
毎年この時期になると花粉症でマスクが手放せないという方も少なくないかと思います。
目のかゆみやくしゃみ、鼻水だけでなく、頭がボーッとして仕事に集中できない、体がだるくて疲れている気がするなど、花粉症の症状は様々あります。
もはや日本人の国民病とも言えるほど、多くの人を悩ませている花粉症。花粉症人口は増加しており、国民の約4割が花粉症に悩んでいるといわれています。
更年期を迎えた女性の中には、ホルモンバランスが乱れることで、花粉症の症状が以前よりも悪化した、一度治ったと思ったらまた症状が出てきた、という方も少なくありません。なぜ更年期になると花粉症がひどくなるのでしょうか?
今回は、更年期が与える花粉症への影響、そして具体的な対策について詳しく解説していきます。
なぜ更年期になると花粉症がひどくなるの?

更年期は、女性ホルモンの分泌量が減少し、ホルモンバランスが崩れることで、身体や心にさまざまな不調が現れる時期です。更年期になると花粉症がひどくなるのは、女性ホルモンの減少が大きく関係しているといわれています。
その中でも、エストロゲンと呼ばれるホルモンの分泌量が少なくなると、自律神経のバランスが乱れてさまざまな症状を引き起こします。自律神経は免疫を司る器官でもあるため、免疫系のバランスも崩れやすくなります。この免疫のバランスが整っている状態では、アレルゲン(アレルギーを引き起こす原因となる物質)に対して過剰に反応することはありませんが、バランスが崩れると花粉症などのアレルギーを引き起こしてしまいます。
また、更年期以降は、皮膚や粘膜などのバリア機能が低下するので、花粉のようなアレルゲンが体内に侵入しやすくなり、アレルギー反応が起こりやすくなって、更年期に花粉によるアレルギー反応が強く出てしまったり、一度治ったと思ったらまた症状が出てきたり、花粉症の症状に影響を与えていると考えられています。
エストロゲン減少によって起こる花粉症の影響

自律神経の乱れ
エストロゲンは、自律神経のバランスを保つ働きをしています。
更年期の影響でエストロゲンの分泌量が減少することで、自律神経が乱れると、免疫のバランスまでも崩れ、花粉のアレルギー反応が重くなったり、突然発症しやすくなったりします。
また、自律神経の乱れが鼻づまりなどの症状を悪化させ、症状によるストレスが重なって、自律神経がまた乱れるといった悪循環にも陥りやすくなります。
免疫系の異常

エストロゲンは、免疫系にも影響を与えています。
花粉症はアレルギー反応の一種で、体内に入った花粉を異物として認識して抗体を作る「免疫反応」が過剰になって起こると言われています。
エストロゲン分泌の減少により自律神経が乱れ、免疫機能が誤作動すると、花粉などのアレルゲンに対して過敏に反応し、花粉症の症状が悪化しやすくなります。また炎症反応が強まり、鼻水や鼻づまりなどの症状が悪化します。
皮膚のバリア機能低下

エストロゲンは、皮膚の水分量を保ち、バリア機能を強化する働きがあります。ホルモンの減少により皮膚のバリア機能が低下すると、花粉が皮膚から体内に入り込みやすくなり、症状が悪化する可能性があります。症状としては、肌の乾燥、肌荒れ、かゆみ、ピリつきなどが起こりやすくなります。
更年期の花粉症対策
更年期の花粉症対策は、まずは自律神経の安定を行い、免疫のバランスを整え、そして一般的な花粉症対策を組み合わせることが重要です。
自律神経を安定させる
バランスの良い食事
食事は、自律神経のバランスに大きく影響を与えるため、とても重要です。
例えば、甘いものや刺激物などは、交感神経を優位にし、興奮状態を作り出してしまいます。一方、温かいスープや根菜類は、副交感神経を優位にし、リラックス効果をもたらし、自律神経のバランスを安定させることに繋がります。

自律神経を整えるための食事のポイント
- 温かいものを摂る:温かいスープや飲み物は、体を温め免疫力を高めます
- 食物繊維をたっぷり摂る:食物繊維は腸内環境を整え、自律神経の安定に繋がります
- 発酵食品を積極的に摂る:ヨーグルトやキムチなど、発酵食品は腸内環境を整え、免疫力を高めます
- マグネシウムを摂る:マグネシウムは、神経をリラックスさせる効果があります。
- トリプトファンを摂る:トリプトファンは、セロトニンという神経伝達物質の原料になり、リラックス効果をもたらします。
睡眠をしっかりとる

