゴツ感
  • 血管や筋の浮き

なぜ手は老化がわかりやすい?

「手には年齢が出る」という言葉をよく耳にします。どうして他のパーツに比べて、手には老化が如実に現れるのでしょうか。

皮脂腺が少ない

 肌からの水分の蒸発を防ぎ、潤いをキープしてくれる皮脂。手のひらには皮脂を分泌する皮脂腺がなく、手の甲も顔に比べると皮脂腺が少ないため、皮膚が乾燥しやすく、シワや手荒れが目立ちやすいパーツです。
 さらに更年期になると、皮脂分泌を促す女性ホルモン「プロゲステロン」が低下するため、より皮脂が出にくい状態に。そのため肌の水分が蒸発しやすくなり、手は乾燥の一途をたどることになります。

 もともと皮脂腺が少ない上に、女性ホルモンの減少が追い打ちをかけて皮脂分泌を少なくしてしまうため、手にはシワができやすいのです。

日常的によく動かす

 ペンを握る、お箸を持つ、物をつかむ、など、暮らしの中で手と指は毎日大活躍。起きている間、休む暇がないほど動いているため、手には負担がかかりやすく、折りジワやささくれができやすい環境下に置かれています。

 加えて、更年期に女性ホルモン「エストロゲン」が減少することも手の老化に関係があります。エストロゲンが減少すると、肌の潤いやハリに関係するコラーゲンやヒアルロン酸が生成されにくくなります。その結果、肌のハリが失われるため、よく動かす手にはシワが定着しやすくなります。

紫外線の影響を受けやすい

 手は、服や帽子などでガードされず、基本的に一年中露出しているため、他のパーツよりも紫外線のダメージを受けやすい傾向にあります。また、日焼け止めを塗り忘れたり、せっかく塗っても手洗いや摩擦でとれやすかったりと、紫外線ケアがおろそかになりがちな部位でもあります。そのため紫外線ダメージを受けやすく、光老化によるシミや乾燥が進行しやすくなってしまいます。

脂肪が少ない

 手はもともと脂肪が少ないパーツですが、エイジングによってさらに皮下脂肪のボリュームが減ると、皮膚がたるみシワや血管・筋の浮きが目立つようになります。さらに、血管自体も弾力性が低下し拡張するため、より目立ちやすくなります。

女性の手のお悩み②:手のしびれ

 更年期の女性には、加齢による老化とは別に、更年期特有の手の不調もあります。それが、手指のしびれやこわばりです。

 人によって感じ方は異なりますが、更年期症状のひとつとして下のような感覚が手に出現することがあります。

【更年期症状としての手の不調サイン】
  • 手がしびれる
  • 手の感覚が鈍くなる
  • 皮膚の表面がピリピリする
  • チクチクした不快な感覚がある
  • ズキズキ、ジンジンといった痛みがある
  • 自分の意思と関係なく手や指が動く

手のしびれ、その原因は?

 更年期の症状として手や指にしびれが起こる原因は、まだ完全にはわかっていませんが、更年期に起こる女性ホルモンの急激な減少が影響して手や指に不調を起こすと考えられています。

 例えば、女性ホルモンの分泌が急減すると、自律神経のバランスが不安定になります。自律神経には血流を調節する働きがあるため、血の巡りが悪くなって手や指にしびれや不快な感覚が生じさせる場合があります
 また、女性ホルモン「エストロゲン」の減少により手の皮膚が乾燥し、神経が過敏になったためしびれを感じやすくなる、とも考えられています。

更年期女性の手の不調=メノポハンド

 近年では、更年期のおける女性ホルモンの減少によって起こる手や指の不調は「メノポハンド」と呼ばれ、少しずつ認知が進んできました。しかし、症状や感じ方は人によって異なり、更年期症状とは別の病気が隠れている可能性もあるので、症状がひどかったり、徐々に悪化する場合は、医療機関に相談することも大切です。

