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体力を奪われる夏の暑さも徐々に落ち着き、過ごしやすい気温になってくる秋。
徐々に日照時間も短くなり、暑すぎず、寒すぎず寝やすい環境になってくるかと思います。
そんな秋の入口9月3日は9(ぐっ)3(すり)という語呂合わせから「睡眠の日」とされていることをご存知でしょうか?
睡眠の日は、春(3月18日)と秋(9月3日)の年2回あり、精神・神経科学振興財団と日本睡眠学会が設立した睡眠健康推進機構によって、睡眠や健康への意識を高めることを目的として制定されました。
睡眠は人間にとってとても大切で、質の高い睡眠をとることは健康な生活を送る上で重要とされ、食事や運動にも勝ると言われています。
人生の3分の1は眠っているというほど大切な睡眠、あなたは十分に取れていますか?
「睡眠の日」を機会に、ご自身の睡眠状況を詳しく知り、見直してみましょう。
日本人女性の睡眠時間は世界一短い?
世界の国々と比較して日本人の睡眠時間が短いことは、よく知られているかと思います。
経済協力開発機構(OECD)の2021年の調査結果では、1日の平均睡眠時間がトップ2位の中国では9.01時間なのに対し、日本は7.22時間でワースト1位と報告されています。
さらに、男女別で見てみると世界的には男性の方が睡眠時間が短いのに対し、日本では女性の方が男性より睡眠時間が平均13分短いことがわかり、世界で最も眠っていないのは日本の女性と言うことがわかりました。
厚生労働省の調査結果では、睡眠時間が6時間未満の割合は、40〜50歳代の女性で高いことが報告されています。
更年期も関係する?女性ホルモンと睡眠の関係
女性は約1ヶ月の周期でホルモン分泌の変化があります。
女性ホルモンには、卵巣から分泌される「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2つがあり、月経のある女性では1ヶ月の中でエストロゲンとプロゲステロンが大きく変動しています。
月経の初日〜排卵期までにエストロゲンが徐々に増加する低温期(卵胞期)と、排卵後からプロゲステロンの分泌が増加する高温期(黄体期)があり、1ヶ月の中で基礎体温が変化します。
質の良い睡眠のためには1日の規則正しい体温リズムが大切です。早朝が最も低く、次第に上がり、夜は体温が下がってスムーズに眠れるようになるのです。しかし、高温期(黄体期)では体温が下がりにくくなるため、睡眠の質の低下につながるのです。
そして、更年期世代は閉経前後でこのホルモン分泌のリズムが大きく崩れることが原因で、体温調節を担う自律神経が乱れることに加え、ホットフラッシュなども相まって入眠時の体温調整がうまく行えず睡眠の質が低下しやすくなります。
クラシエが実施しているアンケートデータでは、プレ更年期より更年期世代の方、さらに「簡略更年期指数(SMIスコア)」が高い(更年期不調が強い)人ほど、「寝つきが悪い、または眠りが浅い」症状の尺度が高く、より睡眠の不調を自覚していることがわかっています。
2種類の睡眠状態、「ノンレム睡眠」・「レム睡眠」
ヒトの睡眠はノンレム睡眠(深い眠り)とレム睡眠(浅い眠り)という質的に異なるふたつの睡眠状態で構成されています。レム睡眠は、眠っているときに眼球が素早く動く(Rapid Eye Movement)ことから名づけられました。
眠りはまず、ノンレム睡眠で一気に深い眠りについた後、1時間で徐々にレム睡眠へと移行します。その後は、90分サイクルでノンレム睡眠とレム睡眠を交互に繰り返します。これを睡眠リズムと呼んでいます。
ノンレム睡眠は「脳の眠り」といわれており、昼間に酷使した脳に休養を取らせるための睡眠状態で、ホルモンの分泌を促す睡眠期になります。特に、眠りについてから180分間は最も成長ホルモンを分泌する時間帯です。免疫機能、美肌などには寝始めが非常に重要な時間帯になります。
レム睡眠は、脳は記憶の定着、感情の処理や脳の修復などの活発に活動していますが、筋肉は弛緩している睡眠期で、「からだの眠り」といわれており身体が最も休まる睡眠状態です。
この2種類の睡眠状態はそれぞれ以下のような役割を担っています。
疲労回復
睡眠の最も大きな効果は疲労回復です。
睡眠のリズムの中で、ノンレム睡眠(深い睡眠)が得られるほど、身体の疲れを回復したり、傷んだ部分を修復したりする役割をもつ成長ホルモンが分泌され、体内での代謝活動が促進されます。
睡眠中は筋肉の緊張が解放され、脈拍や呼吸が緩やかになり、体温や血圧が下がることで、全身がリラックス状態になります。
身体全体を休養させることができるので、自覚症状のない見えない疲れにもアプローチできるのです。
生活習慣病・肥満の予防