自律神経を整えるために、しっかりとした時間と質を確保した睡眠を取ることが大切です。
規則正しい睡眠のために、寝る90分ほど前に温かいお風呂にゆっくりと入浴をし、深部体温を高めてあげると、体温が下がる時に入眠がスムーズになり質の良い睡眠がとれます。
また、朝カーテンを開けしっかり朝日を浴びると、体内時計がリセットされ、目覚めがよくなるといった効果が期待できます。朝日を浴びることで、「セロトニン」生成の開始・分泌が行われ、夜眠くなるホルモン「メラトニン」が間接的に増えるため、質の良い睡眠につながります。
それ以外にも、寝る前にスマホを見ない、アルコールやカフェインを摂取しないことも重要です。
寝る前にリラックスできるハーブティーもおすすめ。ジャーマンカモミールは副交感神経を優位にし、花粉症にも効果的です。
適度な運動を行う

運動は、花粉症の症状を悪化させるというイメージを持っていらっしゃる方もいるかもしれませんが、実は適切な運動は、花粉症対策に良い影響を与えてくれます。
運動は血流を促進し、酸素や栄養素が体全体にスムーズに届けられるため、ホルモンの分泌を促す効果と、体温が上がって免疫力を高める効果が期待できます。免疫力は、体が異物や病原体から自分を守るための仕組みで、花粉に対する好ましくない免疫反応は抑えることになります。
また、体を動かしリフレッシュすることで、ストレス解消になり、自律神経のバランスを整え、花粉に対するアレルギー症状を緩和してくれます。
運動といっても、高強度なトレーニングは逆に免疫力の低下を促すことがあるので、ほどほどに継続的な運動を心がけることも大切です。
おススメの運動
- ウォーキング:体に負担が少なく、手軽に始められます
- ヨガ:室内ででき、体を柔軟にすることでリラックス効果も期待できます
- 水泳:全身運動になり、花粉を吸い込む心配も少ないです
運動する時の注意点
- 花粉の飛散量が多い時間帯を避け、朝早めの時間や雨が降っている日など、花粉が少ない時間帯に運動しましょう
- 長袖、長ズボン、帽子などを着用し、花粉の侵入を防ぎましょう
- 花粉の飛散量が多い日は、室内でヨガやストレッチなど、軽い運動をするのもおすすめです
- 運動後は汗をかいているため、すぐにシャワーを浴びて花粉を洗い流しましょう
花粉症対策を行う

基本的ですが、一般的な花粉症対策をしっかり行うことが大切です。
外出時は必ずマスクや眼鏡などを着用し花粉の侵入を防ぐ、家の中には花粉を入れない、こまめに掃除を行うなどして、花粉を減らしましょう。
家の中の花粉対策のひとつとして空気清浄機が挙げられますが、実は、加湿器も花粉症対策には有効です。加湿することで粘膜のバリア機能を保つことができ、花粉の侵入を防ぐことができます。
また、花粉は水分が付着すると、重くなって下へ落ちやすくなります。加湿器で部屋の中を加湿し、花粉に水分を付着させ床に落としてしまいましょう。
医療機関を受診する

従来の治療法に加え、抗IgE抗体製剤(ゾレア®など)・舌下免疫療法・レーザー治療など、近年では新しい治療法も登場しており、より快適な春を過ごすための選択肢が増えています。
それぞれのメリット、デメリットを理解し、自分に合った治療法を検討してみてもよいかもしれません。
従来の治療法と併用することで、より効果的に症状をコントロールできる場合もあります。
生活習慣の見直しで花粉症の症状を緩和しよう
毎年この時期になると憂鬱になる花粉症。更年期の花粉症は、自律神経のバランスを整えることがとても重要です。
食生活の改善、睡眠、適度な運動、そして一般的な花粉症対策を組み合わせることで、症状を緩和することが可能です。
花粉症に影響されず日常生活の質を高めるために、できることから始めてみませんか?