イキイキとした手を取り戻すセルフケア法

 若い頃と同じとは言わないまでも、ふっくらとした健康的な手元を取り戻せたら、毎日がちょっとだけハッピーになりますよね。そこで、イキイキとした手を取り戻すために心がけたい日々の対策とケア方法をご紹介します。

1.乾燥させない&保湿

 手は、もともと皮脂が少なく乾燥しやすいパーツ。加えて、水仕事や手洗いによる潤い流出や紫外線の影響など外部からの刺激を受けやすいので、意識的に守ってあげる必要があります。

水仕事の時はゴム手袋がマストアイテム

 食器洗いやお風呂掃除など、毎日避けては通れない水仕事。水だけでも皮膚の潤いを奪うのに、皮膚に刺激のある洗剤も併用するから、素手でやっては乾燥まっしぐらです。
 水仕事を行う時は、必ずゴム手袋をはめるようにしましょう。台所に1組、お風呂場に1組と、それぞれの場所専用の手袋を用意しておくと、取りに行く面倒がなく、つけ忘れも防げます。

 最近は、白や黒などモノトーンカラーのシックな色合いや、料理家さんがプロデュースしたものなどおしゃれなデザインのゴム手袋も増えているので、ぜひお気に入りのアイテムを見つけてみては。

手が水に濡れたらすぐ保湿

 ハンドクリームはこまめに塗り、水で濡れた後は渇く時により乾燥しやすくなるのですぐ保湿する、というサイクルを習慣付けましょう。夜寝る時はハンドクリームを多めに塗り、通気性のある綿手袋をはめてから布団に入ると、じっくりと保湿ができておすすめです。

 意外に忘れがちなのが、外出先での保湿。レストランでの食事の前や、トレイの後など、外出先で手を洗う機会は多いのに、ハンドクリームを忘れて乾燥した状態のままに外気にさらしては、手はカピカピになってしまいます。自宅用とは別に、ポーチやバッグのポケットに入るサイズのミニハンドクリームを常備して、24時間保湿を心がけましょう。
 また、昼間に使うハンドクリームは、UV効果のあるものを選ぶと保湿と紫外線対策が同時にできて安心です。

2.血行を促す手指運動&マッサージ

 手は心臓から遠いということもあり、血行不良になりがちです。血行促進のために、簡単な手の運動やマッサージを日常生活に取り入れましょう。

寝起きのグーパー運動

 更年期症状としての手のしびれは、朝の起床時に強く出現する傾向があります。これは、寝ている間は体を動かさないので、末端の血行が滞っているからと考えられています。

 そのため、朝起きたら手のグーパー運動やピアノタッチで指を動かすなどして手と指を動かし、手の先端まで血行を促進させてあげましょう。

すきま時間のハンドマッサージ

 家でテレビを観ながら、外出時に電車に乗っている間に、など、ちょっとした空き時間には、ハンドクリームを使ったハンドマッサージを習慣化するのがよいでしょう。

 ハンドクリームは、まず手のひらに出して両手の体温で温めてから手の甲に塗り広げると肌なじみがよくなっておすすめです。
 押すと気持ちのいいツボに軽く圧をかけたり、毛細血管が集まっている指先をマッサージすると血行がよくなり、冷え、むくみ対策にもなります。

手をいたわる気持ちをいつも心に

 女性にとってエイジングケアは最大の関心ごと。毎日、洗顔やお化粧、スキンケアのタイミングで鏡ごしに向き合う顔や髪は、エイジングサインにも気づきやすく、ケアに取り組む方も多くいるでしょう。

 一方で、エイジングが出やすいパーツなのに、意外に見落とされがちで、ケアの優先順位が低いのが「手」です。

 手は、体の中でも刺激を受けやすく、加えてエイジングや更年期におけるホルモンバランスの乱れの影響も出やすいパーツです。それにもかかわらず、毎日休むことなく働き者の手。そんな手をいたわることは、自分自身を大切にすることにもつながるはず。これからは、家事や仕事の合間の時間を利用して、できることから手のケアを取り入れてみましょう。