
女性特有のものとして思われてきた「更年期」ですが、ここ最近では男性にも「更年期」があることが知られてきました。そこで今回は、まだあまり知られていない「男性更年期」について、その原因や症状、そしてパートナーが更年期になったときの向き合い方について考えていきましょう。
男にも更年期ってあるの?
夫やパートナーが最近、些細なことですぐに怒ったり、笑うことが少なくなったと感じることはありませんか?もしかしたらそれらの症状は、男性更年期によるものかもしれません。
男性更年期とは?
女性更年期は、女性ホルモンである「エストロゲン」の減少によって起こりますが、一方の男性更年期は、男性ホルモンである「テストステロン」の減少によって起こります。どちらも性ホルモンの減少によって不調が起こりますが、女性更年期と男性更年期ではいくつか違いがあります。
女性の更年期は、閉経前後に女性ホルモンが大きくゆらぎながら低下するために起こります。「閉経」という決定的な事象によるものなので、起こる時期は、個人差はあるものの、ある程度定まっていて、また閉経後にホルモンバランスが落ち着くことで更年期の症状は徐々に収束していきます。
一方の男性は、女性の「閉経」のような更年期の指標となる出来事はありません。そのため、男性ホルモン(テストステロン)は20代〜30代でピークを迎えた後は、加齢に伴って緩やかに減少していくため、40代以降は誰でも更年期になる可能性があり、更年期になる時期も人によってバラバラ。さらに、女性のように時間の経過によって改善することはなく、不調が長引くこともあります。
つまり、男性更年期は年齢に関係なく、テストステロンが急減するといつでも起こる可能性があり、また自然におさまることもないということです。
男性を悩ませる男性更年期障害(LOH症候群)
加齢によって男性ホルモン(テストステロン)が減少し、血中の数値が基準値未満になった状態は、男性更年期障害や「加齢男性性腺機能低下症候群(LOH(ロー)症候群)」と呼ばれます。
こんな症状があったら男性更年期障害「LOH症候群」かも

男性ホルモン「テストステロン」が体内で果たしている役割は幅が広く、筋肉や骨格を強くしたり体毛を増やす身体面、精子の形成を促し勃起させる性機能面など、男性の体にとても大切な作用をしています。さらには、挑戦心や競争心、公平性などのマインド面にも関係しているため、分泌が減少することで起こる症状も身体面、性機能面、精神面と多方面に現れてしまいます。
男性更年期についてまだ広く認知されていないこともあり、男性の体に起こる身体の不調が更年期によるものだと気づかないことも。男性更年期障害「LOH症候群」の主な症状を見てみましょう。
【身体的な症状】
- 筋力低下
- 筋肉痛、関節痛
- 疲労感
- ほてり、発汗
- 頭痛、めまい、耳鳴り
- 睡眠の悩み
【精神的な症状】
- 憂うつな気分になりやすい
- 不安感を覚える
- イライラしやすい
- 神経質になった
【性機能の症状】
- 性機能低下(ED)
- 早朝勃起の回数の減少
- 性欲の減少
女性も男性の更年期に気になっている?
座談会 / 更年期は知らないことがいっぱい!?-みんなで語って、対策やチェック法を知ろう-
男性ホルモンが急減する原因と対策
男性ホルモン(テストステロン)が減少する原因の一つは加齢ですが、それ以外にも、慢性的なストレス、過剰な飲酒、睡眠不足、食事など日常生活にもテストステロンを減少させ、男性更年期障害を招く原因は潜んでいます。
最大の原因はストレス

テストステロンの分泌にもっとも大きな影響を与えるのは「ストレス」です。テストステロンは脳からの司令によって精巣(睾丸)で作られますが、強いストレス状態が続くと、ストレスに対抗するためのコルチゾール(ストレスホルモン)をつくるように司令が切り替わり、テストステロンはつくられなくなってしまいます。
30代以降の男性は、仕事、家庭、親の介護、老後のお金など、さまざまな悩みが積み重なってストレスが増大してしまいがち。テストステロンの分泌にブレーキがかかりやすい状況はとても身近に存在しているのです。
男性ホルモンの増加につながる生活習慣
テストステロンの減少を緩和するために、日常生活の中でもできることはあります。
1.ストレスをためこまない

