目次 [閉じる]
ついにやってきた夏のシーズン。今年は平均気温が高くなると予想され、全国的に猛暑への警戒が必要と言われています。この季節に意識したいのが熱中症対策。特に大人の女性は体調的にも熱中症になりやすい傾向があり、より一層の注意が必要です。いくつかある熱中症対策の中で、今回は毎日の暮らしの中で取り組める「暑熱順化(しょねつじゅんか)」に着目!暑い夏を乗り切るために、今から始められるメソッドをご紹介します。
知ってる?熱中症対策のための「暑熱順化」

暑熱順化とは?
「暑熱順化」とは、シンプルに言うと体を暑さに慣れさせることです。体は少しずつ暑さを経験し暑さに順応していくことで、夏の高温環境に適応する能力を高めていきます。つまり、暑熱順化は夏を迎えるにあたって、なくてはならない重要なプロセスなのです。
本来であれば人の体は、冬から夏に向かって気温が上がるにつれて自然と暑さに慣れ、暑い夏を過ごせるように体温調節機能が備わっています。
しかし、現代では空調の使用により一年を通して室内温度が快適化されていたり、寒い日が続いていると思ったらいきなり夏日になってしまうような季節の変わり目の寒暖差が急激だったりと、体が暑さに慣れるための準備期間が十分にない状況になっています。
その結果、体温を調節する機能が整わないままに暑い夏を迎えてしまい、夏の体調不良や熱中症になる事例が増えてしまっているのです。
そのため、本格的に暑くなる前に意識的に暑熱順化を行い、体が夏の暑さに対応できるように事前に準備しておくことが大切なのです。
熱中症と暑熱順化の関係性
熱中症対策というと、スポーツドリンクを飲んだり、首や脇の下を冷やしたりするなど、さまざまな方法がありますが、暑熱順化も熱中症になるリスクを軽減してくれる有効な手段の一つであることはご存知でしょうか?
熱中症は、夏の気候や暑い環境下での活動により体温が上がった時、通常であれば作用するはずの体温を下げる機能が上手に働かなくなり、体の中に熱がたまりすぎてしまうことで起こる症状です。
そこで活躍するのが「暑熱順化」。暑熱順化で体温を調節する機能を整えておくことで、夏の暑い日でも体温調節反応が有効に働き、熱中症になるリスクを減らす手立てとなるのです。
更年期の女性は特に注意!

更年期は、女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減ることで、自律神経の働きが不安定になりがちです。自律神経には、気温の変化に合わせて皮膚の血管を収縮・拡張させたりして、発汗を促すことで体温を調節してくれる機能があるので、自律神経が乱れることで暑さへの対応も鈍りがちに。正常に体温を下げることができず、体内に熱がこもりやすくなります。
さらに、のぼせやほてりなどの更年期に起こる特有の症状も、体温調節機能の負担を増やしてしまう要因になることも。
夏の気候条件に加えて、体調的にも熱中症になりやすい更年期の女性は、特に暑熱順化による暑さ対策が大切となります。
ポイントは「汗をかける体作り」
暑熱順化の中で大切なのは、スムーズに汗をかける体を作っておくことです。
もともと人間は、暑さや運動により体温が上昇した時、体温を一定に保つために熱を外に逃す熱放散機能を持っています。その熱放散機能の一つが、汗をかくこと。
汗は蒸発するときに体の表面から熱を奪い体温を下げてくれる働きがあるので、汗をかける体作りをしておくことは、夏の高温環境下で体温調節機能をきちんと働かせるのに非常に重要なことなのです。
夏を心地よく過ごすために、今日から汗をかける体作りに取り組んでみましょう!
汗をかける体にするためには?