睡眠時間が不足していると、体内のホルモン分泌や自律神経機能にも大きな影響を及ぼすため、生活習慣病になるリスクが高くなると言われています。
睡眠不足や不眠状態だと、交感神経から副交感神経の切り替えがうまく行われず、夜間の血圧が下がらずに翌日に影響してしまうことも。
十分な睡眠が取れると、食欲を抑えるホルモンや、エネルギー代謝を促進するホルモンが働き、太りにくい体質づくりや生活習慣病の予防に役立ちます。
ストレス解消
睡眠には心を整える効果があります。
レム睡眠(浅い睡眠)は眠っている間に情報を整理し、大切な情報のみを記憶として保存するため、ぐっすり眠ったら憂鬱な気分がスッキリした、などと感じるのも睡眠時の脳が情報を整理整頓しているためです。
また、ホルモンバランスの変化や乱れた自律神経を整える役割もあるため、ストレス耐性の向上にもつながります。
十分な睡眠をとることで脳内の疲労を解消し、ストレスの解消につながります。
肌質の改善
睡眠中に成長ホルモンが分泌されることで、肌のターンオーバーを正常化させてくれ健やかな状態を保ってくれます。
また、睡眠不足などで体内時計や自律神経、ホルモンなどのリズムが乱れると、皮脂の分泌量や肌の水分量が低下するなど、肌に良くない影響が起こりやすくなることも。
他にも、睡眠の質に関わるメラトニンという物質は、肌での合成が夜間に高まり、肌の免疫機能強化へつながる可能性があると言われています。
記憶の定着
ノンレム睡眠で感情や事柄を整理し、レム睡眠で記憶として身につける働きがあります。
ノンレム睡眠が浅くなったり不足したりすると、その後のレム睡眠で記憶が定着しにくくなるのです。
まとまった時間で睡眠のリズムを作ることで、不要な感情などを取り除き、記憶能力を十分に生かすことにつながります。
睡眠の質を高めるために、今すぐ取り入れられること
睡眠の質を改善しようと思うと毎日の運動や、部屋の照明など、少し頑張らないといけないと感じるかもしれません。家具や日々の生活の改善を行いつつも、気を張り過ぎずまずはすぐにできることから始めてみましょう。
朝起きたら目に光を入れる
朝日を浴びると体内時計がリセットされ、その後15〜16時間後に眠気が起こります。夜の寝つきをよくするためには、朝起きてすぐに朝日を浴びておくことが重要です。
自然の光が入るように、カーテンを開けて寝るのもおすすめ。就寝時は真っ暗、起床時に光を浴びる、といったようにメリハリをつけましょう。
起床直後に光を浴びないと、寝つく時間が少しずつ遅くなり、徐々に夜型の生活にシフトしてしまうので注意しましょう。
夕食は就寝3時間前までに
寝る直前の食事や、消化に悪い食事は寝ている間に胃腸が活発に動くため、睡眠の妨げになります。脂肪の多いものや繊維の多いもの、刺激の強いものなど、消化の悪いものは避け、柔らかく煮た温かい料理を選ぶとよいでしょう。
手軽に食べられるフリーズドライタイプのスープなどを常備しておくと調理の手間も省け、さっと食事が取れるのでおすすめです。
入浴は就寝2時間ほど前に
お風呂から出た直後は血圧も体温も高くなり、眠りにくい状態になります。人は体温が下がるタイミングで眠くなるため、入浴によって一度体温を上げることでその後体温が下がり、寝つきやすくなります。
38〜40℃程度の少しぬるめと感じる温度で、湯船にゆったりとつかるくらいがおすすめ。
体温が下がるまでの時間を考えると、寝る2時間前くらいに済ませ、手首足首は冷やさないように気をつけましょう。
温かい飲み物で眠気を促す
温かい飲み物は、身体を温めてリラックス効果を促すため、睡眠の質を高める効果があります。
しかし、就寝直前に温かい飲み物を摂ると、体温が上昇し目を覚ましてしまう可能性も。直前だと夜中にトイレに行きたくなり中途覚醒につながることもあります。
白湯やカフェインのないハーブティーなどを、就寝時間の1時間前までに飲むようにしましょう。
また、就寝中は体内の水分が蒸発し、血液の濃度が上がり心臓や血管への負担が増えてしまう傾向があるため、適切に水分摂取をするようにしましょう。
部屋着とパジャマを使い分ける
睡眠中は約コップ1杯もの汗をかくとされています。
寝るときの服装は、吸湿性だけでなく、放湿性も高いものを選ぶことで、余分な水分を放出してくれるので睡眠時の不快感を防いでくれます。
また、就寝時には1日20回前後寝返りを打つと言われており、身体にフィットしたものや分厚い素材の部屋着だと寝返りが打ちにくく睡眠の負担になることも。
パジャマは姿勢の変化や寝返りがしやすいよう生地に伸縮性のあるものが多い為、リラックスした状態で睡眠の質を高められます。
睡眠は私たちが毎日を健やかに過ごすために欠かせない生活習慣ですが、睡眠時間が長いほど良質な睡眠というわけではなく、睡眠のリズムが大切なのです。
「たかが睡眠」と侮らずに睡眠の質を上げて、毎日を元気に過ごせるようこの機会にご自身の睡眠を見直してみましょう。