前述した通り、テストステロンが減少する最大の原因はストレスです。シンプルに「自分が楽しい」と思えることをして、リラックスできる時間を意識的に作りましょう。
また、テストステロンは、人と接したり、誰かの役に立てたと感じたりすると、活性化するとも言われています。パートナーと温かいお茶を飲みながら気楽な会話を楽しんだり、ボランティア活動をするなど、無理のない範囲でストレス解消につながるアクションをしてみてはいかがでしょうか。
2.食生活の見直し

テストステロンの減少予防には、食事も大切。極端な糖質オフダイエットをしたりせず、バランスのいい食事をとるように心がけてください。
とは言え、食事の準備に手間がかけられなかったり、外食が続いたり、常にバランスのいい食事ができるとは限らないもの。そんな時は、テストステロンの分泌に役立つ食材を覚えておいて、食材や食事を選ぶときは優先的に取り入れる習慣を身につけましょう。
【テストステロンを増やす食材】
・役立つ栄養素を含むネバネバ食材:納豆(ビタミンK)、オクラ(亜鉛・アルギニン)、なめこ(ビタミンD)、山芋(ジオスゲニン)、モロヘイヤ(植物ステロール) など
・たんぱく質を多く含む食材:肉、魚、大豆、牛乳、卵 など
・亜鉛を多く含む食材:牡蠣、わかめ、うなぎ、レバー など
・含硫アミノ酸を含むねぎ類:玉ねぎ、にら、ねぎ、にんにく など
3.適度な運動

適度な運動は脳や筋肉に刺激を与え、テストステロンを増やしてくれます。
もし一緒にスポーツを楽しむ仲間がいれば、サッカーや野球などチームスポーツがおすすめ。運動になるだけでなく、仲間との競い合いや助け合いがテストステロンの分泌促進に役立つのでより効果的です。
一人でやるなら、筋トレやウォーキングなど毎日続けられそうなものを選ぶのがベター。継続して筋肉を刺激することで筋肉量を増やすことができ、またテストステロンの分泌サイクルが整いやすくなります。
ただし、「運動をしなければ」と束縛されることでストレスが増えてしまうことは本末転倒。通勤の時は駅の階段を使う、犬の散歩を10分長くする、など、自分へのプレッシャーにならない内容と範囲で始めてみましょう。
4.専門医を受診する

心身の不調が続く場合は、泌尿科やメンズヘルス外来、男性更年期外来に相談してみましょう。心身の状態をチェックする調査票や問診票による診断と、テストステロンの値を調べる血液検査を行い、男性更年期障害「LOH症候群」かどうか診てもらうことができます。
診断結果によって、漢方薬が処方されたり、テストステロン補充療法など適切な治療があるので、不安を抱え込まずにまずは相談してみるのも選択肢の一つです。
更年期のパートナーへの寄り添い方

男性の更年期は誰にでも起こるものではなく、また起こる年齢も人によってまちまち。自分でも気づきにくく、ましてや他人にも理解されにくいのが現状です。
同じ空間で一緒の時間を過ごすことが多い夫やパートナーの異変に気づいた時は、言い方に配慮しつつ、男性更年期の可能性を伝えてあげるのが優しさかもしれません。
また、一緒に外出できるスポーツや趣味を始めてみるのも◎運動やリラックス効果でパートナーのテストステロンが増えて、さらに自分も楽しめて、一石二鳥です!
パートナーの身体や精神の状態は、自分の暮らしや今後の人生にも影響を与える大切なこと。お互いの身体の状態を理解し、いたわりあうことで、ふたりのパートナーシップをより強固なものにできるチャンスでもあります。相互の理解とサポートで、更年期の時期を前向きに過ごしていきたいですね。