発汗習慣で汗腺を活性化!
クーラーのきいた部屋で過ごすことが多かったり、運動不足などで普段からあまり汗をかかない暮らしを続けていると、汗を出す汗腺の機能が低下し、汗をかきづらい体になってしまいます。
そこで、意識的に運動をしたり、体を温めたりして日頃から汗をかく習慣をつけておくと、汗腺が活性化され、汗をスムーズにかけるようになります。
女性は、汗によって化粧崩れしたり、肌がベトついたりして、つい汗をかくことを敬遠したくなりがちですが、実は汗をかきやすくなることで、ベトつきの少ないサラサラの汗がかけるようになるメリットも。
汗腺の機能が低下し汗がかきづらい状態の時の汗には、水分と一緒に血液中のナトリウム(塩分)が多く含まれていて、汗にベトつきを感じます。しかし、日常的に汗をかくことで汗腺が活性化すると、塩分が血液中に再吸収されて塩分の少ない汗をかけるようになるので汗はサラサラに。汗のベトつきが気になりにくくなるのです。
汗腺を活性化する発汗ライフスタイル4選
①軽い運動を習慣づける

ウォーキングやジョギング、軽いストレッチなどの軽い運動を毎日行うことで、汗をかく習慣が身につき、発汗機能を向上させることが期待できます。
特に、有酸素運動は手足などの末端まで血行を良くしてくれるので、じんわりと汗をかくのにぴったり。犬の散歩やラジオ体操など、気軽に始められるものから取り組んでみてはいかがでしょうか。
ただし高温多湿や炎天下での運動は御法度です。早朝や夕方などの涼しい時間帯を選ぶなど、体に負担にならない環境で運動するように心がけてください。また、休養と水分補給も忘れずに、無理のない範囲で体を動かしましょう。
②ぬるめのお湯でゆったり入浴

入浴は、シャワーだけで済まさずにできるだけ毎日湯船につかるようにしましょう。38〜40℃程度のぬるめのお湯に10分から20分程度つかることで、発汗しやすい体を作り、汗腺を活性化することができます。
特に半身浴は、体に負担をかけずに汗をかくことができておすすめ。お気に入りの入浴剤やバスソルトをいくつかそろえて、お風呂での発汗習慣を楽しみましょう!
③汗をかいた後はうちわでひと休み

運動や入浴で汗をかいた後、クーラーのかかった冷えた部屋に入って「天国〜」なんて思ったことはありませんか?実はこれ、発汗習慣をつけるためにはNG行為。なぜなら、冷房により室温が冷えた部屋に入ると、体は「もう体が冷えたから、汗で体温を下げなくても大丈夫」と勘違いして汗腺を閉じてしまうから。汗が急に止まってしまい、汗をかく習慣を打ち消してしまいます。
汗をかいた後は自然に汗が引くのを待って、汗腺の機能を最大限に活用するようにしましょう。どうしても暑くてたまらない時は、うちわで優しくあおいだり、扇風機の弱モードで涼む程度がベター。
④飲み物は常温か温かいものを

暑い時や汗をかいた時は、キンキンに冷えた飲み物をグイッと飲みたくなるものですが、これも実は汗をかける体作りにおいては避けたいこと。冷たい飲み物を飲むことで体が冷気を感じ、汗の分泌がストップしてしまいます。そのため、汗をかいた後の水分補給は常温か温かい飲み物を選ぶようにしましょう。
おすすめなのは、ノンカフェインのお茶。お茶なら体調や好みによってフレーバーが選べる楽しさがあり、糖分やカフェインを摂りすぎる心配もありません。熱いままでも、ほどよく冷めた頃合いでも、おいしい水分補給が叶います。
また、温かい飲み物を飲むと内臓が温められ体温は上昇。その結果、体を冷やそうと体温調節センサーが働き発汗につながります。つまり、熱い時にあえて温かい飲み物を飲むことが、結果的には体温を下げ暑さをやわらげる近道となるのです。(ただし、暑い環境で過度に熱い飲み物を飲むと、体温が上昇し、熱中症のリスクを高める可能性があるので、注意しましょう。また、すでに熱中症の症状が出ている場合は、体温を下げる必要があるため、冷たい飲み物が有効です。)
意識的な暑熱順化で、いい汗かけるすてきな夏を!

本来であれば、四季の移ろいに乗じて自然に行われていた暑熱順化ですが、最近では意識的に対策をしなければ体が暑さに適応しにくくなっています。
暑さによる不調や熱中症にならないためには、「暑くなったら汗をかいて体温を下げる」という体温調節機能が正常に働く体になることがポイント。そのためには、日頃から良い汗をかく習慣を身につけて、暑い日にはスムーズに汗がかけるように準備しておきましょう。
汗をかく習慣は、ちょっとしたライフスタイルの見直しから始められます。身近な暮らしの中でできる「暑熱順化」に取り組んで、今年の夏を存分にエンジョイしてみてはいかがでしょうか。
