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「お腹が重いことが続いている…」「お腹の調子がすぐれない…」など、
年末年始のイベントや食生活の乱れで、胃腸が弱くなったと感じている方も多くいるかと思います。
年齢的にしょうがない、と思われがちですが、更年期のホルモンバランスの変化で胃腸の働きにも影響が現れることがあります。
その中でも便秘や下痢はホルモンバランスの乱れによって引き起こされることがあり、これらの症状が続くと身体だけでなく、心にも負担をかけてしまうことも。
更年期に繰り返されやすい便秘や下痢など胃腸トラブル、その原因を理解し楽しいイベントを無理なく満喫できるように対策していきましょう。
女性ホルモンと胃腸の不調の関係
便秘や下痢が続くことが更年期の症状に直結すると考える方は多くないと思います。
しかし、腸の働きは自律神経によってコントロールされており、その自律神経の乱れを起こしてしまうのが、女性ホルモンのひとつ、エストロゲンです。
エストロゲンの分泌量が減少することで自律神経が乱れて交感神経が優位になると、腸の蠕動運動が弱まってしまい、便が腸内に長時間滞留することで便秘が引き起こされやすくなってしまいます。
また、エストロゲンの減少で腸の動きが鈍くなると必要以上に水分が吸収されてしまい便が固くなって排便がうまく行われにくくなることも影響しています。
また、女性ホルモンのもうひとつのプロゲステロンは、腸の蠕動運動を抑える働きがあります。そのため、プロゲステロンの分泌量が減少することで腸の動きが過剰に活発になることがあり、下痢を引き起こしてしまうようになるのです。
更年期以前では生理前にはプロゲステロンが優位に、生理後はエストロゲンが優位にと変化することで、生理前後で便秘・下痢をしてしまうことがあった方もいるかと思いますが、更年期になるとこの1ヶ月のリズムが崩れ、日々の中で便秘と下痢を繰り返してしまうようになります。
更年期症状の影響
ホルモンバランスの乱れだけでなく、更年期の他の症状が胃腸の活動に影響を与えることもあります。
更年期世代が影響を受けやすいストレスは自律神経に影響を与え、腸の動きを乱します。交感神経が優位になることで腸の働きが抑制されて便が出にくくなります。また、腸機能の低下に伴い、大腸では便から水分を吸収する働きが鈍ります。便から水分が吸収されないと、便はかなり緩い状態になって下痢ぎみになります。このように、ストレスにより便秘や下痢が交互に起こることがあります。
さらに、体が冷えていると血流が悪くなり、便秘や下痢になる可能性があります。血行不良により腸に十分な血液が供給されず、腸の動きが鈍くなることで、便秘を引き起こしやすくなり、消化機能が低下して、冷えが原因で下痢を引き起こすこともあります。冷えのぼせやホットフラッシュなどの症状があると、首から上に熱が集まりやすくなるため、下腹部を冷やさないように注意が必要です。
腸内環境の乱れはメンタルの乱れにも
腸内には多くの神経伝達物質が存在しており、特に「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンはその9割が腸内に存在しています。このセロトニンは腸内細菌の働きによってつくられていて、主に腸の蠕動運動にかかわるとされています。
腸内のセロトニンは脳内に直接は入れませんが、セロトニンの元となる『5-HTP』の形で脳に入り脳内でセロトニンが生成されます。
そのため、下痢や便秘を繰り返していると腸内環境が悪化し、この神経伝達物質の生成が減少し、気分の落ち込みなどメンタルに不調が現れやすくなるのです。そして便秘・下痢とストレスの悪循環につながりやすくなります。
更年期の便秘・下痢の対策
生活のリズムを見直す
普段の生活を振り返り、1日のリズムが乱れている人は、起床時間、3度の食事、就寝の時間をなるべく毎日一定に心がけると、生活全般のリズムが整いやすくなります。
リズムが整うと、睡眠を十分にとることができ、ストレスの影響を受けにくくなるため、ホルモンバランスを整えやすくなり、腸の動きを整えることにつながります。
日々の生活で全てを一定の時間にすることはなかなか難しい方もいるかと思いますが、休みの日に夜更かししすぎて、翌日起きる時間が遅くなるなどがないよう心がけるようにしましょう。
バランスの良い食事と温かい水分補給
バランスの良い食事を摂るために、基本は朝・昼・夜の食事を欠かさず規則正しく摂ることが大切です。
果物や野菜、きのこ、海藻などに多く含まれる食物繊維は、下痢と便秘のどちらにも有効とされています。また、ヨーグルトや納豆、キムチなどの発酵食品は腸内の善玉菌が増え、便通異常が改善されるため、積極的に摂ることがおすすめです。
胃腸への負担を減らすために、脂っこい食べ物や刺激物(辛い食べ物、カフェイン、アルコールなど)を控え、消化に良い食事を選びましょう。特に調子の悪い時は、お腹に優しい素材のスープやおかゆなどで胃腸への負担を抑えましょう。レトルトのものやフリーズドライのものなどを常備しておくと便利です。
また、水分が不足することで、便秘を引き起こす原因にもなります。
しかし、飲みやすいからと冷たい水分ばかりを摂ってしまうと、腸を冷やしてしまい働きを鈍らせることがあります。特に下痢の状態で冷たい水分を摂りすぎてしまうと、胃腸を刺激してしまい下痢を悪化させる恐れも。
特に更年期はホルモンの変動によって体温調節が難しくなるため、温かい水分補給で体を冷やしすぎないことが大切です。
飲み物も、温かければなんでも良いというわけではなく、素材の効果として温めるものと冷やすものがあります。
体を冷やす飲み物
- コーヒー
- 緑茶
- アルコール
コーヒーや緑茶にはカフェインが多く含まれています。カフェインには利尿作用があるため、せっかく摂った水分を排出してしまうことに。水分を排出する際に、同時に体温まで逃してしまったり、カフェインには血管を収縮させる働きもあるため、手足の冷えにつながることもあります。適量なら問題ないのですが、1日に何杯も飲むのは控えましょう。
また、アルコールは飲んだ時に体温を上げるため、温かくなったと思う方もいるかもしれませんが、酔いが覚めるとその反動でさらに身体を冷やしてしまうため注意が必要です。
体を温める(冷えをとる)飲み物
- 白湯
- 生姜茶
- シナモンティー
白湯は飲むことで内臓の温度を高め、代謝を上げてくれるとされています。体温より少し高めの白湯を、1日で一番体温が低い起床後に飲むことで、身体を目覚めさせ、胃腸の働きを助けてくれます。生姜茶は身体を芯から温めることができるため、特に冷えが気になる方には積極的に摂取することがおすすめです。加熱することで効果が増すため、熱いお湯で入れてから飲むと良いでしょう。
また、シナモンティーには身体の冷えを取り除き、血の巡りをよくし、内臓の働きを高める作用があると言われています。血行が促進されることで、身体の隅々まで温かい血液、酸素や栄養が運ばれるため、代謝が上がりダイエット効果も期待できます。
運動習慣(呼吸法)
便秘の解消には腸の働きを活発にすることが大切です。
ウォーキングなど、歩くことによって全身の血流が促進され、腸の動きも活発になります。1日30分以上のウォーキングが理想ですが、移動中などにいつもより歩く距離を増やしたり、エスカレーターではなく階段を使うなど、普段の生活でより多く動くことを意識するだけでも効果を感じられます。特に朝や食後に軽く歩くことがおすすめです。
また、意識をして腹式呼吸を行うことも大切です。
緊張やストレスを感じている状態だと胸式呼吸で呼吸が浅くなり、腹筋や横隔膜の動きが少なくなりますが、腹式呼吸だと腹腔の内圧を高め、スムーズに便を送り出しやすくなります。
腹式呼吸の方法
1日10〜20回を目安に、無理なく続けましょう。
- おへその下に空気を溜めるイメージで、鼻からゆっくり息を吸います
- 身体の中の悪いものを全て出し切るイメージで、口からゆっくり吐きます
- 息を吐く時は吸う時の倍くらいの時間をかけるつもりで
胃腸の不調を正して、心も健康に
更年期の下痢や便秘は、ホルモンバランスの乱れによって引き起こされることが多いです。胃腸の働きの乱れは、身体だけでなく心にも負担をあたえてしまい、さらに更年期の症状を強めてしまうこともあります。
生活習慣を見直し、毎日のケアを心がけて、胃腸と共に心も整えて毎日を快適に過ごせるようにしましょう。